転生したら分霊箱だった件   作:@ゆずぽん@

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年内に賢者の石編終わんないっすわ(宣言)


Page 21 「邂逅、クィリナス・クィレル」

 ―――あぁ、どうしてくれようか。

 

 

 

 

 闇の中で、考えを巡らせる。

 

 

 

 

 あのケンタウルスは、こちらにとって都合の良い事も悪い事もしてくれた。

 

 "彼"を煽り、普段は巧妙に隠している殺意を見事に引き出してくれた件については、評価してやろう。

 だが、あの助言はいただけない。当時の彼はあの助言の『真意』まで到達していないようだったが、それも時間の問題だろう。

 "彼"は本当に勘が良い。良い、どころじゃない。それさえ突き抜けているところが一部分ある。だからこそあんな人生を送る羽目にもなったのだろうが、"彼"ならばその内自力であの助言の意味を理解してしまう。

 

 理解してしまったら?

 

 "彼"の洞察力、そして閉心術はかなり優れている。自身の実力をこちらに見誤らせる為に、わざと他愛無い人間を演じる事がある程だ。傍の英雄は、その行動に潜む意味を少し勘違いをしているようだが。

 そんな"彼"が助言を取り入れ、行動に移してしまえば―――こちらの計画が崩れてしまう。

 そうはさせない。

 

 ケンタウルスは表立って人間を助ける事はしない。あの個体についてはそれに当てはまらない様だったが、それでも遠回しな言葉を使っていた。直接的な表現をしなかったのは、"彼"を試す為か、運命を大きく狂わせない為か。

 その遠回しな助言のお陰で、"彼"が理解するまでの時間が出来た。猶予が出来た。これを考えるならば、ケンタウルスの余計な助言は許してやってもいい。

 

 今の内に手を打っておくべきだろう。

 

 ハリー・ポッター。忌まわしく邪魔な存在であり、"彼"が行動するにあたって必要な存在でもある。こちらにとって複雑な立場にいる人間だ。あれを利用してしまえばいい。()()()()()()()()()、あれに干渉出来るだけの力が手に入ったのだから。

 

 

 

 

 『賢者の石』?『闇の帝王』?そんな物を求める必要は無い。

 

 目的を果たす為に『必要な物』は、全て"彼"が持っているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――生き残った男の子。"彼"の隣に立つべきは君ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 願わくば、"彼"に『生』を。

 

 

 

 

 そして―――君に『死』を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホグワーツのとある空き教室。

 

 

 

 

 ハリー達は壁際に積み上げられていた机と椅子のいくつかを拝借し、適当に並べて教材を置き、座っていた。簡素な勉強スペースだ。

 少し埃被っている教室内を改めて見回し、トムがブツクサ独り言を漏らしている。

 

 『いやぁ、本当に狭くてボロっちい教室だなぁ。うちのバスルームより狭いじゃないか。やだなぁ、マジでボロい。まるで養豚場じゃんか。うわっ、カビ臭っ。ゴーント家に比べればどんな部屋もマシだけど、うわー、これは無い。うちの寝室の方がよっぽど大きいし、ホグワーツって案外ショボい部屋ばっかりなのかもな。建設から1000年も経ってるし、経年劣化はしょうがないか』

 

 「文句言うか自慢するかどっちかにしなよ。気に入らないの?」

 

 『妥協してるんじゃないか。談話室で寝っ転がるのが一番だけど、また人気が戻ってきてるし。とりあえず人目を凌げる場所だから、不本意だけど君の見付けた空き教室に来てやったんだ』

 

 今、確実に「寝っ転がる」という怠惰の象徴たる単語が聞こえたが、彼は訂正する素振りを一切見せない。

 

 どうしてこんな所に居るのかというと―――

 

 何時誰がふっと訪れるかも分からない談話室に滞在するのは流石に限界が来た為、談話室とは別の、人目のつかない場所の捜索をトムから頼まれ、ハリーが見事ここを捜し当てたからだ。

 彼が魔法の鍛錬や、日記帳に入力されていない新しい魔法の知識を習得する為には、実体化する必要がどうしても出てくる。故に、人目を気にせずある程度自由に行動の利く部屋が要るのであった。それがここ、という訳だ。

 この場所は使われていない空き教室なので、普段は教師も生徒も入室しない。入口を魔法でしっかり施錠し、防音を施せばよっぽどの事が無い限りはバレないだろう。万が一誰かに強引に侵入されそうになっても、相手が扉を破るのに必ず少し時間が掛かる。その間に、トムは日記帳に戻ればその姿を完全に隠せる。ハリーは中にいるのを見付かってしまうが、一番最悪の事態だけは防げるのだ。

 

 ただいまの時間帯は、夜。

 「夜間の寮外での行動」は基本的に罰則対象であったが、ハリーは勉強道具を机に並べ、『来客』が来るまで自主勉をして待機していた。罰則は怖いが、ハリーにとっては重要な『来客』だった。こういう時間じゃないと、その人物とゆっくり会話する事も出来なかったからだ。

 

 『ハリー、僕があげた羽根ペンはちゃんと持ってるか?』

 

 椅子を数個繋げて並べ、一つの長いベンチを作りそこに寝転がっていたトムが訊ねた。そろそろハリーは彼の醜態にリアクションを取らない事にした。

 ハリーは鞄の中から真紅の羽根ペンを取り出して見せた。彼に貰ってからは、日記帳への書き込みにはこれを使っている。というのも、筆談する時は必ずこれだけを使用しろと言われたからなのだが。

 

 『よしよし。絶対に無くすなよ。フラグじゃないからな』

 

 「でも、羽根ペンを常に持ち運ぶってのも、なんかね」

 

 『日記帳に挟んでおいたら良いさ。直接触れてる物なら僕も感知出来るから、失くしたら一発で教えてやれる』

 

 「これ、前にお守りだとか言ってたけど、ホントに効果あるの?」

 

 『近い内に解るさ。どういう効果なのか、な』

 

 意味深な笑みを浮かべる彼を見て、ハリーは訝し気に首を傾げる。

 この羽根ペンは確かに使い心地は抜群だし、じんわりとした温もりを常に持っており、これから冷えてくる時期に入るので非常に有難かった。けれど、それ以上別の効果があるとはどうも思えない。まあ、彼が言うからには何かしらのトリックがあるのだろう。彼も触れるし。

 

 と、その時、入口の扉からノックの音が響いてきた。

 

 「あっ、来た!」

 

 ハリーは歓喜に震える声を隠さず、扉へ一目散に駆け寄り訪問者を迎える。

 開いた扉の向こうには、夜の暗闇の中でも輝く、実に見事なプラチナブロンドの髪の少年が立っていた。 

 

 「こんばんは、ハリー」

 

 今宵の『来客』―――ドラコ・マルフォイは、教材を詰め込んだ鞄を携えて微笑んだ。

 

 

 

 

 実はこの前、授業のある教室へ移動している間に、偶然にもドラコとバッタリ遭遇した事があったのだ。

 寮が別れてしまった為、すっかり会話する機会が減少してしまったハリーとドラコであったが、二人共「もう一度ゆっくり話したい」という胸に秘める想いは同じだったらしい。この好機を逃すまいと、二人はその時思い切って「一緒に勉強会」をしようという約束を結んだのだ。

