転生したら分霊箱だった件   作:@ゆずぽん@

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Page 7 「7つの分霊箱」

 "―――世界には絶対的な『悪』が居て、それを討てば全てが平和になって、丸く収まる。

 ……多分君達は、そういうのが好きなんじゃないかな。

 解りやすいから。

 

 罪悪感を感じる必要は無いよ。

 だって、先に罪を犯した方が悪いに決まっているじゃないか。

 罪人がどんなに過ちを嘆いて、後悔の念に苛まれたとして。

 積み重ねた咎は消えないし、血に塗れたその手は綺麗になりはしない。

 

 君も今まで隣で笑っていた友人が、実は裏で殺戮を自らの意志で行っていたなんて知ったら。

 ……これまで通りに接する事なんて、出来はしないだろう?

 

 だから、これは仕方ない事なのさ。

 避ける事の出来ない『宿命』なのさ。

 そういうものなんだよ。

 

 

 

 

 『異端』には、業火を持って報いる。

 それが、人間の紡ぎ続けてきた物語。"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――夢を見た。

 

 兎が首を吊って死んでいる。垂木に結ばれた縄の先に、もう二度と動かない獣が、振り子のように揺られて死んでいる。

 奇妙な光景だ。動物が自殺するなどあり得ない光景だ。間違いなく人間の仕業の筈である。

 しかしそう考えても、果たしてあんなに高い垂木の上へ、わざわざ登って動物を首吊りにする物好きは居るのだろうか。大人であろうとも、そんな芸当は難しいのではないだろうか。

 

 気味が悪くて、目の前で揺れる兎の死体から目を逸らす。その先に、人目を避けるかの如く気配を薄めたような小さい男の子が歩いていた。

 ふと雑音に気付き周囲へ視線を移せば、いつの間にか疎らに子供達が存在していた。いや、もしかしたら最初から居たのかもしれない。

 子供達は体格や身長から考えて年齢はバラバラのようだったが、それでも全員が精々小学生ぐらいまでだった。

 

 ある子供は、歩いている男の子を睨むかのような目付きで眺め、ある子供は吊られている兎を見て喚き、ある子供はそんな喧騒に関わるまいと見て見ぬフリを貫いていた。

 この状況は、何だろう。まるであの男の子が犯人だと訴えているみたいではないか。

 だとしても、あんな小さな子供が、高い垂木の上に登って兎を殺すだなどという所業が、可能なのだろうか?

 

 男の子は、そんな周りを決して振り返らない。ただただ気配を薄めて、歩いていくだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつの間にか景色は移り変わり、今度は何処かの洞窟の入口に立っていた。

 闇そのものを携えているかの様な暗闇が広がっている。こんな所へ入るのは好奇心に溢れ恐怖を顧みない子供ぐらいだと思う。

 その考えが的中していたのか、しばらくして洞窟の闇の中から子供達が姿を現した。

 

 全部で三人だ。男の子が二人と女の子が一人。探検のつもりで入っていたのだろうか。

 しかし様子がおかしい。先頭をしっかりとした動作で歩く男の子に付いていく残り二人の足取りは、酷く不安定で覚束ない。その表情もどこか虚ろで、泥の中に溺れてしまったかの様な濁りが瞳を満たしていた。

 

 ゾンビ映画のワンシーンを彷彿とさせるおかしな様子の二人を、しかし男の子はやはり振り返らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奇妙な夢の中で、その男の子は最後にいつも独りだった。喧嘩をしたり口論になったり、他の子供達と関わっている場面もあったが、最後には必ず独りになっている。

 

 景色は再びガラリと変化し、そこはとある個室の中となっていた。古びた洋箪笥に、机と椅子の一式、簡素なベッド。特に変わった様子も無い、何の変哲もない部屋だ。

 そこで男の子が何か箱の様な物を手に持って、箪笥の中に隠そうとしている。

 何が入っているのか予想もつかないが、何となく"ここにあってはいけない物"だと思った。

 

