。ケ咲イ狂テウ狂リルク   作:サボテンダーイオウ

16 / 39
16『貴方のお名前なんですか?』

以前よりもファイと天姫、そして他の仲間たちとも距離も縮んだことで雰囲気も少しだけ和やかなものに変化。ドッキリハプニングで形を整え、甘酸っぱいときめきと少しだけスパイス程度に小さな謎を混ぜ込んで焼きあがったお菓子はどんな味なんでしょうか?残念ながらその味を確かめられるのは物語の人物だけなんです。

残念、非常に残念ながら早々に御話を始めていきましょう。だって時は待っちゃくれませんからね。無事サクラの羽根を入手することができた一向は名残惜しくもジェイド国ともおさらばし次なる異世界へと胸高鳴らせて飛び立ちました。降り立った世界で初めて見たもの、それは、

 

「「「いらっしゃいませ~!桜都国へ~!」」」

 

見事に声をハモらせて綺麗なメイド姿のおねー様方が揃って笑顔でお出迎え。びっくりどっきりなサクラと小狼にそれぞれが「可愛い~!」とか「カッコイイ~!」とか抱き着いて「うわぁ~、可愛い女の子たちだね~」とファイがおねー様の一人に抱き着かれてへにゃっと笑いかけたり、黒鋼は煩わしい気に「フン」と無視したりモコナは「きゃー」ともにょもにょぐにょぐにょされたり。天姫には残念ながらおねー様の手厚い歓迎はなかった模様。むしろ、ファイのモテっぷりを目の当たりにして「けっ!」とそっぽ向いて腕組んではご機嫌ななめに。はたからみれば焼きもちでも焼いているかのようです。実際、ファイにはそう見えましたが天姫は断固として認めないことでしょう。というか天姫にはその時の自分の行動が理解できていないのです。無意識での行動でしょうか。だからこそファイはズバリ指摘することはせずに自分にくっ付くおねー様を丁重に離して、

 

「ここは桜都国って言うんだ。ねー、天姫ちゃん。ワクワクするね」

 

と天姫を構ってあげることにしたのです。

 

すると若干ぽつーんと放置状態何秒間にあった天姫がピクン!と反応。この時ファイの目には見えた。見えたのです。飼い主から構ってもらえずに拗ねていた猫の耳がピン!と立つのを。置いてけぼり状態から構ってもらえる状態になった事を素直に喜ぶ猫ちゃんの耳を。天姫の頭部に見えたのです。ちょこんとね。対して天姫は

 

「べ、別に!私は大人よ?ワクワクなんて子供のすることだわ」

 

と分かりやすいほどツンデレ発動。反対にファイはへらへらと笑いかけたことで天姫はさらに「む!?」と眉に皺を寄せて睨み返す。だが天姫の言葉を真正面から信じているサクラは少し悲しそうに問いかけた。

 

「そう、なんですか?」

 

サクラどきゅんモード(無意識)

サクラのしょぼんと肩を落とす仕草に天姫は慌てふためいて身振り手振りで訂正をした。

 

「!?ああ、違う違う!私の事を言ったまでであって決してサクラちゃんや小狼君が楽しんじゃ駄目なんてことはないのよ。というかいいのよ?いいの。思う存分楽しんで?はっちゃけてもいいくらいなんだから!」

「天姫さんも、一緒じゃ駄目ですか?」

 

サクラ追撃モード(無意識)

こてんと首を傾げながら上目づかいに見上げれば天姫は一瞬くらりと揺らめいてノックアウト。それはもう光の速さでがしっとサクラの両手を握りしめてきょとんとするサクラと視線を合わせては満面の笑みでこう言った。

 

「一緒に楽しもうね!」

「はい!」

 

コロリと態度を変える天姫。これ見よがしにハートを飛ばしては喜んで微笑むサクラをたっぷり堪能。

 

これほどサクラに対して優しさというか甘さというかとにかく天姫を扱うにはサクラを!なんて一同にはいい勉強になったかもしれない。おねー様から「変わった衣装なのでもしかして異世界から来た方なのですか?」とツッコまれて一同代表して小狼君がびっくらこくとあれよあれよと言う間に住民登録なるものをする為に市役所へいらっしゃーい。市役所へ着くとサクラがうとうとをし始めたので登録などは全てファイと小狼に任せサクラにつきっきりになる天姫。だがのちに死ぬほど後悔する。あの時、ちゃんと自分の手で確認していれば!いや、アイツに任せておかなければ……!

