転生したら分霊箱だった件   作:@ゆずぽん@

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どうでもいいですが、原作全部入手しました。まだ読了出来てませんけど。

眠い中書いた箇所があるんで、何かおかしいところあっても許してつかぁさい(´;ω;`)




Page 14 「魔法界の学友、ここに」

 「ポッター君。両親が居ないんだってね?魔法界の事は良く知らないんじゃないかい?良かったら、僕が教えてあげよう」

 

 

 

 

 突然現れ突然名乗り、突然一方的な友好を結ぼうとしてきた少年、ドラコ・マルフォイ。

 

 純血一族の一つである、マルフォイ家の長男にして、根っからの純血主義者。

 魔法使いの家系でなければ、魔法学校に通うべきではないという思想に染まり切った子供だ。

 両親からの教えと、その身に流れるれっきとした名門の血筋が、まだ10代前半の未熟な子供の考えを歪めていた。

 よっぽど、その歪んだ思想を変えさせるようなとんでもない衝撃を与えなければ、この少年はいつまでも捻くれたままであろう。

 

 何故そんな純血主義のドラコが、会って間もない、魔法界について無知であるらしいと思っているハリーに手を差し伸べているのかというと。

 赤子の身で闇の帝王を打ち砕き、生き残った男の子と持て囃され、魔法使いの血を引いている英雄様の名を利用する為であった。

 

 魔法界の人間には、どうして赤子の男の子があのような奇跡を起こしたのか、真実を知る者は一部を除いていなかった。

 しかし真相がどうであれ、ハリーを殺そうとした『悪』が返り討ちにあったのは紛れもない事実であり。

 何も出来なかった筈のハリーでも、彼が起こした現象から考えると『英雄』と呼ぶ他は無かったのである。

 

 そんな英雄様は、いくら闇の帝王を返り討ちにしたからと言っても、自身の両親は失ってしまっていた。

 まだ赤子である彼が、一体何処へ預けられて育てられるのか、その行き先も多くの魔法使い達の興味を集めた。

 結果、『生き残った男の子』は、ロンドンのとあるマグルの一家にその身を預けられる事となった。

 後見人であった男は、犯罪行為が知られアズカバンへと送られてしまった為に、ハリーは魔法界とは縁の無い家で育てられる羽目になったのだ。

 

 耳聡い魔法使い達の中の一部は、一目ハリーに逢おうと、しばしば彼の元へ訪れる事があった。

 ある日、おじさん達と一緒に買い物に行ったハリーに、紫色のシルクハットを被った男がお辞儀をした。

 またある日は、バスの中で緑づくめの格好をした老婆が、嬉しそうに手を振った。

 またまたある日は、紫のマントを着た男が、ハリーとしっかり握手までしていった。

 

 そんな感じで、英雄であるハリーの居所は、知っている者なら把握している程露見してしまっていた。

 今や魔法界の色んな書物に名を連ねる有名人である。しょうがない事だった。

 そして、それはマルフォイ家も同様である。

 

 故に、ドラコは。

 

 マグルに育てられ、魔法界についてあまり知識の無さそうなハリーの好感を得、懐柔し。

 その名が持つ影響力を、我が物にしようという利己的な考えの元、こうして手を差し伸べているのだ。

 決して、単なる親切心ではない。齢11にして、随分と狡猾な少年であった。

 

 ―――しかし、そんなドラコの悪巧みも、ある一つの日記帳によってぶち壊される事になった。

 

 

 

 

 こちらを驚きの感情が籠った目で見つめたまま、固まっているハリー。

 突然の行動だったしこの反応は仕方ないか、と、しばらく相手が状況を呑み込むのを待っていたドラコであったが、

 

 「………ん?」

 

 その手元にある、古びた真っ黒な日記帳が目に入る。

 先程まで記入をしていたのだろう、ハリーは片手にインクの滴る羽根ペンを持っている。

 それだけだ。何て事の無い、光景の筈………なのに。

 

 「何だい?その薄汚い日記…帳………」

 

 言葉が、途中で失速した。

 理由は明白だった。

 

 ポタリ、と、固まって動かないハリーの持つペンから、インクの水滴が一粒落下した。

 漆黒の雫が重力に従って、開いたままの日記帳の白紙へ吸い込まれる。

 いや、例えではない。文字通り―――インクが()()()()()()()()

 普通ならば、その白紙に黒い染みを作っている筈のインクが―――あろうことか白紙に吸い込まれ、溶けるように跡形も無く消えてしまったのだ!

