転生したら分霊箱だった件   作:@ゆずぽん@

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おいおい、何処のどいつだよ?前回で次はホグワーツに行くとかほざいてた奴は?
ごめんなさい私です。何でもしませんのでどうかお許しをぉぉぉ!

という訳で、今回は前準備として、『ある人物』の粛清回です。汚物は消毒だ~!!
ホグワーツへの本格来城は、もうちょっとお待ちくださいね…!


7/2追記
3日、4日辺りにそろそろPage12投稿予定です
もう少々お待ち下さいね…!
週一しか休みないとか激怒プンプンマルフォイ
地味に登場人物紹介を加筆してます。お暇な方はそちらもどうぞ。


Page 11 「いざ往かんホグワーツ、の前準備!(前編)」

 ―――1991年、9月1日。

 

 

 

 

 その日はハリーの記念すべき、ホグワーツ魔法魔術学校への入学日である。

 

 原作通りならばこの日、ホグワーツに組する4つの寮のいずれかに新入生達が振り分けられる。

 

 

 

 

 勇猛果敢な者が集うグリフィンドール。

 

 真面目で努力家な者が集うハッフルパフ。

 

 優れた叡智を持つ者が集うレイブンクロー。

 

 才能と狡猾さを秘めた者が集うスリザリン。

  

 

 

 こういった感じで、生徒はそれぞれの寮が求める素質や性格の持ち主であれば、そこへ選ばれる。

 といっても当人の希望が全く通らない訳ではなく、他の素質も持つ者であれば、別の寮を望む事も可能だ。

 原作でハリーはスリザリンとグリフィンドール、両方の素質を兼ね備えていた為、組み分け帽子を悩ませた。

 そこでハリーがスリザリンは嫌だと願った為、組み分け帽子は彼の意を汲んでグリフィンドールへ入れてあげた。

 

 身も蓋もない話をすると、もしもグリフィンドール生じゃなかったら『秘密の部屋』で剣を入手出来なくなって詰んでたよな…。

 ダンブルドアはハリーがスリザリンになったら、果たしてどうするおつもりだったんでしょうなぁ。

 とっても気になるところではある。

 

 

 

 

 という感じで、4つの寮について考え込んでいたある日の事である。

 

 

 

 

 まだ残量に余裕のあるヴォルデモートの余剰魔力と、今までのハリーの書き込みから得た魔力を合成して実体化を成し、『ある人物』がやってくるのを街中で待機中の時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【スリザリンだろう】

 

 『いーやハッフルパフだね!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ホグワーツの寮に、自分は一体どこに入れられるのかとファミチキ野郎と口論を繰り広げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 【あの寮は君の性格から最もかけ離れた性質だと思うけど】

 

 『それはアンタの主観だろうがゴルァ!いいか、50年!50年だぞ!50年間のクソみたいな日々を耐え切ったんだ!ハッフルパフの「忍耐力」に当てはまるだろーが!』

 

 【それを帳消しにするほど君はスリザリンに向いてるんだけどなぁ…】

 

 『誰が向いてるだって?あの犯罪者予備軍クラスに?寝言は寝て言え!』

 

 【犯罪者予備軍?違うね、スリザリンは偉大になれる才能を持った者が選ばれる、実に素晴らしい寮だ】

 

 『美化すんなオイコラ。この世界で悪さしてる魔法使い、大体そこ出身だろーがオイコラ』

 

 【君の持ってるその杖、どうやって手に入れたのかもう一度良く考えたらどうだい】

 

 『違いますうー!これは借りてるだけですうー!盗んだ訳じゃないですうー!』

 

 【君みたいな人間が物を返すところを見た事がないな…】

 

 『これは必要な事なんですうー!いいか教えてやるよ。古来より「勇者」と呼ばれる者達はなぁ、他人の家に無断で入り込み、タンスを漁り、壺を割り、アイテムや金品を獲得し、悪を倒す為に役立てたんだよ!僕がやってるのもそれと同じ事なんだよ!だからこれは悪事になりません!これ考慮すると僕ってグリフィンドールにも行けるんじゃね?はい論破!』

 

 【犯罪行為を屁理屈こねて正当化している時点で、スリザリンの素質が相当あるんだけど…】

 

 『うるへー!屁理屈なんてこねこねしてなんぼのもんじゃい!じゃあ訊くけどな、アンタなぁ、生まれて一度も悪さした事ないって胸張って言えるか?お?おおん?』

 

 【そう言える人間の方が少数だろうね。こちらにとってはむしろ、自慢話に変えられるものだよ、そういうのは】

 

 『もしもしポリスメン?ちょっとこいつしょっぴいてくんね?』

 

 【君も一緒に連行されるのがオチじゃないかな】

 

 『僕は牢屋じゃなくてハッフルパフに行きます!』

 

 【…今すぐ君に組み分け帽子を被せてあげたいね、本当に】

 

 『残念でした!この身体じゃ被れません!故にどの寮に入れられるのか迷宮入りだね、永遠に!』

 

 【絶対に、確実に、確定でスリザリン】

 

