ガールズバンドが人気な時代ですが、男も頑張ってみます。   作:怜哉

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るんっ!(☆そこに言葉は要らず───V2)

 

 

 

 

 

 

 彼は、あたしが嫉妬した初めての男の子だ。

 

 

 彼を知ったのは、ほんとに偶然。

 最初は、彩ちゃんのSNSに時折出てくる男の子、って印象だった。

 彩ちゃんは、彼の顔だけは絶対に写らないように気を付けてたみたいだけど、直接聞いたら顔を見せてくれたんだよね〜。

 写真の中の彼は、彩ちゃんにアーンをされてて赤面していたり、彩ちゃんに抱きつかれて赤面していたりしてた。ほんとに付き合ってないのこの二人? 文〇砲とか五、六発は飛んできそうだけど。

 

 

 次に知ったのは、リサちーとのLINE。

 お姉ちゃんにはナイショで、お姉ちゃんとリサちーが所属してるRoseliaでの練習風景を写真で送って貰った時に、写真の端にちょこっと写っていた。

 お姉ちゃんの前で、お姉ちゃんと向き合いながらギターを弾いてる男の子。

 この時の印象は、端的に言って嫉妬だね。

 だってお姉ちゃんと一緒にギター弾いてるとかズルくない!? ズルだよズル!! 羨ましー!!!

 

 

 私は彼と、実は直接会ったことはない。Twitterはたまに見てるけど。

 ほら、彩ちゃんがすーぐ彼の投稿にいいね押すからオススメに出てくるんだよね。よく海外に行ってるイメージ。お金持ちなのかな?

 

 そんな彼と、私は今日初めて遭遇した。

 

「あー!! せきぐちかいだ!!」

「ヒエッ...」

 

 なんか怯えられちゃった。

 

 

 ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

 九月一日。

 そう、今日は九月一日である。カレンダーをいくら凝視しようがその事実は変わらない。嘘だと言ってくれファーザー。

 

「今日九月一日じゃん! あと一ヶ月は休みあるわ〜」

 

 死んだ目でカレンダーとにらめっこをしている俺の隣で、徹夜明けの姉ちゃんが挑発じみた声音で言う。腹立つな大学生このやろう。

 だがまぁいい。九州に住んでる俺の従兄弟は先週から学校始まってるらしいしな。そこと比べれば全然。

 県の方針だかなんだか知らないけど、関東(こっち)より夏休みが一週間遅く始まり、一週間早く終わるらしい。暴動が起きてないのが不思議だ。

 

 朝食を食べ、歯を磨き、懐かしささえ覚える制服に袖を通す。

 

「いってきまーす」

 

 欠伸をしながらリビングでゲームをしている姉ちゃんに軽い怒りを覚えつつ、俺は家を出た。

 空は雲一つない晴天。九月とはいえ、まだまだ夏の暑さは続いている。

 マンションのエントランスで買った炭酸飲料で喉を潤しつつ登校していると、スマホが震えた。

 おたえあたりからのLINEかな? そう思いスマホを取り出すも、どうやら俺の予想は外れたらしい。TwitterのDMだった。

 とりあえず開いてみる。

 

 

『Dear Mr. KAI SEKIGUCHI

 

 Hello. I am in charge of Record producer.

 

 I saw your guitar technique in Twitter.

 

 I am interested in your───』

 

 

 そっと閉じた。

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

「はよーっす」

 

 教室に入り、久しぶりに会ったやつらに軽く挨拶する。

 この夏休み、バンドのことかお嬢のお供しかしてなかったからな。ポピパ連中と若宮さん、北沢、須田、五十嵐以外はマジで一ヵ月ぶりくらいに会う。

 あ、ごめん嘘。澤田さん(五十嵐の彼女)にも会ったわ。この前のライブ来てくれてた時に。

 

 挨拶もほどほどに、俺は自分の席へ向かう。

 今日は始業式だけで荷物が少ないとはいえ、ゼロではない。とりあえず荷物置きたい。

 

