鸞ト己テリモ積モ塵   作:サボテンダーイオウ

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21 『予兆』

ひまわりちゃんと仲良く登下校して帰って来た君尋君。今日も変わらない日常なんだろうなぁなんて思ってたりするどそんな事ないよ?君尋くん。ドキドキはらはらハプニング満載がこのお店の特権さ!今日も張り切って体験しちゃおう!

 

大食い少女くーにしては珍しい並々ならぬ闘争心に燃えていた。

なぜなら、己の魂を削ってでも勝ち取らなければならない奴がいるからだ。

目の前を竹筒の中を流れる水流に静かな事、まるでこれから訪れるであろう激しい闘いなど無縁のようではないか。

 

そう、これから己の腕と俊敏さ、集中力そして運。全てを賭けて今、死闘が繰り広げられようとしていた。その闘いのゴングを告げるのは君尋くんのんきな声。

 

「流しますよ~」

 

その声と共にあるブツが彼の手によって流される。

それはつるつるしててつるるんとしていてこれぞ夏だね!と一発で感じられるくらいのインパクトを与えられるソレの名は……。

 

ザ!そうめん☆

そしてこのイベントの名は流し、そうめん也!

 

くーはスタンバイOKな格好で並み居る強敵を目の間にして動揺を悟らせまいと声を張り上げた。

 

「『流しそうめん』とは古来より伝わる夏の風物詩なり。昔のえらい人は言っていた…。『流して食う…これすなわち…熾烈な生き残り』也ィィィィイイイイ!」

 

そういうないなや、くーは目にも留まらぬ速さで右手に持った箸を真下に振り下ろす。その様背後に獰猛な竜を宿しているかのような気迫。

 

ターゲット捕捉。奴が箸を振り下ろすよりもわたしの方が先なはず。

この勝負…わたしに勝利は確実だ!

 

「セイヤッ!」「ハッ!」

 

黒モコナとくーの凄まじい気迫の鍔迫り合い。

そうめん、奴はモコナの前を通過したようだ。悔しそうにする様が何とも心地よい。

優越感に浸るくーであった。

フッ、あのモコナがわたしに勝つなど100万年早いわ!

 

「はははは、わたしの勝ちのようだな、は!?ま、まさか!!」

「まだまだ甘いわね!フッ」

 

ここで傍観していた魔女の登場。華麗な箸捌きで流れ来るそうめんを見事仕留めた。

 

「主さまスゴーイ」「主さまサイコー」

 

シュッシュッシュッ!

マルモロの声援を受けゆうこは次々とそうめんを箸で挟んでいく。

まるで箸の先まで一体化しているようではないか。そしてこれ見よがしに己が獲得したそうめんをおいしそうに口に運ぶ。

 

「ああ、お・い・し・い~」

「ぬぅうぅううぅううう!?」

 

これ以上奪われてなるものかとくーとモコナは奮起し

 

「行くぞモコナ!」「合点承知の助!」

 

息の合った掛け声と共にダブルコンビネーションを見せた。侑子は高笑いして余裕ありげな表情で迎え撃つ。

 

「オホホホホ、取れるものなら取って見せなさい!」

「アンタらはいちいち対決しなきゃ食べられないんすか!?」

 

君尋のツッコミも華麗に決まった。うん、今日も変わらない日常でしたね!

 

(華麗なお店の日常)

 

◇◇◇

 

今日はひまわりちゃんと帰ることになった君尋君は彼女と並んで帰路につく。夏も本番という時期、話題にあがるのは学生にとっては嬉しい話である。

 

「もうすぐ夏休みだね」

「そうだね、と言っても俺はバイト三昧だと思うけど」

 

苦笑気味に言う君尋にひまわりちゃんはクスクスと女の子らしい笑い方で尋ねました。

 

「くーちゃんと一緒で嬉しいの間違いじゃないの?」

「ほぇ!?い、いやあああの決して!そういう意味ではなくて!?」

「そんなに慌てなくてもくーちゃんならきっと嬉しいって飛び跳ねるはずだよ」

「そ、そうかな……」

 