 ―――どうして解るのだろう。思い出せない。

 

 声を掛ける事もせず、ただぼんやりと男の子の背中を眺めていると、箱をしまい終わった男の子がこちらを振り返った。

 

 しまった、気付かれてしまっただろうか。

 いや、何も悪い事はしていない筈だ。これは夢なのだ。自分はただ、夢の光景を観賞していただけに過ぎないのだから。

 そうやって言い聞かせ、沸いてくる罪悪感と闘っていると。

 

 男の子が言葉を発した。―――と、思う。

 口が動いているのが解るが、声が上手く聞き取れない。ノイズが掛かっているかの様な不協和音が、部屋の周囲から溢れ出して聴覚の邪魔をしてきたからだ。

 鼓膜を揺さぶる不快感に思わず顔を顰めてしまうが、男の子の喋っている言葉が気になって、その表情に意識を集中させる。

 男の子は、自分の行動を監視していたこちらへ怒りや驚きを見せている様子は無かった。

 ただ、きょとんとした表情と、少しばかり虚ろな赤い瞳をこちらに向け、何事かを呟いている。

 唇の動きだけで、何とかその言葉を理解しようとした。

 

 

 

 

 ―――う 、 し 、 ろ 。

 

 

 

 

 そこまで読唇して、慌てて背後を振り返った。

 そこは部屋を囲む壁しか無い筈だった。

 けれども、実際は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 人間の体長を遥かに越える巨大な大蛇が、ボロボロの紙を引き裂くかの如く、部屋の壁を突き破って姿を現し。

 

 

 

 

 長年捜し求めていた極上の獲物をようやく発見したと言わんばかりに、その口を顔が裂けてしまうんじゃないかと思う程大きく開き。

 

 

 

 

 鋭利な牙を誇示する様に曝け出しながら、こちらへと襲い掛かってきた―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『《エクスペリアームス》!《エクスペリアームス》!!……《エクスペリアームス》!!!』

 

 喉が張り裂けんばかりの勢いで、連続で呪文を唱えて杖を振るうも、やはり魔法は発動してはくれない。

 

 ―――え?今何をやっているんだお前はって?魔法の練習中です。

 

 50年後に備えて魔法の習得は必須だと思い、こうして実体化した機会を無駄にせず練習に励んでいることですのよ。

 あれからちょくちょくヴォルデモート君が日記に書き込んでくれるお陰で、ホグワーツの敷地内である湖の畔へ抜け出しては練習を続けている。

 ここならまず人は来ないし、敷地内だから魔法を使っても魔法省?とやらに感知されないだろうし、まさにうってつけの練習場所だった。…わざわざスリザリン寮の窓から出て泳いでくるのは少々面倒だけれど。

 

 一度、どこまで遠くに行けるか試してみたけれど、やはりというかそう万能ではなかったというか…本体である日記帳からはそんなに離れられなかった。

 ある程度距離を取ろうとすると、見えない糸に全身を引っ張られるような引力が発生して、それ以上は一歩も歩けなくなってしまうのだ。

 かといって制限距離は短すぎるという訳でもなく、現にこうしてホグワーツ城外の湖畔まで来れているので、あまり心配する必要は無さそうだ。

 

 しかしなぁ…。『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる作戦』でひたすら連続詠唱してるけど、全然成功せんわ。

 やっぱりちゃんと指導してくれる先生が欲しいねぇ…。

 というか、先生の指導とかをすっ飛ばして独学で魔法を習得しようとする事自体、割とおこがましいのではないだろうか。

 ハリーだってちゃんと授業を受けて、色んな魔法を覚えていたし。

 でも仕方ないじゃん。今の僕、生きてる人間は誰一人認識出来ないぜ?どうやって教えを請えって言うんだよ…。

 くっそ、成功したのが今のところ《アバダ・ケダブラ》ただ一つとか、人生最大の汚点だ…!いや、日記生と言うのが正解か。

 

 『《エクスペリアームス》ゥゥゥ……』

 

 あんまりにも声を出し続けて、ついに疲労が限界に達した。一先ず杖を放り出し地面に座り込む。

 大声を出すだけでも魔力を余計使うし、ここは別の方法を考えるべきだろうか?