「おーっす関口〜。いちご牛乳飲む?」

「いらない」

 

 俺が席に荷物を置くや否や、須田がヘラヘラとした笑みを浮かべながら近付いてきた。

 その手にはパックのいちご牛乳とコーヒー牛乳が握られている。

 

「なんだよつれねーなー。間違って買っちゃったからお前にあげようと思っただけなのによー」

「どうせそれを俺が貰ったら、代わりに宿題見せろとか言ってくるんだろ。GWの時みたいに」

「チッ」

 

 あっ、今こいつ舌打ちしたぞ、舌打ち! チッて!!

 

「.....で。ちなみに何が終わってないのお前」

「英語と数学と化学」

「ほぼ半分だな」

 

 まあ見せてはやらないんだけど。

 精々苦しめ。それか牛込さんにでも頼んでこい。

 

「ケチんぼ」

「自業自得だ」

 

 俺は絶対に人に解答は見せないからな。解き方なら教えるけど。

 その方がそいつのためになるとか、別にそういうのじゃない。普通に嫌じゃん、自分が労力掛けて解いた問題を他人に写されるの。

 

 シッシッと須田を追い返すと、入れ替わり気味におたえが寄ってきた。

 

「海。今日放課後暇? 私、三時からバイトなんだ。お昼と暇つぶし、付き合ってくれない?」

「あ? あー、いいよ、大丈夫」

 

 なんか終業式の日もこんなことあったなー、とぼんやり考えていると、HRの始まりを告げるチャイムが鳴った。

 それを受け、生徒たちはみな自分の席につく。が、うちの担任は少し遅れているのか、未だ教室に姿を表さない。

 まぁ、教師っつっても遅刻する日くらいあるだろ。人間だもの(かいお)

 

 三分ほど経ち、教室でチラホラ雑談が出始めた頃。

 廊下からツカツカと足音がした。ちょっと小走りっぽいし、きっとうちの担任だろう。

 あ、ちなみにうちの担任は男な。もう筋骨隆々の漢な。絶対体育教師だと思ってたけど、蓋を開けてみればまさかの生物教師だった。学校で飼ってるアルパカとヤギの世話もしてる。

 

 元女子校なら教師も女で、そんでもって美人だったらいいな〜、と。

 そう思っていたのは俺だけではないだろう。そうだよなお前ら? 元女子校受験するやつなんて下心しかないやつだよな?

 

 だがしかし、俺たちの教室のドアを勢いよく開けたのは、漢ではなく美少女だった。ウチとは違う制服を着た美少女だった。

 

 男子が沸いた。

 

「体育祭一緒にやりたい人、この指とーまれっ!!」

 

 男子が群がった。

 女子に制裁された(残当)

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

 突然­­現れた謎の美少女アイドル、氷川日菜。

 何も謎じゃないことは一旦置いとくとして、彼女は声高らかにこう言った。

 

「あー!! せきぐちかいだ!!」

「ヒエッ...」

 

 変な声出た。

 いやだって...突然出てきた他校所属の現役アイドルに、こんなクラスの真ん中で、しかもフルネームで名前呼ばれたらそら怖いやん...。びっくりするでホンマ...。

 

 まぁ氷川日菜が俺の顔と名前を知ってること自体は不思議じゃない。

 丸山さんに白鷺千聖、若宮さんに俺の顔は割れてるんだから、そこ経由で知ってたとしても不思議じゃない。昔ちょっとだけ大和麻弥とセッション的なことをしたことあったし、彼女も俺の顔を知っているはずだ。覚えてるかは別だけどな。一年くらい前の話だし。

 それに何より、氷川日菜は氷川さんの双子の妹だしな。

 

「むー。そんな怯えなくていいじゃーん。てゆーかなんで怯えてるの? ...あ、イヴちゃんやっほー!」

「ヒナさん、おはようございます!」

「うん、おはよー」

 