どうやらちょっとずつ『自覚』というものが出来てきた様子の君尋。

それは小さな小さなつぼみではあるけれど可愛らしい花を咲かせることは確実である。

そのまま順調に育っていけばいいだがそれはそうもいかないかもしれない。なんせ恋に障害はつきものである。いつもコンビを組んでいる百目鬼の姿がないので君尋は全然気にした素振りを見せないようしているが実は気になっている。そんな可愛い君尋の様子にひまわりは気づいていた。だからわざと笑顔で

 

「そういえば最近百目鬼君と一緒にいないね。いっつも仲良しだから寂しくない?」

 

と確信犯的な台詞を君尋にソフトに投げつけた。彼の反応はわかりやすいくらいに瞳をメキョ!?とさせて驚愕した。

 

「はぁ!?俺と百目鬼のヤローが!?いやいや違うから絶対仲良しこよしレベルとか違うよひまわりちゃん!」

 

と激しく手をぶんぶん振って否定。ひまわりは「そう?」と首を傾げて心の内では、あ、やっぱり仲良しだなんて思ってたり。

百目鬼なりに考えて動いているらしいが、君尋もある違和感を感じていた。

最近彼の右目に一瞬だけ何かが映ることがあるらしく、それは時たまフッと忘れた瞬間に起こる現象。いつも右目は真っ暗闇なはずなのに例えるなら、『自分』以外の誰かの視え方がそのまま垣間見えるような。しかし今はその症状も出ることないのであまり深くは考えていない。突如ここでひまわりからある依頼が発生。

 

「これ百目鬼君に渡してくれないかな?本を貸すって約束してたんだけど最近一緒に帰る機会がないから渡せなくて」

「え?俺、が?」

「うん。四月一日君、百目鬼君に逢いたいかなって思ったし」

「ひまわりちゃん違うよ俺はアイツに逢いたいとか微塵も考えてないからね?」

「うん、わかってるよ。お願いできるかな?」

 

絶対確信犯だ。ひまわりはおとぼけて見えて実は策士らしい。君尋は泣く泣く依頼達成の為百目鬼君のお家へと走る結果に。

 

「俺はアイツに逢いたいわけじゃねぇぇぇぇええええええぇぇぇぇ!」

 

ちゃんと本を受け取った彼は半分泣きながら大声を上げて疾走していく。

後ろでひまわりが手を振って送り出した。

 

「走って転ばないようにね~」

 

君尋、結構イジられキャラ?

 

(明らかな違和感の予兆はすでに出ていた)

 

◇◇◇

 

くーside

 

百目鬼さんと君尋が『本の虫』と格闘している最中、わたしと言えば一人で唸っていた。

 

むー。まったくもって不機嫌絶好調だ。またゆうこがわたしを置いて出かけたのだ。

彼女に似合わないスポーツマンが見せる白い爽やかな笑顔を見せつつシュタ!と手をあげながら

 

「ちょっと百目鬼君の所行ってくるわ!」

 

とモコナの頭をひっつかんで風のように消えてしまった。わたしは二人の後姿に手を振って素直に見送った。わたしって大人。

内心はあの意地悪ゆうこめ、自分だけ楽しもうってつもりだなと舌打ちしたが。

 

うふふふ!だが詰めが甘い甘い!

 

わたしは逆にゆうこがいなくなる瞬間を狙っていたのだ。

なぜなら!ゆうこの部屋に密かに隠されている、もちもちっとしてて甘~いおやつを密かに狙っていたのだ。その名はちゃんとテレビで調べた笹団子という名で笹でくるんだよもぎを使った餅の中にあんこをいれ蒸して作られる和菓子らしい。紐で結ぶのだが作る地によって結び方にも種類があるとか。ご当地土産で有名らしい。

その笹団子の山がゆうこのある戸棚に隠されていて以前にゆうこの部屋で遊んでいた時見つけた。その時はすぐにゆうこに部屋から閉め出され手を出せずにいたがいつかいつか食ってやると心に決め虎視眈々と狙っていたのだ。

 

今はゆうこはいない。君尋も出かけていていない。

マルとモロもお昼寝中でいない。モコナも当然、いない。

つまり、このお店にいるのは

 

「わたしだけなのだー!」

 

今日はなんとラッキーな日であろうか!