 『ハッフルパフ!ハッフルパフ!ハッフルパフ!時々グリフィンドール!』

 

 【レイブンクローならまだしも、その二つはとてもじゃないけどあり得ないなぁ…】

 

 『僕の事何だと思ってんの?』

 

 【スリザリンに入る為に生まれてきたような人間?】

 

 『いい度胸だコラ。そのふざけた口今すぐ縫い合わせてやる』

 

 【縫われる口も無いけどね、今は…】

 

 『おめーも屁理屈言ってんじゃねーか!』

 

 【これは事実だろう。それと、別に不快にさせるつもりじゃないんだよ?スリザリンに入れる資格のある、君の才能を褒めているつもりなんだけどな…】

 

 『「あなたは将来の犯罪率が高い寮に向いています」って言われて、良い気分になる人間がこの世の何処に居ると思うんだ?あ?』

 

 【…犯罪紛いの事をやっておいて、よくもまあ言えるよね………】

 

 『「アレ」はノーカンだからな!まだ詳細言わねーけど、「アレ」はノーカンだからなあ!!』

 

 【じゃあ、君の口から語られるその日を楽しみにするとしよう】

 

 『……いつか蹴っ飛ばしてやるからなコイツ』

 

 【一字一句違わず聴こえてるよ?】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、小声のつもりだったが、丸聞こえの決意を新たにしていた時だ。

 

 

 

 

 ターゲットである『ある人物』の接近を感知!

 

 え?何かの魔法で感じ取ったのかって?んな便利なもんありませんがな。

 仮にそんな魔法があったとしても、習得する暇が無かったものでね…。気合だよ、気合で感じろ。

 足音の質感とか、感覚とか、微かな体臭とか、息遣いとか、色んな物に五感を集中させれば、大体誰が近くに居るとか判るもんじゃない?

 

 【いやそれ、多分君だけの特別なちk…】

 

 『うるさい!今大事なところなんだから、引っ込んでろ!』

 

 何故か凄く口を挟みたがったファミチキ野郎を強制退去させ、気配が近付いてくる方向へ意識を向ける。

 

 ターゲットの情報は、既にハリーからの書き込みと、密かに実体化した時に接近して、人知れず収集していたのだよ。

 この情報と、五感に訴えかける知覚情報を照らし合わせれば、ただいま接近中の人物の正体など容易に判明するわ。

 

 ちなみにこの気合能力がどっかのお偉いさんにバレた時、何故か黒づくめの連中に連行され掛けて怖い目に遭ったけど、何とか裏工作回して謎組織は解体させたよ(真顔)

 何をしたかと言うと、専門技術を用いてネットを介し、入手した組織の情報を警察へ連絡しただけなんだがね。

 

 マジヤバかったわ~。

 某探偵漫画じゃないんだから、黒の組織とか実在してんじゃねーよ。そういうの漫画の中だけでいいんだよ馬鹿。

 あの時の家族からの、「そのまま連れて行かれれば良かったのに…」という冷たい視線は、未だに思い出の中から消え失せてはくれない。この件に関しちゃ完全に被害者なのに、皆して酷いよな~?

 哀れみを請う為に、泣き落としも試したけど全然通用しなかった。他人はあっさり引っ掛かってくれるレベルの演技力なのに、一体何をやったら僕の事信じるんだよ、あの人達は…。

 

 保護してくれた刑事さんも、流石に「お、おう…」と同情を抱いてくれて、その日はカツ丼をご馳走になったからチャラにしてやったけどな!

 警察で食べるカツ丼ってマジで美味しいんだぜ。あ、いや、別に収監された訳じゃないから!取調室に連行された訳じゃないから!

 

 何か知らんけど、警察の方々からは、「将来は是非サイバー犯罪対策課に来てくれ!」とか手厚い勧誘を受けたけど、丁重にお断りした。

 だってそんなん、僕のキャラじゃないし。正義と悪の戦いとかは、関係ないところでやってくれって感じ。

 才能の無駄遣いとか言われても知らんもんね!自由に生きる。雲のジュウザが教えてくれた、それが僕のモットーだから!

 

 …何か、今思うとあの日からいよいよ人生狂っていった気がする…。黒の組織マジ許すまじ。

 魔法界でいう黒の組織は、『死喰い人』になるんかね。

 じゃあ、今世ではあいつら牢獄にブチ込みましょうかね~(にっこり)

 

 その為にも、『ある人物』にちょいと『痛い目』に遭ってもらう必要がある…。

 

 その人物とは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『来たな、ダドリー……!』

 

 

 

 

 前方から接近してくる子供を視認!

 

 お、おおう……なんつーか、映画よりも、巨躯というか……。

 ハリーの言ってた通り、よーく見ると豚がカツラ付けたみたいだな、こりゃ。

 

 どうしてこんなになるまで放って置いたんだ!飛べない豚はただの豚だわ。

 

 親がよっぽど甘々の馬鹿で体重管理が出来てないか、単純に遺伝で太りやすい体質なのか…。

 ま、僕はいくら食べても体重に変換されない体質だったから、そういうの心配する必要は皆無だったけどな!