 

 続けて、二、三滴雫が落ちていく。

 やはりその全てが、白紙を汚す事無く消失していった。一体、どういう事だ?

 

 何らかの魔法道具という事だろうか?

 いや、しかし、この様な現象を起こす日記帳など、生まれてこの方目にした経験は無い。

 父の都合上で連れられ入店した事のある、『ボージン・アンド・バークス』―――様々な魔法道具や呪具を取り扱う店であるあそこでさえ、こんな日記帳は販売していない。

 加えて、この英雄様はマグルの元で育ってきたのだ。そんな魔法道具とは無縁の生活を送っていた筈だ。

 何故、マルフォイ家である自分が見た事も聞いた事も無い魔法道具を、目の前の少年は所持しているというのだ?

 今まで悪知恵しか働かなかった頭を、疑念と興味が埋め尽くしていく。

 

 乾いた唇を動かし、日記帳について尋ねようとした時だった。

 硬直を保っていたハリーの目が、突然見開かれた。

 その視線は、どちらかというとドラコではなく、その背後に注がれているようであった。

 

 「………?」

 

 何だか、視線の先である己の背後が気になって、ゆっくり振り向いてみる。

 もしかしたら、自分の他にもハリーの姿に気付いた子供が、このコンパートメントへ辿り着いて来たのかもしれない。

 そう思って、気軽に振り向いたのだったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『―――薄汚い日記帳で悪かったね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこに居たのは、ホグワーツの制服の一種である、スリザリン生のローブを身に纏った青年だった。

 銀色の監督生バッジも見える。少なくとも、5年生以上である事は窺い知れた。

 

 別に、特段驚く事では無かった筈だ。

 マルフォイ家は代々スリザリン寮に所属しており、自分も入りたいと望んでいる。青年も格好からしてスリザリンだ。純血主義であるドラコからすれば、親近感しか沸かない人物である。

 

 しかし、しかしだ。今、青年は何と言っただろうか?

 

 『さっきそう思っただろ?その顔を見てれば、君の考えぐらい解るよ。本当に、()()()()悪かったね?』

 

 まるで獲物を眼前にした捕食者の様な視線を放たれ、ドラコは身動きが出来なくなった。

 青年の鋭い眼光もそうだが、()()()()()()()()()()()()()()()が、妙に恐ろしく感じられたのだ。

 何と返してよいか分からず、振り向いたまま茫然としているドラコの後ろで、これまで沈黙していたハリーが声を上げた。

 

 「ちょ、ちょっと何やってんのトム! ?ひ、人前なのに!?」

 

 『何って、君が文字じゃなくてインクだけポッタポタ落としてくるから、気になって出てきただけだよ。何か異常があったかと思うだろ?』

 

 「確かにそうだけど……でも、でも思い切り見られてるよ!?どうするのこれ!?」

 

 突如現れた正体不明のスリザリン生と、今年初めて入学する筈のハリーが親し気(?)な口調で会話を始めた。

 

 ホグワーツ生、しかも上級生と知り合う機会など、ハリーには無かった筈なのに……?

 

 自分の存在を放置され、眼前で会話を繰り広げる二人の様子を、マルフォイはぼうっと見ているだけしか出来なかった。

 

 『見られたものはしょうがない。ハリー、この子抑えといて。忘却呪文ぶちかますから』

 

 「何でそんな物騒なコト言うかな。出来ないよ!ほ…他の方法無いの?」

 

 『無い。ていうか、別に口封じに殺そうって訳じゃないんだから、良いだろ?僕にしては、すごーく穏便なやり方で済ませようと考えてあげてるのに』

 

 「だーめーだーよー!ちょっと失礼だったけど、僕に色々教えてくれようとしてたんだ。それなのに、何しようとしてるのさ?」

 

 『ふん、ただの親切心じゃないみたいだけどね?この子、君の事利用しようとしてたんだぞ。君が有名人だから、その恩恵目当てにやって来ましたって顔に書いてあるよ。……それでも仲良くする気?』

 

 「うっ。そ、そうなの?……で、でも……出来るだけ、色んな人と仲良くしたいし……。友達になりたいし……」

 

 『……ふーん。贅沢だね、贅沢な事だね。そこまで言うなら、まあ良いよ。ハリーの交友関係まで、口出しする権利は無いしな……。ところで、君、名前は?』

 