 

「あ!ファイさん!?」

「えへへへ~、良く書けてるでしょ?」

「……え、ええまぁ……。でもこれって…天姫さん怒りませんか?」

 

ピラリと一枚の紙を見せて得意げににへら笑みを見せるファイに小狼が冷や汗を浮かべていたのを一目見ていさえいればよからぬことをしでかしていることなど一目瞭然。だが天姫は見逃していた。見逃してしまっていた。

うとうとこっくりこっくりかっくんかっくん状態なサクラから目を離してなるものかと過保護モード突入している真っ最中の出来事。ミスを犯してしまうのも頷ける理由である。

だが誰が予想できるだろうか!まさか、まさかファイが偽名と称して紙に書いたイラストで名前登録してしまうなど。それも天姫に対しては嫌味かというほどのあの動物。

 

「黒黒わんわーん、袋持ってきてくれるー?」

「誰が犬だよっ!」

 

怒鳴りながらもちゃんと大きい袋を持って行く律儀な黒鋼。この国の通貨がないため今までの異世界を巡った際着てきた洋服などを換金することに。結果、かなりの額を換金することができて無事に良い物件も借りられることに。万々歳である。

 

「サクラちゃん、もうちょっと頑張ってね」

「ふぁ~い」

 

意識を保つだけで精一杯なサクラの髪をなでなでして励ます天姫にモコナが口元をとがらせてぴょーんと天姫の頭の上に跳び乗った。

 

「モコナも眠たい~。天姫なでなでして?」

「アンタは眠気覚ましに口元引っ張ってあげるわよ」

「いや~ん」

 

天姫の容赦ない一言にモコナは気の抜ける悲鳴を上げた。

 

[さてさて今夜は無事に眠れるかな?]

 

ファイside

 

この前の世界でのことは一旦忘れることにしよう。リセットリセット。

そう決めたのは今の微妙な距離感を壊したくないから。天姫ちゃんは最近ツンデレモードに突入していて面白いしサクラちゃんの過保護っぷりも微笑ましいものでいつ見ていても飽きないから。

きっとオレが天姫ちゃんにあの出来事を尋ねてしまったら、終わる気がするんだ。何が終わるってのは簡単に想像がつく。つまり今の天姫ちゃんのバランスが崩れてしまう。何かに依存することでかろうじて生きているような、弱い彼女の根底を崩してしまうリスク。

それにあんまり他人にこれ以上深入りしたくないのがオレの本音なだけかもしれない。余計な苦労を背負い込むなんて今のオレには荷が重すぎるし、何事も軽く軽く生きていく。それがオレのモットー。やっと借りれるお家に着いた時にはお外は真っ暗闇に。

 

「ふわ~」

「さぁ!いつでもオッケーよ」

 

ふかふかの白いソファに座ってこっくんゆらゆらして今にもお眠モード突入寸前のサクラちゃんと甲斐甲斐しく寄り添っては自分の太ももにサクラちゃんを受け止め寝かせる準備万端な天姫ちゃん。モコナが天姫ちゃんの太ももにスチャ!っと横になると「てぃ!」と横に投げてはまたモコナが「とぅ!」と戻って来て同じことの繰り返しをしていたり。

その内短気な天姫ちゃんの方からモコナを構いだしたし。

 

「この白まんじゅうめぇぇええええ!しつこいっつーの!」

「天姫が怪獣に進化したー」

「誰が怪獣じゃい!?」

「天姫」

「絞める絶対絞めてやる!」

 

ドタドタバタバタと走り出してはご近所迷惑になっているかも。肝心のサクラちゃんが目を覚ましちゃうかもしれないっていう点に気がつかないのも天姫ちゃんらしい。うん、やっぱり色々な意味で和むね~。

 

緊張感の欠片もないし。でも静かな夜に初!訪問者さんは突然窓から盛大にぶち壊してやってきた。異形のモノって言うのかな。

それが今にもオレたちに襲い掛かろうとしたとき、小狼君が華麗な蹴りで見事訪問者さんは消えたから万々歳。さっそくオレと小狼くんは昨日の出来事の詳細を確かめる為に市役所へ。するとなんとアレは鬼児【おに】というらしい。しかも小狼君が倒したことで報奨金ももらえり、職業として鬼児狩りなんてものもあるらしい。オレはもうちょっとのんびりしたい仕事の方がいいからそれは黒わんと小狼くんにお任せしたけど。でも、うん。オレとしてはちょっと面白いシステムだなっと思った。こう、すんなりトントン拍子にって感じで進んでるってカンジ?