 その代わり全然体重が変動する兆しが無いので、逆に「お前人間か?」って気味悪がられたんだけどもね…。

 人間って、変化も不変も嫌がるんだよね。ホント面倒臭い生き物だわ。

 健康診断で計測する度に、晒し物にされるこっちの身にもなれっつうの…。ていうかいい加減、学校はこういう身体情報計測させるのやめろ!思春期の女子なんかは毎年阿鼻叫喚だったぞ。

 

 ダドリーなんかは……あ、ダメだこいつ。学校で体重が判明しても、絶対今の生活改善しようとか思わねータイプだわ。

 もうね、表情で分かるの。家族が全員一致しないと、痩せられないタイプだわさ。救いようがないデブってやつだな。ピザでも食ってろデブ。

 

 待ち伏せされているとも知らず、我が物顔で歩道を歩いてくるダドリー。これから自分に何が起きるかなんて、考えもしていないだろう。

 「可哀想だけど、明日の朝にはお肉屋さんの店先に並ぶ運命なのね」……って感じの視線を、とりあえず向けておく。

 それただの、養豚場の豚を見る目やん!という突っ込みは無しですぞ。

 

 

 

 

 …んん?何だこのデジャブ。

 

 ……妙に引っ掛かるけど、今は後回し後回しっと。

 

 

 

 

 さて、どうしてあんな豚…いや、ダドリーを待っているのかというとですね…。

 

 

 

 

 ハリーが原作と違って、無事にホグワーツからの手紙を受け取ったあの日。

 

 なして邪魔されなかったん!?って訊いたら、ハリーは、

 

 『自分宛ての手紙が来たら、没収されないよう気を付けろってトムが言ったんでしょ?』

 

 と返事をしてきた。

 

 …あぁ、そういえば最初にそんな事忠告した覚えがありますわぁ。

 いつの間にか頭から抜けてしまったけど、確かに伝えてたわ。

 

 原作通りに行くと、立て続けに送られてくる不思議な手紙に嫌気が差したダーズリー一家は、何か絶海の孤島みたいなとこに緊急避難するんだよな。

 それも全部徒労に終わって、ハグリッドが直接ハリーの所に訪問してきて、やっとホグワーツへの入学案内をハリーが受け取るという展開だ。

 

 でも良く考えたら、この場面要らなくね?時間無駄じゃね?

 

 つーか、日記帳の身としては、なるべくハリーがどっか遠くに連行されるという展開は避けたい訳よ。

 ただでさえダーズリー家の目を忍んで、物置に大人しくしまわれてるというのに。

 そんな事になったら、本来ある筈のないこの日記帳に気付かれるかもしれない。

 

 ハリーの事だから、遠くに連れて行かれるなんて知ったら、絶対僕を持ち出そうとするだろうし…。その際に、「お前何持ってんじゃボケェ!」なんて気付かれたら……詰みじゃん。

 腐っても分霊箱(ホークラックス)。破ろうが引き裂こうが燃やそうが、マグル一家の力では破壊される事は無いけど。 

 それでも、ゴミ袋に詰められて収集車に出荷よー、なんてされたら、もうどうしようもないんだよ。

 今の状態じゃ日記帳に触れねーし、そうなったらマジで発狂するで。永遠にゴミと共に生き埋めコースとか、ふざけんじゃないよ。

 

 だから先手を打って、ハリー自身の警戒レベルを育てて、ダーズリー家に発見される前に、自力で手紙獲得すればいいんじゃね?と思ってのあの言動である。

 なのに何で忘れてんねん。ハリーとの筆談で平和ボケし過ぎや。もうちょっと気を引き締めないと…。

 

 そんで、無事に手紙を開いたハリーですが。

 まあ、ハグリッド無しで手紙だけの説明じゃ、ホグワーツが何なのかさっぱり分からんわな。

 なので、なるべく解り易く簡潔に説明をしてあげた。

 

 ホグワーツはどういう所か。ここら辺は実際の生徒だったヴォルデモートの記憶から持ってきて、内容を上手い事伝えたよ。

 魔法使いの能力がある人間にしか入学案内は来ないと言ったら、めちゃんこ驚いてたけどな。

 ついでに、両親も魔法使いだという事も教えた。何で知ってるの?と訊かれたので、「普通に考えて、魔力は遺伝するからそう思った」と無難な回答にした。それでも、ハリーは自分と自分の両親が魔法使いだという事を、いまいち受け入れ切れない様子だった。

 

 とりあえず、入学に必要な教材リストを揃えねばならんという事で、購入の為にダイアゴン横丁へ行く必要があるのだが…。

 

 ハリー一人では到底、辿り着けないであろう。

 何しろ入口はマグル避けの魔法が掛かっており、魔法使いのハリーならば通り抜けられるとしてもだ。

 子供一人で赴くのは危険だし、いくら懐で僕が指示を出したところで、不安要素が一杯なのは間違いない。

 昨日今日で魔法界を知ったばかりの子供に、そんな冒険へ送り出せと言われて頷ける訳もなく。

 とりあえずは、説明役兼案内人のハグリッドが訪ねてくる、ハリーの11歳の誕生日までは静かに待機しておく事を促した。

 一度手紙を受け取ったので、原作のような手紙ラッシュ攻撃は未然に防いだし。これならば誕生日まで、あの孤島に連行されるというような事態は起きないだろう。

 

