ガールズバンドが人気な時代ですが、男も頑張ってみます。   作:怜哉

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あけましておめでとうございます(今更)


ソイヤッ!(☆そこに言葉は要らず────)

 

 

 

 

 

 

 

アタシの幼馴染みは、どうにもモテるらしい。

 

 

 

「ねぇ巴!」

 

 SPACE最後のライブ、その翌日。

 クラスのやつ三人とラーメンを食べに来ている時、隣に座っていたやつから興奮気味に名前を呼ばれる。

 

「昨日のライブでさっ、一番最初に演奏してたバンドのギターの人、巴の知り合いなんでしょ!?」

 

 そう言ってきたのは、昨日あったSPACE最後のライブを見にきてくれていたやつだ。名前は大塚(おおつか)。毎回Afterglowのライブに来てくれる、高校からの友達だ。

 まぁ、今日遊んでる三人は全員昨日来てくれてたんだけど。

 

「え? あぁ、海のことか? アイツはアタシ達の幼馴染みだぞ」

「海くんって言うんだ! あの人ちょーカッコ良いよねっ!」

「あっ、分かりみ〜。でも私はドラムの人の方が好みだった〜」

「あたしはギターの人...えと、海くん? 派かな。たまに笑ってたけどめちゃくちゃ可愛かった」

「そ、そうかぁ?」

 

 えらく好評な幼馴染みの顔を思い浮かべて、アタシは少し首を傾げる。

 アイツは良い奴だが、そこまで顔が良かっただろうか? 確かにブサイクじゃないとは思うけど...。

 

「は〜〜、わたし、あんな彼氏欲しーなぁ」

「辞めときなよ、相手バンドマンよ? バンドマンはクズって相場が決まってんだから」

「え〜〜。巴ぇ、そこらへんどうなの?」

「まぁ...海は良い奴だよ。優しいし、いざって時は頼りになるし」

「ほらっ!!」

「ほらっ、てあんたね...」

 

 空になったラーメンの器を前に、アタシ以外の三人の会話は盛り上がる。

 むぅ...どうも、そういう色恋の話は苦手だ。こう、手の届かないところが痒くなるっていうか。背中がムズムズする。

 

「あっ、Twitterの垢はっけーん」

「はっや。あんたこういう行動力はあるわよね...」

「へっへ〜、それほどでもっ」

「褒めてねーよネトスト野郎」

「野郎じゃないし!」

「いやそっち?」

 

 そんな会話をする三人をよそに、アタシはラーメンの替え玉を注文した。

 うーん...なんかあれだな。アイツのことを異性として見たことってあんまりなかったけど、アイツってモテるのか。

 

 ...なーんかこう、モヤモヤすんなぁ。

 

 

 

 ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

 

『一生のお願い!! 宿題手伝って、海ぃ!!』

「去年も一昨年もその前の年も聞いた気がすんな、その一生のお願い」

 

 

 まぁ、というわけで。

 毎年恒例、ひまりの一生のお願いでもある『夏休みの敵を倒す会』(ひまり命名)が今年も開催されることになった。まぁ俺はもう宿題終わってんだけどな。

 てか高校別れたし今年はないと思ってたわ。

 

 

 

「──って感じで、設問に出てくる重要そうな単語と同じ単語が本文の中にも絶対にあるはずだから。まずはそこを探して、単語を見つけたらその周辺を読む。そしたらだいたい答え書いてあっから」

 

 羽沢珈琲店の角の席。

 俺たちが集まって宿題なり雑談なりをする時の特等席と化しているその席で、俺はひまりの現国の宿題を手伝っている。

 俺とひまり以外にも、Afterglowの面々は勢揃いしていた。モカ以外はまだ宿題が終わっていないらしく、みんな大人しく問題に向き合っている。モカはなんかあやとりしてる。めっちゃ上手い。こいつ本当になんでも出来るな。

 

「う〜...私、文読むの苦手ぇ...」

「お前普段から本とか結構読んでんじゃん」

「あれは恋愛小説だから面白いの! でもこれは文章が難しいんだもん!」

「あー...まぁ確かに雅文体はなぁ」

 

 ひまりが今解いている現国の問題の本文は森〇外の舞〇。

 ここら辺の時代の文章は近代文っていうか、古文と現代文が混ざったような文体になっている。確かに、慣れてないとちょっと読みにくいかもな。

 

「そーゆーのはね、ひーちゃん。フィーリングで読むんだよ。考えるな、感じるんだ」

「モカは黙ってて! 感覚で全教科解けるなんて意味わかんな...えっ、何そのあやとり」

「宇宙〜」

「軽率に神秘を生み出すな」

 

