。ケ咲イ狂テウ狂リルク   作:サボテンダーイオウ

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05『雨は涙の隠れ場所』

プリメーラを犠牲にして逃亡した結果、彼女は涙目になって暴走。

ドでかい文字がモコナと小狼の友達に襲い掛かるもその危機を救ったのが浅黄笙悟。正義のヒーロー登場だ。それからまた色々ハプニング発生しまくり。

浅黄笙悟は小狼君に闘いを申し込んだり小狼君の友達の巧断にさくらちゃんの羽根が存在することがわかったりその巧断が主人を守ろうとして暴走した結果巨大化して阪神城をぶっ壊す勢いで動いたり?でも小狼君の踏ん張りでそこはクリア。

強き心の持ち主であればなおのこと巧断はその力を強く発揮する。

一件落着と言うにはお城が燃えてるいるので私は彼にお願いしてみた。

自分の胸に手をあてて意識を集中させる。

 

(蒼龍、あの火、消せる?)

 

『たやすき事よ、其方が望むのであれば』

 

(じゃあ、お願い)

 

『姫御の望むままに』

 

大量の雨雲が突如頭上に出現し、ザァザァと大量の雨粒を振り落す。

お城の火はあっという間に鎮火していった。

でも私の服は濡れ鼠。

 

「……あーあ、ずぶ濡れ……」

 

呟いた言葉は、雨音にかき消されて誰にも聞こえない。

 

「まだまだ、遠い…なぁ」

 

あの子の顔が見たい、あの子の笑顔が見たい

踏み出した一歩が泥にハマって動かせなくてゆっくり、ゆっくりもがいてみせるけど結局はドンドン沈んでいって足元さえおぼつかないほどゆれてしまう。

もがいたってもがいたって私にはどうすることもできないんだって言われてるみたい。

 

(イツデモ君に会いたい症候群)

 

◇◇◇

 

小狼くんがずっと待ち焦がれていた少女は

 

「あなたはだぁれ?」

 

どこか眠たそうに小狼君に尋ねた。

さくらちゃんは小狼君を覚えていなかった。

小狼君は、言葉を飲み込んで無理やり笑顔を作ってこう言った。

 

「俺は小狼、貴方は桜姫です」

 

と。その姿は、まるで私と神崎のように見えて思わず視線を逸らしていた。

見ていたくなかった。けれど自己紹介していく面子の横で最後に私の番になった時、私とすれ違いでそっと外に出ていく小狼君の顔を一瞬だけ見てしまったら

意地貼ってても仕方ないと思った。まだぼんやり状態のさくらちゃんの横に膝をついて失礼ながら手を伸ばした。彼女の手は温かくて、でもどこか欠けていた。

 

「申し遅れました、桜姫。私の名は神崎天姫と申します」

 

「………神崎、さん…」

 

「天姫、とお呼びください。今は記憶も少なく不安定かと思われますがどうかご安心くださいませ。貴方が小狼君を知らなくとも思い出せなくとも、貴方はちゃんと覚えていらっしゃいますよ」

 

『絆』までは奪えない。今までの二人の『絆』は対価でさえ奪えない。その証拠に彼女はちゃんと感じていた。

 

「…………さっきまで温かったんです…。手が温かくて……」

 

「嬉しいと感じていらっしゃいますよ、その御顔は」

 

「……そう、なんでしょうか…?」

 

「ええ、ちゃんと」

 

にっこり微笑んで私は確信込めて返答した。私とは違う。確かに小狼君を覚えていないというサクラちゃん。けど、こうして彼女は断片的に思いだそうとしている。この先もそれがちゃんと形としてわかるはずだ。私と神崎とは違うのだ。彼等はまだ未来がある。

仮に記憶が無くなったとしても、生きている限り話もできる。触れあうこともできる。笑いあって喧嘩して慰め合って生きていける。

だから、最初の一歩を踏み出したと思えばいいんだよ。

雨の中一人佇む、少年に言葉として出すことはしないけれどそう、心の中で告げるだけにとどめた。

 

(雨で誤魔化す少年に光あれ)

 

◇◇◇

 

へらへら男とキレ気味少女。

 

「神崎天姫ちゃんっていうんだね」

 

「ファイ・D・フローライト。気安くちゃん付けするな」

 

「モコナが君はちゃん付けしたほうが喜ぶって言ってたんだけどな~」

 

「あの白まんじゅうめ……」

 

「はい♪」(手を差し出しつつ笑みを浮かべる)

 

「なんだこの手は」(眉をしかめて距離を取る)

 

「握手しよ」

 

「断る」

 

「しようよ」

 

「断る」

 

「じゃあ強制的に捕まえた」(目にも止まらぬ速さで天姫の腕を掴む)

 

「っ!?この離せっ」(振りほどこうとするがかなわず)

 

ぎゅぅぅぅぅうう。

 

「宜しくね」

「宜しくなんかしないからな」

 

ある意味、似てるような二人。

 

◇◇◇

 

『うわぁー!すごいよ!おねーちゃん』

 

大きなガラス越しに色とりどりの魚が大中小とのびのびと泳いでいるのをみて彼女は目をキラキラさせて喜んでいた。

ああ、あの頃の記憶だ。二人で行った水族館。周りは親子とかカップルとかで賑わってた。

姉妹二人。他の人間から見れば仲の良い姉妹。

本当は狗楽はおとーさんとおかーさんが一緒なのが良いって知ってた。

けど、私たちにはいないから。やせ我慢して、私で我慢してくれて。

人一番はしゃいで楽しんでいたけど、私には見ていて辛いものだった。

 

『ねぇー、聞いてる?』

 

聞いてるよ、狗楽。おねーちゃん、頑張るから。頑張ってるからさ。

 