 気軽に挨拶とかする前に、いろいろ説明くださいませんかねぇ...。

 脊椎反射で氷川日菜に群がった男子たち含め、この場で現状を理解している者は、氷川日菜除き誰もいない。

 

 と、そこで俺たちの教室のドアが強めに開け放たれる。

 

「ちょっと日菜!? あなた、一体何を考えているの!?」

 

 教室に入るや否やそう激昂するのは、我らが風紀委員、氷川紗夜さんだ。

 氷川日菜が花咲川に侵入したのを、教師経由か、はたまた自分の目で見たのか、いずれかの手段で知ったのだろう。血相を変えて、の言葉が相応しい顔で俺たちの教室に乗り込んできた。

 

 てか、塩月(A組担任)どこいった?

 

「あっ! お姉ちゃん!! 体育祭一緒にやろ〜!!」

「何を! 考えて! いるのっ!!」

()ひたひひたひ(いたいいたい)ほっへは(ほっぺた)ひっはら(ひっぱら)はいへ(ないで)

 

 ちょっと涙目になりつつもどこか嬉しそうな氷川日菜。

 状況が何も分かっていない俺たちへ、更なる追い討ちがかかる。

 

 ガッシャーン、と盛大な音を立てて、窓から天災(弦巻こころ)が飛び込んできた。

 

「話は聞かせてもらったわ!! 面白そうね! 花咲川と羽丘、一緒に体育祭をやりましょう!!」

 

 

『もう好きにしてくれ』

 A組の心は、新学期早々一つになった。

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

「美味しかったね、魚介豚骨つけ麺」

「めちゃくちゃな。普段つけ麺食べないけど、これはハマる」

 

 放課後。

 

 天才と天災の会合は学校側にも大きく影響を与え、というか弦巻家の権力が九割だとは思うが、とにかく花咲川と羽丘の合同体育祭は実現することになった。

 まぁ別にいいんだけどな、俺としては。教師陣とか生徒会とか、その辺が忙しくなるだけだから。俺に実害はないし。あと蘭たちと一緒に体育祭できるし。

 

「次は鶏ガラと昆布だしの鰹節風味つけ麺が食べたいな」

「味の大洪水すぎるだろそれ」

 

 おたえの要望でわざわざ池袋まで出てきてつけ麺を食った俺たちは、思いのほか満足して店を出た。

 現時刻は午後二時十五分。昼食を摂るにしては遅いが、おたえのバイトが始まる時間を考えればちょうどいい時間だ。

 俺たちは軽く雑談をしながら、駅に向かう。

 

「そういえば海。昨日Twitterで見たんだけど、来月発売のBAB〇METALの新譜ね、九弦ギター使ってるらしいよ」

「九? ...九? 九って何? それベース二本用意するとかじゃダメだったの...?」

 

 多弦ギターは基本、太い弦が増えていく。

 六弦のレギュラーチューニングで一番低い音が、ベースの一番高い音と同じ音になる。そして七弦ギターの七弦目は、ベースの二弦目と同じ音になる。

 つまり九弦ギターは、六弦ギターと四弦ベースを組み合わせた楽器になるわけなんだが...それってギターなの? ベースなの?

 

「分かんないけど、それが“ヘビィメタル”なんだよ」

「めたるしゅごい.....」

「メタルといえば、昨日ir〇n Saberってバンド見つけたんだけど、海知ってる?」

「パワーメタルじゃん。パワーはいいゾ。(パワー)こそが全てだ。あとおたえは早くメロデスを聴け。慟哭がお前を待ってる」

「? 慟哭とかはよく分かんないけど、とりあえず聴くね。何聴けばいい?」

「んー...ARCH EN〇MYとかわりと有名じゃね?」

 

 オタクやんけ!!