 

 じゃあ、何時、何処で、という話にも発展した。

 昼間は基本授業があるし、グリフィンドールとスリザリンの合同授業であったとしても、二寮は同じ寮生同士で自然と固まってしまうしで、都合がつかない。では、いっそ夜にやってしまおうという同意の元、この時間に決めたのである。

 次に場所だが、これはハリーが提案した。この場所こそが、落ち着いて話が出来る空間だという事は発見した自分が一番把握している。邪魔はまず入らないし、夜の間、教師の目を盗み身を潜めるのにも適しているからだ。

 

 

 

 

 さて、ようやくちゃんとした再会を果たした二人だが、ドラコがハリーの後ろを見て目を細めた。パチパチと瞬きを繰り返しながら訊ねる。

 

 「あの、ハリー、そこにいる人は……」

 

 「あっ、トムのコトは気にしなくて良いよ。今寝てるから」

 

 『え?ハリー、僕がどうかした?』

 

 振り返ると、トムはハリーのすぐ後ろに立っていた。乱れていたローブやネクタイはいつの間にかぴっちり整えられている。ベンチの様に並べられていたいくつかの椅子も片付けられており、彼が寝転がっていた痕跡は何処にも残っていなかった。今のごく短時間で、どうやって直したのか。超人的な早業だ。

 ハリーは恥も外聞もなく、みっともない叫び声を上げた。

 

 「ひょええぇっ!とっトム、さっきまで寝転がってたじゃん」

 

 『僕が?いいや、そんな事してないよ。目を閉じて瞑想していたんだ。うーん、ハリーにはあれが寝ていた様に見えたんだね。はは』

 

 「だ、だって、いっぱい椅子を繋げてその上で―――」

 

 『いっぱいの椅子?僕と君の分しか置いてないじゃないか。あぁ、ハリーこそ寝惚けてたんだな。ははは』

 

 トムが上品な笑みを浮かべる。彼の本性を知らないドラコからすれば、美しい好青年にしか見えなかっただろう。

 

 呆然としているハリーを無視し、汽車内での態度が嘘の様にトムはドラコを教室へ招いた。

 ドラコは彼が此処に居る事実と、彼の優しさの両方に一瞬戸惑いつつも、素直に中へ入っていく。

 

 二人に見えないところでハリーは額を抑えた。自分の前とドラコの前じゃ態度が違い過ぎる。当のドラコもすっかり騙され、あっという間に彼に心を開いている様だった。汽車内であれだけ怖がらせたのに、こんなにすぐ打ち解けるなど……彼の演者っぷりには脱帽するしかない。

 

 ハリーはトムの肩をつついた。

 

 「トム、君、何でドラコへの態度を変えてるのさ?」

 

 『は?決まってるだろ。人間ってのはちょっと怖がらせた後に親切にするとね、割と上手い事いくんだ。特にああいう臆病な気質のある子はな。ま……これが通用するのは相手が子供の場合だけど。あいつは敵対するよりも、こうした方が効率が良い』

 

 「えー……。君は効率でドラコと仲良くするって事?」

 

 『当然だ。まあ、単純にあいつは()()()()()()()面白いと思ったし、そもそも僕はあいつの父親に預けられていたからな。マルフォイ家の動向を探るにも丁度いい機会だ』

 

 「え?ちょっとそれは初耳なんだけど―――」

 

 『後で話す。それより、君の方こそドラコと話したいんじゃなかったのか?』

 

 トムに促され、ハリーは慌ててドラコの分の椅子を用意し始める。

 並べて置いた椅子にそれぞれが座った後、二度目の出会いとなるドラコへトムが自己紹介をした。

 

 『汽車で逢った時以来だね。僕はジョゼフ・ジョン・トムソン。IQ400、ケンブリッジ大学所属、趣味は芸術鑑賞と人助けってとこかな』

 

 「トム、何で偽名使ってんのさ。しかも全部大ウソじゃん。ケンブリッジって、君ね、ここはホグワーツだっつってんでしょ。支離滅裂なウソ並べないの!もういいから、頼むから口閉じててよ。ただでさえ君の存在はややこしいんだからさ」

 

 ほとんど嘘の情報を真実の様に語る彼を押し退けて、ハリーは至極簡単に彼の本名と、自分との関係をドラコへ説明した。勿論馬鹿正直に正体を明かす訳はなく、「ふとした時から仲良くなったホグワーツのゴースト的存在」とでも言っておいた。普通の人間からしたら何だそりゃ、と思われかねないが、魔法族生まれのドラコならとりあえずは理解してくれるだろう。

 ドラコは何とも表現し難い顔で聞いていたが、彼が自分と同じスリザリンの制服を着用している事と、物腰の柔らかさ(これは演技だが)を見て少しずつ納得していった。

 余談だが、「もう少し納得のいく説明のしようがあっただろ」という、彼の威圧的な視線を受け流しながら喋るのに些か苦労したのは胸の内に秘めておこう。

 

 「へ、へえ、リドルさんって言うんだ……あれ?でも、リドルなんて家名は……」

 

 スリザリン生の癖とでも言うべきか、相手の名前から純血であるかどうかを脳内で探っているドラコを見て、トムが彼の言葉を遮った。

 

 『フォイ……いや、ドラコ、前にも言ったよね』

 

 「はい?」

 

 『呪われるよ』

 

 「えっ?」

 

 『その名前を詮索すると君の呪いが一気に進行して、二段階目に突入するんだ。具体的には全身に黒い腫瘍が発生して、そこから細胞がどんどん壊死していく』

 

 「ぎええぇっ」

 

 『特にマルフォイ家は魔法族の血が濃いから、毛細血管にも症状が出て大変な事になる。体内の方が進行が早いからね。下手すると、体中の穴という穴からダバダバ出血しちゃったりして』

 

 「ぎょえええぇぇっ」

 

 『調べなければ問題は無いから。例えばトロフィー室に行って、特別功労賞受賞生徒名なんかをうっかり見たりしない様に。じゃ、そこんとこよろしく』

 

 「きっ肝に銘じます!」

 

 己の瞳を裏側まで覗き込む様にして淡々と語るトムに、ドラコはただでさえ青白い顔を更に蒼白にさせながら叫ぶ。

 その様子をハリーはすっかり白けた目で眺めていた。

 

 (相手を思い通りに怖がらせてしまうのって……トムの先天性能力だよね、絶対)

 

 『ハリー、何か言った?』

 

 「いいや?トムってスゴいなあって思っただけ」

 

 ハリーは咄嗟に教科書で顔を隠して対応した。

 

 

 

 

 それからは、楽しい時間だったと思う。

 

 授業で解らなかった事を教え合ったり、宿題を一緒に片付けたり。そんな他愛のない、学友との当たり前の時間を満喫した。

 「角ナメクジの上手な茹で方」、「マッチ棒を完璧な針に変えるコツ」、「狼人間はどの様にして殖えるか」、「魔法界での生物・非生物に与えられる《名前》の重要性」、等々……実に多岐にわたった話題が次から次へと沸いてきて、退屈はしなかった。

