ガールズバンドが人気な時代ですが、男も頑張ってみます。   作:怜哉

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恵方巻き食べる方向、今年は“西南西やや西”だそうです。
やや西、とかあるんですね。


男には、命を賭してでもやらなきゃいけない時がある。好きなバンドのコピーとかね。

 

 

 

 

 

 あの方は、とても親切な方です。

 ブシドーです!(言いたいだけ)

 

 

 これは、八月に入ったばかりの頃。区の図書館での出来事です。

 

「あれ? 若宮さんじゃん。久しぶり〜」

 

 私が図書館でベンキョーをしている時、ふと背後から話しかけられました。

 振り返ると、そこには知り合いの男性が立っていました。

 

「カイさん! お久しぶりです!」

「図書館じゃ静かにね〜。あ、宿題やってんの?」

「はい!」

「んー、とりあえず声のボリューム落とそっか?」

「カイさんもベンキョーをしに図書館へ来たんですか? 図書館は素晴らしいですよね! たくさん本がありますし、静かです!」

「うん、そうだね。よーし、それじゃあその静けさを守るためにも一回外出よっか」

「? はい!」

「うーんこの」

 

 どこか困った表情で、カイさんは私を連れて図書館の外に出ました。

 外は暑いですが、カイさんの買ってくれた麦茶がとても冷たくて気持ちいいです。

 

「終業式以来だから...二週間ぶりくらい? テレビでは結構見てるけど。あ、そういや五月くらいにやってたライブの映像解禁されてたね。見たよ。めっちゃ良かった」

「本当ですか!? ありがとうございます!」

 

 元々チサトさんのファンだったというカイさんは、私たちパスパレのこともよくご存知です。たまにイベントなどにも来てくださいます。

 

「カイさんはこの夏休み、どう過ごしてらっしゃるんですか?」

「俺? 俺は...そうだなぁ。ハピハピ島行って宝探ししたり、花火見に行ったり、ニュージーランドまで拉致られたり、ライブに出たり、明日からはなんかお嬢の誕生日祝うぞっつって南極行くらしくて.....あれ? 俺の夏休み、ほぼハロハピに支配されてない...?」

 

 カイさんは一瞬険しい顔をしましたが、すぐにいつも通りの顔に戻りました。

 とても楽しそうな夏休みをすごしているみたいですね!

 

「若宮さんはアイドル業と、あとつぐんとこでも週二でバイトしてるんだっけ。それで学校もちゃんと通ってるの、ほんとにすごいよね」

「いえ、どれもすごく楽しいんです! ...あっ、でもベンキョーはちょっとニガテです...特に現代文が難しくて...高校生になって、漢字も難しいものが多くなりましたし...」

「おぉ...なんか帰国子女っぽい弱点きた。現国なら俺得意だから、なんか行き詰まったら全然教えるよ」

「それはとてもありがたいです! 実は、宿題で分からないところがいくつかあって...」

 

 カイさんはとても頭がいいです。

 私達の学年でも特に優れていて、一学期の期末テストは学年で八位でした。すごいです!

 そんなカイさんに、私はたびたびベンキョーを教えてもらっています。カスミさんやオタエさんも、教えてもらっているそうです。

 

 カイさんが持つ助け合いの精神、まさにブシドーです!(どうしても言いたいだけ)

 

 

 

 ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

 

 八月某日。CiRCLE。

 

「海。次のライブ、あなたにはRoseliaの一員としてギターを弾いてもらうわ」

「ふぁ?」

「Roseliaに全てをかける覚悟はある?」

「なんて?」

 

 突然何言ってんだこの人。

 

「もー、友希那ったら。それじゃ海くん混乱しちゃうじゃん」

「そうかしら」

「そうだよ☆」

 

 その会話も十分混乱要因なんですが。

 

「先日まりなさんに勧められたのだけど、再来週、コピーバンドのみが出場するライブが開催されるらしくて。スキルアップのためにもそれに出てみようということになったの。そこでギターがもう一人必要になったので、関口くんに声をかけることにしたのよ」

 

 状況を見兼ね、氷川さんが補足の説明をしてくれた。わかりやすい。

 にしても、コピバン縛りのライブなんてあるんだな。

 