 青春の欠片もない変態チックな話をしていると、すぐに改札までたどり着いた。

 そこでおたえとはお別れ。見えなくなるまで手を振るおたえを見送る。

 

「さて...俺はどうすっかな」

 

 完全におたえが見えなくなってから、俺はふと呟いた。

 このまま帰ってもいいんだが、せっかく池袋まできたんだからちょっと遊んでいきたい。まだ三時前だし。

 

 映画は今あんまり観たいのないし、楽器屋は一昨日行ったしなぁ。

 

 何をしようか考えながら、とりあえず駅を出る。

 この辺は水族館とかプラネタリウムとか、遊ぶだけならいろいろあるが、如何せん一人だとどこも虚しい。水族館とかプラネタリウムとか、カップルに心をやられそうだな。

 

「.....本屋でも行くか」

 

 テキトーに本買って帰ろ。

 そう思い、頭の中で地図を広げて近くの本屋をいくつかピックアップする。

 俺は小説ならなんでも読む雑食家だが、今のマイブームは恋愛小説だ。リサさんに何冊か貸してもらって読んだら意外と面白くてハマったんだよな。有〇浩の『阪〇電車』とか良かった。リサさんこんなの読むんだぁ、って思ったけど。

 正直、意外だった。なんかこう、もっと砂糖にハチミツぶちまけたみたいな恋愛話を読んでるもんだと思ってたから。ほら、ひまりとかが好きそうな甘々のやつ。

 

 リサさんに勧められてた『ノル〇ェイの森』、あれば買うか。村〇春樹は何から手を付けていいのか分かんなくてまだ読んだことなかったけど、この気に読むのもいいかもな。それか、今度映画化するっていう島本〇生の『R〇d』でもいい。

 

 そんなことを考え、最寄りの本屋へと足を向けた、その直後。

 

「あー! せきぐちかいだ!!」

「ヒエッ!?」

 

 二度と味わいたくなかったデジャブを、よりにもよってこんな公衆の面前で味わってしまった。めちゃくちゃ変な声出た。

 

 

 

 ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

 

「んーっとねー、じゃーあたしはこの、季節のフレッシュフルーツパンケーキってやつにしよ〜。海くんは?」

 

 白を基調にした、明るい店内。

 あたしたちは今、とあるパンケーキ屋さんに来ていた。

 前から気になってたんだよね〜、この『幸せ〇パンケーキ』ってお店。

 結構人気のお店で、普段は行列もできるみたい。今は平日の昼間ってことで待ち時間0だった。ラッキーだね。

 ここのパンケーキはインスタでよく流れてくるし、美味しかったら今度お姉ちゃんとも一緒にきたいな〜。

 

「え、あ、えと...あ、じゃあバナナホイップパンケーキで...」

 

 とても居心地悪そうに、目の前の男の子はおずおずとメニューを指差した。

 

「むー。だからさぁ、そんな怯えなくたっていいじゃん。あ、それとも甘いもの苦手...なわけないよね〜。彩ちゃんと色んな甘いもの食べに行ってるくらいだし」

 

 さっきからずっとこうだ。駅の前でたまたま彼を見つけたから声をかけたのに、ずっとビクビクしてる。周りの目を気にしてる? なんでだろ。

 

「そりゃ街中で現役アイドルに大声で呼び止められた挙げ句、手ぇ握られて連行されたら普通にビビりますよ...。てか白鷺さんにまた怒られそう」

「千聖ちゃん? あー、まぁ大丈夫じゃない? 別にパスパレは恋愛禁止ってわけじゃないし〜。そもそもあたし、キミに恋愛感情とか持ってないし!」

 

 お姉ちゃんとセッションしてたのには嫉妬してるけど!

