鸞ト己テリモ積モ塵   作:サボテンダーイオウ

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02 『何かとは何かである』

強制的にアルバイトすることに決まった四月一日の願いは『アヤカシを視る力が無くなること、アヤカシがこの『血』に惹かれないこと』でした。

侑子はそれをここで働くことで叶えてあげましょうと言った。

だから四月一日はこの『対価を支払う代わりに相応の願いを叶える』お店で働くことにしたです。彼の最初の仕事はおさんどんさんでした。割烹着来てしゃもじもって目の前の少女を見やります。

 

「君尋~、ご飯大盛り頂戴!」

 

「くーちゃん、これで何杯目?」

 

「知らない数えてないし」

 

あっけらかんくーは催促します。ごはん♪ごはん♪と。

 

「教えてあげる、ご飯15合炊いたのにもう空なんだよ」

 

「え?終わり?」

 

「終わり」

 

キッパリと言い切り「えぇ~?」と不満そうに箸をかじるくーをしかりつけます。

 

「行儀悪い」

 

「満たされないなんか作って」

 

とせがむくー。だが四月一日は、

 

「ダメ、食べ過ぎは体に良くないんだよ」

 

と言って斬り捨てました。容赦なく。するとくーはふてくされごろんと畳に転がりました。

 

「君尋が苛める~」

 

と言いながらのの字を書きま。恨みがましい目で四月一日を見るのでした。

 

「苛めてないの!くーちゃんが大食いなだけなんだよ」

 

まったく!言いながら食器を片づけ台所に戻る彼。がしかし後でくーの大好きな肉まんをつくってあげる四月一日なのでした。そしてくーはやはりおいしそうに言うのでした。

 

「君尋って優しー!」

 

そしてやっぱりくーには甘い四月一日なのでした。無邪気に食べる彼女は彼にとって『癒し』なのです。そんな君尋の次の仕事は埃まみれなお部屋の掃除でした。

 

「汚い!?ここって掃除してないんじゃ」

 

頭痛いと唸る四月一日ににゅっと顔を出したくー。四月一日はまたお菓子を催促されるのかと思ったのだがそれは違いました。

 

「君尋、わたしも手伝う」

 

なんかじーんとこみ上げるものを感じ、四月一日は

 

「ありがと、くーちゃん」

 

と礼を言い、とりあえず箒で掃いてもらおうかなと言葉を紡ごうとした瞬間、くーは満面の笑みで

 

「えへへ、なんかトレジャーハンターみたいな気がするよね」

 

そう言って楽しげに周辺をあさり始めました。

 

「遊びたいだけかっ!」

 

見かけに騙されるな四月一日少年よ。くーの頭の中は食べる→遊ぶ→寝る→また食べるの繰り返しなのだ。とにかく掃除しようと手当りしだいに叩き(はたき)で叩きまくるとあるものを発見。

 

「何だ?コレ…」

 

なんとも可愛らしい『羽』がついたステッキのようなもの。その疑問に答えたのは侑子でした。

 

「それは『魔法』を使う時に使用する『杖』よ」

 

「『魔法』?」

 

「魔女っ子って奴?お決まりの台詞とかで変身☆する奴?決めポーズとか必要な奴?それとも本当は格闘技しちゃう魔女っ子とか?」

 

四月一日とくーが突飛抜けた話を理解するまでに時間がかかりましたが侑子は無視して話を進めました。

 

「可愛い女の子が使ってる模造品(レプリカ)なんだけどね、もうすぐその女の子と逢うわね。そのお相手とも。…まぁ違う相手だけど」

 

くーと違って天然純粋培養みたいな子よと毒を吐く侑子。毒牙一発女と文句いうくー。四月一日は二人を無視して掃除を再開しました。すると、ある所に目がいきつきました。

 

「アレ、ここだけなんかデカいような」

 

目の前にはデカい筒のような、人一人余裕で入れる大きなガラスばりのモノが『二つ』並んでいた。それは中まで見えないように何かが施されていてただ『何か』あるとしか言えない代物。くーも四月一日にくっ付きその、ものを視ようとします。

 

「え?どれどれ…アダ!」

 

だが、侑子の手によってそれは止められた。

グイッと首元に手を回され、強制的に引っ張られ侑子に連れていかれました。

 

「駄目よ、『ソレ』はまだ」

 

ズルズルとくーの腕を掴み、くーはずるずると引きずられながら文句を言う。

 

「え~、ケチ!!いいじゃんか減るもんじゃあるまいし」

 

「誰がケチですって」

 

「ゆうこのドけちドS大酒女」

 

「あら褒め言葉ばかりじゃない」

 

「毒牙一発女!」

 

「やかましい」

 

そういって侑子は無理やりくーを連れていきました。

 

「なんなんだ?」

 