 それでも、まあ原作の流れというのは完全に断ち切れる事は出来ず…。

 

 

 

 

 相も変わらず、この一家からのハリーに対する仕打ちは、全く弱まる気配を見せない。

 

 このままでは、原作よりも早く『自分が魔法使いだという事』を知ったハリーが、ダーズリー家に対して良からぬ感情を抱きかねない。

 今までの自分が起こしてきた現象は、魔法によるものだなんて理解したのだ。その力を、報復に使用するなんて事になれば…。

 

 物語が始まる前に終わりかねないよ。こいつぁ何とかしないとダメですわ。

 

 幸いにも、僕との筆談生活でいくらかハリーのストレスも和らいではいるものの、いつ爆発したっておかしくはない。

 ハリーを信じたいけれど、やはり不安の芽は摘んでおくに越したことはないだろう。

 ていうか、ハリーと似た境遇の僕でさえ、自分の才能ってやつを報復に利用した経験があるんだもの…。予想可能な未来は、早めに変えないとなぁ。

 

 という訳で、とりあえずはハリーの従兄であり、かつ虐めっ子の台頭であるダドリー。

 こいつの、ハリーに対する嗜虐心を挫いてやろうという計画を実行に移す時が来たのである。

 その為に、わざわざ貴重な魔力を使って実体化したんだから。絶対に成功に持っていくぞ!

 

 こいつは、一家からの惜しみない愛情をたっぷり受けて育ってきている。

 そんなこいつの心を、ちょいとばかし折ってやれば、その様子を見てバーノンもペチュニアも、ハリーに対する扱いを何かしら良い方向へ変えていってくれるのが一番の望みなんだけど。

 ただでさえこいつは、ハリーをしょっちゅう殴ったりして暴力を振り撒いているのだから。何されたって文句は言えないよなぁ?(悪笑)

 

 原作でダドリーは、『魔法』というやつにひたすらビビっていた。父親や母親よりも、ただただ恐れていて、抵抗力といった物が皆無だった。

 そんなこいつの前で『魔法』を見せつければ、似た現象を起こすハリーへの暴力も、恐怖から収まるのではないかと思った。

 多少は怖い目に遭わせないと、こういうぬるま湯で育った子供には薬にならないからな。

 

 あ、魔法省に感知どうのこうのは、大丈夫だよ!

 原作だと、未成年の魔法使いの周囲で魔法が使われたら、検知されて向こうに情報が行くらしいけども…。

 何か、別に僕が魔法使っても検知されないっぽいんだよね。

 

 ヴォルデモートが卒業した後、ホグワーツ外で魔法を行使した事があるけど、何も無かったの。

 本体の彼はともかく、一応『16歳の時の魂の欠片』である僕が、外で魔法使ってもお咎め一切無しなんだもの。

 きっと、分霊箱(ホークラックス)の魂が使う魔法は、検知の対象外なんじゃないかなあ。

 向こうの検知術式の構成なんざ知らんが、あれはあくまで『生身の魔法使い』を対象としたものだ。『魂』が使う魔法の検知までは、想定されていないだろう。

 という事で、ここでいくら魔法を使おうが、誰にもバレないって訳よ。ふふん。

 

 

 

 

 と、考えている内に奴がはっきり視認出来る距離までやって来ていた。実行するなら、今!

 

 ターゲットは一人。周囲に人影無し。人目が向かないよう、事前工作も良し。行くぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『―――こんにちは、ダドリー?』

 

 「ひぅっ!?」

 

 建物の陰からすっと姿を現すと、案の定ダドリーは間抜けな声を上げて固まった。

 …これが女の子だったら、事案発生になります?それ何て言う男女差別よ。

 

 光の加減による映り方も計算してここを選んだので、今の僕は向こうから見ても、普通の人間に映る筈、だ…。

 別の場所で見れば、幽霊のようにぼんやり透ける身体が露わになってしまうけど。

 

 え?そんなん計算出来るものかって?

 こう、場所による陽光の強弱の差異や、どの時間帯の入射角度が人の視覚を最も狂わすかとか、ちょっと熟考すれば答えが出るもんだよ。

 イギリスってちょうど本初子午線が通ってるし、天体の方位とかの基準となるから、計算は容易だ。何で皆分からないんだろうね?

 

 【…………】

 

 あ、何か言いたげな正体不明の無言の圧力を感じるけど、無視無視!今、お前に構ってる暇は無いんだっつうの。

 

 「…だ、誰だよ?何か用???」

 

 ダドリーが不遜な態度を見せつつも、じりっと後退りながら返事をした。

 思い切り名前を呼んでやったのに、どうして目の前の見知らぬ人物が自分の名前を知っているのか、というところまでは頭が回っていないらしい。強がりを保つ余裕がある。

 

 あぁ、実に礼儀がなっていないですな。年上相手にその視線はなんだよ。まるで不審者を見るような目―――あれっ、なんかデジャブ。いや…傍から見れば不審者に映るよな。

 ハリーの人格形成に支障をきたしかねない人物相手に、気遣いは無用!