 

「そんな眩しい笑顔で言われたらさすがに傷付くんですが...つーかなんで俺連行されたんすか」

「ん? 別に〜? 特に理由はないよ? たまたま見つけたからってだけ」

「.......さいですか」

 

 あ、なんか遠い目してる。千聖ちゃんもたまに似たような目してるな〜。どこ見てるんだろ。

 

「あっ! そーだ、用事あるよあたし! 海くんに!」

「はあ、そうなんですか。......現役アイドルが? 俺に? ...面倒事じゃないですよね?」

 

 相変わらず居心地は悪そうだけど、どこか吹っ切れたみたい。

 さっきまでと違ってソワソワしなくなった海くんに、あたしはお願い事をしてみる。

 

「そんな嫌そうな顔しないでよ〜。お姉ちゃんの写真撮ってきてってだけだから〜!」

「氷川さんの」

「そう! 勉強してるお姉ちゃんに〜、部活してるお姉ちゃんに〜、あと生徒会の仕事してるお姉ちゃんでしょ〜? それからバンドやってる時のお姉ちゃんとか!」

「はあ」

「こう、不意のショットがいいな〜。カメラに気付いてない、素のお姉ちゃんの写真が欲しい!」

「それもしかしなくても盗撮系じゃないですかね。ヤですよ俺、まだ捕まりたくないですもん」

「大丈夫だよ〜。未成年だから名前は公表されないしっ」

「そういう問題じゃねぇ」

 

 少しだけるんってくる会話をしてると、注文してたパンケーキがあたしたちの前に並べられた。

 いちご、キウイ、パイナップルにバナナ。いろんなフルーツがふわふわのパンケーキの上に乗ってて、もう見た目だけでるんって感じ!

 

「おいしそー! 写真撮ろーっと。...あ、海くん写っちゃった。んー、じゃあこっちは彩ちゃんに送ろーっと」

「まてまてまてまて」

「んー...一枚目が一番盛れてるな〜。まぁいっか! 一枚目SNSに載せちゃお〜」

「まてまてまてまてまてまてまて!!!」

 

 全力であたしのスマホを奪いにくる海くんの猛攻を、あたしはひらりひらりと躱していく。

 

「だいじょーぶだって〜。顔は写ってないからさ。ほら、いつもの彩ちゃんとのヤツと一緒だよ」

「いやそういう問題じゃ...え、なんか丸山さんからLINEきたんですけど。『今の何』ってLINEきたんですけど」

「あたし千聖ちゃんから電話かかってきた。なんだろ? もしもーし!」

『日菜ちゃん!? 今上げたインスタのストーリーは何!? まさか関口海ではないでしょうね!?』

「え、うん、そだよー。あ、ごめん千聖ちゃん、あたしパンケーキ食べなきゃだから電話切るね。バイバーイ」

『ちょ、日菜ちゃん! まだ話は───』

「それじゃあ、いただきまーすっ!」

「どんなメンタルしてるんですかアンタ」

 

 呆れたような目を向ける海くんを一旦無視して、あたしはパンケーキとフルーツをいっぺんに頬張る。

 

「ンー!! おっいし〜!! パンケーキすっごくふわふわだ〜! るるんってする!!」

 

 ジャンクフードが好きなあたしだけど、こういう甘味も大好きだ。

 クレープとか無性に食べたくなる。

 タピオカはあんまりるんってこなかったけどね〜。美味しいは美味しいんだけど、並んでまで食べなくていいかな〜。

 

「...ほんとだ。めちゃくちゃふわふわ。卵の味強いですね、このパンケーキ」

「それがいいんじゃん! あ、そっちのも一口もらっていい?」

「え? はい、いいで.....返事聞く前に食うんだったら聞かないでください」

「こっちも美味し〜!! チョコとホイップがパンケーキに合う〜!」

「無視かよ」

 

 本当に美味しい。もっと色んなのが食べたいし、これは今度お姉ちゃんと一緒に来なきゃ!

