転生したら分霊箱だった件   作:@ゆずぽん@

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Page 4 「呪われた命と初めての魔法」

"―――きっと全ては、『運命』ではなく『宿命』だった。

 自分が『特別』な人間として生を受けたのは。

 決して『普通』ではない。周りの人間、取るに足らない弱者共と自分は違う存在なのだ。

 『宿命』と『運命』は同じではない。『運命』は変えられるものだが、『宿命』は生まれる前から決まっているものだ。

 そう。決められているのだから、『運命』などと違ってどうやっても変わる事はない。

 変えるつもりも、ない。

 自分と弱者共が生きる世界は違う。『特別』な者には、それに相応しい場所があるのだから、何を変える必要があるというのだろう。

 しかし……もしも、自分の『宿命』が『普通』であったならば。

 

 ……あの弱者共のように、愛とやらを謳い続ける『生』だったのだろうか。

 

 今となってはもはや、どうでもいいことだ。

 

 

 

 

 どうでもいいことの はずなのに。"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――あばばばばば!!!!!!

 

 えーどうも、分霊箱です。本名言えないシステム植え付けられたし今の名前を名乗るのもくっそ癪なのでこれで行くよ。

 初っ端から情けない悲鳴でこの状況をお届けいたします。

 

 今、間違いなく誰かがこの日記帳を開き、文字を書き込んでいるんだけど正直何を書かれてるか確認する余裕ががががが!

 

 ウボァー、何か、めっちゃ色々なもんが意識?だか魂?に入ってくるうううううううううう!!

 

 

 何なの!?何か僕に恨みでもあんの、この世界?!こちとらメンタル弱い者でして、精神のお取り扱いには十分注意して頂きたくキョアーオ!!!

 こっ、これ文字じゃねぇ!?いや書き込まれてる感覚はあるけど"文字だけ"じゃない!!

 景色というか記憶というか―――うぇっ、気持ち悪ぅ!!!

 

 ええ加減にしろよ、マジで。しまいにゃ、こっちがキレるで!!!

 普段大人しい奴を怒らせたら怖いって、世の常だからな!!

 ヴォルデモートだかボタモーチだか何だろうと斬り刻んで蛇の餌にしてやろうかッッッ!!

 

 なんて豪語したけど、もう限界。

 

 

  

 あひゅう、だめだ。意識が薄れるぅ~~~~……

 

 死体は拾ってくれぇ~~~……

 

 あ、無いんだったわ~~~……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 静まり返った夜の屋内。

 誰も寄り付かない一室に、一人の青年が杖を持って、わざと大袈裟に扉を開き侵入する。まるで見せつけるかの如く。

 

 ガチャン!

 

 「ッ!!?」

 

 部屋への突然の侵入者に、先客の男は慌てて先程まで開いていた大きな箱の様な物を閉じる。それが無駄な抵抗だと、今の彼に知る由も無い。

 男の身長は不自然な程に高かった。いや、高いだけでなく体格も巨大だ。もしも争い事になれば間違いなくこの男に軍配が上がるであろう。

 そんな不利な体格差でも動じることなく、堂々とした振る舞いで部屋へ入ってきた青年は、手に持つ杖を男へ向けながら口を開く。

 

 「ハグリッド……本当に残念だよ。同じホグワーツで学ぶ者として、本当に残念だ。僕は全部知っているぞ。さぁ、今しがた隠したその怪物を出してもらおうか」

 

 青年は早口であるがはっきりとした口調で捲し立て、男の傍に鎮座する大箱へ目線を向ける。

 状況を知らぬ者からすれば、それは不躾な態度であるのだが、男は腹を立てるどころか追い詰められた鼠の様な表情をして反論を述べる。

 

 「ち、違う、違うぞ!こいつぁ、アラゴグは、秘密の部屋の怪物なんかじゃねぇ!!絶対にだ!!」

 

 大箱の中には「アラゴグ」なるものが入っているようだ。今行われているのはそれが怪物かどうかの口論であるらしい。

 

 「人肉を好むアクロマンチュラが、怪物ではないと…。君とは話にならないな。レイブンクローの女生徒は、君の飼っているペットのせいで亡くなったんだよ」

 

 「違ぇ!!アラゴグは誰も襲ってなんかいねぇ!!こいつぁ卵の時から俺が面倒見てきたんだ!!」

 

 「ハグリッド……君のその頭はお飾りかい?この状況で何を言ったって、その蜘蛛が無実と信じる人間は果たして何人いると思う?」

 

 男の必死な弁明に聞く耳を持たず、青年は痺れを切らしたようで大箱へ杖を向ける。

 