 正直この作戦効率的とは言えないし…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 【手伝ってあげようか?】

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………………………………………………………………………。

 

 

 

 

 

 正直この作戦効率的とは言えn

 

 【聴こえているだろう?】

 

 『あーあー、聴こえなーい』

 

 【それは聴こえているという証拠なんだけどね】

 

 『うっさいボケ』

 

 おいおいおい。まさか、実体化してる時にも声掛けられんのかい!

 今まで実体化してる時には一切語り掛けて来なかったくせに!

 

 『タイミングが良すぎる。企みがあるって隠す気無いだろ』

 

 【君が悩んでいるから声を掛けただけなのに】

 

 『…アンタ、いっぺん溢れ出る胡散臭さ隠す努力した方がいいんじゃない?』

 

 【胡散臭いだなんて心外だな。大体こちらと直接逢った事は無いのに、どうしてそう思うのかな?】

 

 『そういう人間を見抜く能力は備えている、と思ってるから。言葉だけでも』

 

 【君はもう少し、信じるという行為をしたらどうだろう】

 

 『顔も分からない相手を信じろって、最早暴言だよね』

 

 【ゴースト以外で唯一の会話相手を、蔑ろにしなくても良いだろう?】

 

 『会話相手だとか思ってるの、アンタだけだから』

 

 【じゃあ、こちらの事をどう思っているんだい?】

 

 『……詐欺師?』

 

 【そこで疑問形なのが気になるが…。君の計画上、魔法が使えないのは問題点なのだろう?それを可能に出来る術がこちらにはあると言ったら、君はそれに縋るしか方法が無いと思うのだけど】

 

 『はっ、縋るだって?上から目線な奴に媚び諂う気は無いね。分かったら明後日来るんだな』

 

 【一昨日の間違いだろう?】

 

 こいつ…!どうあっても会話を切り上げないつもりだな…。

 並の人間だったら引き下がる塩対応に声色一切変えず、突っ込みまで入れるという余裕っぷり。どんなに突き返したところで声を掛け続けてくるかもしれない。

 

 

 

 

 『…………。…よし、思惑に乗ってやろうじゃないの。さっさと、解り易く、三行で説明。オーケー?』

 

 【それは流石に過剰要求じゃないかい…?】

 

 『分かった分かった。何行でも良いからとっととやって』

 

 【やっと話が出来るね…】

 

 『今からするのは"会話"じゃない。"説明"な?』

 

 【その事なんだけど、一つ良いかい?】

 

 『あんだよ』

 

 【魔法の使い方を伝授する代わりに、君と"会話"がしたいのだけれど】

 

 『………』

 

 【『等価交換』。君が教えてくれた事だよ】

 

 そういや前にそんな事言って突き放した記憶がある。こいつまさか根に持ってたのか…。

 ……うーん、まぁ、自分で言った事だししょうがない、か…?

 

 『…………分かった』

 

 【うん、じゃあ説明に入ろうか】

 

 『アンタマジで胡散臭ぇわ…』

 

 【褒め言葉だと受け取るよ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【いいかい?魔法は例えるならば"商品"だ。購入して使用するには代金が必要になる。当然だね?この通貨の代わりになる物、それが"魔力"だ】

 

 【そして、現実の"商品"と違って、支払うだけではモノに出来ないのが魔法だ。世界の物理法則を捻じ曲げる代物なのだから、そう簡単に人の手で操れる事象ではないのも仕方ないね】

 