 いきなりだけど、本題に入ろうか。

 

 『突然ごめんね、君に言いたい事があるんだ。…ちょっといい?』

 

 「はあ…?ぼ、ぼく、アンタなんて知らないぞ」

 

 『そりゃあ僕だって初対面だよ、君と。用事があるから、わざわざこうして来てるんだ』

 

 「用事???」

 

 『うん。………君さ、ハリーって子を虐めてるんだろ?』

 

 ちょっとばかし尋ねるつもりが、実際に喉から出てきたのは、自分でも驚く程冷たい声だった。

 流石のお馬鹿頭でもそれを直感的に察したのか、警戒心を募らせかけたダドリーの表情が凍り付いた。

 

 「なな、何?どうして、知って……」

 

 『ハリーが僕の知り合いだからだよ。何もおかしな事じゃないでしょう?』

 

 「お、お前なんか知らないぞ!関係ないだろ…!」

 

 『あるよ。知り合いが虐められてると知ったから、今君と話してるんだろ?』

 

 「お前ッ、あいつの何なんだッ?ハリーに友達なんか居なかったのに…」

 

 そこまで喚いて、ダドリーがこちらをまじまじと眺めて目を見開いた。

 

 「まさ、まさか、あいつのお兄ちゃん?!」

 

 『……は?』

 

 「どっか似てると思ったけど、お前、ハリーの兄ちゃんか!?」

 

 何か、妙な勘違いをしているらしい…。ハリーと僕って、そんな外見似通ってただろうか?

 まあ、お互い黒髪なのは同じだけど…。目の色とか、バリバリ違うと思うんだが。

 

 「…いや、でも、あいつの家族はいないハズ……。な、何なんだよ、お前?」

 

 『……さっきも言ったんだけどな。人の話はちゃんと聞きなさいって教わらなかった?僕の事はもういい。ハリーの事だよ、ハリー。君が普段から殴ったりしてる、君の従兄のハリー』

 

 これでもかとハリーの名前を連呼すると、ようやく状況を理解したようだ。ダドリーの全身に緊張が走った。

 

 『ハリーの事を、サンドバッグか何かだと思ってるみたいだね?本人が教えてくれたよ。「痛い」って、「辛い」って。毎日のように言ってた頃があったんだ。…ねぇ、君が殴ってるんだろ?ダドリー?』

 

 二、三歩近付けば、「ヒッ」と小さな悲鳴を上げて、ダドリーがその場で尻餅をついた。点眼後の様に、両目が潤み始めている。

 

 『家の中だけでじゃない。時には学校で、他の悪友達と一緒にハリーを追いかけ回してるそうじゃん。ハリーはね、「どこにも居場所が無い」って、泣いた日もあったんだよ…。ダドリー、これぐらい、君の頭でも理解出来るだろ?』

 

 「な…なんだよ!何が、言いたいんだよお!」

 

 せめてもの抵抗なのか、掠れた声を張り上げた。

 こちらの言わんとしている事を、微塵も理解しようとする素振りが見当たらなくて、少し苛立った。

 

 『じゃあ、はっきり言わせてもらうけど。…君さ、どうしたらハリーの事虐めるのやめる?』

 

 ダドリーの目前まで移動して、その歪んだ表情を軽蔑の意味を込めて見下ろす。

 

 『ちょっと……いやかなり、腹が立つんだよね。他人事だろって言われたら、そうなのかもしれないけど。君達一家に責任は無かったにせよ、預けられた子供にあの仕打ち、流石に酷いと思うんだ』

 

 「あ、あいつが!」

 

 こちらの言葉が終わった時を狙って、ダドリーが自発的に声を上げた。

 ガクガクと震えながら、それでも必死に言葉を紡いだ。

 

 「あいつが、悪いんだ!いきなり、いきなりやってきたんだ!パパとママがそう言ってたんだ!や、ヤクビョウガミだって!おっおかしな連中のナカマだって、ハリーもそうなんだって、言って…たから…ッ!」

 

 『……おかしな連中、ね』

 

 確かにまあ、原作でも描写されていた事だ。

 魔法と縁の無いマグルと、魔法使い。両者の関係は、良好とは言い難い。

 魔法使い事態が存在を隠蔽しながら生きている為、まずそういう連中とは関わり合いにならないのがマグルだ。

 けれど、この一家はダンブルドアの選択により、魔法使いの子供であるハリーとの関わりを持つ羽目になった。

 『魔法』というものに対し、悪印象しか持たないこの一家が、彼をぞんざいに扱ってしまうのは、必然だったのかもしれない。

 

 だとしても……ちょっと、度が過ぎてはいないだろうか?