でも楽しそうだし別にいいかな。お家に帰れば互いに離れた位置でご機嫌斜めな黒鋼とイライラしてる天姫ちゃんがいた。どうやら些細な口げんかしたらしい。ホントこの二人は仲が良いのか悪いのか。そんなギスギスした雰囲気の中サクラちゃんだけはすやすやと眠っていて、さすがサクラちゃんだと思った。

色々と報告を済ませてオレたちの職業は決まった。黒鋼のご機嫌はあっという間に浮上して「鬼児狩りか、いいな」とノリノリモードになったし、天姫ちゃんも「やっとまともな生活スタイルになった!」と働く気満々で雰囲気も良くなった。

さて、サクラちゃんが寝てる間にオレたちは喫茶店を開くのに必要な物を揃えけど、実はサクラちゃんが起きてからが一悶着あった。それはオレが天姫ちゃんに手渡した喫茶店用の服を渡した時。それまで天姫ちゃんはサクラちゃんとにこやかに会話してたはずなのに服を広げてみた途端表情を一変させた。しまいには、大声で怒鳴るようにこう言った。

 

「………断固拒否する!」

 

どうやらお気に召さないらしい。結構可愛いって勧められたしオレもイイかもって選んだんだけど、お気に召さないらしい。

 

「え~?なんで?せっかくオレがわざわざ選んで買ってきたのに」

「私はサクラちゃんと同じ格好のだったら喜んで女給さんしてるわよ、ええ!お揃い萌え!最高じゃない!」

 

あ、本音がサラッと出た。萌えって。天姫ちゃんでも【萌え】って単語は使うんだと一つ学んだ。あ、それは置いといて。

 

オレはあえて突っ込まずに

 

「えぇ?お揃いじゃん」

 

と指摘すると天姫ちゃんは目尻を吊り上げて尚更怖い顔になってオレに迫る。

 

「違う、これは絶対違う気がするというか絶対確実に違う!なぜなら」

 

天姫ちゃんが手に取ってさぁ見るがいい!とオレに突き出した服、それはバッチしミニスカフリフリなレースが贅沢に施されたメイド服。可愛いよね、これ。でも天姫ちゃん曰く、これじゃあこのカフェの主旨に合わないどころか違う店になってしまうこと必然、だそうだ。

 

「これじゃまるでメイド喫茶じゃねぇかよ」

「天姫ちゃんの太もも見たさにお客さんバッチシ来るかも」

 

こう、絶対領域っていうのがいいらしい。見えそうで見えないとこ。相手の想像を掻きてるのがいいのかも。恥ずかしがる天姫ちゃんってのもおいしいし。あれ?オレの思考でも読み取ったのか、見る見るうちに天姫ちゃんの顔が鬼の形相になっちゃった。

 

「そんなカフェ流行ってたまるか!」

「オレが見たいし」

「アンタの希望第一かい!?」

 

さすが天姫ちゃん。びしっ!と効果音発しながら手でツッコミもキレがいいと思った。うーん。でもこのしぶりようは相当気に入らないらしい。困ったな、オレの本音は天姫ちゃんのメイド姿を存分に堪能したいって所なんだけど……。

うん、でもオレには奥の手がある。それは、これ。

 

「あの、天姫さん?…お仕事、嫌ですか?」

「そんなことないわ!サクラちゃんと一緒にお仕事するなんて夢のようで信じられなくて混乱してただけだから!サクラちゃんと一緒ならどんな格好でも完璧なまでに仕上げてみせるわ!」

「ホントですか?嬉しい」

「ああ!サクラちゃんの微笑みが輝きを増していく……。ヨッシャァァアアーーー!やったるぜ!」

 