 

 ダーズリー家に居た頃は碌に友達も出来ず、学校では常に孤立する日々を過ごしていた。共に学びに励んでいる筈の同級生は、ダドリーと一緒に容赦なくハリーを虐めてきたし、学校から家に帰ったとしても、そこに居場所は無かった。

 だから、こうして()()()()()と肩を並べて過ごせる時間がとても心地良かったのだ。きっと、他のホグワーツ生にとっては取るに足らない日常なのだとしても、ハリーにとっては何物にも譲りがたい、大切な至福の時だった。

 

 ―――あぁ、多分、今が人生で一番幸せなのかも……。

 

 思わず頬を緩ませて宿題と向き合っていると、隣でトムがチッチと舌を鳴らした。ドラコには聴こえない程度の声量へ見事に調節し、ハリーを小馬鹿にしてくる。

 

 『またまたぁ、妄想に浸っちゃって。馬鹿馬鹿しい』

 

 「トム、人の考えてるコト、探らないでよ!」

 

 『ははっ、そんな事いたしません。何が楽しくて、他人の考えなんかいちいち探らなきゃいけないんだよ。君は解り易いから、みーんな顔に出てるよ』

 

 飄々とした態度で言っていたが、ほんの一瞬だけ、彼の瞳に陰りが差した。しかし、意表を突かれたハリーは全く気付かなかった。

 

 「えっ、えっ、そうなの?」

 

 『そうさ。ニマニマしたかと思うと、瞬きの回数が増えて薄っすら水分が滲んで、顔が火照って、また嬉しそうにニヤケ顔になったりして、ついでに鼻の穴も膨らんで。ああ、キモいキモい。ほらほら、ドラコは傍に居るんだから、もっと友情話に耽るなり抱き付くなり、ご自由にしたらあ?』

 

 「君が居ると、そんなに自由に出来ないでしょ!」

 

 大声を上げてしまってから、ハリーは「あっ」と思った。冷静に考えると、恥ずかしい事を言ってしまった気がする。ドラコが驚いた表情をして赤くなっていた。

 

 「いや、その、ドラコ、ちっちっ違うよ。僕、色々話したいだけで、自由にするって、そっそういう変な意味で言ったのと違うよ」

 

 『ハリーにそういう趣味は無いもんね。ちょっと想像してしまっただけだね』

 

 「そう、ちょこっと想像しちゃって……トム!」

 

 ムキになって怒鳴り声を上げるハリーが、笑いのツボを刺激した。トムは思わずくっくっくと悪役じみた笑い声を漏らす。それを見て、より一層ハリーが顔を真っ赤にさせて突っ掛かってくる。

 その光景が何だか()()()()()、またからかってやる。ハリーの態度が荒々しくなった。これが()()()()()だ。しかしハリーは、見ていれば分かるが本気ではない。本気で怒りを滲ませてはいない。

 

 脳裏に、ある男女の姿が一瞬過った。チリっと目の奥に軽い痛みが走り、視界に赤い色がチラつく。

 ……まだ覚えているのは自分でも驚きだ。50年、いや何十年過ぎても、この記憶は決して色褪せないのだろう。心の奥に深く根を張って、引き千切る事が不可能なぐらいに。

 

 ハリーがしつこく掴み掛ってくるので、トムはスパーン!と華麗にその頭をはたいてやった。そんな二人の様子を見ていたドラコは、思わず「ぶっ」と吹き出した。

 

 「リドルさんとハリーって、仲が良いんだな。何となく外見も似てるし……もしかして、実は生き別れの兄弟だったりするのか?」

 

 「まさか。ドラコ、バカなコト言わないでよ。僕、一人っ子だよ」

 

 「え、だって、そう見えるけどなぁ」

 

 トムが先程の喧騒とは打って変わって、驚く程優しい手付きでハリーの頭を撫で、穏やかに微笑む。普段ならまず絶対にしない事だ。

 

 『ハリーは何と言うか、弟みたいな感じなんだよ。面白いし単純でお馬鹿さんだし、ほっといたらすぐに野垂れ死にそうな間抜け感があるけど、可愛いなって思うんだ。ねぇハリー、いつか僕、義兄(にい)さんになってあげようか』

 

 「絶対嫌だ。完全阻止の為、全力で抵抗する」

 

 『このドアホが』

 

 ハリーにだけ聴こえるドスの効いた小声で、トムが呟いた。

 ドラコは控えめだがクスリと笑う。

 

 「仲良いよ……とっても。羨ましいくらい」

 

 ハリーは心外だと言わんばかりに鼻から息を吐き、隣に座るトムに視線を向けた。

 

 トムは背筋をピンと伸ばし、椅子に正しい姿勢で座っている。真剣な表情で、机上に開かれた本をひたすら読んでいた。

 凛々しいというか、張り詰めた美しい横顔を見せる彼は、この前まで呑気に独り言を呟き、寝転がり、大の字になっていた人物と同一だとはとても思えない。

 

 彼の優等生ぶり(表向き)をチラリと見たドラコは、自分も見習わねばといった感じで教科書へ目を走らせる。

 

 ―――全く、こいつは。

 

 天井を仰いで、ハリーは肩を竦めた。

 

 この演技力は、最早芸術品だ。どう振舞えば、他人にとって魅力的に映るかちゃんと計算しているのだ。そういう打算的な本性も、絶対悟らせない。好青年の皮を被り、時には凡庸な人間を演じ、裏表を感じさせない。

 心を読める人間でもない限り、彼の本当の姿を見破る事は出来ないだろう。まるで、獲物を油断させて仕留める鋭敏な狩人の如き狡猾さ。こうして、実際に他人を騙している光景を目の当たりにさせられると、やっぱり呆れる。

 

 ハリーは、普段より姿勢が正しく、表情も口調も柔らかくなっている―――端的に言えば、別人と化している彼に小声で話し掛けた。

 

 「トム、何でドラコの前で猫被りしてるの?」

 

 『しょうがないだろ。一応、どっちもスリザリン生なんだから。後輩の前でちゃんとした上級生振舞うの、当然じゃないか』

 

 「振舞う必要、ある?」

 

 『僕だって1クヌートの価値も無い、こんな面倒な事したくないけどな』

 

 「だったら」

 

 『ドラコの為さ。あいつ、スリザリンの模範生っていうのに憧れてるみたいだし、イメージ崩すの悪いだろ』

 

 「崩れるの、時間の問題だと思うけど」

 

 『アホか。そんな事より、君こそ友達の前で宿題なんか広げるもんじゃないぞ。こういうのは、一人で集中しないと片付かないものだって決まってるんだから』

 

 「良いじゃん。トムに訊いたってすんなり教えてくれないんだもの」

 

 『当たり前。自分の力でやらないと成長しないんだ。そうやってなんやかんや誰かに頼ってたら、いつか足元掬われるぞ。いざって時に信じられるのは、己の力のみさ』

 

 「うっ。耳が痛い……」

 