 

 『…まあ、まだ子供の君に言っても仕方無いんだけどさぁ。弱い者虐めして、何が得られるの?お小遣いが上がる訳でもないだろうに、熱心だよね』

 

 「べっべっ、別にいいだろお!スカっとするし、それにッ、()()()()()()()()いいだろお!!」

 

 その瞬間、すぐ傍の街灯の蛍光灯部分が、派手な音を立てて破損した。

 バリンという音と共に、破片が落下して地面に散乱する。

 

 

 

 

 『……ッ』

 

 ドクン、と少量ながら魔力が流出していくのを感じる。

 

 しまった。やってしまった。

 

 感情の爆発で、魔法を意図せず発動させてしまったようだ。

 それに対するダドリーの反応は、予想を全く裏切らなかった。

 

 

 

 

 「ヒッ、ヒッ、化け物だアアアァァァァァァッ!!!?」

 

 

 

 

 

 『「化け物」?』

 

 最早懐かしさと親しみすら覚えるその蔑称に、自然と目が細くなる。

 慣れ親しんだ呼び名とはいえ、やはり説明し難い不快感は拭い切れなかったようだ。

 

 『…そうだね。確かに常識から考えれば、こんな事が出来る人間は「化け物」かもしれない』 

 

 きっと、彼らはこの状況と似た現象を起こしていたハリーの事も、心中でそう蔑んでいたのだろう。

 かと言って、完全に見限る事は出来なかった。

 

 原作と同じならば、ダンブルドアが直々にダーズリー家に、ハリーの扱いに対して何かしらの『命令』をしているからだ。

 孤児となったハリーを保護し、あの一家に育児を託す事を決断したのも彼なのだ。

 他にもやりようはあったのに、わざわざ『不思議な現象』を毛嫌いするダーズリー家に押し付けるなど、常人ならば恐らく取らない選択を取った。

 そこにはもちろん、彼だからこそそういった選択肢を取った深い事情が存在する。原作知識のある自分にとっては周知の事実だが、まだ何も知らされていないハリーからすれば、残酷な選択だ。

 

 マグル一家の元へ預けられ、魔法の扱いも知らない為に、悪意は無くても『不思議な現象』を引き起こしてしまう子供。

 ダンブルドアの『命令』のせいで、見捨てる事も出来ない煩わしくて、しかしながら無知な子供。

 

 捨てられないならば、せめてもの憂さ晴らしにと、奴隷同様の扱いを続けたダーズリー家。

 時には部屋ですらない物置に閉じ込め、時には暴力を振るい、時には碌に食事も与えない。

 

 ……一体どっちが『化け物』か、明白じゃないだろうか?

 

 

 

 

 『けど、そっちはどうなんだ?僕からすれば、アンタ達一家の方が恐ろしいよ。小さい内からずっと、親を失った子供を寄ってたかって虐めて、殴って、閉じ込めて、こき使う…。アンタらの方がよっぽど、心が異形になった「化け物」だと思うんだけどね。僕、何か間違った事言ってるかな?』

 

 想像出来る限りの、感情を消した冷徹な声で問い掛ければ、ダドリーはヒクっと情けなくしゃくり上げた。目の焦点が合わなくなってきている。

 

 『あぁ……一つだけ、間違いだったかな。アンタらに限った話じゃないや。ダーズリー家の心を「化け物」に括るなら、この世は「化け物」がウジャウジャ跋扈してる事になるもんね。ごめんごめん、ちょっと訂正させてもらうよ』

 

 流石に怖がらせ過ぎたかと思い、今度はなるべく優しさを込めた感情を乗せて語り掛ける。

 ……ここまで来ると、どんなに取り繕おうが、平静を取り戻させる事は不可能な気がするけれど、一応……ハリーの従兄だし。

 出来るならばあまり禍根は残さないように、事を済ませたい。

 

 『ねぇ…君はどうなの?自分の事「化け物」だって自覚はあるの?自分がハリーと同じ事されたら、耐えられるの?嫌だろ?されたくないだろ?だったら、どうしてあんな酷い事続けるのかな?もしかして、進んで「化け物」になりたい訳?君の夢って、それなの?……ねえ、泣いてる暇があったら答えなよ、ダドリー?』

 

 もう怖がらせる気は無いし、単純に質問に答えて欲しかっただけなのに。

 ダドリーはその質問攻めにまで顔を引き攣らせて怯え、ついにはポロポロと、ダムが決壊したかのように泣き出した。

 辺りに少年の痛ましい嗚咽が響くだけで、一向に返事は返って来そうにない。

 こちらはただ問うただけで、暴力的な行動は起こしていない。それなのにこの反応はあんまりじゃないか。

 無言の時間が一秒一秒過ぎるだけで、先程抑えた筈の苛立ちが這い上がってくる。

 

 『はぁ…。もういい。答えたくないんだったら、もういいよ。でも、最後に一つだけ言わせてもらおうか』

 

 これ以上は時間の無駄だ。長い間実体化を続けるのも魔力の浪費に繋がるし、ここらが潮時だろう。

 最後の最後に、言いたい事だけ言って、この邂逅に終わりを告げる。

 

