。ケ咲イ狂テウ狂リルク   作:サボテンダーイオウ

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15『熱ときどき涙色』

寒い寒い雪が降るジェイド国にて。小狼君御一行はサクラの羽根を探してえんやこらよっと!と永い永い旅を続けている最中です。終着点が見えない中色々と複雑なメンバーでありますが、それでも少しずつ距離が縮まりつつありました。

そんな中、一番問題アリな二人にちょびっとぷちイベントなるものが存在していた事はご存じない人もいるかもしれません。今宵は、そのお話をしてまいりましょう……。

 

ベッドにて弱り切った様子で激しくせき込む少女が寝ていました。赤い頬はまるで林檎のように真っ赤で苦しそう。

 

「ごほ、げほほほっ!……」

「これは風邪こじらせちゃったみたいだね~」

 

胡散臭そうに見えてしまうのらりくらり青年ファイ天姫のおでこのタオルを取り換えながら軽そうに言う反対側で、涙目&狼狽えるサクラが天姫のベッド脇で辛そうに謝ったり。

 

「天姫さん、わたしの所為で……!」

「そ、そんな事ない、から。サクラちゃんが気にすることじゃないし」

「カイル先生は捕まえられましたし、他に医師はいないんですよね。この町には…」

 

困ったと顔をする小狼君の言う通りこの町の医者のカイルはある事件の犯人で小狼君たちの名推理とサクラと天姫の活躍、そして金の姫のおかげであえなく御用になったわけなんですが真冬の水に浸かったせいで天姫が風邪をこじらせてしまったのです。 

 

「すまんな、だが出来る限りのことはさせてもらおう。足りないものがあれば遠慮なく言ってくれ」

 

悪者に見えて実は良い人グロサムさんがそう言って部屋を出て行きました。グロサムさんが用意してくれたお家にて天姫の看病をすることになったメンバーですが天姫の容体は決していいものではありませんでした。

 

「良かったじゃねぇか」

「……え?」

「馬鹿じゃねぇって証明された証拠だぜ」

「「「?」」」

 

日本国(ニホンコク)では知らない人はいないというくらい有名で黒鋼は偉そうに上から目線で天姫に言いました。

 

「馬鹿は風邪を引かないってのが鉄則だ」

「黒鋼あったまイイー!天姫は馬鹿じゃないんだー。良かった良かった!」

 

白モコナもある意味博識な黒鋼の頭の上で褒めつつはしゃぎます。

だがその二人におどろおどろしい殺気を放つ少女がいました。

そう、意識朦朧としているはずの天姫です。

ぜはぜはと荒い息をして焦点さだまらない視点で天姫がふらふらと起き上り愛刀に手を伸ばそうとしますが、そんな体力あるはずもなく言葉もおかしいです。

殺すって言いたいのに「ころころころ」と口が回らないのですから。

 

「……こ、の……お前ら……ころころころう、ごほほほほほっ!?」

「あー駄目だよ動いちゃ。今結構熱高いはずだから」

 

とファイによって刀はぼっしゅーとされました。

そしてベッドへ再びいらっしゃーい!

 

「あ、あの!わたし徹夜で看病しま。スー……スー……」

「サクラ姫!」

 

言い終える所でサクラ脱落。睡魔には勝てないようで倒れこむところをナイスキャッチした小狼君によってお姫様抱っこされ連れて行かれました。

黒鋼とモコナも天姫1がいつまでたっても寝ようとしないとの事でとファイに笑顔で追い出され天姫とファイの密室空間がいっちょ!出来上がりました。

 

ファイside

 

夜はシンシンと雪が降り続けていた。だが肝心の少女の熱は一向に下がる気配はない。

汗をかき苦しげに魘される少女。おでこのタオルはあっという間にぬるくなってしまうからオレは取り替えてはまた取り替えるの繰り返し。そんな天姫ちゃんがうわ言に誰かの名を呼び続けている。泣きながら誰かの名を呼ぶ天姫は高熱に魘されて半分意識はない。それでも必死になって呼ぶ声にオレは自然と応えていた。

自分が天姫の知り合いではないし代わりの答える必要性もない。けれど口が動いたのだ。

 

「ごめ、……んね、狗楽」

「私、が…んばっるか、ら」

「死、ぬ気……でがんば…る、だか、ら…」

「…だ、から」

 

この言葉は彼女の本心からの叫び声。

 

『しなないで』

 