 【魔力と一緒に必要な物は……想像力。どんな魔法を購入したいか、どの程度の規模で発動させたいか。とても具体的なイメージが必要だ】

 

 【生半可なイメージでは魔法は発動してはくれない。君の場合、その身に宿す魔力量は膨大だ。あとは想像力さえ鍛えれば問題無いレベルだね】

 

 【あ、先に言っておくと、発動させる魔法に要求する追加要素が多い程魔力を余計に持っていかれるからね。よっぽどの事態で無い限りは、あまりこの辺はイメージしない事】

 

 【魔力は無尽蔵ではないから、その点も頭に入れておくといい。魔力切れで袋叩きなんて、笑えないだろう?今の君は魔力が切れればすぐに本体の中に戻されるけれど、実体化を成した暁にはその場で動けなくなってしまうだろうからね】

 

 『まるで水を得た魚の様な説明をありがとう。具体的にイメージしろだとか、魔力が切れるからあんまりイメージすんなだとか、いまいち要領を得ないんだけど。結局どっちなのさ?』

 

 【武装解除呪文で例えようか。この呪文は、一体どんな効果だったかな?】

 

 『は?名前の通り、相手が持ってる武器を吹っ飛ばすんだろ?』

 

 【そうだね、もちろんそうだ。"基本の効果"はね。だが更にイメージを追加する事で他の効果も生み出す事が可能なんだ。相手の武器をこちらの方へ持ってきたり、相手の肉体ごと武器を吹き飛ばしたり。シンプルな武装解除呪文だけでも、この様に武器を奪う以外の効果を追加出来るのさ】

 

 『そ、そういや《エクスペリアームス》って確か人間も吹っ飛ばしてたな…』

 

 【追加効果を付与すれば、当然それに見合った魔力を支払わなければならない。そこまで望んでいない状況なら、"基本の効果"だけを鮮明にイメージするんだ。所謂節約だね。もう理解出来ただろう?】

 

 『……口で言う程簡単なもんじゃなかった』

 

 【大丈夫、君は才能がある。無ければ『死の呪文』なんて到底扱えなかったさ】

 

 『あのう、それ言及するのやめてもらえます?こっちとしては汚点なんで』

 

 【誇っていいんだよ?】

 

 『誇れるかアホ!人殺しの呪文だぞ!』

 

 【気に入らない者を消すにはうってつけの魔法だと思うんだけどね】

 

 『悪いが今世でアズカバンに行く気は無いんでね!』

 

 【バレなければ問題は無いのでは?】

 

 『悪い事ってのはな、勘のいい奴がいつか気付くものなんだよ!どんな世界でもな』

 

 【へえ、じゃあ"君"も気付かれてしまったんだね】

 

 

 

 

 ―――ピタ、と。

 

 悪態をつきながらでも、魔法を習得しようとイメージを働かせていた思考が停止させられた。

 

 ……こいつは、今何と言った?

 

 【さて、じゃあ"説明"も終了したことだし。ここからは"会話"といこうじゃないか】

 

 まるでこれこそが己の目的だったと言わんばかりに、核心を話し始めるこいつを、止める事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【―――君は、"親"を傷付けた事があるね?】

 

 

 

 

 

 

 

 

 ズグン、と。

 

 今は持たぬ筈の心の臓が、飛び跳ねた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『……なんの、話』

 

 【そのままだよ。君の事を訊いているだけさ】

 

 『…知らない。この話はやめろ』

 

 【父親かな?それとも母親?ああ、精神的にか肉体的にか、どっちを傷付けたかは知っているから、言わなくて構わないよ。今はもう、帰らぬ人になっていたり?】

 

 『………おまえ、やめろって言って、』

 

 【あぁ、断片的にしか読み取れないのはもどかしいね。さあ訊かせてくれないか。君が隠そうとしている心の内を】

 

 

 

 

 ―――こいつは、最初に言っていた。

 

 

 