「まぁ話は分かったんですけど、なんで俺なんすか? 俺、男っすけど」

「別にガールズバンドを組もうと思ってRoseliaを作ったわけではないわ。それに、あなたはサポートメンバーという扱いなの。男でも女でも構わないのよ」

「にゃるほど」

「可愛くないわ、やめてちょうだい」

 

 友希那さん厳しかった。怖いにゃん。...いやキモいな。友希那さんにも睨まれたしもうやめよ。

 音楽以外で唯一ネコにだけは本気だよな、この人。

 

 しかしまぁ、理解はしたが話を受けるかは微妙だ。

 最近新しい機材と二本目のギターも買いたくなってきてるから、バイトのシフト増やしたいんだよな。夏けっこう遊びに使っちゃったってのもでかい。

 Roseliaと演奏するのなら妥協は絶対に許されない。忙しくて練習不足でした〜、なんてのは通用しないし、何より俺がそれを許せない。

 なら、最初から断るほうが.....

 

「因みにa crowd of reb〇llionのコピーをしようと思っているわ」

「Roseliaに全てをかけさせていただきます」

 

 機材とギター? んなもん知るかさっさと練習すんぞオラァ!!(作中一のチョロイン)

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

 数日後。羽沢珈琲店。

 

「おい関口! 再来週あるコピバン限定のライブに出ないかってさっきまりなさんに言われたんだけど!」

「あー、俺それ出るよ。Roseliaのサポートで」

「俺達も出ようぜ!」

「ま?」

 

 俺別のバンドで出るゆーとるやんけ。正気かお前。

 

「五十嵐にも声掛けて...うわあいつ返信早。あ、でも五十嵐も暇だから出たいってよ」

「おい待て俺の意思」

「俺この前知ったバンドのコピーやりてーな。さーふ○す? っての!」

「いやうちのバンドにシンセいねーだろ」

「シンセサイザーなら私が弾けますよ!」

「イヴちゃんナイス!!」

 

 若宮さんどっから出てきた?

 あー、なるほど今日羽沢珈琲店のシフト入ってたのね。理解理解。

 ...いや、ここにいる以外の理由が何も分からん。え、オスバンド(仮)でシンセ弾くの? 若宮さんが? なんで?

 

「いやでも若宮さんアイドルなんだし、さすがに事務所とかが止めるんじゃ...」

「今連絡したら、『バンド界隈からの認知度上げるためにも行ってきていいよ』って言われました!」

「何言ってんだそいつ」

 

 待て待て待て待て。

 話がトントン拍子で進みすぎだ。

 一旦落ち着けお前ら。クールになろうぜ。

 はい、りぴーとあふたみー。びーくーる。

 

「まりなさんに参加するって連絡した!」

「デジマ?」

「? カイさん、『デジマ』とはどういう意味でしょうか?」

 

 あと二週間でリ○リオンとSu○faceコピーすんの? 俺死んじゃうよ?

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

 翌日。Afterglowときた花火大会会場。

 

「あ! そういえば海! 昨日まりなさんに教えてもらったんだけど、再来週コピーバンドのライブが──」

「その切り口聞き飽きたわ」

 

 花火も見終わり、人の波からも抜けた頃。

 突然思い出したかのように言い出したひまりが、俺の服を掴む。

 

「あ、もしかして知ってた? なら話が早いね! せっかくだし一緒に──」

「その切り口も聞き飽きたわ。やんねぇよ、俺パス」

「えー!!? 一緒にライブやろうよ海〜!!」

「ん? あこが『海兄と一緒に演奏できる〜!』って騒いでたから、Roseliaとは出るんだろ?」

「うん。それとは別に、例のオスバンド(仮)でも参加すっから、さすがに無理」

 

 本当に死ぬぞ。

 昨日徹夜で練習してたけど、リベ○オンがマジでやばい。てかシャウト部分は俺が歌うっぽい。シャウトの練習しにカラオケにも行かなきゃなぁ。

 

「ふむふむ、なるほど〜。海はあたしたちアフグロを捨てて、Roseliaに加担する、と。モカちゃん泣いちゃう〜」

「言い方」

「そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな」

「お前どこのエーミールだ」

 