 まぁ現国は俺もフィーリングで解くから、モカのことは言えないんだよなぁ。古文とか漢文もほぼフィーリングだけど。ほら、読んたら何となく分かんじゃん。答え書いてあんだし。

 

「ん.....ねぇ海。ここ、教えて」

「あいあい、っと。まずは式を展開して...そう。そしたら5xyが共通因数になるのが分かるか?」

「うん。あ、じゃあ、この共通因数でくくればいいの?」

「そゆこと」

 

 蘭はやればできる子。

 中学ん時の一件で勉強に追い付けてないだけで、地頭はいいんだよな。ちょっと教えればすぐ出来るようになる。

 

「海くん、ここの英文の訳し方なんだけど...」

「んー、っと...『私は一人暮らしを始めてから寝坊をするようになった』だな。このapart fromってのが『~を除いて』って意味で、この文の場合は『家族を除いた生活』、つまり一人暮らし、って感じで訳せばいい」

 

 俺も英語が得意なわけじゃないけど、単語と熟語さえ暗記すればあとは国語力でなんとかなる。単語帳熟語帳は毎晩確認してるからな。結構覚えた。

 まぁ毎日単語テストがあるから強制的にやんなきゃなんだけどな。悪い点取ったら居残りさせられるし。進学校怖ぇよ。...香澄のやつはほぼ毎回居残りさせられてっけど、よくうちの高校合格できたよな。

 

「海〜、おなかすいた〜。パン買ってきて〜」

「ここ喫茶店だぞ、飯くらい注文しろ。あと人をパシんな物臭姫」

「ふふーん、照れますなぁ」

「褒めてねーよ。...おいひまり。腕を(つね)んな、痛いだろ」

「う〜!!」

「ちょっ、バカお前もっと強く抓ってどうすんの!? いたいいたい! まっ、ホントに痛いからっ!!」

「ははっ。相変わらず仲が良いなぁ、お前ら」

「巴は笑ってないで止めてくれよ!!」

 

 身を捻って抵抗していると、ようやくひまりの攻撃から開放された。いや普通に痛かったんだけど。抓られた場所赤くなってんじゃんよ。

 なんだこれ。意味分からん。蘭もこっち睨んでんじゃねぇぞ、怖いだろうが。

 

「わざわざ宿題手伝いに来てやってんのに、なんで俺こんな目に遭ってんだよ...。ちくしょう、もう手伝わねぇぞ」

「や!!」

「や、じゃねぇっつの腕を抱くな! 離せバカ!!」

「やー!!」

 

 やー、でもねぇんだよバカ! 当たってるっつーか挟まってんだよバカ! もう子供じゃねぇんだぞバカ! 蘭がめちゃくちゃ睨んでるだろバカ!

 

「えぇい離せ! なんでもイヤイヤ言いやがって、この我儘姫が!」

「!! んふふぅ.....えへ〜」

「え何」

 

 なにこれ。なんでそこで照れんの意味分かんない。怖いんだけど。とりあえず腕離せ。あっ、蘭テメェ足踏むな...!!

 

「ふんっ」

 

 なしてそげん不機嫌になっとるがですか。

 

「はいはい。お前らそこら辺にしとけよ、さっさとやんねーと宿題終わんねーぞ?」

 

 パンパンと二回手を打って、巴がようやく仲裁に入る。

 渋々といった感じで蘭が、ルンルンしながらひまりが、眠たげな様子でモカが、納得がいかないように俺が、それぞれ自分の作業に戻る。

 

 モカは一瞬だけスマホをいじった後、のっそりとテーブルの端に置いてあったメニュー表に手を伸ばした。

 ふむふむ、などと頷いたと思えば、手を挙げてバイトのお姉さんを呼ぶ。どうでもいいけどあの最近入ったバイトのお姉さん、めっちゃ可愛いな。現役アイドル(若宮さん)も働いてるし、この店そのうちうちのバイト先みたいになるぞ(確信)

 

「すいませーん、ペペロンチーノくださーい」

「パンじゃねぇのかよ」

「あ、それとウーロン茶もお願いしまーす」

 

 思わずツッコむ俺を無視して、注文を終えたモカは再びダラっとテーブルに伏せる。なんだァ? てめェ...。

 