 それを言われると、肩身が狭い。

 

 自分が生き残ったのは母のお陰だし、マグル育ちなのに授業でそこそこ良いスタートを切れているのも、彼のお陰だ。自分だけの力で何かを成し遂げた事は、まだ一度も無いと言えるのかもしれない。

 そして少し認め難い事なのだが、彼は頭の回転が優れているというか、要領が良いというか、とにかく、少なくとも優秀な部類に入る人間だと感じさせられる事がある。他人の『記憶』を利用しているとはいえ、魔法の知識を既に自分の物にし、自在に扱えているところなどがまさにそうだ。

 

 魔法とは、単に呪文を唱えるだけではない。

 適切な知識、具体的な想像力、呪文毎に定められた杖の振り方、正しい発音……全てを正確に記憶し、行動しなければ発動はしない。発動出来たとしても、どれか一つでも欠けている部分があれば暴発したり、思い通りの効果を発揮してくれなかったりする。だというのに、彼は今まで自分の前で失敗した事がない。魔法とは縁の無い世界で過ごしていた筈なのに、ほとんど馴染んでしまっている。50年間こちらで熟練度を上げたらしいとはいえ、魔法を扱う時の手際の良さは惚れ惚れするぐらいだ。

 自分は例え50年ホグワーツに通ったとしても、彼の様になれるとは未だに思えない。想像が出来ないのだ。彼と同等、もしくは彼を越える魔法使いになれる未来を。マグル育ちだから上手く自信が持てない、という理由もあるけれど。

 

 中身は置いておいて、彼の魔法の腕()()は素直に尊敬する。この前なんかは無言で呪文を発動させていた。

 ……あれは、良くない魔法である事なのは解るけれど、それでも単純に凄いと思っている。無言で呪文を発動させるだなんて、どうやってやったのかあの時は驚愕と混乱の余り聞きそびれてしまったが……。

 

 「トム、君はカッコ良いよ。頭も良い。認める」

 

 『は?急に何を言い出すんだ?それを言うなら、ハリーだって平均以上は行ってるよ』

 

 「ありがとう。でもね、君、二面性と性格は最悪だよ。性格はこれ以上治らないとしても、その猫被りだけはやめてよ。君の態度の豹変っぷりに、傍で見てる僕の精神が耐えられない。トムは絶対、『アホ』とか『ぶっ飛ばす』とか言ってる方が良く似合うよ」

 

 『うわっ、この子ってば、人前でなんて事言うんだ。違うよドラコ。僕、そんな事言わないからねぇ』

 

 ドラコに愛想の良い微笑みを向けながら、トムは彼に見えない様ハリーの脇腹をつねる。

 

 『いやあ、その辺の凡人共と違って頭脳明晰でごめんね?ハリーってば、何か僕の賢さに嫉妬してるみたいでさぁ、変な事言い出すんだよ』

 

 「よくも堂々と、頭脳明晰だなんて自分でも言えるね」

 

 『だって事実だもーん』

 

 「超ウルトラ捻くれナルシストだと思わない?ドラコ」

 

 「えっ?いや……良く分からないけど」

 

 二人の会話の全てをはっきり聞き取れなかったドラコは、曖昧な表情を浮かべる。

 

 「そういえば……頭脳明晰といえば、あのグリフィンドールの……」

 

 ふと、記憶を辿る様にドラコは目を伏せ、少し悔しそうな表情へと変わった。

 

 「穢れた血、いや……マグル生まれの、確かグレンジャーとかいったか……純血でも無いのに、どうしてあんなに成績の方で出しゃばってるんだ」

 

 ドラコはハリーが居るせいか、辛うじて酷い単語は訂正した。

 

 ドラコが垣間見せた一面に、ハリーは少々面食らう。

 彼が、先祖代々魔法族である事に誇りを持つ家系である事は知っている。その為、どうしてもマグルの出身である生徒に対しては冷たい態度を取ってしまうのだ。特にスリザリンはそういう傾向が強いと聞いている。それ故か、他寮との仲があまりよろしくないのだ。

 

 「ドラコ……マグルの子でも、凄い人は少なからずいると思うよ」

 

 ハリーはドラコの考えを真っ向から否定せず、やんわりと己の意見を述べた。

 両親は魔法使いだったが、自分の育ちはマグルだ。魔法の「ま」の字も知らずに育ってきた。トムによる知識の伝授があった点では他のマグル育ちの子よりかは恵まれているけれど、今の話に出ているグレンジャーという女子は、自分より良い成績を積み重ねているのを知っている。というのも、授業でちょくちょく彼女が加点されるのを見てきたからだ。

 

 家系が家系なので、ドラコに染み付いた思想はそう簡単には拭えないだろう。それでも、ハリーは彼に同調してマグル生まれを貶す事も、彼に反対して今の関係を崩す事もしたくはなかった。

 

 『そりゃそうだ。二人は知る由も無いだろうけど、あの子は将来化けるぞ』

 

 横で聞いていたトムが口を挟んだ。将来化ける、という言葉にドラコが反応を示す。

 

 『その子が証明している様に、マグル生まれだからって魔法の才能が劣っている訳じゃない。大体、英雄王からしたらそもそも人間ってだけで皆、「雑種」だ。純血だとか穢れた血だとか、区別するだけ無駄さ』

 

 「トム……話を遮るようだけど、英雄王って誰?」

 

 『闇の帝王よりは偉大な統治者だと言っておくよ』

 

 彼の言葉に、ドラコは毒気を抜かれた様に息を吐いた。その表情は強張ったままだ。マグル生まれが自分達と同等の場に並んでいる、もしくは追い抜こうとしている事実に、まだ完全に納得し切れていないのだろう。無理もない。

 ハリーは場の雰囲気を変えようとして、話題をグレンジャーの家族へと移した。

 

 「あ、あのね、この前チラっと聞いたんだけど、その子……ハーマイオニーの両親はマグルの世界で、歯医者さんをやってるんだって」

 

 『医療詐欺とかして稼いでる訳か』

 

 「トム、君は何で、そういう捻くれた発想しか出来ないの?」

 

 息をする様に出て来た彼の発想に、ハリーは露骨にため息を吐いて表情を歪めた。

 

 『親ってのはそんなモンだろ?』

 

 「君の親って―――」

 

 どんな人だったの、と言い掛けて、ハリーは喉の奥に呑み込んだ。これは、軽々しく訊ねてはいけない事だ。

 「家族」、「両親」。これらの言葉を耳にしている時の彼は、必ずと言って良い程その瞳に暗い感情が渦巻いている。本人に自覚があるのかないのかは分からないが。

 逢った事が無くても、両親の死さえ恐れない我が子への愛情を知っているハリーには、彼の感情の正体を知る事は出来ないし、知ったつもりになってはいけなかった。中途半端な同情も慰めも、彼を不快にしかさせない―――それだけは知っているから。

 

 ハリーの強張ってしまった表情を見て、トムはふっと笑った。

 

 『ハリーはホント、甘ちゃんだな。外歩いてたら、蟻にウジャウジャ(たか)られるぞ』

 

 「余計なお世話だよ」

 

 『まっ、良いさ。ついでに教えといてやるよ。ハリーにとって有益な情報か分からないけど……』

 

 「情報?」

 

 『ヴォルデモートの父親』

 

 自分にだけ聴こえる様に囁かれたその単語に、ハリーは思わず息を呑んだ。

 

 魔法界を絶望に叩き落とした魔法使いの、父親。一体どんな極悪人なのだろう?