 なんと言われようと、俺はこの話は受けないぞ。体が持たないからな。

 せっかくの夏休み、ギター以外にもいろいろしたいだろ。いやまぁいろいろしてしたんだけどさ、今年の夏休みは。でもまだ遊びたい。ギターばっかやってる場合じゃねぇ。

 

「そっか。海が嫌ならいいよ。あたしたちはいつも通り、五人で演奏する」

「いや、別に嫌ってわけじゃ...」

「でも残念だよ」

「? 何がだよ、蘭」

「今回コピーしようとしてるバンド、Ac○d Black Ch○rryなん──」

「よし受けよう。いつ曲合わせる?」

「チョロ」

 

 ばかやろうお前俺はやるぞお前────!!!

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、俺の残りの夏休みは死んだ。

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

 さて、地獄の夏休み後半戦が始まったわけだが、地獄だからと言ってもなにもキツいことだらけではない。

 

「...一応、曲として通りはしたわね。でも、まだ完璧とは言い難いわ。十分ほど休憩を取って、もう一度合わせましょう」

 

 汗を拭いながら、友希那さんが言う。

 今日はRoseliaとの初合わせの日だ。リベリ○ンはスコアがないから全部耳コピだったけど、何とか今日に間に合わせることができた。

 やる曲は三曲。『M19○7』、『B.I.○.B』、『Anem○ne』だ。

 個人練習は地獄以外の何物でもないが、合わせは天国だ。めっちゃ楽しい。

 

「氷川さん、ピッキングハーモニクス*ってできます?」

「一応できるけれど」

「あ、じゃあBメロのここんとこのピッキングハーモニクスしてもらえません? 俺のパートではあるんですけど、俺ピッキングハーモニクスできなくて」

「...意外ね。あなたならなんでもそつなくこなしそうなものだけれど」

「いやぁ、アコギじゃピッキングハーモニクスなんてしませんからね。初挑戦でした。一応練習はしてきたんですけど、なかなか上手くできなくて」

「分かったわ、そこは私が弾きます」

 

 ピッキングハーモニクスは完全に才能の問題だからな。一発でできるやつもいれば、俺みたいに何日かけてもできないやつもいる。

 もっと練習すれば俺にもできるようになるんだろうけど、今はそっちに時間をかけてる場合じゃない。

 

「それにしても海くん、デスボなんて出せるんだね〜。最悪、普通にコーラスしてもらえればいっかくらいで考えてたのに」

 

 どこから取り出したのか、タピオカミルクティーを片手にしたリサさんが感心したように言ってきた。いや、ようにっていうか本当に感心してるのだろう。

 あとめっちゃナチュラルにタピオカ飲み出したけど、CiRCLEってスタジオ内での飲食OKだったんだ。何気初めて知った。いつもリサさんや氷川さんが持ってきてくれるお菓子の差し入れはカフェテリアの方で食ってたし。

 

「あー、練習すれば結構簡単にできますよ」

「そうなの?」

「はい。まずは悪魔を召喚します」

「あはは〜、まーたおかしなこと言って〜☆」

 

 低音デスボのお姉さんが言ってたことをそのまま言ったらなんか小馬鹿にされた。悲しい。低音デスボのお姉さんは間違ってないもん。

 あとこれ豆知識だけど、デスボとシャウトはちょっと意味違うからな*。俺が今回やってるのは主にシャウト。

 

「悪魔を召喚...ハッ、まさか海兄もあこと同じネクロマンサー...!? 死の淵より響くかの声は、地獄を彷徨う亡者達の怨恨の声だったということか!! まさに死の声、デス・ボイス...何それカッコイイ〜!!」

「なんて?」

 

 相変わらずあこちゃんワールドは分からん。

 いやでもデスボって、『強い怒りや悲しみなどの感情や、不気味さ、汚さ、痛みや苦しみなどを表現するために使われる。』ってWiki○ediaにも書いてあったしな。地獄の亡者ってのは間違ってないのかも。いやそもそもデスボのお姉さん曰く、デスボは悪魔の声なんだけどな?