たったかとわたしは軽快なリズムで廊下を走り目的の場所にたどり着く。

誰もいないっていいなぁ~と鼻歌交じりに戸棚の目の前まで来た。

開いた先にわたしを待つであろう、笹団子のお宝が眠っているのだ。

涎でまくりなわたしは、高鳴る鼓動を胸にそろり、と戸棚の扉に手をかけた。ついに解禁!

 

 

「あれ?お皿だけ、しかない?」

 

いやよく見たら折りたたまれた紙が一枚皿の上に乗せられている。

わたしは思わず紙に手を伸ばしそれを広げた。そこには『もうなっしー』と一言書かれていた。この筆跡、ゆうこに間違いない。

 

わたしは愕然とした。

もうなっしーって何?もうないわよって事だけでいいじゃん。全部自分が食べたってことだけでいいじゃん。なんだこの嫌がらせ、わたしが狙ってる事を知ってて全部たいらげて、ご丁寧に皿とこの紙きれだけ残して置いといたってか?

 

いい大人が、子供の成長を奪っていいのだろうか?

年増のくせして、食い意地が張ってていいのだろうか?いいやよくない、絶対よくない!

ぐぅぅううぅぅう。腹が減ったコールが鳴いた。でもお皿の上にはなにもなし。

 

「………ぬぐぐぐぐううぅぅうううううう、馬鹿ゆうこめェェェエエエエエエエエエエ!」

 

キー!とわたしは独り喚いて紙をぐしゃぐしゃにしてちりじりにしてやった。

でも腹の虫が収まらないのでゆうこの部屋で一人で奇声発しながら転がってやった。

 

「ムキィィィイイイイイーーーー!」

ごろごろ

 

「キョエェェェェエエ-------!」

ごろごろ

 

「ニョエェェェエエエエエエエ――――――!」

ごろごろ

 

余計腹が減った。すると聞きなれた声が背後からした。

 

『あらくーちゃん。侑子の部屋でお昼寝かしら?』

 

ニコニコと微笑むえれなさんがいました。

 

「……………」

 

挨拶することすら忘れ、無言で凝視してしまった。

いつからいた?っていうかどの辺から見られた?気配なかったよ、全然気づかなった。

あ、幽霊だから壁通り抜けられるよな…。…いやいや!もっと重要なことあるだろわたし!

 

「………見て、た?」

『いいえ何にも♪』

「………見てたよね」

『いいえぜんぜん♪』

「えれなさんお願いしますみなかったことにしてください」

『大丈夫よ、大の大人が一人でゴロゴロやってたら変だろうけどくーちゃんならOKだし可愛かったから平気よ!』

「やっぱ見てたんじゃん!」

 

うぅ、羞恥心というのはこういう事なのか……。身をもって体験する事になろうとは………。全部ゆうこの所為にした、今日この頃。腹は、今だ鳴っていた。

 

【ゆうこは太ればいいとおもうなっしー】

 

◇◇◇

 

えれなさんはどうしてわたしの友達になりたいと言ったのだろう。

だってわたしは彼女がどんな人なのかまったく知らない。

彼女がなにを思って幽霊となってこの世にとどまっているのかをわたしは知らない。

えれなさんに恥ずかしい一面をみられてしまった後、わたしとえれなさんは縁側へ移動した。えれなさんが丁度いい機会だから私の話聞いてくれる?と言ってきたからだ。

わたしもえれなさんがどうしてこのお店に来ることになったのかが気になったので承諾。

冷蔵庫に残っていた肉まん3個と温かい麦湯が入った湯呑を脇に置いて、縁側に腰を落ち着けた。えれなさんは『ゆうこには内緒よ』と言いながら秘密のポーズをした。

 

わたしはさっそく肉まんをハグハグ食べてたので頷くだけにとどめた。

内緒じゃないといかんのか?ハッ?!もしやゆうこにばれたらおやつ抜きの刑にでもされてしまうのだろうか?なんて恐ろしや……。これは心して聞かねばいかん。

 