 「へっ!?」

 

 いきなりこちらに話を振られ、間抜けな声が出る。

 さっきまで何だか物騒な単語が聞こえて来たのだが、青年の目から敵意は消えていた。一応、上級生だと思うので、素直に、丁寧に質問に答える事にする。

 

 「…ど、ドラコ。ドラコ・マルフォイ、です…」

 

 『………………………………………………』

 

 こちらの名を聞いて、青年がしばらく沈黙した。

 その間にも、品定めする様な視線を向けてくる。とても不気味だ。端正な顔立ちをしているのに、今は不気味さしか感じられない。

 

 『……よし、フォイフォイ』

 

 「ふぉ、フォイッ!?」

 

 妙なあだ名で呼ばれ、思わず反射的に声を上げてしまう。何だか、返事みたいになってしまったのが誠に遺憾である。

 

 『僕から伝えておく事は、一つだけだ。良く聞いておくように』

 

 「フォイ……いっ、いや、ハイ!」

 

 『呪われるよ』

 

 「…!?どっ、どういう事ですか?蛇目のお兄さん」

 

 『僕の事を他人に話したら―――誰が蛇目だって?ん?』

 

 「へっ?あ……そ、そっくりですよ。初めて見た時、蛇が化け損なったのかと思ったぐらい」

 

 『ちょっとフォイフォイ、ナチュラルに言いたい事言ってくれるじゃないか。いくら君の性格が捻くれてるからって、僕みたいな好青年に向かって、堂々と蛇の化け損ないって言う訳?どこに目ぇ付けてるんだよ』

 

 「へっ変な意味で言ったんじゃなくて、その、蛇はカッコ良いと思いますよ。スリザリンのシンボルですし」

 

 『人の目の事、平気で蛇に似てるとか言えるのがマルフォイ家の教育なのか?とんだ捻くれ一家だな』

 

 「トム、悪いけど、君が他人の事、捻くれてるとか言える立場じゃないと思う」

 

 『ハリーは黙っててくれる?とにかく!フォイフォイに言いたい事は一つ。大人しく聞きなさい』

 

 「は、ハイ………」

 

 青年は一度咳払いをする様な素振りを見せた後、淡々と語り始めた。

 

 『この日記帳と僕の存在を誰かに話したら、不幸が訪れる。秘密を漏らしたその人間に呪いが掛かるんだ』

 

 説明しながら青年は、ハリーが持つ黒い日記帳を指差した。次いで、たった今開かれているページに書かれているらしき文字を目にしたハリーは、こちらによく見えるよう、無言で日記帳を見せてくる。

 彼は青年からの指示に従っているだけだったが、日記帳の特性など知らぬドラコからすれば、実に不気味極まりない光景である。

 

 『まず話した瞬間から、666時間、下痢と嘔吐に苦しむよ』

 

 「げ……ッ、嘔吐!?」

 

 『その後、666日の間、闇の帝王の怨念が毎晩枕元に現れて、鼻と尻の穴に指を突っ込んでいくよ』

 

 「闇の帝王ッ!?」

 

 『ついでに一夜ごとに一本、髪の毛を引き抜いていくよ』

 

 「髪を!!!?」

 

 『それでも良ければ、好きなだけ喋り散らして呪われてみればいいさ』

 

 「…う、う………」

 

 闇の帝王の名前を出され、言葉が詰まる。青年と英雄様を交互に見るが、両者共こちらをじっと見つめるだけだ。

 ハリーだけは時折、少し呆れた様な目でチラチラと青年に視線を送っていた。

 

 『思う存分呪われてみなよ。さあ、どうぞ?』

 

 「……い、いや、やめておきます。誰にも言いませんッ、許して下さいッ……!?」

 

 有無を言わさぬ青年の迫力に押し負け、気付けばひたすら謝罪の言葉を並べていた。

 何故だろう。悪さをやらかした覚えは無いのに、青年から放たれる負のオーラが、質問や反論の余地を与えてくれなかった。

 とにかく、青年の存在と、ハリーの持つ日記帳についての他言は、絶対にしてはいけないという事だけ脳裏に刻まれる。

 