 

「しっかしまぁ、シャウトしながら弾くのなかなか厳しいな」

「本家は...ピンボーカルの方が...スクリーム役...ですからね...。少し、タイミングを...取るのが...難しい...かも...」

「そうなんですよね〜」

 

 まぁ、そういう白金さんは毎度毎度完璧なコーラスしてるんだけどな? いや、なんで手元と違うテンポのコーラスやっててブレないの? 白金さん、日本の高校生キーボーディストの中じゃ多分もうすでに頂点(てっぺん)取ってるよ。

 

 とまぁ、そんな感じで、Roseliaの方は結構すんなり練習は進んでいる。

 まぁその代償として、俺の睡眠時間はガリガリ削られていってるわけなんだが。今んとこの平均睡眠時間が四時間だわよ。眠すぎて名探偵になってしまうわね(眠りの小○郎的な意味で)(すでに過労)

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

 Roseliaとの練習が終わり、二日後。

 今日はオスバンド(仮)の練習日だ。

 つかそろそろバンド名決めたい。

 

「なぁ関口〜。間奏のドラム暇だからブレイクダウンしちゃダメ?」

「いいじゃんやろうぜ」

「おい待てバカども」

 

 珍しく須田がツッコミに回る。

 しかしそれは解せない。ブレイクダウンは正義なのだ。圧倒的正義。異論は認めるが受諾はしない。正義は勝つのだ(盲信)

 

「若宮さん、ブレイクダウンって分かる?」

「スミマセン、知らないです...」

「いや全然大丈夫だよ。ブレイクダウンってのはね、曲中に急にテンポ落として...」

「待て待て待て待て、待て。ステイだ関口」

「.....そんでね? 低音を強調させるように全パート揃って演奏する奏法をブレイクダウンって言って...」

「いや待てって言ってんだろバカ。お前アレだよな、たまに本当にアホになるよな」

 

 失礼な。ブレイクダウンって案外知られてない単語だから教えとこうと思っただけなのに。別にこれを機にハードロックとかメタル系とかを聴かせようとも思ってないんだからな。

 あ、でもあとでブレイクダウンの参考バンドとしてBe○raying The M○rtyrsでも聴かせようかな。これはシンフォニックメタルとかハードコアあたりに分類されるのかな? そこら辺あんま詳しくないけど、そのバンドは最近ハマってる。

 

「まぁブレイクダウンは冗談として。結構普通に合ったな、曲。一回目なのに」

 

 スティックをクルクルさせながら、感心したように五十嵐が言う。

 俺たちがライブでやろうとしてるのは、S○RFACEの『さ○』と『それじゃ○バイバイ』、『なにし○んの』の三曲。

 全部難しいは難しいんだが、これらは全部スコアがあった。耳コピなんかより全然楽。スコアがあるって素晴らしいことだよ。マジで。

 

 今日は三曲とも合わせたんだけど、なんか普通に通ってしまった。すげー。

 相変わらず才能の留まるところを知らない須田はスラップをマスターしてきたし、五十嵐も案外おしゃんにドラムを叩けている。若宮さんはちょっと苦労してるかなって感じだけど、全然違和感はない。

 俺? まぁ完璧とは言わないけど弾けてはいるし歌えてもいる、と思う。一応形にはなったし、あとは完成度を上げるだけだ。

 

「一曲ずつ、もう二、三回合わせて今日は終わりにすっか。今日この後エフェクター買いに行きたいし」

「は? またかよ関口。お前この前も買ってたじゃん」

「ドラマーからしたらエフェクターなんて全然分かんねーんだけど、そんなに重要なもんなのか?」

「めちゃくちゃ必要だよ、俺の性癖を満たすためにも。あとこの前買ったのは歪みな。E○MAのReezaF○ATzitz 2」

「いや知らねーよ」

 

 まぁドラマーはあんまり興味ない人多いよな。五十嵐もあんま興味ない側の人間だろう。

 でも須田、お前は絶対こっち側にくる人間だって俺は信じてるぞ。ベース用のエフェクターだってたくさんあるしな。

 

「今日買いたいのはフランジャーだよ。ほら、『それじゃあバイ○イ』のCメロの入り、なんかフォンフォン鳴ってるだろ? あの音出したい」

 