 

 全部ではないが、考えている事が解る、と―――

 

 

 

 

 今になって、ようやくその事の恐ろしさに気付いた自分は、なんと愚かな者だったことか。

 

 

 

 

 

 【不思議なんだよね。だから知りたいんだ。君は"人殺し"を否定しているくせに、"こういうギリギリの事"はしているんだから。矛盾している。それで、その杖も君を選んだんだろう】

 

 『………、………それを知って、何になる?』

 

 沸き上がる怒りを抑え、努めて冷静に返したつもりだった。それでも、今の声は震えていたに違いない。

 

 【相手の事を識ろうとするのは、そんなに悪い事かな?】

 

 『…アンタ、性格悪いって言われた事、あるだろ?』

 

 【残念。演技は得意だったから、そんな言葉とは無縁だったよ】

 

 心底、理解せざるを得なかった。

 こいつは間違いなく、こちらの記憶を大体は網羅している。

 喚き散らしたって、もうその事実は無くなりはしない。

 

 ……隠したところで、意味は無い、のか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 【さ、訊かせてもらえるかい?】

 

 『………等価交換』

 

 【…うん?】

 

 さっきの約束を反故にするようで癪だったが、もうどうでもいい。

 そもそもこいつに気を遣う必要なんて無い。

 ここまで平然と悪意を撒き散らす奴の事なんか、どうして気に掛けなければいけないのか。

 

 『等価交換。……前に言ったよな?死ななければ全部教えるって』

 

 【あぁ……そうだね。確かに言ったよ】

 

 『それと交換で教えてやるよ、こっちも。アンタが全部教えてくれる時になったら、思う存分今の質問に答えてやる。だから、この話は終わりだ』

 

 【………ついさっきの『等価交換』はどうなるんだい?】

 

 『等価じゃない。釣り合わない。"魔法の使い方しか"教えてくれてないだろ。こっちの情報と全然釣り合ってない』

 

 【……………】

 

 『たったあれくらいの情報で交換出来るような話じゃないって言ってんだよ。…ご理解頂けました?』

 

 精一杯の嫌味を込めて言い放ってやれば、しばらくの沈黙の後にようやく返事が返ってくる。

 

 【……仕方ないね。確かに"魔法の使い方だけ"では、釣り合わないお話なのかもしれないな。性急過ぎたよ、この件に関しては素直に謝罪しよう】

 

 『アンタの謝罪なんか一ミリも嬉しくないから』

 

 何にせよ、向こうが引き下がってくれたのなら何でも良い。

 等価交換でいつか話すという約束を結んでしまったが、今この時この会話を打ち切れただけで、ただそれだけで良かった。

 

 …本当に、何で"こんな事"をまだ覚えているのか。

 あっけなく忘れてしまった『本名』みたいに、この記憶も消してくれたなら―――

 

 こんな奴に話すなんて事も、無かった筈なのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『…やっぱ、アンタの事嫌いだよ』

 

 【そうかい?こちらはそうでもないよ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――この世界でヴォルデモートを止める為に、今一度整理しなくてはならない情報がある。

 

 それはもちろん、分霊箱(ホークラックス)である。

 改めてまとめてみよう。

 

 

 

 

 ・分霊箱(ホークラックス)とは、引き裂いた己の魂を保存しておく器の事。

 

 ・どうやって魂を引き裂くのか。それは、殺人を犯す事が条件。

 

 ・分霊箱(ホークラックス)が一つでもこの世に存在していれば、術者が死んでもその魂はこの世に留まる事が出来る。

  要は仮初の不死状態になれる。

 

 ・ヴォルデモートは臆病(私見)なので、一つだけでは飽き足らず複数制作している。

 

 ・原作でヴォルデモートが制作した分霊箱(ホークラックス)は、全部で6つと、意図せず制作したのが1つ。合計7つ。

 

 ・魂を引き裂く事に全くのリスクが無い訳ではない。

  例えばヴォルデモートの外見が崩れてしまったのも複数作ったのが原因。

  魂を分割し過ぎて不安定となったせいで、意図せずハリーを分霊箱(ホークラックス)にしてしまっている。

  加えて、7つも作ったお陰で、ハリーに近付いても己の分霊箱(ホークラックス)だと感知不能になっていた。

 

 ・原作は全てぶっ壊してハリーも生き残って、ハッピーエンドで、終わり!