 あと彩ちゃんとかとも一緒に来よ〜。そうすればきっと全種類食べれるよね。

 

「あ、そうだ。海くんもあたしのやつ、一口いる?」

「...いや、大丈夫です。現役アイドルの食べかけとか貰った日にはファンに呪われるかもしれないんで」

 

 む。

 

「それさー、『現役アイドル』とか、『アンタ』とかじゃなくて名前で呼んでよ。知ってるよね? あたしの名前」

「はあ、まぁ。...じゃあ、氷川さん」

「それじゃお姉ちゃんと区別つかないよ。まぁお姉ちゃんとお揃いの呼び方なのは悪くないけど...不便だよね、普通に」

「え。じゃあ...氷川先輩?」

「ノンノン。名前って言ったじゃん。日菜でいいよー」

「.....俺、マジでそろそろパスパレのファンに刺されそうなんですけど」

「夜道には気を付けなねー?」

「氷川先輩でいかせていただきます」

 

 本当に冷や汗をかいてる海くんは、焦りを隠せない様子であたしを氷川先輩って呼んでくる。ちょっと面白い。

 

「まー、夜道とかは冗談だよ。あたし、ファンからも普通に下の名前で呼ばれてるしさー、別にそのくらい気にしなくていいと思うけどなー」

「は、はあ...。じゃあ...日菜さんで」

「うんうんっ。それじゃあ海くん、お姉ちゃんの盗撮写真、よろしくね〜!」

「いえそれは承諾した覚えないです」

「え〜!?」

 

 素っ気なくパンケーキを食べる海くんに、あたしは不満まみれの声と視線をぶつけてみる。ま、最初っから期待してなかったけどね〜。

 ってゆーか、男がお姉ちゃんのこと隠し撮りなんてしたらあたしが許さないし。

 こいつがお姉ちゃんの近くにいてもいい奴なのか、ちょっとだけ試してみたくなったんだよね。

 

 結果は、まぁギリギリ合格かな〜。悪い子じゃなさげだし、それに彩ちゃんとかイヴちゃんからも懐かれてるっぽいし。

 

「ねー、本当に食べなくていいの? あたしのパンケーキ。あたしだけもらっちゃっててふびょーどーじゃない?」

「.....じゃあ、日菜さんが手ぇ付けてない方いただきます」

「もー。別に気にしなくていいのにー。...あ、じゃあこれでいいじゃんっ! はい、アーン」

「!? ちょ、なにを...!?」

「あはっ! 彩ちゃんに見せてもらった写真と同じ顔だ〜! おもしろーい!」

 

 

 今日、本当は一人で食べにくる予定だったけど、たまたま彼を見つけられて良かった。やっぱり話し相手がいた方がるんってするし。

 耳まで真っ赤にした彼の顔は、本当に彩ちゃんに見せてもらった写真と同じ顔だ。

 あんなに女の子に囲まれてるのに、なんにも免疫ないのかな。

 何か重い病気を患ってるんじゃないかって千聖ちゃんが言ってた意味、ちょっとだけ分かったかも。これは不治のやつだね。

 

「海くんってさ〜、るんってくるよね〜」

「るん...? それ褒めてます...?」

「褒めてる褒めてる! キミ、なかなか意味分かんなくてるんってするよ〜」

「褒めてないですねそれは」

 

 ムスッとする彼を置き去りに、あたしはパンケーキに舌鼓を打つ。

 

 羽丘は女子校だし、今まであんまり男の子と接したことはなかった。

 お姉ちゃんに付く悪い虫だー! って思ったりもしたけど、悪い子じゃない。

 

「うんうん、とってもるんってするよ!」

 

 だから、一応は認めよう。

 彼はあたしをるんっとさせてくれる人だ、って。

 

 そして、期待しよう。

 お姉ちゃんが認めたこの子が、あたしにもっとるんっを届けてくれるかも、って。

 

 

 ああ、でもやっぱり。

 彼の前で見せるお姉ちゃんの笑顔。あたしにはなかなか向けられないアレを向けられてるってのは、やっぱりちょっと妬ましいかな。

 

 

 




感想・評価、めちゃくちゃ嬉しいです。
もっとちょうだい。

以下、蛇足です。



1:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
日菜ちゃんのストーリー見た?!
 
2:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
見た
あのパンケーキ屋は池袋にある『幸せ〇パンケーキ』って店で、日菜ちゃんが食べてたのは『季節のフレッシュフルーツパンケーキ』1350円(税抜)
 
3:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>2 違うそうじゃない
 
4:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>3 日菜ちゃんと一緒にいたやつが食ってたのは『バナナホイップパンケーキチョコソース添え』1180円(税抜)
 
5:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>4 惜しい、けどそうじゃない
 
6:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
一緒にいたの、あれ絶対男だったよな
 
7:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>6 正解

その談義をしたかった
 
8:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
最近彩ちゃんも男と一緒にいるよな

9:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
パスパレって別に恋愛禁止じゃないし、カッカすることないだろ
 
10:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>9 自分理解ありますアピール乙
 
11:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
日菜って誰?
 
12:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>11 なんでこのスレ見に来た?
 
13:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>11 Pastel✽Palettesのギター
 
14:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>11 https://www.pasparle.com/sh/

ほれ、パスパレ公式ページ

15:スレ主:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>14 あざまる水産
 
16:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
ねぇ、本題に戻すけどこの男の人だれ?

17:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
分からん
制服着てるし、多分高校生だよな
日菜ちゃんとは違う制服だけど

18:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>17 花咲川学園の制服

19:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>18 はや

20:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>18 はや

21:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>18 職人の方でしたか...

22:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>18 花咲川って彩ちゃんとかイヴちゃんとか千聖ちゃんとかもいる学校じゃん

23:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>22 つまり、そういうことさ

24:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>23 何が?

25:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>24 その3人経由で知り合ったとかじゃない?

26:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>22 彩ちゃんのインスタとかTwitterにもちょいちょい男出てくるよな

27:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>26 あれ、学校とバ先の後輩らしい

28:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>26 その男、結構目撃情報出回ってるよな

29:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>26 https://twitter.com/.ocean_guitar

Twitter垢見つけた

30:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>29 こわひ

31:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>29 その人知ってる
この前Roseliaとかのサポートギターやってた

32:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>31 ワイも見たで、めちゃくちゃ上手いよな
CiRCLEの公式ページに動画上がってたはずやで
https://circle.yarikiri.com/

33:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>32 うま

34:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>32 うま

35:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>32 可愛い。Roseliaね、覚えた

36:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>35 アフロもいいゾ

37:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>35 >>36 違うそうじゃない

38:名無し:20xx年09月01日(水)IDxxxxxx
>>29 フォローしますた

39:名無し:20xx年09月02日(木)IDxxxxxx
>>32 ふーん、カッコイイじゃん

40:名無し:20xx年09月02日(木)IDxxxxxx
>>39 兄貴.....?

41:名無し:20xx年09月02日(木)IDxxxxxx
事務所が動く気配ないし、こんだけSNSに情報上がってんのに文〇とかにすっぱ抜かれないし、なんか裏がありそう

42:名無し:20xx年09月02日(木)IDxxxxxx
>>41 突然本題に戻すやん

43:名無し:20xx年09月02日(木)IDxxxxxx
>>41 カンのいいガキは嫌いだよ

44:名無し:20xx年09月02日(木)IDxxxxxx
まぁそのうち新情報くるっしょ
夜更かしは美容の大敵だからもう寝る

45:名無し:20xx年09月02日(木)IDxxxxxx
>>44 なんだァ...てめぇ...

46:名無し:20xx年09月02日(木)IDxxxxxx
>>45 名無し、怒る!

47:名無し:20xx年09月02日(木)IDxxxxxx
>>45 なんでだよ

専門用語とかマイナーすぎるバンド名とかについて。

  • 伏字で出されても分かんねぇわ!辞めろ!
  • 好きにやってええんやで(菩薩)
  • 全然分かるけど辞めな
  • 分かるからそのまま続けて、どうぞ。
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