 俺の手持ちは歪み二つとリバーブだけだ。

 本当はフランジャーより先にディレイも欲しかったんだけど、財布と相談した結果今回は断念。そのうちワウ*も欲しい。あとボリュームペダルも必須だな。

 金が足りん、働かなきゃ。

 

「ふむ、わからん。まぁ本家っぽくなるんならそうした方がいいよな。よし、んじゃあぱっぱと曲合わせて今日は終わろ」

 

 そう言った五十嵐がスティックを叩いてカウントを取り、曲が始まる。

 相変わらず合わせはめちゃくちゃ楽しい。

 あと須田のコーラスが上手い。ハモりもできる。本当に才能が留まるところを知らないやつだな。軽く嫉妬するんだが。どこぞの主人公かお前、ってレベル。

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

 更に翌日。

 アフグロとの練習日。

 

「海。途中で頭振りすぎ。気になって仕方ないんだけど」

「ばかやろう蘭お前、V系は頭振ってなんぼだろ。あと頭振ると眠気覚めるし」

「寝なよ。夜」

 

 寝れたら苦労してねぇよ(二徹目)

 

 アフグロと演奏するのはA○id Black Ch○rry、通称A○C。

 やる曲は三バンド中最多で、『少女○祈り』『Bl○ck Ch○rry』『SP○LL MAG○C』『黒○~adult black cat~』『ピ○トル』の全五曲。『少女の○りIII』じゃなくて普通の『少女の○り』な。無印の方が好きなんだよ俺。

 ちなみに、今回蘭はピンボだ。蘭たちが俺を誘おうと思ったのも、A○Cのギタボは厳しいと判断したかららしい。いや、つーかA○Cはギタボするようなバンドじゃないからな? ほぼツインリードだし。

 

 それにしても俺、ほんとによくこの短期間でコピーできたと思う。今回のこれで、ギタリストとして一つ上のステージに行けたんじゃないだろうか。

 めちゃくちゃ頼み込んでスコアあるやつだけにしてもらったんだけどな。

 

「でも、海くんと演奏してるのすっごく楽しいね」

「何気に初だしな! 海と演奏するの!」

「確かに。そういや初めてだな」

 

 意外だわ。てっきり何回も組んでると思ってた。いや自分のことだけどさ。

 けっこうな時間を一緒にすごしてるからなぁ。そりゃ錯覚もするさ。

 

「しっかしアレだなぁ。二年くらい前に楽器始めたばっかなのに、もうA○Cなんてコピーするようになったんだな。上手くなったもんだ」

「なにそれ。上から目線ムカつく」

「いやお前、Fコード弾けない〜、コードチェンジできない〜、ミュートできない〜、ってずっと言ってただろ。俺がどんだけ蘭の家に通って教えてたと思ってんだ」

「.....忘れた」

 

 薄情なやつめ。

 蘭ママとはたまにお茶する仲になったし、蘭パパとも結構気軽に喋れる仲になるくらいには通ったぞ俺。

 

「ひまりもめちゃくちゃ上手くなったよな。最初の頃は弦抑える力無さすぎて音すら出なかったのに。リズム感も皆無だったのに、今じゃマジで安定してるよな」

「へっへ〜ん!! ひまりちゃんはやればできる子なのです。もっと褒めてくれてもいいんだよ海〜!!」

「モカと巴は最初っからある程度弾けてたし叩けてたけど、二年前とは比べ物にならないくらい上手くなってるし」

「ちょ、無視!?」

 

 やればできる子って以上にすぐ調子乗って失敗する子だろ、ひまりは。必要以上に褒めたら何か大事な場面でポカをするって経験上知ってんだ俺は。十年の付き合い舐めんな。

 

「あとつぐな。一番成長したのって言ったらやっぱつぐだよ。シンセめちゃくちゃ上達したよな」

「そ、そうかな...でも私なんてまだまだで...」

「いやいや、胸張れって。高一でそこまで弾けるやつなんかそうはいないから」

 

 つぐはイマイチ自己肯定が低いんだよなぁ。

 謙虚なのは日本人の美徳だけど、つぐのそれはちょっと行き過ぎてるっていうか、病まないかたまに心配になる。

 てか本当につぐは上手い。つぐが比較対象にしてる周りのキーボーディストが異常なだけだ。白金さんみたいなチートが身近にいたら俺だって劣等感を感じるって。

 

