天姫side
眩しい光に包まれて私は移動したのを感じた。蒼龍が手助けをしてくれた。ここまで運んできてくれたのだ。私は内にいる蒼龍に礼を言いつつ徐々に慣れつつある空気を感じる。
複数の気配。「派手な登場ね」と呟かれた気がする。顔を上げると黒衣の魔女がいた。眼鏡の少年がいた。気を失った少女を抱きとめる異国の少年、ひょろっとした軽い印象の青年に目つきの悪すぎる男。何とも風変わりなメンバーである。さて偉そうに立ってるのは、私の契約相手。
「………こうして逢うのは初めてかしらね…。蒼龍姫」
確かに彼女の言う通りだ。あの時はただの形としてしかあっていない。
正確に今回が初対面であっている。わかっているが確認を込めて言った。
「…貴女が次元の魔女、か」
「ええ」
彼女は即答した。
「私の対価は」
今払うのかと続けようとした言葉は遮られた。
「既に払ってもらっているわ」
そうだった、私としたことが忘れてた。だって生きてるあの子をみれたなんだから。
想いは深い、とてもとても。自然に頭は垂れ懇願していた。
「……どうか、あの子を頼む……」
あの子を傍に置いてあげて。私が傍にいれない分を。どうか補って欲しい。
「わかっているわ」
侑子は言ってくれた。ああ、良かったこれで行ける。
そして最後に愛しい妹を見た。元気に肉まんを食べれるくらい妹は食欲にわいているようだ。彼女の足元には転がり落ちたのだろうか、食べ掛けの肉まんがあった。
今はこれだけしか言えない。いや、これ以上必要のない言葉だ。
「………かならず、また逢えるよ。『狗楽』」
顔が歪んでしまうのを無理やりに笑顔に変え作り笑いする。
上手く笑えたかな、あ、だめかもしれない。
「………っ!」
だって、狗楽は何かいいたそうにしてるもの。記憶がないのに、何か言おうとしてる。
ちょっとだけ嘘を言った。だって私は逢えるとは思ってないから。
この先の私は。自信がないんだ。
もう一度逢えるっていう確証がないから。
だから嘘ついた。私の大嫌いな嘘をついた。大切な妹である君に。
「その時まで、さようなら」
『狗楽』
モコナに吸い込まれるまで私は狗楽を見続けた。
瞳にしっかりと焼き付ける為に。
最後に見た妹の姿は私に手を伸ばしているかのように見えた。
◇◇◇
畳の感触で目が覚めて呟いた。天井にあるのは、あの子じゃなくて木目の板ばかり。
なぜか自分の体は冷え切っていて冷たかった。服も濡れていてまとわりついて仕方がない。雨にでも濡れたのかしら。別にどうでもいいやと思う自分がいた。
それにしてもあの光景はまやかしだ。
願望が頭の中で再現されただけに過ぎないみたい。
「…馬鹿、みたいね。そんな事あるわけないのに」
あの子は何も『覚えてはいない』のだ。そう、あの子は今からっぽなはず。
「何が馬鹿なの?」
にへらと笑う男が私の視界いっぱいに現れた。数秒その男と見つめ合う形でいた。
「………」
とりあえず、指でデコピンをしてみた。
「イタ」
額を抑えるにへら男。隙だらけすぎでおかしく思うが今はそれどころではない。
彼が痛みをこらえているその隙に体を起こし、状況確認。
暗い室内に人数と危険がないか即様確認する。無論、いつでも刀は出せるよう準備してある。今は収納してあるだけでいつでも私の意思一つで出現させられるのだ。
人数はこのにへら男に、大切に守るように眠る少女を抱きかかえて眠っている少年。
それに目つきの悪い大男。視線が合い一瞬だけお互いに殺気をぶつけ合う。
だがそれも一瞬の事。私はどうでもいいと判断して殺気をしまう。
危険ではないと判断したからだ。
にへら男はやぱりへらへらしながら声をかけてきた。
小さい声で、たぶん眠る少年少女らを配慮してのことだろう。
「濡れてるからタオルで拭いてあげようとしてたのにー」
「それは申し訳ない、だが自分の事は自分で出来ますので」
だからタオル寄こせと手でジェスチャーした。
にへら男は「え~?」と不満そうな顔をしたがほいっとタオルを投げてよこした。
少ししめりっけがあるタオルで髪をわしゃわしゃと拭き彼等に一瞥しながら
不揃いなメンバー、しかもそれぞれが何かしら抱え込んでいる
前途多難な『旅』になりそうだな、と一抹の不安を感じられずにはいられなかった。
(モコナのふわふわには多少癒されたかも)