 

 

 

 

 …じゃあダメなんだよなぁぁぁぁぁ!

 

 それじゃこっちが死んじゃうんだよなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…。

 

 しかし、これらを破壊するのは確実にヴォルデモートを追い詰める事に繋がるのだ。

 引き裂いた魂を入れておいた器を壊していく。この時の中の魂は本体に戻る訳ではなく、そのまま滅ぶ。

 つまりは、分霊箱(ホークラックス)を破壊するという行為は、相手の魂をどんどん削って衰弱させる様なものなのだ。

 この事から考えると、やはり自分以外の分霊箱(ホークラックス)は破壊すべきと言えるだろう。

 

 もちろーん、ダンブルドア勢とか魔法省とかに気付かれずにね!

 あいつら、分霊箱(ホークラックス)の存在知ったら、こっちの事情とか考えずに多分問答無用で『全部』ぶっ壊すでしょ?

 相手は何しろ名前を言ってはいけないぐらいの、史上最大の闇の魔法使いなんだもんね!手加減なんて、無理だよね!

 

 誰にも知られずに分霊箱(ホークラックス)を破壊、か…。

 

 うん、無理ゲーだわ(思考放棄)

 

 それを可能ゲーにする為にも、協力者を探していたんだけれども。

 正直、ホグワーツのゴーストには頼れんわ…。

 

 まず、ヴォルデモート自体が現在進行形で生徒だし。ゴーストは僕も認識出来るから、もしも接触なんてしようものなら。

 「何でトム・リドルが二人居るんだああああ!?」って、絶対なるでしょ(確信)

 そうやってゴーストが騒いだら、ダンブルドアとかヴォルデモート本人にも僕の存在が伝わってしまう。それはマジで論外なんだわ。

 ダンブルドアに分霊箱(ホークラックス)の存在を察知されるし、ヴォルデモートも「何で勝手に分身が動き回ってんだ?」ってなるでしょ。

 よって、ゴーストに頼るという方針は、ナシ!

 それにより、ゴーストの前に姿を現すのもナシだから、人目にはより一層気を付けないと。

 マートルは口外しないと約束してくれたけど、彼女はヴォルデモートの被害者だ。これ以上彼に関わらせるなんて所業は出来ない。

 

 

 

 

 では、一体誰と協力するんだって?

 

 実はもう、大体考えているんだなー。ふっふっふ。

 

 そして、この計画ならば。

 きっと誰の命も奪わずに実体化出来るかもしれない。

 まあ、めっちゃ上手い事立ち回らないといけないんだけどね。

 失敗したら目も当てられん…。

 

 

 

 

 ……僕は、誰も"殺す気"は無い。

 そんな事に手を染めなくても、きっと果たせる計画だから。

 それに、もしも殺人を犯してしまったら。

 

 それこそ、ヴォルデモートと同類になってしまうじゃないか。

 

 僕は違う。

 

 

 

 

 あんな、"平気で人を殺せる"ような人間とは違う。

 

 

 

 

 …絶対に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 分霊箱(ホークラックス)は、全部で7つだ。

 

 

 

 

 1. トム・マールヴォロ・リドルの日記帳

 

 2. マールヴォロ・ゴーントの指輪

 

 3. サラザール・スリザリンのロケット

 

 4. ヘルガ・ハッフルパフのカップ

 

 5. ロウェナ・レイブンクローの髪飾り

 

 6. ハリー・ポッター

 

 7. ナギニ

 

 

 

 

 ふう、映画では全部覚えきれなかったから、前世ではネットで調べてて良かった…。これ、覚えてなかったら詰んでたわ…。

 意外とナギニが最後に作られたんだよな。この蛇、今一体どうしてんだろ。なんか、別の映画に登場してなかったかな?