「さて、と。まぁとりあえず、ラスト一曲合わせてみるか」

 

 一息ついてから、俺が言う。

 今合わせた曲は四曲。つまりあと一曲残ってるわけだが、そのタイミングで雑談を挟んだのには理由がある。

 それは、残りの一曲───『ピスト○』が関係している。

 

「お〜。それが七弦ギターですか〜。初めて見た〜」

 

 まじまじと俺のギターを見るモカ。

 そう、今モカが言ったように、俺が持っているのは七弦ギターだ。Iba○ezのRG7420Z WKなのであーる。いや、『ピス○ル』って七弦使うらしいんだよね。スコアにそう書いてあった。

 

 黒光りがめちゃんこにイカしてるこのギターは、姉ちゃんの私物だ。

 いや、私物“だった”というべきか。

 七弦が必要って言ったら、「今使ってないやつあるからあげるよ。三千円ね」って言うから買い取ってきた。

 もうこいつは俺のモンだ。大事に使おう。関口海、メタルギタリストへの第一歩である(大嘘)

 

「いや〜、七弦(こいつ)を使うの楽しみだったんだ〜。アンプ通すの今日が初めてだし、昨日からずっとウキウキしてた」

「いや、音作りくらい事前にしてきなよ」

 

 うるせーバカ! そんな暇なかったんだよバカ! 音作りまで間に合わなくてごめんなんだよバカ!

 

 さてさてさーて。それじゃあお待ちかね、音出ししてみるか。

 初めはエフェクターは無しで、アンプのツマミはドンシャリ*。

 そして七弦目を親指で(はじ)く。

 

「いやひっく」

 

 思ったより低い。ズンッと来る感じ。テンションが上がってしまいますねこれは。

 その後軽く『ピス○ル』のリフを弾き、音を確かめる。

 続いてエフェクターのスイッチをオン。ブルースドライバーだけでいっかな。

 エフェクターを通した音も確認し、特に問題はないと判断する。

 

「いける。やろ」

「ん。じゃあいくよ、みんな」

 

 そして最後の一曲が始まった。

 いつも以上にニコニコしながら、俺は七弦ギターをかき鳴らす。

 

 

 まぁ正直なところ、コード一つ弾くのにも七弦目のミュートが必要になってくるから面倒。ぶっちゃけ七弦目は必要ないと思いました、まる(個人的感想です)

 

 

 ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

『カンパーイ!!』

 

 カーンッ、とグラスのぶつかり合う音がスタジオ内に響きます。

 

 コピーバンドのみのライブが終わり、今は会場でもあったCiRCLEで打ち上げをしているところです。

 ライブの参加者には成人した方もいらっしゃるのですが、八割方がミセイネンということで飲み物はソフトドリンクのみとなっています。

 

「若宮さん、お疲れ〜」

「カイさん! お疲れ様です!」

 

 こちらにきてくださったカイさんと軽くグラスをぶつけて乾杯をします。

 

「今回ライブ付き合ってもらっちゃってごめんね。そんでありがとう、楽しかったよ」

「いえ! 私もやりたくてやってましたし、とても楽しかったですよ!」

「そう? ならよかった」

 

 そう微笑んで、カイさんはグラスに注いだオレンジジュースを一口飲みました。

 カイさんが話したいと思っている方はほかにもいらっしゃるでしょうに、この場に知り合いがあまりいない私へ気を使ってくれているのか、カイさんは私の話し相手になってくれます。

 

「そういや今日、パスパレのファンも来てたね。あの毎回髪色変えてる子」

「確かに来てくださってましたね! ...あれ? カイさんもカノジョのことをご存知だったのですか?」

「まぁ俺も一応パスパレのファンだし。時間と金の都合がいい時はライブとかも行ってるから、あの派手髪は嫌でも目に入るんだよね」

 

 カイさんがパスパレ...特にチサトさんのファンで、サイン会などのイベントに来てくださっているいうのは知ってましたが、ライブにまで足を運んでくださっていたのは知りませんでした。

 

「関口くん」

 