 どうも魔法界のほとんどの人間は、ヴォルデモートの存在を解り切ってはいても、彼の家系については誰もよく知らないらしい。だから、この情報はヴォルデモートの分霊である彼しか知らない貴重な物だ。

 ドラコの耳には入っていない事を確認しつつ、ハリーは彼の言葉に耳を傾ける。

 

 『マグルだった』

 

 「は?」

 

 全神経を研ぎ澄ませて話の続きを聞こうとしたハリーは、間抜けな声を上げた。それぐらい、衝撃的な内容だった。

 あの、魔法界を牛耳ろうとした恐ろしい闇の魔法使いが―――才能も実力も兼ね備えた男に、非魔法族―――マグルの血が入っている?俄かには信じられない。

 

 『裕福な家の男だったみたいだな。魔女と結婚したけど、すぐに自分だけ実家に逃げ帰ってたよ。妻子を捨てるぐらいなら、そもそも結婚するなよって話だけど……こういう家庭の事情は良く解らないな』

 

 どうやら、随分と複雑な家庭らしい。自分なら、片方でも肉親が傍に居てくれるだけでマシだと思ったが、話の続きを聞く限りそうはいかなかったようだ。

 

 『魔女の方はどうなったかまで知らないけど……あいつは孤児院育ちだった。多分、子供より先に死んだんじゃないか?病気か何かで。それで孤児院に預けられた、とか』

 

 孤児。自分と同じだ、とハリーは気付いた。何となく嫌な共通点だ。ダーズリー家に預けられるぐらいなら、孤児院の方が良かったのかもしれない……と、チラリとでも考えてしまった自分が少し恥ずかしい。

 

 『父親は健康そのものだった。でも子供がいる事は知らなかったらしい。こいつ、最初は結婚詐欺師か何かだと思ったけど、その必要が無いぐらい金はあったんだよな。相手の魔女もスリザ……ゲフン、魔女の方も優れた魔法使いの血筋とはいえ、家自体は廃墟同然で碌に財産も持って無かった。詐欺目的でも無いのに、マグルの男が何で魔女と一緒になろうと思ったんだろうな?一緒になった結果、こいつは―――最期は死の呪文を受けて、あっさり死ぬ羽目になった』

 

 術者が誰かは、敢えて言わなかった。言われなくても、誰が犯人かはハリーにも何となく伝わってきた。彼は間髪入れずに、少し恐ろしくも感じる無感情な声で続ける。

 

 『父親―――トム・リドルとかいうアホなマグルは、一夜にして家族諸共殺されたって訳だ。ハリー、君も気を付けなよ。こいつみたいな、外見と財産だけが取り柄の調子こいた単純ボケ男は、割とあっさり身を滅ぼす羽目になるっていう良い教訓だ。こういう消費期限の過ぎた腐り掛けの食品みたいな大人にならないよう、気を引き締めて生きていかないと』

 

 「……トム、君って本当に悪いよね」

 

 『顔色?』

 

 「性格。一応は自分の父親にあたる人のコト、よくそこまでボロクソに言えるところ」

 

 ここまで捻くれて育った原因の一つが"その人物"なのかもしれないが、だとしても捻くれ過ぎじゃないだろうか。『向こうの世界』のだろうが『この世界』のだろうが、お構いなしに罵倒の嵐だ。

 

 ハリーは再びため息をついた。

 ヴォルデモートの父親は、特別悪人という訳でも無かった。そもそも魔法の使えないマグルだった。何だかちょっと拍子抜けだ。気を取り直して、机上に図書館から借りてきた本を広げ、視線を向ける。

 するとその本を覗き込んで、ドラコが言った。

 

 「ハリー、何を調べているんだ?手伝おうか?」

 

 「あぁ、うん、ありがとう。魔法界の人のコトなんだけど……。あっ、トムが邪魔なら外に出そうか?」

 

 『おいコラ。死んでも出ないからな』

 

 トムの突っ込みは聞き流し、ハリーは『現代の著名な魔法使い』という本をドラコに見せながら言った。

 

 「実は宿題とは関係無いんだけど、僕、ニコラス・フラメルっていう人を調べてるんだ。でも、どこにも載ってなくて……。別の本じゃないと駄目なのかなぁ」

 

 ハリーは『賢者の石』の制作者であるニコラスを独自に調べようとしていた。

 トムからその人物名を聞いた時、何となくどういう魔法使いなのか知りたいという気持ちが沸いてきた。知ったところで何かがあるという訳でもないが、個人的な好奇心を満たす為、暇を見つけて図書館で彼の詳細が載ってそうな本を捜索していたのだ。

 

 「ニコラス・フラメル……その人、うーん……、どこかで……」

 

 ドラコは首を傾げながら唸った。

 

 「知ってるの!?」

 

 「えっと、どこかで聞いたような……」

 

 「思い出してよ。この人のコト、知りたいんだ」

 

 「うう~ん、あぁ、ちょっと待ってくれ……。もうちょっとで出てきそうなんだけどな……どこで見たかなぁ」

 

 すると、二人の話を聞いていたトムの腕がすっと伸びた。サンザシの杖先が、ドラコの額に突き付けられる。

 

 『ドラコ、目を閉じてみて』

 

 「えっ?」

 

 『ニコラス・フラメルという名前に集中して。全神経をそこに持っていくイメージで。思い浮かべるんだ、この名前だけを考えて……』

 

 ドラコがあやされる赤子の様に、虚ろな様子で瞼を閉じた。その後ゆっくりと胸を上下させ、深呼吸を繰り返す。

 数秒経って、トムが杖を除けてパチリと指を鳴らした。途端、弾かれた様にドラコが意識を取り戻す。

 

 『どう?思い出した?』

 

 得意げにトムが訊ねる。

 今のは、相手の記憶の引き出しを突っついて、思い出すのを手助けする一種の催眠術に近い魔法だ。『記憶』に関する分霊箱たる彼だからこそ、容易にこなせる芸当であった。

 

 ドラコがパチクリと瞬きを繰り返し、大きく頷いた。

 

 「うん。何か、急に思い出せて……。リドルさん、今のは何かの魔法?」

 

 『ははは。僕、別名「偉大なる魔法使い(グレイテスト・ソーサラー)」と呼ばれてるんだよ』

 

 「どこの誰が呼んでるのさ。初めて聞いたよそんな呼び名」

 

 『あれ?ハリーは「ちんちくりん眼鏡掛け機」って呼ばれてるじゃないか。おチビちゃんで眼鏡が本体なとこ、可愛いよね』

 

 「トムこそ、『性悪捻くれジイさん学生バージョン』でしょ」

 