 さっき日記帳が起こした現象と、青年の説明から考えて、間違いなく闇の魔術に関する呪いの本に違いない。下手に忠告を無視し、呪われるのはゴメンである。

 そうでなくとも、青年が怖過ぎてとてもじゃないが、誰かに漏らすなんて出来そうも無い。

 内心チビりかけているドラコの様子を確認し、青年は満足そうに頷いた。

 

 『よし、いい子だ。じゃあ、僕は消えるよ。日記について他言さえしなければ、それで良いから。ハリーと話しに来たんだろ?続きはどうぞ、ご自由に』

 

 そう言って、青年はドラコの肩にポム、と手を乗せた。いや、厳密にはその手はすり抜けてしまい、乗せる()()になっていたが。

 自分の体をすり抜けている青年の手を目にし、ドラコはまたまた身を縮めた。表情が歪に引き攣る。

 

 『ご自由に―――と、言いたいところだけど。……変な下心で友達を作りに来たんなら、すぐに退室するように。いいね?』

 

 正面から顔を覗き込まれ、嘘の返事は出来なかった。

 青年の真っ赤な瞳に、怯えた蛙の様な表情をしている自身の姿が映っている。

 

 「……は、ハイ。わ…分かり、ました」

 

 マルフォイ家の長男であろう者が、なんと情けない事か。

 もしも父にこの状況を見られれば、絶対に失望させてしまう。

 そうだと分かっていても、無様な醜態を晒し続ける自分を、取り繕う事など最早不可能だった。

 

 『君もまだ子供なんだから。そんな悪知恵なんか忘れて、素直に友達を作れば良いんだ……。じゃ、ホントに消えるよ。バイバーイ』

 

 最後の言葉は、これまでの青年の態度からは想像がつかない程、優しさが込められていた。

 先程まで氷の様に冷たかった様子が一変したので、思わず青年の顔を確認しようと視線を上げると―――

 

 「あ、……あ?」

 

 一度瞬きした後の視界には、もう誰も存在していなかった。

 コンパーメントの中には、自分とハリーの二人だけ。三人目だった青年は、煙の様に消えてしまっていた。

 無駄だと分かっていても、部屋の中に青年の姿を探してしまう。

 

 「………ゴースト?」

 

 考えられる可能性としては、それぐらいだが……。

 ゴーストにしては輪郭ははっきりしていたようだったし。あの連中独特の、全身銀色という訳では無かったし。

 

 

 

 

 そんな風に自問自答していると、ハリーがこちらに声を掛けて来た。

 

 「ねぇ……。ねぇ、ドラコ、って呼んでいい?」

 

 「え?」

 

 彼の方へ振り向く。日記を閉じ、モジモジと不安そうに体を揺らしている。

 そして、おずおずと片手を差し出して来た。

 

 「あの、さっきは怖がらせちゃってゴメン。あ、でもね、トム―――あ、あの人のコトね。トムも悪気は無いから……いや多分。少しはあるかも……?いや、ほんのちょっとだけ?だ、だから。―――仲良くしてくれたら、嬉しい……な」

 

 「………!」

 

 丸眼鏡の奥で、何かを期待する様な眼差しをこちらに向けてくる。

 前に己がしたのと同じ様に、手を差し伸べてくる。

 打算など微塵も無い、交友関係の構築要求。

 

 

 

 

 

 

 

 

 生き残った男の子の、懇願。

 

 それを聴いて。

 

 あの青年の忠告を思い出して。

 

 目の前の、ある意味では透明な少年を見て。

 

 

 

 

 ……変な策略とは一切無関係な友人を、本当は心の何処かで望んでいた、自分自身を改めて自覚した。

 

 マルフォイ家の名と地位を目当てに、いつも媚び諂ってきた連中とは違う、無垢なる友人。

 

 

 

 

 ドラコ・マルフォイは、この時。

 

 このコンパーメントに入った時から被っていた化けの皮を、初めて脱いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「―――あぁ。さっきは……いきなり、すまなかった。……こちらこそ、よろしく。ハリー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、純血の少年と、半純血の少年は手を握り合った。

 

 血筋や家系といった垣根を超えた、二人の友人がここに誕生したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくの間、ハリーはドラコと魔法界やホグワーツについて雑談に興じていた。

 