『おねーちゃん?』

 

後悔なんてしてないよ。むしろ嬉しいくらい。

狗楽がいない人生なんて生きててもつまらないんだもん。

私だけ生きていたってしょうがないんだもん。君がいて私がいれる。

台詞だけ聞いたらすっごい恥ずかしいものだし、他人が聞けば度がいきすぎで気持ちがられるかもしれない。

けど、別にいいんだ。他人が私を決めて動かすんじゃない。私が道を決めたんだ。

後悔はない。これが私の生きる『理由』だもの。

その理由は決して誰にも奪わせはしないから。

 

『アハハ、おねーちゃんってば変な顔!』

 

うん、そうだね。私、変な顔だよね。

泣きそうになってるのを無理やり我慢して笑顔になりきれてない顔だね。

想い出の妹はおかしそうに笑う。それでいい。泣き顔は君に似合わない。ずっと笑ってて欲しい。くるくると喜怒哀楽が激しく、姉妹で漫才でもやってるのか?って周りに思われるくらいボケとツッコミばっかりな会話だけど楽しかった。

それが私と狗楽のコミュニュケーション。

 

『また来ようね?一緒に、さ』

 

水族館からの帰り道、妹は若干照れながらも言ってくれた。

ゴメンね、狗楽。おねーちゃん、約束破っちゃうよ。一緒に行けないんだ。

もう、狗楽の手を繋いで歩けないんだ。ゴメンね、ゴメン。私がいない分

 

(君は一人で歩いて行って欲しいから)

 

◇◇◇

天姫side

 

なんて忙(せわ)しない旅だろうか。もしかして今後もこんな風に移動はバタバタするのだろうか?ガヤガヤと大勢の人が行き交う音と、存在の数。

と認識する間に、私の躰は一時的に浮遊し、瞬く間に落ちた。

 

ドサッ!

「どぇっ!?」

 

変な声が出てしまうのは仕方ない。不意打ちと言う奴だ。

 

「………はて、ここは何処……?」

 

パチクリと瞬いた世界は、まったく見知らぬ場所。

ということもなく、我が故郷によく似た世界観だった。中国風と言った所か。

痛む体を起こしてみると屋台の上に落ちてしまったらしい。

じゃがいもがゴロゴロ転がっている。

 

「天姫ちゃんだいじょーぶ?」

「ちゃん付けするな」

 

このヘラヘラ男懲りない。奴が私に向って差し出した手は無視した。

周りを見れば他の連中も一緒のような状況だ。

サクラちゃんは……良かった、大丈夫のようだ。

 

「なんだこいつら!?どこから出てきやがった!?」

 

男の怒鳴り声がするが無視である。私だって何処から出てきたかなんて知らないのだ。

答えてやる義理もなし。私はサクラちゃんに近づこうと体を起こしかけた。

その時、あろうことか変顔男がサクラちゃんの細い腕を乱暴に掴みあげたではないか!

思わず腰の刀を抜きかけたが、タイミングよく彼が飛んだ。

 

ガッ!

 

「ぐぇっ!」

 

「お」「あ」「アラ♪」「さすが」

 

小狼君の見事が飛び蹴りが変顔男の顔にクリーンヒット!

私たち一同してやったりと口をそろえ感心の眼差しで小狼君を見やる。

だが、取り巻きというか吹っ飛んで行った奴の部下連中がわらわらと私たちの周りを囲み

「誰を蹴ったと思っている!」とか怒鳴ってきた。

ウザい、ウザすぎる。どうしてこう騒ぐのだ、人間と言う奴は。

私は立ち上がり襲い掛かってきそうな雰囲気の奴らにむけて低い声を出した。

 

「知るか、蛆虫共」

 

「なっ!?貴様っ」

 

怒りに顔を染める一部。が、怒り狂おうが何しようが構いやしない。

逆にこの苛立ちを沈めさせてくれるならお相手して欲しいと思う。

 

「命惜しくば即刻消えろ、そこの豚共々な」

 

穏便に穏便に済まそうとしているんだ。素直に引いてくれよ。

じゃないと、どうにかしたくなるってものだ。どうにかって?

ニヤリ、と笑ってやった。場違いな笑みを。

 

「でなければ、その首。斬りおとしてくれるわ」

 

「ひっ」と恐怖に顔を歪ませ男たちは我一目散にとへっぴり腰で逃げて行った。

ヘラヘラ男、ファイがたしなめるように私に一声かけた。

 

「天姫ちゃ~ん。脅しはいけないよ~?」

 

「脅しじゃないし正当防衛だ、だからちゃん付けするなっての!……あら?サクラちゃんと小狼君がいない?」

 

なんてこった。

もしかして何かあったのだろうか?

と焦る気持ちが生まれた。

だがファイの言葉によってそれはすぐに引っ込んだ。

 

「さっきちっこい女の子がサクラちゃんの腕引っ張って走って行ったよ。モコナ乗っけた小狼君も追いかけて行ったし。黒ぴーも先に行くって。オレは天姫ちゃんに声かけ担当♪」

 

「……………」

 

取り残された。

この男、余計なおせっかいをしやがってと腹立たしいと同時に最後まで私のやり取りをみられていたのかと思うと、羞恥心からカアッと頬が熱くなった。

恥ずかしくてとにかく逃げたい一心で駆け足になる。

が、この男私と同じスピードで横についてまた暢気そうに口を開く。

 

「つれないな~。取り残されてたのオレが教えてあげたのに~」

 

「うっさい!」

 

サクラちゃんを連れて行ったという女の子の家付近に着くまでこの攻防は続いた。

 

(高麗国【コリヨコク】にいらっしゃ~い!)

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