 「そこをどくんだ、ハグリッド。これ以上怪物を野放しには出来ない」

 

 「やめろッ!!アラゴグに手ぇ出すんじゃ―――」

 

 男が言い終わる前に、青年は呪文を唱えた。

 

 「《システム・アペーリオ》!」

 

 それは箱を開く魔法らしく、男が閉じた大箱はあっけなく重たい蓋をこじ開けられてしまった。同時に、大箱の中に潜んでいた生物が姿を現す。

 長い脚をカサカサと忙しなく動かし、虫のような素早い動きでその生物は地面を這って逃げ出した。

 

 「逃がすか!《アラーニア・エグズメイ》!!」

 

 蜘蛛に対する攻撃呪文が放たれる。しかし右に左に疾走する生物に命中するには至らず、そのまま部屋外への逃亡を許してしまう。

 

 「アラゴグッ、アラゴグぅぅぅ―――!!!」

 

 卵の時から世話をしてきた―――その言葉は嘘では無いらしい。男はまるで唯一無二の親友を失ってしまったかのような絶叫を上げる。しかしそれは届くことなく、アラゴグなる生物は完全に姿を消してしまった。

 流石にあのような素早い動きを真似は出来ない。追っても無駄だと判断した青年は、再び男の方へ杖を突き付けた。

 

 「…ハグリッド、怪物より自分の心配をした方がいい。この事を先生に報告しなくては。このような事件が起きてしまったんだ。何事も無く学校生活―――とは、もうならないだろうね」

 

 

 

 

 それはほとんど死刑宣告に近い、残酷な言葉だった。容赦無い宣言に男は再び絶叫を、今度は意味のある言葉にならない叫び声を上げた―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ファッ!?』

 

 意識が浮上する。

 暗闇ではない、視覚のある空間―――すなわち、現実世界。

 再び戻ってきたらしい。

 

 『……そうか、書き込みあったもんなー…』

 

 何であれ日記帳に文字を書き込まれれば現実に訪れる事が可能らしい。原作の描写とファミチキ野郎の言葉から推測すると、書き込まれた期間と文字の量に比例して顕現出来る時間が延長されるとみて間違いはないだろう。

 余裕が無かったためどれくらい書き込まれたか記憶していないが、それなりに量があった気がする。今回の時間的余裕はそこそこあると考えていいか。

 

 よし、状況整理しよう。

 まずさっきの。あれ、完全にあれだよな、あれ。うん。

 

 『冤罪とか無いわー…やっぱ人間のクズじゃん…』

 

 あの映像―――巨大な男ハグリッドが、飼育していた蜘蛛に秘密の部屋の怪物という罪を押し付けられた光景。

 そしてそんな、傍から見れば『怪物の正体を突き止め追い出した英雄』となった青年は。

 

 『ヴォルデモート……アンタほんとやべーやつだよ』

 

 こんなん本人に聞かれたら間違いなくアバダ案件だけど、どうせ聞かれないしええやろ。

 てか、今の僕を消すと折角作った分霊箱お釈迦になるもんな。まだ一つしか作ってないし。

 二つ目って確か、実の親を殺して作るんじゃなかったっけな…。

 

 どうやらさっき書き込まれた―――というか、転写された記憶は、ハグリッドに罪を擦り付けて秘密の部屋の怪物『バジリスク』の存在を隠蔽したというもののようだ。これは映画でハリーに見せてたやつだね。

 最初の顕現の後、時間切れのせいで現実世界でどのような出来事があったのか確認出来なかったが……。

 恐らくあの時ダンブルドアに声を掛けていたのは、殺された女子生徒……マートル殺害事件の事を知らせていたんだろう。その後に、アクロマンチュラという魔法生物を飼育していたハグリッドに罪を擦り付けてから、ホクホク顔で日記帳に一連の記憶を入力した、と。

 

 僕が日記帳の中であれこれ思案している間に、もう秘密の部屋が閉じられたのか…。しかしハグリッドには申し訳ないけど、原作に出てきたシーンを体験出来てヒャッホイ!してしまっている自分がいる。

 にしてもこのタイミングで日記帳にあの記憶を写したのか…。いつの日か、日記帳に眠る魂に秘密の部屋を開かせる為に。なんとも用意周到なお方のようで。

 分霊箱の制作者本人であるヴォルデモートは、単に文字を書き込むだけでなく己の記憶をコピーアンドペースト出来るみたいだな。いや良い迷惑なんだけど。毎度ながら痛みは無いけど気分悪くなんだよね。もうちょっとお手柔らかに出来ない?あ、無理っすか、そう…。