『あのね、私本当はこの世界の人間じゃないの。ある願いを叶えてほしくてくーちゃんの前に現れたわ。―――私にはね、深く愛している人がいるの。その人は私の為にボンゴレを強くしてくれようと自らの肉体を捨て去ってまで行動してくれているわ。たぶん今もずっと。もういいのに、そんな事私望んでないのにあの人ったら真面目だからやめるって事をしないの。そんな人だから愛した。けどある日、彼が、雪彦が現れて教えてくれた。私の愛する人はいつかジョットの子孫にあたるボンゴレ十代目に倒される定めにあるって。私の為に奮闘しくれている彼が倒されるなんて……悲しかった、苦しかった。

……本来ある筋書きはそうなのでしょう。でも緋奈が降りてきた時点はこの筋書きはまったく意味を為さないわ。だから私は願った。彼を救えるのならなんでもすると』

 

ボンゴレ?あさり強くしてどうするの、あさりを武器にして戦うの?

って聞いたらえれなさんはクスクス笑って『違うわ、食べるあさりじゃなくてマフィアの名前。ボンゴレって言うのよ』って教えてくれた。

緋奈って友達の名前?と尋ねれば『ええ、とても大切な友達。逢えるものならもう一度逢いたいけど、たぶん無理ね。その時には、私はいないはずだから』と寂しそう顔をして言う。

 

いないってどういうことだろ?どうして、そんな悲しそうに笑うの?

わたしはえれなさん理由を聞こうとした。

けどあれ?グラリ、と視界がずれた。なんだ、これ。ダルい、体が?急に眠気が襲ってきた。それも強烈な、眠り薬でも効いてきたような勢いに床に手をついた。

 

『くーちゃん』

 

躰の重心を保っていられず、ついには寝ころんでしまう。

えれなさんの名を呼ぼうとした。けど、駄目だ。逆らえない睡魔はわたしを完全なる夢の世界へと強制的に連れて行ってしまう。

 

『……やっぱり、こうなるのね。いいのよ、眠って。私は聞いてもらえただけ満足だわ。たとえ、貴方が今の話を覚えていなくても、私は覚えているから』

 

まるでわたしが眠ってしまう事を事前に知っていたかのような口ぶりじゃないか。

えれなさん、そんな顔しないで。やだよ、知りたいのに。だってえれなさん今ひとりぼっちじゃない。大好きな人と別れてこんな所でひとりぼっちじゃないか。なのに、満足してるって顔しないでよ。え、れなさん……。

 

『おやすみなさい、くーちゃん』

 

すぅすぅ、と小さな寝息を立ててくーは完全に眠りの世界へ旅立ってしまった。

エレナはどこからかふわりとタオルケットを出しそれをくーにかけてやる。

こうして侑子がいない場でも、くーにかけられた『願い』は敏感に感じ取り彼女に不必要なものは除外する。その作用がこれだ。今のくーに余計な情報が与えないよう、全てを忘れさせる。全てを、なかったこととする為に。

くーが次に目覚めた時、今の会話をしたことすら覚えていないだろう。今の彼女にはいらないものだから。

 

『……本来の世界があるのなら別の可能性を秘めた世界だって存在していいはずだわ。彼を救おう、そう決意して私は雪彦と『契約』をしたの。死んだ身で何が出来るかって思ったけど雪彦は色々と援助してくれたし幽霊な私でも可能な限りで色々出来るよう『力』をくれたし。貴方に逢うために。寂しくなんかないのよ。貴方が私の希望だから』

 

そう言ってエレナは触れられない手で眠るくーの髪をそっと撫でるように手を動かした。

 

くーちゃん、貴方は私の最後の希望。貴方がいて私がいれる。

優しい子、素直で無邪気に振る舞って、本当は不安でいっぱいなんでしょう。

自分がわからないのに、周りの人々は貴方が何者なのかを知っている。

どうしようもない、不安に夜枕片手に涙したことだって知ってるわ。

ずっと貴方を見てきたから。見守ってきた。

 

大丈夫よ、くーちゃん。貴方はちゃんと自分を取り戻せる日が来る。

それは貴方が手放してしまった大切な人を取り戻す日でもあるから。安心して、今は眠って。そしてどうか、彼を救って。貴方が救うつもりがなくても私には救いになる。彼にも、救いに繋がるの。そしていつの日にか、再び彼に再会できたなら。

 

【貴方はディモンを救ってくれる子】

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