 二人が睨み合って悪口の応酬を繰り広げていると、ドラコがいきなり立ち上がり置いてあった鞄の元へ歩いて行った。

 突然の行動に、二人は同時に彼が移動した方向を振り向いた。動きが完全にシンクロしていた。タイミング、首を回した角度、瞬きの回数、全てが完全に一致していた。

 一体何をしているのだろうと考えていると、ドラコが鞄の中から巨大な古い本を両手で抱えて戻ってきた。

 

 「あった!えっと、この人、このページに……」

 

 素早く本を捲っていき、お目当てのページに辿り着く。見開きを二人に見える様突き出した。

 二人はその見開きに注目し、トムは黙読で、ハリーは音読で読み進めていった。

 

 

 

 

 錬金術とは、「賢者の石」と言われる恐るべき力を持つ伝説の物質を創造する事に関わる古代の学問であった。この「賢者の石」は、いかなる金属をも黄金に変える力があり、また飲めば不老不死になる「命の水」の源でもある。

 「賢者の石」については何世紀にも渡って多くの報告が為されてきたが、現存する唯一の石は著名な錬金術師であり、オペラ愛好家であるニコラス・フラメル氏が所有している。フラメル氏は昨年六百六十五歳の誕生日を迎え、デボン州でペレネレ夫人(六百五十八歳)と静かに暮らしている。

 

 

 

 

 読み終えて、トムが興味深そうに訊ねる。

 

 『これ、図書館の本?』

 

 「あ、うん。借り出してたんだ。分厚いもんだから、興味を引くページだけ飛ばし飛ばしで読んでたんだけど……その時に、チラっとニコラスの部分を見て。多分、それでうろ覚えだったんだな」

 

 「ニコラスさんって、オペラが好きなんだ、意外。ろ……六百……すっごい年齢だね」

 

 『ふーん。……金属を黄金に、不老不死を可能に、ねぇ』

 

 前半の部分は声に熱が籠っていたが、後半の部分はやけに冷めた調子で語るトムに気付き、ハリーは思った事を正直に問い掛けた。

 

 「トム、もしかして今、頭の中を金製品が飛んでない?」

 

 『旋回してるな。なるほど、「賢者の石」の効果は、人を不老不死にさせるだけじゃなかった訳か。僕もこの石のもう一つの効果まではうろ覚えだった』

 

 言いながら、トムがうっとりした目付きになっていく。何を考えているか、今なら開心術者でなくとも察せる状態だった。

 

 「トム、今、金銀財宝に囲まれてない?」

 

 『囲まれてる。どこを見ても金ピカだ。はぁ……こんな石存在してたら、真面目に働いてる大人が可哀想に見えてくるな』

 

 やけに色気を含んだため息を吐く彼を見て、ハリーは逆じゃないかと思った。普通は皆、不老不死の方に惹かれるもんじゃないだろうか。なのに、そちらの方には興味なさげだ。まあ、彼は親族に頼らず独りで生きてきたので、こういう金銭に関連する話には本能的に飛び付いてしまうのも仕方がないのだが。

 ……そういえば、ある時から一人で暮らしてきたとは聞いていたが、彼の両親は一体どこに行ったのだろう?

 

 「不死の方には興味ないの?トム」

 

 『うん?いや……死にたくはないけど、生きる意味も無いしな。長生きなんて嫌だね。それなりに生きて死ねるのが最高……なんだけど』

 

 言い掛けて、肝心な事を思い出す。

 今の自分は何年経とうとも、決して"老いない"。16歳のまま、時の流れから弾かれて存在している。つまり、"自然に死ねない"。

 殺されるのはゴメンだが、かといって永遠と生き続けなければならないのも望んじゃいない。とある柱の男みたいに、「考えるのをやめた」状態に追い込まれるのはノーセンキューだった。

 

 『まあ、これも一つの課題だな……』

 

 やらなければいけない事は山積みだが、今あれこれ悩んでいてもしょうがないのですぐに切り替える。

 

 『しっかしまあ、「賢者の石」ねぇ。ある意味で魅力的だけど、ある意味では迷惑だな。こんな物があるせいで、あいつが復活する確率が増えるんだから』

 

 「え?あいつ?」

 

 謎の単語にドラコが目を丸くする。トムは作り笑いを浮かべて誤魔化した。

 

 『いや、ドラコには関係無いさ。わざわざ教えてくれて感謝するよ。それと、ちょっと……君に訊きたい事があるんだけど……』

 

 今日、自分がわざわざドラコの前に姿を現したのは理由がある。

 一つは、彼ならば自分の存在を他人に話さないから。もう一つは、彼にしか訊けない事があったから。

 

 『……君の父親って、ウィーズリー家と確執でもあるの?』

 

 自身ではなく、家族に対する質問にドラコは数秒間ポカンとした表情を浮かばせた。

 

 『いいや、ちょっとね。君の父親……誰だっけ……あの、死喰い人の癖にヘタレドジな男、あっ、いや、ルシウスさん。ルシウスさんがウィーズリー家の末妹に、何か変な物とか送り付けようとしてないか、気になってね』

 

 「ち、父上が、ウィーズリーの妹に?……いや、僕はそんな事、全く聞かされて……」

 

 『……ふーん、まあそうか。確かに、君は()()()()()()()()を知らなかったもんね。うーん……いや、日記帳が無くなったぐらいで、ダンブルドアの失墜を諦める訳は無いか……?』

 

 「あの、父上が何か……?」

 

 『いや、気になった事をはっきりさせたかっただけさ。今のは忘れて欲しい』

 

 ハリーとドラコの二人に聴こえないぐらいの小声で、思わず呟いていた。

 

 『……()()()こそは平和な学校になって欲しいもんだ』

 

 『秘密の部屋』事件は間違いなく起こる事は無いが、ダンブルドアの追放を企んでいるルシウスは健在だ。

 もう日記帳はルシウスの手元に無く、『道具』を利用しての間接的な校長の追放はほぼ不可能だろう。

 彼が、『物語』とは別の方法を使って、何かしらの悪事を実行に移さなければ良いのだが……。

 

 『……()()が人でなしだと、子供は苦労するよねぇ』

 

 「え?」

 

 『いーや、何でもないさ』

 

 父親という生き物には、生憎だが嫌悪感しか湧いて来ない。

 しかしドラコの父親、ルシウスは……覚えている限りでは、極悪人という訳ではなかった。

 

 『物語』では、直接誰かを殺めていた描写は無いし、極度に卑劣な悪事を働いた事も無い。もしかしたら自分が知らないだけで、裏ではとんでもない事をやっていた可能性もあるが。

 ルシウスのやった事といえば、せいぜい自分の利益を追求して、何の罪も無い子供に『呪具』と呼んでも差し支えない物を擦り付けたぐらいだ。もしも順調に事が運んでいれば、死人が出ていたレベルで凶悪な行動だったが、結果としてそれは未遂に終わってしまった。

 中途半端に狡猾なせいで企みが失敗してしまうドジ属性が、彼を『救いようのある小悪党』にしていたのだ。

 

 ―――まあ、死喰い人となってヴォルデモートの凶行に賛同している時点で、善人では無い訳だが。

 

 それでも、子供をちゃんと愛してはいるし、死喰い人から一応は足を洗っている点を考えると、()()()()()()まだマシな部類だ。

 ハリーがドラコから聞かされた話を自分なりに整理すると、確か彼は、ヴォルデモートが姿を消したのに便乗して、「操られていた」と嘘の証言をして罪を逃れた筈。だから、息子のドラコは悪評を流される事はあれども、こうして平気でホグワーツに通えている。

 非常に姑息な人間だが、ヴォルデモートに心酔して、投獄されようとも彼に付き従う姿勢が無い辺りは悪人に成り切れていない。子供の存在もあったから、だろうか?