雄叫びを上げて天姫ちゃんはさっそくメイド服片手に奥へと引っ込んだ。オレはサクラちゃんに親指を立てて「さすがサクラちゃん」と称賛を送った。サクラちゃんはこてんと首を傾げては頭上にはてなマークを出すばかり。その一部始終を静かに見守っていた小狼君は、

 

「あの、いいんでしょうか?」

 

困惑気味に黒鋼を見上げて尋ねるけど黒鋼は

 

「ほっとけ」

 

と一言で放置を宣言。小狼君は「はぁ」と曖昧に頷きつつそれで終わり。

うんうん!これにて一件落着~。

 

 

その後……また天姫とファイの言い争い(一歩的)が始まった。サクラと小狼はおろおろとし、黒鋼はひたすら無視を決め込んでいた。

 

「ちょっとどういうことよ」

「えー?どういうことってどういうこと?」

「だからこれはどういうことだって聞いてんのよ」

「んー、だからこれって一体どういうこと?」

 

会話がエンドレス状態になっている。これではいかんと天姫は確固たる証拠を突き出した。

 

「だからこれよこれ!なんで私がこれなのかって聞いてんのよ!」

「可愛いでしょ。オレの力作」

「どこがじゃ!!」

 

天姫が青筋浮かべながらファイに見せた一枚の紙。そこには可愛らしいリボンをしたこぶたが描かれている。勿論ファイ作。結構上手く書けている。

彼曰く、これはこの世界での名前だという。しかもこれは天姫の分。他の二人、黒鋼と小狼はそれはそれは可愛らしい黒のおっきいワンコとちっこいわんこ。そしてファイとサクラはおっきいニャンコとちっこいにゃんこ。なんとピッタリなネーミングではないか!

個々の特徴を的確に表現した素晴らしいものである。それは十二分に理解できる。

だが!それとこれとは別物。この絵に描かれているこぶた。つまり、天姫のこの世界での名前ということになる。それが何とも本人には許し難いことなのだ。

 

「なんで私が豚なんだよ!?」

「天姫ブタブタだ」

 

ここでモコナが会話に参入。もとい、天姫の油に余計火を注いだ。

 

「ブタブタいうんじゃねぇよ!この白もどきが」

「天姫が苛めるよ~」

 

みょーんとモコナの口を伸ばして伸ばしてはお仕置きを発動する天姫。目がマジである。反対にモコナは泣きまくる。

 

「嘘泣きすんじゃねぇよ!」

「えーん!えーん!」

「嘘泣き見え見え!」

「えーん!えーん!」

「……………」

 

本当に痛くて泣いている様だ。天姫は胸にグサッときたらしい。お仕置きをする手を止めた。するとその隙をついてモコナは見事脱出!

 

「わーい!引っかかった引っかかった。モコナの演技最高!」

「な、なんですって!アンタ演技だったのか!?」

「うん」

「クッ!なんてこと……この白まんじゅうの演技すら見抜けなかったとは……一生の汚点だわ…!」

 

天姫は敗北感からかその場に膝をついて悔しそうに唇を噛んだ。モコナは天姫の頭の上で華麗にくるりと一回転して喜びをあらわにした。さて、少し脱線してしまったのファイの一言で本題に戻ることに。

 

「可愛いじゃない。オレ好きだよ、こぶたちゃん」

 

ニッコリ微笑みオプションと好きだよの一言でも天姫には最後の一言こそが気に入らない。いや、好きとかそういう問題でもない!

 

「アンタの好みとかどうでもいいわ!……うぅ私がこぶた。よりにもよってこぶた……」

 

そして自分で言って今度こそ撃沈。両手で顔を覆ってしくしくと泣き出した。だがついに少女が動いた!

 

「あの!わたしは天姫さんらしくてとっても素敵だと思います。こぶたさん」

「そうよね!私ってこぶたに似てるって結構言われたりするのよ。もうこれからはこぶたで生きていけるくらいだわ!」

「滅茶苦茶すぎだろ」

 

黒鋼のツッコミはおいといて。サクラに励まされて天姫のテンションは高く高く舞い上がったのであった。ちゃんちゃん。

 

【1971】

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。