昔昔、あるところに自らの願いの為に異世界を渡ってあるものを創り上げようとした男がいました
そのあるものを造り上げるには幾つかの素材が必要で、おいそれと簡単に手に入る代物ではない。だが男には諦められない理由が存在したのです。
大切な妹との約束の為、未来ある子どもたちの為、自分の為、従兄弟の為。
その他にも理由は多々ありました。
自分の娯楽がまず第一。退屈は嫌だ。楽しければもっといい。笑えたら最高。自分と漫才できたら花丸あげちゃう。
という具合に陰気臭い人生なんて冗談じゃないと男は思いました。最初からかたっ苦しいがんじがらめの長い長い気の遠くなるような時を過ごすなんて正気の沙汰じゃない。
元来、男は人をからかうのが大好きな困った面があるが長子として育った環境もあり、面倒見はよく途中で仕事を放り出すような無責任なまねはしません。しかし、だからと言って関係のない人を巻き込んでまで己の快楽を得ようとは思いませんでした。
巻き込むということはその人物の貴重な時間をもらうということ。短い生の中、どうでも良い一コマ、つまり一時の願望を満たすためだけにどうでも良い関係を築く労力の方が惜しい。
薄くその他大勢との気薄な関係よりも、もっと長い時間共に過ごしお互いの裏の裏まで知り合えるような心許せる数少ない友人を得たほうが何倍も自分のためにもなる。
だから男は異なる世界を巡っても本音でかたりあうことはせずに上辺だけの関係しか作ってきませんでした。
けれどいくら異なる世界を巡っても自分が持つ知識だけでは限界があることを知りました。そこである世界を目指しました。偉大な魔法使いと言われる1人の男を訪ねて。
『賢者の石が欲しい』
『賢者の石?』
『ああ、時間はいくらでもある。手伝ってくれないか。私一人の知識では米粒ほども造れやしない』
男が知っている有名な作り方は諸説色々ありどれもが完璧な制作方法とは言えない。失敗なくして創れるほど簡単でもないと知っているつもりだ。だが賢者の石と言えば金を精製したり不老不死の妙薬としても有名なもの。だからこそ、賢者の石のことを切り出した男に対して偉大な魔法使いはこいつも永遠の命欲しさの低俗な奴か表情に出して嘲笑ったくらいでした。
『不老不死にでもなるつもりか、くだらんな』
さっさと視界から消えろと言わんばかりに男から視線を逸らしました。すると男は何処からか白いハリセンをとりだして魔法使いの頭に思いっきり叩き込みました。
バシーン!
『いだっ!?』
盛大な音と魔法使いは頭を抑えながら『貴様!!』と怒鳴りながら男の方を向きなおしました。男は『まぁまぁ、話は終わっていないのだからとりあえず最後まで聞いてくれ』と悪びれた様子もなくこう続けました。
『その点は問題ないんだ。私はすでに人ではない。あくまで賢者の石は材料の一種として手に入れたいだけなんだよ』
あっさりと秘密を暴露したのは偽りのままでは協力を得られないと考えたからです。信頼を得るためにはまず自身の全てを明かさなければ。
そのうえで相手の反応を見る。これで駄目ならば仕方ないということです。
『貴様は、変な奴だな』
『元から個性的な分類であると自負しているさ』
開き直って胸を張れば相手からはさらに呆れられた視線で見られました。
『まぁ、いいだろう。少なくとも下劣な奴らほど知性は低くないらしい』
『そう言ってくれて助かったよ』
『しかしさっきのは許した覚えはないぞ』
『ははは、友好の印とでも考えてくれ』
『誰が思うかそんなこと!』
魔法使いのツッコミに男は親指を立てて『ナイスツッコミだ』と褒めました。
魔法使いは内心コイツといると調子が狂うと戸惑いながらも、表情をキリッと改めると男にこう尋ねました。
『しかし生半可なものではないぞ。貴様にその覚悟があるか?』
『ああ。全て受け止める覚悟はもうできている。それに時間の経過などそれほど大した問題でもない。有り余るほど私には時間が存在するからな。むしろ退屈しなくてちょうどいい』
男はそう言うと魔法使いに手を差し出して自己紹介を始めました。
『私は神崎雪彦だ。よろしく』
『………馴れ合いはせん』
『お堅い奴だ』
『ふん』
『じゃあ、サラって呼ばせてもらう』
『勝手に決めるな!』
『まぁまぁ、細かいことばかり気にしてると頭にウサギの耳が生えてバニーガールしなくちゃいけないぞ』
『そんなわけあるか!?大体私は男だ』
『あははは、また突っ込んだ。面白!』
『くぅぅううう!』
男と偉大な魔法使いはこうやって親睦を深めていきました。
制作目標は【賢者の石】なり。
【計算ボケと反射ツッコミ】