 ドラコはハリーと違ってズブズブの魔法界で暮らしていた為、実に色んな知識を蓄えていた。

 特に『クィディッチ』という、箒で空を駆け回り行う魔法界のスポーツの話は、非常に好奇心をくすぐられた。

 ドラコもクィディッチには大変ご執心の様子であり、入学後は寮の代表選手になりたいと考えているらしい。

 クィディッチについて怒涛の勢いで質問すると、彼は迷惑がらずに鼻高々と、1から10まできっかり説明してくれた。テンションも高々になっていった。よほどクィディッチが好きなのだろう。男の子らしい年相応の反応に、ハリーも釣られて高揚した。

 

 同年代の話し相手というものは、想像よりもとても素晴らしいものであった。

 ハリーが今までマグルに受けた扱いを話すと、ドラコは本気で怒ってくれた。

 

 「やっぱりマグルは野蛮だな。魔法使いの血を引く者を、そんな風に……」

 

 「あー、僕もあの一家は大嫌いだけど、マグル全員がそうじゃないと思うよ。あの人達は特に異常だけど……マグルの事、そこまで言わないであげて?」

 

 「……僕は今まで、魔法学校にはマグル生まれは要らないと教えられてきたし、自分でもそう思っていた。連中は僕らと違うって……。君は…そういう考えが出来るんだね」

 

 「僕もマグルの世界で育ってきたから……マグル全体を、あんまり悪く言う気になれないんだ。手紙を貰うまで、自分が魔法使いだなんて思いもしなかったから」

 

 「そうか……。しかし…不思議だな。どうして、よりにもよって英雄の君が、マグルのところに預けられたんだろう?」

 

 「なんか事情があるっぽいんだけど……ホント、何でだろうね?」

 

 血筋の話題になってから、ハリーはマルフォイ家がどういうものなのか尋ねてみた。

 すると、結構複雑な事情を抱えている家系だという事実を知った。

 

 ドラコの父親はかつて『例のあの人』の部下だったが、失踪後は「魔法を掛けられ操られていた」と証言し、罪を逃れた事。

 それが理由で、マルフォイ家は世間から快く思われていない事。

 その悪評を回復する為、父親は四苦八苦している事。

 

 名門の魔法使い一族も、色々と苦心しているらしい。

 あまり掘り下げて暗い話になるのもあれなので、ホグワーツについて話題を変更した。

 ドラコはこれも得意げに教えてくれた。

 

 ホグワーツは四つの寮があって、才能や性格によって、各生徒がそれぞれ振り分けられる事。

 マルフォイ家は代々スリザリンだったので、自分も入るならスリザリンが良いという事。

 ……『例のあの人』も、所属はスリザリンだったという事。

 

 実際に人の口からその話を聞いて、事前に知っていたハリーも流石に顔を顰めた。

 

 「ヴォル―――『例のあの人』も、スリザリン……」

 

 「……やっぱり、君にとってはスリザリンは『悪』になるかい?」

 

 ドラコは父と違って、『例のあの人』を支持している訳ではない。しかしやはり、スリザリンは自分が入りたいと望む寮だ。

 両親を殺されたハリーにとって、スリザリンは悪者の寮だという認識をされるのは、しょうがない事だとしても。

 ここまで打ち解けた相手に、スリザリンを望んでいるからという理由で、嫌われてしまったらどうしようと考えていた。

 

 しかしハリーは、少し悩んだ素振りを見せた後に、ドラコの言葉を否定した。

 

 「ううん。……僕の『友達』も、一応スリザリンみたいなものだし……」

 

 「あ、あぁ……もしかしてさっきの―――あっ、いや、何でもない。呪われるところだった……」

 

 先程ハリーと親し気に会話していた、ゴーストなのかも不明な謎のスリザリン生。

 彼のお陰か、ハリーはスリザリンに対して妙な偏見を持ち合わせていないようだった。ドラコは内心で安堵する。

 二人の様子からして、恐らくはかなり親しい間柄なのだろうが、如何せんその存在を無暗に語れない。

 呪われるのも怖いので、彼について尋ねるのは憚られた。

 

 「うーん。スリザリンって寮の一つに過ぎないんでしょ?そこに選ばれた全員が、『悪』ってワケじゃないだろうし…。そこまで嫌なイメージは、無いよ」

 

 「そうか。ハリーの両親はグリフィンドールみたいだから、多分君もそこになるんじゃないか?」

 

 グリフィンドール。

 勇敢さと騎士道精神を重んじると言われている寮だ。

 ハリーの両親は二人共、かつてそこに所属していた魔法使いでもあった。

 赤子のハリーを、命を懸けて守ってくれた。実にグリフィンドールらしい両親だ。

 