 

 ふぅ、大分落ち着いてきたし、いつの間にか増えている記憶の引き出しを一つずつ開けてみるか。どうやら書き込まれたのはハグリッド冤罪事件だけじゃないらしい。

 何か色々、秘密の部屋はこれこれこういうものだとか、サラザールの仕事を代行すべきだとか、自分は継承者であるだとか……かなり事件と関連のある事実が書き込まれている。

 成程、分霊箱の魂にこういった記憶を上書きして、「お前いつか秘密の部屋代わりに開けろよ」という命令をしていた訳か。

 そりゃこんなたくさん一気に書き込まれちゃ、意識も飛ぶわな…。そして同時に魔力が一杯になって、自分の意志と無関係に現実に出てきてしまった…ということでいいのかな。

 

 ……ヴォルデモート、いる?

 

 辺りを見回してみる。建物内か……前回顕現した時と同じホグワーツ内部だろうな。ベッドが見える……もしかして寝室?

 ヴォルデモートは確かスリザリン寮に属しているハズ。日記帳も持ち込んでいるとするならば、ここはスリザリンの生徒が暮らす寮内。

 規則正しい静かな寝息が聞こえてくる。誰か寝とるな……もしや……。

 

 『いや、今はやめよ…』

 

 人一人が眠っているであろうベッドの膨らみから目を離し、窓の方へ近付く。いや、なんか怖いもん。これでもし奴が眠ってなくて、目が合ったりとかしたらマジでびびる。好奇心は猫を殺すって言うし、触らぬ神に祟りなしじゃあ~。

 それでなくても、顔を見るのが嫌だ。だってあいつの顔さ……いやいや、もう気にしないでおこう。

 あいつにバレるなんてヘマは出来ない。ここはスマートに、気付かれないように行動を開始しよう。

 この機会を逃す訳にはいかない。外部との接触を図る為にも、まずはこの体で何が可能で何が不可能か、実験するのだ!

 

 『まずは、すり抜けだよな…』

 

 こうして現実に存在しているものの、今の体は透け透けの透明状態。ならば壁を通り抜けて外へ出られるか試してみる価値はあるだろう。そう思い、窓から外の様子を確認しようとした時。

 

 『あっ…』

 

 うわっ目が合った。

 いやちげーわ。これ、窓に映ってる……自分?か?月明かりのお陰で夜の窓でも姿が結構はっきり見える。

 

 『………』

 

 窓に映る自分は、想像通り透明人間のようではあるが、全く映らないという訳ではないらしい。朧気ながらも、高身長の青年がこちらを見ている姿が映し出されていた。

 

 『……あれ、これ変わったの身長ぐらいじゃね』

 

 嘘だと言ってよパパン。前世でも"こういう容姿"に悩まされてきたというのに、今世でも特にお変わり無しってか?精々顔立ちが西洋人になったくらいと、身長が頭一つ分くらい伸びただけじゃん、変更点。やめてよ、要らないからそういう転生特典も。平均ぐらいでいいのに何でこんなスペック偏ってんだよ…!まるで呪いだな…。

 つーか禿になる前は良い男だったんだな、闇の帝王。映画よりも良い男が映っておる。あんなに魂引き裂くから髪の毛も失っちゃうんだよ……今からでも分霊箱制作やめたらいいのに。禿ってのは男の恥やぞ。(にっこり)

 ていうか目、目!赤い!真っ赤や!どこのアルビノやねん!え、これ病気とかじゃないよな?ま、前世もオールナイトし過ぎて常に充血してたから、あんま違和感無いけど…。

 

 とりあえず、この窓から外へすり抜けられるかテストだ。勢いよく閉じたままの窓へダイブ―――の前に、傍の机に置いてあった杖をしっかり拝借しておく。

 誰の杖か知らんけども、こんな所に置きっぱなのが悪い!すまないが、実験の為に少し借りさせてもらうぜい。(返すとは言ってない)

 ていうか透けてるくせに現実の物触れるんだな…。イマサラタウン。どんな物をどこまで触れるかも試さなアカンね。

 

 『ええい、ままよ!』

 

 パリン―――なんて効果音は付かなかった。無音だった。

 

 

 

 結論から言おう。窓すり抜けもうしたわー。あっけな!