「アタシも腹減ったし、なんか食おうかな。えっと...あ、この、塩とんこつイタリア風スープパスタ、お願いします!」

「それなんてラーメン?」

「塩とんこつラーメンじゃないの。あ、あたしはコーヒーだけで」

「じゃあ私はストロベリーパフェ!」

「ひーちゃん昨日、甘いものは控える〜って言ってなかった〜?」

「うっ...。き、今日はいいのっ! ほら、勉強したから糖分必要だし!」

「意思よっわ。あ、俺はカルボナーラで」

「あはは...じゃあ私も何か頼もうかな? えっと...くるみルクティーお願いします」

 

 そうして、結局全員が何かしらを注文した。

 つぐも、俺たちといる時は普通にいろいろ注文して、しかもちゃんと料金を払ってる。自分の家なのに偉いよな。もし俺の家が飲食店だったら金払ってない...いや、お父さんはともかくお母さんに殴られそうだな、そんなことやったら。

 てかくるみルクティーってなに。新商品? くるみのミルクティーってことか。なにそれ美味しそう、今度頼んでみよ。蜂蜜入ってるかな。

 

 それから十数分ほどして、料理が次々と運ばれてきた。

 一旦勉強道具を片付け、俺たちは料理に手を付ける。

 

「ん〜! おいし〜! つぐの家のパフェはハズレがないんだよね〜」

「ふふっ。ありがとっ、ひまりちゃん」

 

 わりと大きめのパフェを頬張るひまりは、なんとも幸せそうだ。

 気持ちは分かる。つぐのお父さんの料理はめちゃくちゃ美味い。特にスイーツ。『学生時代は学内最強のパティシエとして幅を利かせたもんよ...』って、昔つぐのお父さんが言ってたな。最強て。

 

 と、不意に俺のスマホが震える。

 

LiSA『やっはろ☆』

LiSA『友希那に被せるなら黒いネコミミと白いネコミミ、どっちがいい?』

 

Kai『黒で』

 

 突然どうしたんだろ。

 新しいライブ衣装でも考えてんのかな。

 

LiSA『即答ウケるw』

LiSA『おっけー☆ じゃあ文化祭楽しみにしててね☆』

LiSA『休み明けにあるから!』

 

 文化祭?

 

「へー。羽丘の文化祭って夏休み明けなんだ」

 

『リサさんの猫コスもみたいです』と顔を合わせてたら恥ずかしくて言えないような軽口を打ち込んで、LINEを閉じる。

 

「そうだよ! あれ? 海に言ってなかったっけ?」

「お前らからは聞いてない。てか文化祭来てって言われたんだけど、女子校の文化祭って男入れんの?」

「入れるんじゃないか? うちの担任は彼氏連れてくるって言ってたしな」

「担任ェ...」

「っていうか! 海は誰に誘われたの!? どこの女に誘われたの!!」

「どこの女てお前。リサさんだけど」

「海の変態!!」

「何が!?」

 

 さっきからひまりが怖いよぅ! 助けてトモえもん!

 

「! 蘭! めっちゃ美味いぞ、塩とんこつイタリア風スープパスタ! ちょっと食べてみろよ!」

「ん。...ホントだ。美味しいね、このラーメン」

 

 トモえもんんんん!!!!

 

「ひまりちゃん、ほかのお客さんもいるからちょっとだけ声のトーン落として...」

「あっ...ご、ごめんねつぐ...」

「つ、ツグえもん!!!」

「海くんも静かに」

「アッハイ」

 

 ツグえもん思ったより厳しかった。

 

「ん、そういやAfterglowはライブしねぇの? 文化祭で」

「一応はやる予定。申請は出してる」

「今度生徒会と先生達の前で演奏して、それに合格したら文化祭本番でも演奏できるらしいんだ。宿題が終わったらいっぱい練習しなきゃだな!」

 

 ほえ〜。まぁAfterglowの演奏なら余裕だろ。Roseliaとかで感覚麻痺ってるけど、高一であのレベルの演奏できるやつなんて日本全国探してもそうはいないんだし。

 てかRoseliaが強すぎるんだよな。ビジュアルも問題ないどころか全員が上の上だし。どっかのレーベルから声かかってもおかしくないだろ。友希那さんめちゃくちゃ嫌がりそうだけど。

 つーかRoseliaとアフグロはさっさとCD(音源)を出せ、俺が買うから。

 

「ま〜きっと合格するし〜? 海〜、文化祭見に来てね〜」

「おー、行く行く」

「リサさんに誘われてるもんねっ!!」

「痛い痛い、殴んな暴れんな。またツグえもんに怒られるぞ」

「その、さっきからツグえもん? って何?」

「気にしない方がいーよー、つぐ〜。相手は海なんだし〜?」

「お前には言われたくねぇよ」

 