 「そうかなぁ。別に勇敢だとは自分でも思ってないけど…」

 

 「まあ、組み分けばっかりは、いざその時になってみないと結果は闇の中だね」

 

 「帽子を被るだけ、だったっけ?」

 

 「あぁ、そう。良く知ってたね。だから、実際の組み分けはあっという間に終わる筈さ」

 

 そこでドラコは、不意にチラリとコンパートメントの扉を見やる。名残惜しい気持ちを抑え、徐に席を立った。

 

 「ゴメン、僕が取ってた席に友人達を残してきたんだ。そろそろ帰らないと不審に思うかもしれない。ここらで一旦お別れだ」

 

 「あっそうか。ドラコは、もういっぱい友達がいるんだよね」

 

 「……本当の意味での友人は少ないけど、ね。じゃあ……、ハリー。また、ホグワーツで会おう」

 

 「うん!またね、ドラコ。ホグワーツでも、よろしく」

 

 多少乱れていた衣服をしっかりと整えると、ドラコはコンパートメントの扉を開いた。

 完全に退室する前に、その背中にハリーは声を掛ける。

 ホグワーツに到着する前に出来た、人生初めての学友へと。

 

 「ドラコ………あの、寮が違っても……その、」

 

 羞恥の余り、徐々に小さくなっていく言葉の続きを、振り返ったドラコが引き受けた。

 

 

 

 

 「どの寮になっても、君と仲良くしたいと思っているよ……ハリー。それじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紅の蒸気機関車が、夜の闇を切り裂く様に走っていく。

 

 ドラコが立ち去った後、ハリーは無人のコンパートメントでトムと筆談を交わしながら過ごしていた。

 不思議な事に、ドラコが居なくなってからは誰も入室してくる事は無かった。

 お陰で、彼以外の人間に日記帳を見られる事も無かったが。

 

 『トム……口封じの為とはいえ、何でドラコにあんなデタラメ言ったの?必要以上に怖がらせてさ。絶対、嫌がらせ半分入ってたでしょ』

 

 "へっ。どうせ僕ぁ、蛇目の男さ。捻くれてんだよ"

 

 『君が捻くれてるのは蛇目に限った話じゃないでしょ。絡まりまくった癖毛並みに捻くれてるんだから、今更ふてくされないでよ。あっ、ドラコの家は皆スリザリンなんだって。一応スリザリン同士で、トムもドラコと仲良くなれるかもよ』

 

 "スリザリン同士ですって。()()()にも言われたし。はーん、どうせ僕はスリザリン気質ですよ、ふーんだ"

 

 『もう、ふてくされないの』

  

 途中、車内販売でお菓子を購入したり、ペットのヒキガエルを探しに来た子供が扉を開けてきたり、ちょっとした出来事があった。

 ハリーにとっては、話し相手はいくら来ても良かったのだが、予想以上にヒキガエル探しは難航しているようだった。子供達は皆、ハリーが行方を知らないと聞くとすぐに通路へ身を引っ込めていった。

 ハリーはペットに梟を選んだが、それ以外を連れてきている子もいるらしい。しかしヒキガエルとは……これ如何に。

 

 ふと、今朝の出来事を思い出し、ずっと疑問だった事を尋ねてみる。ドラコとの会話でも、度々出てきた単語についてだ。

 

 『そういえばスリザリンで思い出した。トム、今日の朝、サラザール・スリザリンがどうとか調べてたよね?あれって人の名前?ホグワーツの寮の名前と、何か関係あるの?』

 

 "そう、アレはスリザリンだった"

 

 『スリザリンって、何?』

 

 "だから、アレだよ"

 

 『アレって、魔法使いの名前なの?寮の名前でもあるってコトは、ホグワーツに関わってる人?何で、本にはトムと同じミドルネームの、マールヴォロって人のところにスリザリンの名前が載ってたワケ?どういう繋がりがあるの?ねえ、サラザール・スリザリンって一体誰で、何なの?ちゃんと教えて、トム』

 

 "もう、しつこいな。髪の毛をクシでとかすと?"

 

 『は?えっ、と……。もしかして、()()()()?』

 

 "当たり。猫が人の足に頭を押し付けてる様子は?"