 確かファンタスティックなんとかとか…。すまん、あのシリーズは1作目しか観てないのじゃ。グリルデンバルドだかグリンデルバルドだか、そんな奴がラスボスじゃなかったっけ?

 あのおっさん、ニワトコの杖がどうたらしか印象に無いわ。こいつはほっといてええやろな。ハリポタシリーズじゃヴォル君がラスボスだし。

 

 あぁ、ハリーが分霊箱(ホークラックス)になっちゃうけど、どうするんだって?

 

 それは、もう、あれよ。ヴォルデモート殺害が目的じゃないんで、ハリーはそのままにするしかないよ。

 最終的に生存するのは自分とハリーにせんとね。

 …なんとかハリーが分霊箱(ホークラックス)だって、知られませんよーに…。

 いや、原作だと割と早い段階でダンブルドアが気付いてなかったっけ…。

 いやいやいや、ダイジョブダイジョブ。ヴォルデモート本人だって気付かなかったんだから、多分いけるって…。

 

 よし、分霊箱(ホークラックス)の事を念頭に置いて、実体化出来る限りは魔法の練習に打ち込もう。

 めちゃくちゃ不愉快にさせられたが、ファミチキ野郎のお陰でコツは大体分かったし。

 50年もあるんだから、そこそこ良い線までは鍛えられるんじゃないかと思う。

 …マジでこれから50年過ごすのかと思うと、改めて気が滅入るけど。

 でも、ここを乗り越えなければ未来は無い。

 

 

 

 

 ま、気長に頑張りましょ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とか、呑気に考えていた自分は、日記帳の中での時間間隔の狂いを自覚出来なかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――50年というのは、割とあっさり経ってしまうのだという事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~とある被害者のお話~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ちょっとアブラクサス!オレの杖マジで何処行ったか知らねぇ!!?」

 

 「知らん。所持品の管理はスリザリン生として当然の行いだと思うが?」

 

 「つれない事言うなよ!スリザリンってのは結束が固いんだろ!?」

 

 「自分の杖も管理出来ないような間抜けとどう結束を結べと?」

 

 「ひでぇ!ちょっと置いといただけなんだぜ!?誰かがきっと盗んだに違いねぇ!!一緒に犯人捜ししてくれよ!」

 

 「オリオン、一体何の騒ぎだい?」

 

 「あ、先輩!!聞いて下さいよ、オレの杖が!」

 

 「リドル、このような間抜けの話に付き合う必要は無いぞ」

 

 「ダマルフォイこの野郎!お前絶対碌な死に方しないぞ!」

 

 「オリオン、流石に口が悪過ぎるよ」

 

 「すみません先輩!でも、こんなに同僚が困ってるのにこいつ酷いでしょ?」

 

 「杖が無くなったんだって?君の杖は、確か僕と同じ芯だったよね」

 

 「そうです、そうです!サンザシっすよ!オレの愛杖がッ、誰かに盗まれちまったんだァァァァ!」

 

 「五月蠅いなブラック家の面汚し。そろそろ授業が始まるぞ。私はもう行く」

 

 「龍痘になって死んじまえ!!」

 

 「何だいそのピンポイントな罵倒は……」

 

 「おい、具体的な病名を言うのは何か不吉だから撤回しろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後に出てきた"彼ら"の性格に関しては、完全に想像です。
資料が無さすぎる…。

次回からは、いよいよこの世代から抜け出して一気にハリー世代へ。

ある日気付いたら分霊箱になってましたとか、普通の人なら頭おかしくなってそう。
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