 今の自分は幽霊とほとんど変わりないな。あ、そこ、今変な事考えたろ。悪いがそういう下心は永遠の0なので期待はしないでもらおうか。

 てか窓の外水やん!!!月明かりが水底まで届いているけど、それでも暗いから外が水だなんて気付かなかった。考え無さすぎワロチン。そういえばスリザリンの寮は湖の下にあるんだったぁ…。

 う、うおおー、何とか水をかき分けて水面まで上がらねば沈んでしまう!幽霊状態なのに水に沈むってなんなのよ。ほんとこの体の物理法則解らんわー。

 

 そうこうしているうちに、水面へ辿り着いたので近くの岸まで泳いで地上へ上がる。泳いでる感覚はあるのに濡れないって不思議。

 フッヒョイ!シャバの空気うめー!!!ごめんなさい嘘吐きました。自分呼吸してないんでした…。

 

 『しかしやっと外かぁ…』

 

 岸から夜空を見上げる。天を貫かんとするホグワーツ城が、宵闇の中に浮かんで見える。やっぱりここはホグワーツ。

 映画で見たまんまだ。めちゃくちゃ立派。荘厳。感動。今が夜なのが本当に惜しい。昼間の明るい時にもう一回はっきり見たいなぁ。

 

 『ここなら誰も居ないよな…』

 

 持ってきた杖を取り出す。暗いのでいまいち色と形は見えないけどさして問題はあるまい。

 今から何をするかって?もちろん魔法よ!

 一時的とはいえ、折角自由の身になれたんだから魔法ぐらい使わせろ!

 いや、使えるかやってみないと分かんないけどね。映画だと使ってる様子無かったけど、これいけるよな?ここまで焦らしておいて実は分霊箱の魂は魔法使えましぇーん、とかだったらマジでブチ切れそ。

 

 そうだなー…手始めにまずは、あれよ。ハリポタといえばあの呪文よ。皆お馴染み主人公、ハリーの十八番であるあの呪文!

 武装解除呪文―――そう、《エクスペリアームス》!

 飛び交う赤い閃光。命中すれば相手の武器を吹き飛ばす、一見地味だが武器を奪うというがっつり戦闘で使える呪文。映画だと腐る程見るよ、この呪文。

 そんな訳で印象深いこの呪文を、使えるならばやってみたいなー。

 

 えーと……唱えるだけじゃダメだよな。こう、映画みたいに杖を振って……あと、イメージとか?作品にもよるけど魔法って大体イメージが大事!みたいな設定あるよね。あれに則ろう。

 

 イメージ……杖から飛び出す赤き閃光!さあ、出でよ!

 

 

 

 

 『《エクスペリアームス》!!!』

 

 

 

 

 

 

 ――――――シーン……………

 

 

 

 

 

 

 あるぇー?おっかしいな、発動しないぞぉー……。

 イメージはばっちりなんだけどなぁー?何がいけないんだろぉー……?

 発音?発音っすか?杖の振り方ダメでした?もうちょっとブンッて振ればいい感じ?

 

 その後何回か試したけれど、結局一回も成功しませんですた。泣きそう。やっぱり使えないのかな……うひん。

 いやいやいや、ここで諦めたら男が廃るってもんよ。この呪文が難しいって事かもしんないじゃん。別の呪文で試そう!気持ちの切り替え大事よ。

 

 

 

 

 そうさな……お次は、これまた有名な呪文!映画でも重要な役割を果たしたあの呪文!

 吸魂鬼を追い払い、熟練者であればメッセージ伝達にも使える守護霊呪文!

 

 

 

 

 『《エクスペクト・パトローナム》!!!』

 

 

 

 

 

 

 ――――――シーン……………

 

 

 

 

 

 

 せ、静寂がエグい…!!誰にも見られてないはずなのに羞恥心がえげつない!何だよこれ、やっぱり魔法使えないの???

 あ、ちょっと待てよ、この魔法。使うには呪文だけじゃダメだったよな?

 確か、幸せな思い出を浮かべないと発動出来ないんじゃなかったっけ…。しかも純粋に難易度が高い呪文として扱われてた気がする。

 

 

 

 

 え?幸せな思い出?

 

 無いよそんなもん(絶望)

 

 

 

 

 いや、諦めるんじゃない僕。そうだ思い出せ…!

 

 2時間かけてメタルなスライムのハントに成功した記憶を!

 

 リセマラして一度しか戦えないモンスターのレアドロップを獲得した情熱を!

 

 孵化厳選の繰り返しの中、ようやく性格一致6V個体を引いたあの時の感動を!