 と、無駄口を叩いている間に料理を食べ終えた。

 例の可愛い店員さんがバッシングにきて、さぁ宿題再開だと意気込んだ時。俺のスマホがまた震えた

 

あや『海くん! ひま!』

 

Kai『豚が離婚する時に食べるお菓子ってなーんだ』

 

あや『離婚する時にお菓子なんか食べてる場合じゃないよ豚さん!! まずは仲直りしなきゃ!』

 

Kai『マジレスなのかボケなのかはっきりしてください』

 

 とりあえずなぞなぞでも出しときゃ大人しくなるだろ戦法は上手くいったらしく、それから数分待っても返信は来なかった。ほかに興味を引かれることを見つけたか、そうじゃなきゃ必死に豚について調べてんだろうなぁ。

 

 蘭に数学を教えていると、またスマホが震える。

 

おたえ『柴犬の歌作った』

 

Kai『柴犬の歌』

 

おたえ『うん』

おたえ『海が柴犬好きって言ってたから』

 

Kai『ほーん』

Kai『今度聴かせて』

 

おたえ『分かった』

おたえ『今日は今からバイトだから、明日海の家行くね』

 

 SPACEはなくなったが、おたえは掛け持ちでやっていたもう一つのバイトの方に精を出しているらしい。

 もう一つのバイトも音楽スタジオらしいな。スタジオの掛け持ちバイトしてるって知った時はちょっと引いた。どんだけ好きだよ。将来はそっちの仕事に就きたいとかなのかね。

 

 ひまりに古文を教えていると、またスマホが震えた。

 今日連絡きすぎじゃね?

 

松原花音『海くん、お疲れ様』

松原花音『今日、品川の水族館のクラゲのブースがリニューアルオープンしてね?』

松原花音『近いうち、一緒に行かない...?』

 

Kai『いいですね』

Kai『行きましょう』

 

 あの人も本当にクラゲ好きだな。まぁ水族館とか長いこと行ってなかったし、普通に楽しみ。

 ...どうでもいいけど、お嬢なら水族館の一つや二つ建てそうだよな。

 

「...海、さっきから誰と連絡とってるの...?」

「ん? 松原さんとおたえと、あと丸山さん。...あ、今氷川さんから連絡きた」

「それなんてハーレム!? どうしちゃったの海!!?」

「どうもこうもない...ってあっテメひまり! スマホ返せ!!」

「あーッ!! 市ヶ谷さんとか燐子さんとか! ほかにも色んな女の子と連絡取ってる!! 須田さんって誰!?」

「須田誠だよ知ってんだろお前! 落ち着けバカ!」

 

 た、助けてミッシェル!!!(混乱)

 

 

 ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

「ただいまぁ〜...」

 

 アタシにしては珍しく、疲れを含んだ声で帰りを伝える。

 今はとっぷり陽も暮れた時間帯。別に門限があるわけじゃないが、帰宅時間としてはあまり褒められたものじゃない。

 

 帰りがこんな時間になってしまったのはひまりが学校に数学の参考書を忘れたからで、疲れてるのもそれが原因だ。ひまりに文句を言うつもりはないにしても、もうこんなことは無しにしたい。夜の学校なんか近付くもんじゃないって、ほんとに。

 アタシは全然怖くなかったけど、海とかひまりはああいうの苦手だからな、うん。途中なんか海に抱きついちゃったけど、アレはアレだ。ほら、怯えてた海を安心させようとした的な。

 

「あっ、お姉ちゃんおかえり〜!」

 

 ちょうど脱衣場から出てきたあこが、元気にアタシを迎えてくれる。

 肌がちょっと赤いのを見るに、どうやら風呂上がりらしい。

 

「おう、ただいま。今日はちゃんと髪乾かしたか?」

「乾かした!!」

 

 そう言ったあこは、トタトタと居間の方に駆けて行った。

 アタシは一度部屋に寄って、荷物を置いてから居間に行く。

 すると、家族共用のパソコンの前に座っているあこの姿が真っ先に目に入った。いつも通り、なんとかっていうオンラインゲームをやっているのだろう。海とか燐子さんもやってるあれ。なんて名前だったっけ。

 

 帰りが遅れたことは事前に連絡してたけど、一応父さんと母さんに一言謝ってから、取っておいてもらった夕飯を食べ始める。おっ、今日のおかずはチキン南蛮か。

 

「あれー? 海兄まだインしてない」

「ん、まだ家に着いてないんじゃないか? 解散したのさっきだし。あいつ、途中までアタシ達のこと送ってくれてたからな」

 