 ローブのポケットから杖を取り出し、自分の喉に向けて小さく唱えた。

 

 『《ソノーラス》』

 

 増幅呪文の《ソノーラス》。効果は対象の音を増幅させるものだ。マイク無しで大声が出せるようになるという、地味に便利な呪文である。

 ダドリーは杖を見て、一瞬声にならない悲鳴を上げたが、それが自分に向けられた物ではないと知って、少しだけ安堵の息を吐いた。

 これから何をされるか分かっていない、緊張を緩めたその隙を突かない訳にはいくまい。

 

 『……もし、今後もハリーへの暴力を続ける気が残っているなら』

 

 そこまでは声量を抑えて、続く言葉はおもっくその大音量で言い放ってやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『しばき倒すぞこのクソガキがゴルアァァァァア!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ギャアアアアアイイィィアアアアアァァァァッッ!!!?」

 

 

 

 

 闇の帝王らしく、前世での『娯楽の一部』でお世話になった、とある『王』の偉大なるお言葉をお借りしました。

 機械の駆動音にも近しい、ある意味芸術的な絶叫を上げながら、ダドリーは起き上がってバタバタと後方へ全力疾走していった。

 たぷたぷに肥えた情けない肢体をこれでもかと動かし、それでも走るのに慣れていないのか何度か転び、少量の鮮血を撒き散らしながら路地裏へ消え去った。

 

 

 

 

 『………《クワイエタス》』

 

 ダドリーの逃走を見送った後、反対呪文を唱えて声量を元に戻す。

 

 周囲の民家には予め《マフリアート》を掛けている。効果は、近くに居る者に正体不明の雑音を聞かせて、他の会話を聞く事が出来ないようにする呪文だ。

 《ソノーラス》で増幅した声すらも感知出来なくなる程、何倍にも強化して掛けている為、ダドリー以外の人間は今の怒声に全く気付いていない筈だ。

 こういう他者にバレないような隠蔽工作は、前世から大の得意なのだ。唯一欺けなかった相手は、実の親ぐらいかな…。

 

 この呪文の発明者は、実はあのセブルス・スネイプである。

 何で僕が使えるのかというと、これもまたヴォルデモートの記憶から引っ張り出してきた呪文だからだ。

 スネイプはヴォルデモートの手下であり、上司であるヴォルデモートが彼の開発した呪文を知っているのは、何らおかしい事ではない。

 使いようによっては便利過ぎる為、少ない時間の中あれやこれや頑張って習得した呪文。実際に使う機会が訪れて実に満足である。

 

 『さて……クソガキにお灸も据えたところだし、帰るか』

 

 《マフリアート》の強化発動で、地味に魔力を削られてしまった。しかし、今日の出来事は必要な事だったので仕方あるまい。

 ヴォルデモートの余剰魔力は雀の涙程しか減っていないが、今まで書き込んでくれた分のハリーの魔力は底を突いてしまった。

 こればっかりは、また筆談を続けて貯蓄していくしかない。何とも燃費の悪い身体だ。

 

 まあ、これでハリーへの物理攻撃が勢力を弱めるきっかけになれば、多少は報われるのだが。

 あそこまで怖がらせて恫喝した後だ。きっと今日明日ぐらいはダドリーの精神は死んでいるに違いない。

 この世界に来て初めて、とってもスカっとした気分である。我が物顔の虐めっ子を下すのは、やはり愉快なものだ。

 

 『実によし!』

 

 他者の気配と視線が存在しない事を確認し、その場で実体化を解除。

 わざわざ日記帳に近付かなくても、こうすれば本体の中へ瞬間直通である。便利なものである。

 人の目さえ無ければ、いつだって一歩も動かずに日記帳内へ帰れるこの機能は、引き籠り精神を助長させかねないので気を付けねば…。

 

 

 

 

 あとは、ハグリッドがやって来るであろう、ハリーの誕生日の訪れを待つだけだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「実によし」じゃねーよ!!!!

 

 どう考えてもやり過ぎだろーがい!!!!

 

 後々冷静に思い返せば、ありゃただのヤクザやんけ!!!!

 

 何ホクホク顔で帰ってんだよアホがああああああ!!!!

 

 

 

 

 ……その夜、日記帳の中で死ぬ程反省しますた。

 

 「理性のタガが外れるととブレーキが利かなくなる」という、ファミチキ野郎の言葉は実に的を射た発言であったのである。

 改めて自分の行動を顧みれば、度を越え過ぎているという事に気付き、現在猛省中。

 10代のガキ相手に、なんとも大人げない事よ…。

 

 …あれれー?何か、前にもこんな大人げない事しちゃったような……………?

 

 またまたデジャブ。何か今日はこういうの多いな。い、いや、気のせいに決まっておろう。ぼ、僕は常に、子供相手には紳士的である事を誓っているのです!

 あ、でも前世の、近所で騒いでたガキ共はくたばれ!

 3徹の後に響き渡る子供達の雑音は、精神を不快にさせるありがたくない効果があるからな!