 

 『()()()()?』

 

 "ザッツライト。ハリー、入学日のせいか、頭の回転早くなってるじゃないか。じゃあね~"

 

 『トム、いい加減にしてよ。君、答え難いなら答え難いって、どうしてそう素直に書けないのさ?だから捻くれてるんだよ。言葉遊びして誤魔化すような狡猾な真似しないの、もう』

 

 なんてやり取りをしている間にも、ホグワーツ特急は徐々に速度を落とし、遂にその身を終着点であるプラットホームへと収めた。

 荷物は別に学校へ届けるという車内の声を合図に、ハリーは日記帳だけをポケットに突っ込み、通路へと飛び出した。

 結局、車内で仲良くなったのはドラコ一人だけだったが、ホグワーツに入ってからも色んな子と接する機会はまだあるだろう。

 そう考えながら、停車した汽車を抜け出し、夜の冷たい空気へと身を晒した。

 

 

 

 

 「イッチ年生!イッチ年生はこっちだ!」

 

 懐かしい声がした方へ振り向くと、引率が役目なのだろう。ハグリッドが汽車から出て来た生徒の内、一年生だけを誘導し始めた。

 彼に続いて狭い小道を下り、巨大な湖の畔へ辿り着く。

 向こう岸にはいくつもの塔がくっついている様に見える、壮大な城がその身を闇の中に置いていた。あれがホグワーツだ。

 いざホグワーツ城を目にした感動で、一斉に歓声が巻き起こる中、ハグリッドが岸辺に繋がれた小舟に乗るように指示した

 一隻に四人ずつ乗ったものの、皆は黙って城を見上げている為、特に私語は起こらなかった。ハリーの額の傷も、夜の闇が覆い隠していて、英雄だと気付かれ騒がれる事も無かった。

 

 真っ黒な湖面を滑る様に進んだ小舟は、やがて蔦のカーテンを通過して、暗いトンネルをくぐると船着き場へと到着した。

 

 「お前さん!このヒキガエルは、ひょっとしてお前さんのじゃないかい?」

 

 全員が船から降り立った後、ハグリッドがその内の一隻から蛙を引っ張り出して言った。

 忘れ物ならぬ忘れ生き物、だ。

 

 「僕のトレバーだ!」

 

 コンパートメントで、ヒキガエル探しに追われていた子供の一人が、歓喜の表情で飛び出した。どうやら、無事に発見されたらしい。

 その後、再びハグリッドの引率の元、生徒達はホグワーツへと着実に近付いていった。

 岩の路を登り、石段も登り、ようやく辿り着いた、ホグワーツへの入口であろう巨大な扉の前で、一度立ち止まる。

 

 「ようし、皆ちゃーんと居るな?いよいよこっからホグワーツだ。楽しんでこい!」

 

 

 

 

 ハグリッドがその大きな拳で、まるでパスワードを入力するかの様に、扉を三回叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして扉が開かれ―――

 

 

 

 

 

 




朗報、フォイフォイと友好を結ぶ。

ハリーがウィーズリー家の助け無しでスイスイ乗車する
→ロンが入室するタイミングズレる
→原作より早めにフォイフォイ来る
→フォイフォイが先に居た為、ロンは近寄らない
→ロンが居ないので、ハーマイオニーも魔法を掛ける様子を見に入って来ない
→結果、ドラコが去る頃には、皆大体自分の席を獲得しているので、ハリーのコンパートメントに同席する子が居なくなった

てな感じです。

ハリーにとって初めて接した生身の学友がドラコで、下心丸出しだった彼は脅されて、本人も名声目当てじゃない友人を欲してたので、見事に意気投合。
主人公も、原作のスリザリンに対するハリーサイドの偏見には思うところがあったので、
事前にハリーに対し、寮に対する差別意識を起こさせないよう教育済みです。
主人公は、「自分がスリザリン向きと言われるのは嫌だけど、スリザリンの人間全員を否定してる訳ではない」という考え持ち。

フォイフォイと拗れると、原作みたいに彼とのトラブルに7年間付き合わされる羽目になるので、仲良くなった方が効率的だよねーって狡猾な思考に基づいた結果。
臆病かつ、真の友を欲しがってたフォイフォイなら、ちょいと脅して下心を封じてやれば、ハリーと良き友になれるのではと見抜いたので、本編で素直に身を引いてます。
フォイフォイは何だかんだ憎めない奴ですし、根っからの悪人じゃなかったですしね。
原作終了時点だと、挨拶する程度の仲には復縁してますし、こういう展開もアリかな、と。
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