 と、不意にカイさんへ声がかけられます。

 その声の主はサヨさん。その後ろには、今日対バンしたバンドの方が数人立っています。

 今日はCiRCLEでのライブということもあり、女性の方が多い、というよりカイさん達三人以外は全員女性の方でした。なので、サヨさんの後ろの方達ももちろん女性です。

 後ろの方達は、大学生の方々でした。カノジョ達は確か、Sil○nt Sirenのコピーをしていたバンドの方々...だったはずです。

 

「? なんですか、氷川さん」

「彼女達があなたと話をしたがっているの。あなた、今日三つものバンドで参加していたでしょう? それが原因よ、きっと」

「あー...。まぁRoseliaやAfterglowのサポートで入って、自分のバンドでは現役アイドルを引っ張ってきてるやつですもんね、俺。確かに第三者が見たらヤベーやつ認定もされますわ」

 

 納得のいったように、カイさんは数度頷きました。

 カノジョ達の気持ちは、私にもジュウブン分かります。

 今日のカイさんは凄まじく、まるで侍のような気迫を感じました! さらに、Afterglowと演奏している時はものすごく頭を振っていて、まるで酔拳のようでした。カイさんなら拳法の一つや二つ、マスターしていてもおかしくはありません。

 

「キミ、関口くんっていうの? ギターすっごく上手いね〜!」

「歌も上手だったし! 何かレッスンとか受けてるの?」

「将来はバンドでご飯食べていくの? 次のライブの予定とかない?」

「彼女いる!?」

 

 カイさんと(一方的に)話し始めたカノジョ達の勢いは凄まじく、矢継ぎ早、というものはこういうもののことを言うんだと私は学びました。

 

 カイさんは少々面食らったようでしたが、すぐに各応答をしていきます。声は震えていました。視線もキョロキョロとして定まっていませんが、緊張しているのでしょうか?(軽度コミュ障からくる(ども)り)

 途中でヒマリさんがやってきてカイさんの足を踏んだり、ランさんがカイさんの脇腹をパンチしたり、リサさんとサヨさんが大学生のカノジョ達とカイさんの間に入ったりしていました。なぜでしょう?

 

 皆さんの行動は分かりませんが、皆さんがカイさんを慕っているということは分かります! 私もカイさんのことはとても尊敬しています!

 

 多くの人の心を掴むカイさんの在り方、まさにブシドーです!!(是が非でも言いたかっただけ)

 

 

 




いや、評価感想くださいって言ってみるもんですね。めちゃくちゃ評価感想いただけて舞い上がりました。
もっとください(強欲)

RoseliaとコピーするバンドはJan○e Da Arcも考えたんですけど、友希那さんが歌って、しかも燐子っていうキーボーディストがいるんならリベリ○ンの方がいいなって思ったのでリベ○オンにしました。アフグロでA○Cやらせましたしね。

あとめちゃくちゃどうでもいいかもなんですけど、A○Cってギターのユニゾンとかハモリとかがあって、それをオリ主とモカが一緒に弾いてるっていうのが作者的エモエモポイントです。


*1「ピッキングハーモニクス」… 弦をピッキングした直後に、ピッキングした(ピックを持ってるほうの)手の親指の側面を弦にあてて、押えているフレットポジションの音程よりも高い「ピキーン」みたいな金属的な倍音を鳴らす奏法。

*2「デスボイスとシャウトの違い」… デスボは、メロディや音程関係なく声を歪ませて叫ぶ。対してシャウトは、メロディや音程に合わせて声を歪ませて叫ぶ。デスボとスクリームは同義。

*3「ワウ」… ワウペダル。エフェクターの一種。音の周波数帯を変えることができる。ほんとに『わうわうわうわう』って鳴る。これはガチ。

*4「ドンシャリ」… 低音(BASS)と高音(TREBLE)が強調されて中音(MIDDLE)が低い音作りの種類的なものを指す俗語。リードギターの音作りに向いている。「男は黙ってドンシャリ」(個人的意見です)

専門用語とかマイナーすぎるバンド名とかについて。

  • 伏字で出されても分かんねぇわ!辞めろ!
  • 好きにやってええんやで(菩薩)
  • 全然分かるけど辞めな
  • 分かるからそのまま続けて、どうぞ。
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