 

 大人しく耐えるという、古き悪しきジャパニーズ精神などクソ食らえ、という姿勢だった僕は、もちろんすぐに対策を練ったけどね。

 自作の動画制作アプリによって、モスキート音垂れ流し動画を作成しては窓辺で再生し、結果近所の子供は蜘蛛の子散らすように近付かなくなったよ。

 モスキート音というのは、若者にだけ聞き取れる不快音であり、ある程度歳を取った大人や老人には全くの無害である。ちゃんと周囲への配慮も怠らなかったんだぜい。

 

 ネット民に事の次第を報告すると、「その才能を別に活かせ」と叱責されたが、そんなんで動く程引き籠りは安くないのですよ、うむ。

 つーか、才能とか高めの顔面偏差値とか別に要らねーから、平凡な人生誰かくれよ、マジで。

 才能のせいで化け物扱いされるのも、外見のせいで他人が(たか)ってくるのもうんざりだよ、もう…(クソデカため息)

 

 と、ため息を吐く肺も無い状態で、一人憂鬱気分に浸っていた時だった。

 

 

 

 

 『トム、今日は面白い事があったよ』

 

 いつものように、ハリーからの書き込みを受信した。筆跡が心なしか踊っているようだ。その先の文章は何となく察せる。

 

 "面白い事ねぇ。一体何があったの?"

 

 『びっくりすると思うよ。なんとね……ダドリーの奴がね、泣き叫びながら玄関に倒れ込んでたんだ!転んで傷だらけだったし、おじさんとおばさんは大慌て!お陰で僕への折檻もゼロだったんだ!何か、いい気味でさ』

 

 オー、ハリー。

 

 犯人はワタシデース。

 

 トムの勝ちデース。遊戯ボーイ☆

 

 いや、ふざけてる場合とちゃうけど、マジで効果はあったらしい。

 そりゃ溺愛してる息子がただならぬ様子で帰宅したら、そうもなりますな。

 これでハリーへの奴隷扱いが鳴りを潜めるなら、魔力を削った甲斐があるってもんだ。

 ていうか、ちょっと転んだだけで大騒ぎし過ぎだろ。どんだけ親バカなんだか…。

 言っとくけど、僕は直接暴力はしてまへんからね!!

 

 『何がどうしてああなったんだろうね?気になるけど、あの様子じゃ質問したって、ロクな返事も出来そうにないよ』

 

 "こわーいお兄ちゃんに絡まれて、慌てて逃げて来たところじゃない?"

 

 『そうだったとしたら、何か物騒で嫌だなぁ。この家まで追っかけて来たりしないよね?』

 

 "まさか。今がいくら夜中だからって、そんな堂々と不法侵入を果たす度胸のある不審者なん、て…ッ!?"

 

 『え、え?トム、どうしたの?』

 

 

 

 

 ちょ、ちょーっと待てよ。

 

 不法侵入で思い出したけど、……今日、今日って何日だ?

 

 

 

 

 "……は、ハリー。今日の日付っていつだったっけ…?"

 

 『えぇ?今日は7月30日だよ。あともうちょっとで0時になるから、31日みたいなものだね。いきなりどうしたの?』

 

 こ、こらー!地味に夜更かししてんじゃないよ!と言いたいところだったが、ちょっと待ちんしゃい。

 

 7月31日……何か引っ掛かるのよね。えーっと……、何か、何か……あった筈、なんだけど……。

 お、思い出せねー!絶対何かあったんだって!

 

 "……んん~。ハリー……今日って、何かあったっけ……?特別な日、とかそういうの……"

 

 『えっ。……ええーっと…。そうだね。31日は―――あ、ちょうど0時になった』

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハリーは部屋の時計を見た。

 

 本来、この物置に時計などという代物は無かった。

 その事をトムに伝えると、「不便極まりないから、どうにかして調達して欲しい」と頼まれたので、ダドリーの部屋から使われていない時計を失敬したのだ。

 ダドリーの二つ目の部屋は、たくさんのオモチャや色々な物が置かれている為、その中の一つが消失したところですぐさま露見する事も無かった。

 お陰で、今までの時間が分からないもどかしい生活から、一気に解放された。

 何時かもすぐに確認出来るので、時間を忘れて筆談を続けてしまうという失態も犯さなくなったのだ。

 

 それなのに、どうして今日。

 

 子供はとっくに就寝している筈の0時近くまで、こうして未練がましく起きていたのかというと。

 

 それは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『―――7月31日は、僕の誕生日だよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日記帳にそう書き込んだ瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 コンコンコン!と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ダーズリー家の誰でもない手付きで。

 

 

 

 

 どこか力強さと上品さを感じさせるノックの音が、物置の扉から響いてきた―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




コンピューター系の知識と技術は専門家顔負けレベル。
しかしこの才能に限って、魔法界ではクソの役にも立ちませんな。

組織に連行されてたら多分、殺し屋ルートかモルモットルートだったのではないかと。転生ルートの方がよっぽどマシだったという事実。

次回は、ダイアゴン横丁で教材調達回


おや、クィレル先生の様子が…?
BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB

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