 

 とにかくも、見苦しい嘘まで吐いて死喰い人から脱退したのならば、もうこれ以上何もしないで欲しい。

 ルシウスさえ何も起こさなければ、来年いっぱいは平穏な魔法学校となるのだ。この平穏な時間を利用して、やりたい事もある。

 

 しかし……どうしてか、二年目もゴタゴタしそうな予感がするのは何故だろう。

 これに限っては出来るだけ外れて欲しい。切に願う。

 

 「あ……ふぁぁ」

 

 トムが真面目に考えを巡らせている横で、ハリーが間抜けな声を上げて欠伸をした。

 

 流石にそろそろ寝ないといけない時間だろう。下手に徹夜して勉強に勤しんだところで、体力を消耗するだけで効率が悪いだけだ。楽しい時間があっという間に終わってしまうのは惜しいが。

 ドラコは伝染しそうになる欠伸を噛み殺しながら立った。

 

 「今日は、もう寝ようか。明日もまた授業があるしさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 空き教室を出てそれぞれの寮に帰る道の途中で、トムとハリーは歩きながら日記帳を介して筆談していた。トムが実体化している状態でも、筆談は可能なのだ。ドラコからすれば、ハリーは宿題をしている様にしか見えないので問題は無い。

 

 "ハリーって、ドラコの前で少しいい子ぶり過ぎなんじゃないか?"

 

 『トムにだけはいい子ぶってるとか言われたくないから。何さ、スーパー猫被り人間のクセに』

 

 "何だと。僕は言葉遣いや人格を、時と場所と人によって適切に変えてるだけだ。ハリーこそ、単細胞メガネザルじゃないのか?"

 

 『何で僕がメガネザルなのさ。このズルズル蛇男』

 

 "蛇……僕みたいな誠実人間に向かって、よくも、"

 

 『捻くれ蛇。イジワル蛇。化けの皮ズルズル蛇』

 

 "癖毛チビ。アホモンキー。人間掛けた眼鏡"

 

 ドラコには見えない帳面上で罵り合いながら歩いていると、廊下の分かれ道に差し掛かった所でトムがわざとらしい声を上げた。

 

 『あっ、ゴメン。僕……お金落としちゃったみたいで。ドラコ、先に寮に行っててくれる?』

 

 トムがそう言って、ハリーの肩を掴んで立ち止まった。何かを探す様に後方を振り返る。ハリーは突っ込みそうになるのをすんでのところで呑み込み、彼に従って同じく歩みを止めた。

 ドラコは不思議そうな顔をしたが、「じゃあ、お休み」とハリーに告げてスリザリンの寮があるであろう方向へ歩いて行った。

 

 ドラコが向かった廊下の方から彼とは別の、こちらへ近付いて来る足音が遅れて響く。が、彼の足音と相殺されて、ハリーは特に気付く事は無かった。

 

 ドラコが完全に立ち去ったのを確認して、ハリーは怪訝そうな顔を隠さずにトムに問い掛けた。

 

 「トム……実体の無い君が、いつお金なんか落とすのさ。そもそも持ってないでしょ」

 

 『いつでもどこでも誰のでも、落ちた金品は全部僕の物だ』

 

 「そういうコトじゃなくて。君が意味も無く立ち止まるワケが無いじゃん。何を考えてこんなウソ、」

 

 言い掛けて、不意にハリーの言葉が途切れた。

 

 

 

 

 ―――世界が一瞬、真っ赤に染まったかと思った。

 

 

 

 

 膝から力が抜ける。視界から全てが消え失せる。壁も天井も廊下も―――傍にいる彼さえも、全てが等しく消失した。

 何が起きたのか、どうしてこうなったのか、原因を推測しようとして、一呼吸遅れてやってきた痛みにその思考を抉られた。

 

 「ッッッ……!!あ、あぁッ、ぁぁぁ――――――………!!!」

 

 かろうじて絶叫を上げるのは抑えられたが、それでも噛み締めた唇の隙間から悲痛な声が漏れる。

 

 額だ。額の傷が、痛みの発生源だ。突き刺す様な激痛が、額を中心として落雷の如く脳にも流れ込んでくる。頭が爆発したかとさえ錯覚した。

 既に己の体は床に倒れており、起き上がる事さえ出来ない。視界が赤く点滅していて、今何処に居るのかも認識不可能だった。

 

 激痛に苛まれた状況の中、こちらへ向かってくる足音がコツコツと響いてくる。それも段々とくぐもった様に小さくなっていく。聴覚も狂ってしまったのだろうか。

 

 誰かが、近付いて来る―――そう解っていても、どうしようも出来ない。

 

 ドラコが戻ってきてくれた?それとも他の生徒?先生だったらどうしよう?彼は、ドラコ以外の目に入ってはいけないのに―――ぼんやりと、そんな考えが頭をよぎる。

 今、彼はどうしているのだろう?あの足音は、彼にも聴こえた筈だ。既に日記帳へ身を隠した後だろうか。それとも、まだ近くに―――?

 

 何とか周囲の状況を確認しようとして、首だけどうにか動かしたその時、ハリーは凍り付いた。

 

 

 

 

 先生だった。クィレル先生。

 

 クィリナス・クィレルが、ハリーの方へ歩いて来ていたのだ。

 

 

 

 

 ドラコが去っていた方の廊下から、普段通りの歩調で近付いて来て―――床に崩れているハリーに気付くと、急停止して表情を一変させた。

 

 「ポ、ポ、ポッター君?こ……こんな時間にうろついて……いや、ど、どうしたのですか?」

 

 目を見開いて、苦しそうなハリーをまじまじと見つめてくる。どうやら、偶然通り掛かったのだろう。

 普通なら、夜中に寮外に居る事を知られた時点で罰則を貰うのだが、廊下のど真ん中で倒れる様な生徒に限ってはそうではないらしい。クィレルは罰則よりも、ハリーの容態の方に意識を持っていかれているようだ。

 

 「せッ……んせ……」

 

 彼に助けを求めようとして、踏み留まる。

 両親を殺し、自分さえも殺そうとした男が、その肉体に隠れている。そんな人間に助けを請うなど、こんなにも滑稽な話があるだろうか?