 不思議そうに首を傾げたあこの背中に、そう声を投げかける。

 今日は途中までだったけど、二人で遊んだ帰りは家の前まで送ってくれるんだよな、海のやつ。

 

「そっか〜。まぁ今日は約束してたわけじゃないし...あ、りんりんインした!」

「ゲームもほどほどにな〜。まだ宿題残ってんだろ?」

「ゔっ。だってぇ...理科と英語全然分かんなくってぇ...」

「分かんないとこは教えてやるから」

「ほんと!? やったぁ! お姉ちゃんありがと〜!!」

「教えるだけだぞ、ちゃんと自分で解けよ?」

「はーい!!」

 

 それから十数分して夕飯を食べ終え、テレビを見ながらゆっくりしていると、不意にポケットの中に入れていたスマホが鳴った。スマホを取り出して画面を見てみれば、クラスの友達の大塚からのメッセージ通知が表示されている。

 

 なんでも、Twitterで海のことをフォローしたらフォローバックされたらしい。正直なところ「そっか」としか言い様がない。『良かったな』とだけ返してスマホを机に置く。

 ピロン、ピロンと通知が続き、それに既読だけ付けてスルーする。内容を要約したら「海がかっこいい」ってことだったし、特に反応しなくてもいいだろうと思った。

 

 

 それにしても、大塚は海のどこにそんなに惹かれているんだろうか。

 中学の頃、音楽の授業で海がアコギを弾いた時にちょっとだけ女子から騒がれてたけど、あの時以外では、女子の間で海が恋愛対象として話題に出ることはほぼ無かった。

 それに、アタシは小学校一年生の頃から海のことを知っているし、数えきれないほど一緒の時間を過ごしてきた。確かに悪いやつではない。むしろ良いやつだが、そんなに騒ぐほどじゃないだろうと思う。友達としては最高のやつだけどな。

 

 アタシは別に、海のことを異性としては見てないし、あいつもきっとアタシのことを女としては見てないだろう。付き合いが長過ぎて、異性がどうとかは全く考えられない。あこが海兄海兄いうもんだから、歳が近い姉弟みたいなもんだと最近では思ってる。

 

 けど、だからといって、大塚と海の仲を応援する気にもなれない。

 それはなんか違う気がする。海に彼女ができるのは...なんか、嫌だ。

 

「はぁ。どーにもなぁ...」

 

 色恋の話は苦手だ。慣れない。

 身内が絡んでくるとなると尚更だ。

 今のままじゃ。居心地のいいアタシたちのままじゃ、いられなくなる気がする。

 海だけじゃない。蘭やモカやひまりやつぐ。あいつらだって、いつのまにか恋人を作ってもおかしくない年頃になってしまった。

 六人の空に、雷雲が漂ってしまう。“今”が変化してしまう気がして、たまらなく怖い。

 

 

 ピロン、とスマホが鳴る。

 

 Kai『駅前に新しいラーメン屋ができるらしい』

 Kai『今度食べに行こうぜ』

 

 ...アタシがわりと真剣に耽ってるって時に呑気なやつだな、こいつは。

 けどまぁ、こいつは昔からこんなやつか。モカと似てるっつーか、考えてるのか考えてないのか分からない。

 そのくせ、ここぞというときは誰よりも頼りになるし、アタシたちを支えてくれる。

 

 ともえ『おう!』

 ともえ『今度みんなで行こーぜ、ひまりの奢りで』

 

 

 アタシの幼馴染みは、どうにもモテるらしい。

 あいつに彼女ができるのは、あんまりいい気はしない。あいつがアタシたちから離れてしまうのが嫌だ。そんなことになるくらいなら、アタシたちの誰かと付き合ってほしい。.....何言ってんだアタシ?

 

「あー、ばからし」

 

 考えすぎて変な方向に思考が向いてしまった。

 アタシたちの誰かが海と付き合うなんてありえない。...ありえないよな? 少なくともアタシはない。好きとかそういうのわっかんねーし。

 あー、いろいろ考えたから腹減ったな。全部あいつのせいだ。ラーメンの話題なんてふってくるし。

 

 ともえ『海のせいで腹減ったからラーメン食べに行こうぜ、今から』

 ともえ『海の奢りで』

 

 Kai『いや意味が分からん』

 Kai『でもラーメンは食べたい。今日お母さん残業らしくて家に飯なかったから』

 

 いや誘い乗るのかよ。フットワーク軽すぎか。

 

 

 




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専門用語とかマイナーすぎるバンド名とかについて。

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  • 分かるからそのまま続けて、どうぞ。
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