 

 

 

 

 

 『《エクスペクト・パトローナム》ゥゥゥゥウ!!!』

 

 

 

 

 

 

 ――――――シーン……………

 

 

 

 

 

 

 『ア¨ァァァァァァ――――――――ッ!!!(汚い高音)』

 

 

 

 

 ごめん、つい発狂しかけたわ。いやもう、マジで心折れそう。

 やっぱりヴォルデモートという強大な敵に立ち向かう為にはさ、なんだかんだ言って魔法が使えないとどうしようもないと思うのよ。

 なのにこの結果は何だよ…散々だ。やっぱりこんな幽霊状態じゃ、魔法なんて夢のまた夢なのかなぁ…。

 

 ちくしょう、もうヤケだ!どうせならとことん試してやる!!

 『許されざる呪文』!人間に対して使用すれば、アズカバン送りになって終身刑になるらしいが知らんもんね!

 後半のハリポタでやたら乱射されてたイメージのある死の呪文―――《アバダ・ケダブラ》!こいつを試す!

 当たれば即死、防ぐ方法は避けるか遮蔽物に隠れるかしかない最強の呪文。映画だと最強っぽさはいまいち感じられなかったけど。

 成功したところで誰も居ないとこでやってるだけやしええやろ。(適当)

 

 

 

 

 えー、イメージイメージ。死の呪文なのだから、イメージに重要なのは……殺意的なやつかな?

 

 うーん、殺意殺意……殺意をイメージ……。イメージが整ったら、呪文を唱える……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すべての人の愛するものを消し去り、無に帰してくれようぞ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『《アバダ・ケダブ―――』

 

 ズバチイィィィィィィッ!!!!!

 

 

 

 

 閃光が走った。

 緑色の閃光がけたたましい音を発しながら杖先から迸った。

 射程距離に殺害対象が存在せず、到着地点の無い閃光は数十メートル先で勢いが弱まり空中で霧散した。

 

 

 

 

 ……は?????????

 

 

 

 

 おい、こいつ。今呪文唱え終わる前にフライングしたんだけど。絶対言い切る前に発動したよな?しかもなんか、映画で見るよりもずっと光量が激しくてヤバそうなオーラだったんだが???

 他の呪文が一切発動しなかったのに、こいつだけ「ヒャッハー!出番だぜえ!」みたいな感じで意気揚々と出てきたんだけど?

 

 なぁにこれぇ。

 人体に使用したら間違いなく死ぬだけじゃ済みそうにない激しさだったんだけど…?

 

 『えげつなっ!うわっえげつなっ!』

 

 もしも誰かに当たったら―――そこまで想像して、全身がうすら寒い感覚で満たされた。いや体温無いからそんな気がしただけ。

 

 それにしてもこの世界で初めて成功した魔法が死の呪文って…。

 

 何なの?「お前人殺しの才能しかねーよバーカ」ってことなの?泣くよ?あっ視界が滲んできた。いやこれ、多分インクだから、これ。涙じゃないよ、グスン。

 こんな物騒極まりない呪文に適性があるって、第三者の目線からしたら単なるやべーやつだから。

 ヴォルデモートのこと言えないから。全然嬉しくないから。別に暗殺者とか目指してないから。山の翁とかなりたくないから。

 大体さ、ドラ〇エでいうザラキしか使えないって魔法使い失格だから!真に求められるのは回復も攻撃も補助もこなす賢者ポジだから!ゲームとかだとこういう即死系呪文、案外役に立たないしな!

 

 

 

 

 なんか、めちゃくちゃな結果だったけど……とりあえず魔法は使える体ということで、一応は収穫をゲットしたよ……。

 

 あー、疲れたー……。心なしか視界もグラついてき―――いや、気のせいじゃない!マジで視界がグラグラしてるう!

 あっそうか、あんなに魔法使おうと色々やってたんだから、そりゃ魔力も尽きてしまうよな……。

 そんな……もっと試したいこと一杯あったのにぃ……ね、眠いぃぃぃ……。

 

 

 

 

 こうなったらもう仕方ない……明日から本気出すううぅぅぅぅ……よ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――あれ、そういえば………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『僕』の名前、なんだっけなぁ……

 

 

 

 

 さっきまで前世の本名、覚えてたのになぁ……

 

 

 

 

 まぁ…いいかぁ……

 

 

 

 

 別に好んでた名前じゃないしぃ……

 

 

 

 

 あんな親から貰った名前なんてさぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――トム・マールヴォロ・リドル。

 

 

 

 

 それが今の名前で良いじゃん……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すやぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 




おめでとう。
『ぶっつけ本番でアバダを成功させるやべーやつ』の称号を手に入れたぞ!
といっても流石に絵面的にもアレなんで、こっから他の魔法も習得していくよ。
『幸せな思い出』の解釈を履き違えてるので、このままだと一生使えないかもしれない守護霊呪文は置いといて。
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