 

 そうは思っても、ハリーは迷っていた。

 様子を見ている限り、ヴォルデモートに取り憑かれているとは到底思えない。普段の授業中の態度一つ取っても、彼は悪人に協力している様な人間には見えないところがあった。トムの言葉を疑う訳でないが、本当に……今、目の前にヴォルデモートが潜んでいるというのだろうか。

 

 素直に助けてくれと懇願するか、転んだだけだから大丈夫と伝えるか。

 

 ハリーが痛みに全身を震わせながら、二つの選択肢を前にして葛藤していると、 

 

 『うわぁ、大変。ハリー、大丈夫?』

 

 いつもより確実に、1オクターブは高いトムの声がした。

 

 ハリーは激痛に苛まれる意識の中、目線だけで声の方向を必死に確認する。気付くと、身を隠す気も正体を隠す気もサラサラない様子のトムが傍に立っていた。第三者から見れば、心の底から心配そうな表情を顔一杯に浮かべて、こちらを見下ろしている。

 

 「な、なん……で……」

 

 どうしてまだここにいるんだと訴えたかったが、口から出てくるのは呻き声だけだった。痛みの余り、質問や忠告を告げるどころではない。

 額の傷を、頭蓋骨にヒビが入るんじゃないかと思うぐらいの力を込めて、全力で抑える。そうでもしないと、どうにかなりそうだった。

 

 駄目だ。彼の意図が解らない。苦痛に支配された頭では、碌に思考もまとまらない。

 よりにもよって、ヴォルデモートの憑依先であるクィレルの前に姿を現すなどと、一体何を考えているのだろう?

 さっきの足音は、絶対に聴こえていた筈だ。彼ならば既に身を隠していると思っていたのに……。

 

 ただ、彼の事だ。何の考えも無しに、わざわざ敵の前に自分の身を晒すなどといった暴挙に出ない筈。絶対、何かしらの策略があるに違いない……ハリーはそう祈るしか無かった。

 

 ふと気が付けば、トムの顔が目の前にあった。彼は膝をついて、ハリーに目線を合わせる格好になっている。美しさと妖しさを秘めた赤い瞳が、明確な意思を以てハリーの瞳の奥を覗き込んだ。たったそれだけの動作で、「黙っていろ」という無言の指示が伝わってくるのを感じた。

 

 トムはハリーの肩を掴んで、ガクガクと軽く揺さぶった。普段の彼の態度を知っているハリーにだけ分かる、演技丸出しの、情に満ちた声で語り出す。

 

 『すみません、先生。この子、毒蛇に噛まれても、ゲイ・ボルグを投げられても、カプコン製のヘリと一緒に墜落しても、死なない様に見えるでしょう。でも、額の古傷がたまに悪さするんですよ。おまけに、結核とインキンタムシと脱毛症もあるんです。大変だよ、ハリー。大丈夫?気をしっかり持って。息が苦しいの?体が痒いの?毛が抜けるの?ハリー』

 

 所々、この世界の人間には理解出来ない単語を使用しながら、ハリーの体を物陰にしてトムが腕を動かした。手品師の如く、クィレルに気付かれない様最低限の動きで杖を振るう。続いて、近距離に居る筈のハリーにさえ、集中していないと聴こえない小声で《エピスキー》と唱えた。

 途端に、額を貫いていた激痛が熱を持った感覚が襲う。それは一瞬の事で、次に、氷を押し付けられた様な急激な冷たさが額を中心に広がっていく。心地良い冷たさだ。

 

 完全とは言えないが、それでも最初の頃より痛みが和らいだ気がする。思考力が戻って来る。だが、彼のアイコンタクトに従い、余計な口を挟む事は何とか堪えた。

 そんなハリーの様子の変化を観察していたトムは、更に高い声を上げた。ハリーからすればわざとらしさ増し増しなのだが、クィレルからすれば不安で焦燥している様に聴こえただろう。

 

 『ハリー、しっかりして。悪化したなら、傷を付けた魔法使いのせいだからねぇ。死んだら、化けて出ても良いんだよ』

 

 クィレルの肌が、遠目からでもゾワリと粟立った気がした。

 彼はパクパクと金魚の様に口を動かしながら、声を絞り出そうとする。こういう人間なのだ。下級生だろうが上級生だろうが教師だろうが、誰かと対話する時に決まって言葉がつっかえてしまう。ほとんどの人間は、吃音症でも患っているのかもしれないと思う筈だ。

 しかし、彼のこれは演技である。ヴォルデモートをその身に宿していると知られぬ様、疑われぬ様、わざと臆病者を演じているのだ。とはいえ、ハリーは肝心な彼の本当の姿を見た事が無い。トムに教えてもらわなければ、ハリーもクィレルを疑いやしなかっただろう。

 

 「たたっ、体調がす、優れないのですね……。よっよろしい。い…医務室へ連れて行ってあげなさい。き、君は―――」

 

 名前を呼ぼうとして、クィレルは目の前の青年の名を知らぬ事に気付く。

 

 どれだけ彼が頼りなさそうで、臆病で、そしてそれが演技だとしても、仮にもホグワーツの一教師。生徒の名前は、全てでは無いけれど大体は分かっている。

 

 そんな教師が、監督生のバッジを付けているスリザリン生の名を。

 他の生徒より存在感のある監督生の名を。

 記憶に残っているのが当たり前の生徒名を。

 

 言い当てる事が、出来ない。

 

 その事実に今ようやく気付いたのか、言葉が完全に止まってしまったクィレルに対し、トムが一瞬だけ唇の端に挑む様な笑みを浮かべた。

 

 『嫌だなあ、先生。僕、()()()()()()()()。……もしかして名前、忘れちゃいました?』

 

 目元に少し悲しそうな感情を込め、声色は低く、落ち込んでいる様に見える。先生に名前を覚えてもらえず、ショックを受けている一生徒の姿を、彼は完璧に演じていた。 

 

 心情を見透かす赤い瞳に正面から射貫かれ、クィレルは顔半分を痙攣させながら後退った。気圧されたというより、恐怖の余りこの場から離れたいといった意思を感じる。

 

 「………ッッ、」

 

 一度だけ。

 たった一度だけ、クィレルは怯えた表情のまま、トムの姿を頭のてっぺんからつま先まで見下した。

 最後に、クィレルの方に背を向けたまま、トムに身を預けているハリーに視線を走らせたかと思うと、返事を寄越す事無く踵を返してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何か、見てはいけない物を目にしてしまった様子で、足早に去っていくクィレル。

 

 

 

 

 その背中と頭のターバンを見送りながら、トムがまた、唇の端だけで微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 




トムリドルシニアとかいう、ある意味元凶とも言えるし可哀想な被害者とも言える、ハリポタ界でも滅茶苦茶複雑な立場にいる男。またいずれ出てきます。
ちなみにジョゼフ・ジョン・トムソンはイギリスに実在した学者さんです。

魔法で戦うというより化かし合いみたいに段々なってるけど、大丈夫かこれ?

2020/1/1追記
12月中に次話投稿すると言ったな。あれは嘘だ。
はい、という訳で、この作品は作者含めて詐欺師ばかり出てきます。嘘吐いちゃってごめんなさインセンディオ
とりあえず、1月中には次話仕上げるんで新年もよろしくお願いいたします
ついでにトム君誕生日おめっとさん。1日遅れだけど、一応主役だから祝っときます
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