閉じられた瞼から流れる一筋の涙。気丈に振る舞ってみせる少女は本当は強く見せようと踏ん張っていたように見える。本当の彼女は……。

 

「だいじょうーぶだよ、天姫ちゃん」

「オレはまだ死ねないから。だから」

 

死ねない理由がある限りオレは死なない。代わりにはなれないかもしれないけど、それでも。それでも、君の役に立てたらいいなって思えた。珍しく他人に干渉しないオレがこんなことするなんて信じられなかったけど、それもいいやと思えるオレがいる。君の影響力はスゴイや。時間がある限り許す限り、君のお願いかなえたいな。

 

「それまで一緒にいるよ」

「オヤスミ、御姫様」

 

男の前で泣くものじゃないよと髪をかき分けて耳元で囁いてあげた。

反応は当然なし。だから手を繋いでみた。朝、驚く顔がみたいなって悪戯心が芽生えた。

それも、君だからかな。ゆるゆるとほどよい睡魔が襲ってきて微かに残った意識の最後に天姫ちゃんの涙は止まっていた事に安堵して安心して寝ることにした。

(笑った顔がみたいから)

 

天姫side

 

目が覚めてすっかり熱が下がった私が自分の状況を把握するのに起き上がろうとすると私の脇で眠りこけているファイを見て顔を一気に歪めた。

 

「げ」

「……………」(すぴー)

「………うそ?…マジで……」

 

けどあるところで視線が止まってしまう。自分の手が、彼の手を握りしめていることに理解するまで5秒は経過した。

なんでなんでなんでなんでなんでなんで!?

ぐるぐる洗濯機のように思考を巡らせどもなぜ自分がこの状況に陥っているのか皆目見当もつかないのだ。その隙にぎゅぅぅと握っていた手に力が込められた。私の瞳と悪戯が成功したような子供のような笑みを浮かべるファイの瞳が合った。

 

「あ」

「おはよ」

 

起きた、いや寝たふりしてた絶対寝たふりしてたコイツ。だって笑ってる。いつもの倍に『にへら』ってしてるよ。そんなこともわかってしまうほど私とコイツの時間が長くなっているのが証拠をして現れているのが嫌だと思ってしまった。

 

「昨日の天姫ちゃんスッゴク激しくて大胆だったよ~。離してくれなくてオレ困っちゃった♪」

「『激しい』!?『大胆』!?あうあうあうあうあうあうあうあう!?」

 

嘘だ嘘だ嘘だいやいやいやでも今自分は奴の手を握っている事実は変わらない。

それでは奴の言っていることは本当だと言うのか!?

確かに昨夜の自分の記憶はまったくなく高熱で魘されていた事しか覚えていない。

他の記憶は一切ないのだ、なんてことをしてしまったのだ昨夜の自分よ!?

パニくるしかなかろうこの状況。それを奴は私が予想しない行動に出た。私が握っている手とは反対側の手を私のおでこにあててきたのだ。

 

「熱、下がったね。良かった。サクラちゃん心配してたよ。勿論他の皆もね」

 

おでこを触る優しい手つき、温かみある眼差し。

跳ね除けろ私、同情なんだよ。こんなの拒んでしまえと叫ぶ私がいる。けど、でも、

 

「……っ……」

 

いつものふにゃんとした様子は一切なくて、吐息があたるほどお互いの距離が近くて、触れる体温がなぜだか心地よいと思ってしまう自分がいて時が止まったような気がした。

 

「……………ハッ!?、さ、触るなっ!」

ばしっ

「痛いよ~」

 

慌てて奴の手を叩き落とす。なぜだか顔を見られたくなくてシーツを急いでかぶり隠れた。

 

「オレも心配したんだから」

「それはご迷惑をおかけしました!もうかけないので結構です!」

「それじゃ、オレサクラちゃん達呼んでくるね。天姫ちゃんが起きたって」

 

布越しにパタンと閉まる音が聞こえる寸前、

 

「オレはしなないから」

 

と去り際の言葉だけを残して奴は完全に扉を閉めた。

なんのことだかさっぱりな私は数秒後、ぱたぱたと軽快に廊下を走る足音と複数の音が近づくのを瞼を閉じてある事を考えていた。夢現の中で私は『しなないで』と呟いたような気がするのだが、たぶん私の勘違い、だろう、と思い込んで強制的に終わらせた。

 

(聞こえてますか、『約束の音』)

 

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