四月一日は首をかしげつつ、もう一度目の前の大きなガラスを見やりました。

中が真っ黒でそれでいて何かが眠っているような気がするのです。そう、『何か』が。

でも疑問は『客』が来たことで消えていきました。

そして宝物庫はまた静かになります。

静かに、眠り続けるのです。静寂から切り離された空間で、ひっそりと。

 

◇◇◇

 

お店に来た客は困った『癖』がある女だった。自分がこの店に来た理由もわからずなぜここにいるのかわからないと女は首を傾げ困った風に言っていた。

でも侑子が「ここは対価を払う代わりに願いをかなえるお店」と説明し「アナタの願い、叶えましょう」と妖しく押し売りすると女は、実は小指がうまく動かないと訴えた。

すると侑子は、一つの指輪を差し出した。彼女は言う。

 

「嵌めてもいいと思ったら嵌めて。捨ててもいいと思うのなら捨てて」

 

決して女に強要をすることはしなかった。ただ自分で決めろという。

女は困惑した様子でそれを受け取り、小指に嵌めた。

そしてマルとモロにつれられ女は帰って行った。

あの女からは黒いどろっとした『何か』が少なくではあるがあふれ出ていた。生理的に受け付けないものであるのは間違いない。あの時の嫌悪感を思い出して、くーは「げぇ」と顔を歪めた。君尋が学校で憧れのひまわりちゃんと喜んで会話してる間、

 

『小指は大切なのよ』

 

侑子が言った言葉をじっくりと考えていたくー。

くーはクイクイと自分の小指をなんとなしに動かした。

 

「ねーゆうこ」

 

侑子がもたれる椅子に寄りかかりながらくーは声をかけました。

しかし侑子は黙ったままでした。

なのでくーは再度声を掛け直しました。

 

「ねー毒牙一発女」

 

「やかましい」

 

今度は反応しました。よほどこの言葉が気に入らない様子。引きずるんじゃないわよと文句+口をみょーんと引っ張られた。

 

「いしゃい」(痛い)

 

「生きるって痛いものよ、良かったわね勉強できて」

 

「へにゃやにょほへご」(勉強じゃなくて拷問と読む)

 

「チッ、知恵をつけてきたようね」

 

舌打ちし手を放すとくーを見下ろし「どうしたの」と問うた。

くーは容赦なくのばされた赤くなったほっぺを撫でつつ、疑問をぶつけた。

 

「あの女、『次』に来たときに終わっちゃうよ?」

 

小指を動かせないと言った女のこと。くーは彼女のことを言っている、あの女は、わからないと困った風に言ったが本当の意味を理解してはいなかった、それが女の命取りとなったことだろう。

『小指』が動かない。終わる=死。

 

「そうかもしれないわね」

 

くーはなんとなくわかっていたから、教えてあげないのかとゆうこに尋ねる。

侑子は別段なんとも思わないらしい。淡々と言いのけた。

 

「いいのよ、慈善事業してるわけじゃないのよ」

 

確かに!くーは納得し

 

「ゆうこに似合わないもんね」

 

と言うと

 

「お黙り」

 

叱られた。でもめげないしょげないあきらめない。

 

「そうかー。『人』ってあーいうのもいるんだー」

 

面白いね、そういってくーは笑った。

侑子は目を細め、そっとくーの髪を撫でた。

 

「そうやってたくさん学びなさい。『知る』ことは決して悪いことではないわ。どんな事でも『知る』権利はある。それを拒むこともできる。アナタには選択できるのよ」

 

どんな『道』でもと侑子は付け足した。

それからルンルン気分でお店にきた四月一日に飛びついたくーは彼を押し倒しながらさっそくお菓子を催促し、四月一日は「重い―」と言いながらくーの為にお菓子をつくろうとし、マルとモロが「お菓子ー!」「お菓子ー!」と踊りながらくーの周りをくるくる回り面白そうに侑子は眺めました。

 

それからあの女がお店にまたやってきて、まだ自分の『癖』に気がついてなくて

侑子は「はやく気がつきなさい」と助言して女は理解できずに帰って

四月一日に「ひまわりちゃんと会う時は気をつけなさい」と忠告して

四月一日は意味がわからんままアルバイトを終えて「明日も来てねー」と手を振って送り出してくれたくーに手を振り返して家に帰ろうとしたとき

憧れのひまわりちゃんと『偶然』出会って一緒にお茶しないと強引に誘われて

行った先にあの女を見かけて、あの女のどろっとしたものが濃くなっていく様を吐き気がするくらい見て、そして女が『癖』を言い続けるたびに指輪が壊れていくのを感じて

女に「やめろ、外しちゃいけない!!」と叫ぼうとしたけど、女は指輪を横断歩道の真ん中で外し、体が身動きとれなくなった状態でトラックに轢かれてあっさりと死んだ。

 

その頃くーはぼんやりと縁側に座り

 

「『癖』って大変だなー」

 

とのんきに肉まん頬張りながら呟いたそうな。

 

(きょうは『人』の『癖』についてまなびました。)

 

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