ガールズバンドが人気な時代ですが、男も頑張ってみます。   作:怜哉

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書きたいこと書いてたらもうしっちゃかめっちゃか。


『既存国家の転覆からの迅速な建国』

 

 

 

 

 

 彼とよく関わるようになったのは最近だけど、彼はお兄ちゃんみたいな人だと思う。

 みんなを支えてくれて、歩幅を合わせてくれる、優しいお兄ちゃん。おねーちゃんも信頼してる、すごい人。

 

 

 彼と出会ったのは、あこがまだ小学校に上がってすぐの頃。

 おねーちゃんの友達として、あこの家に彼はやってきた。

 最初はすごくびっくりした。知らない男の子が家に来たのだから当然の反応だと思う。だからその時あこに挨拶した彼を無視したあこは悪くない。

 

 その後も、彼はよくおねーちゃんと遊んでたし、たまにうちにも来た。しばらくすれば自然と慣れてきて、普通に挨拶するくらいの仲になった。

 

 そして数年の(とき)を経て、我らは再び相見える。闇の力が集いし狂宴を奏でる地、ライブハウスCiRCLEにて──こう、ドーン! ババーン! って感じで!(脚色)(実際は顔を合わせただけ)(挨拶もなし)(詳しくは第一話参照ネ!)

 

 

 

 ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

「ライブをやります」

 

 CiRCLEの数あるスタジオの一室にて、俺は唐突にそう宣言した。

 それはもう唐突だ。なんの前触れもない。思い出したかのように、っていうか実際突然思い出したから口に出した。

 

 そしてそんな俺の宣言を聞いたのは、Roseliaの面々だ。

 みんな忘れてるかもしれないが、俺はRoseliaの御意見番、言うなればコーチ的な立ち位置の人間なのである。練習にだって予定が被らない限りは毎回参加してるし、技術的な指摘もちゃんとしてるんだぞぅ。

 

「ライブ? また急だね、いつやるの?」

 

 つかの間の休憩時間。氷川さんが焼いてきてくれたクッキーをパクパクモグモグしながら、リサさんが聞き返してきた。

 良かった、ちゃんと反応してくれて。友希那さんとか「そう」の一言で済ませるかもしれないからな。ありがとうリサさん。

 

「二週間後に、Galaxyっていうライブハウスで。五反田の箱*1なんでちょっと遠いんですけど」

 

 クッキーに持っていかれた水分を補給するために外の自販機で買った微糖のコーヒーを流し込みつつ、俺は答える。

 てか氷川さんまじでお菓子作り上手くなったよな。クッキーに関してはもうリサさんと遜色ない。おいちい。

 その氷川さんが、リサさんに続いて質問してくる。

 

「そのライブハウスは初耳ね。何かのイベントでも?」

「あ、いや。そういうんじゃないんですけど、ちょっとお母...えと、母の知り合いがそこのオーナーやってて。最近過疎ってきてるから暇ならライブやってくれって頼まれたらしいんスよね」

 

 それと後から知ったけど、この前武道館でライブやった時に俺と同じくサポートでドラム叩いてた子の親がGalaxyのオーナーらしい。世間って狭いよね、ホント。

 

「そう言えば...オリジナル曲、出来たって...Twitterで、言ってました、よね...?」

「そうなんすよ。ようやくって感じです」

 

 白金さんの言う通り、ようやく俺たちのバンドにもオリジナル曲が出来たのだ。俺と五十嵐(いがらし)があーでもないこーでもないと頭を捻って紡いだ音と、たまに須田が思い付きのフレーズをちょちょいっと入れた、俺たちの曲。

 つーか須田はなんなの。あいつがペペッて入れてきたフレーズ、めちゃくちゃカッコよくて震えたんだけど。才能マンめ。

 

「海の作った曲...とても興味があるわ」

「俺“たち”が作った曲です」

 

 間違いがないように訂正しておく。

 俺だけじゃ絶対に作れなかった最高の曲だ。五十嵐と須田の功績を無かったことにしてはいけない。

 

「...そうよね、ごめんなさい」

「あ、いえ」

 

 いざ謝られたらなんだか怖気付いちゃうな(小心)

 

「あこも気になるー! 海兄たちの曲! どんな曲なの?」

 

 はいはーい! と元気に手を挙げるあこちゃんは今日も可愛い。あとでポテチでも買ってあげよう(芽生える父性)

 そんなあこちゃんの言葉に同意するように、ほかの面々も俺を見てくる。むず痒いことこの上ない。

 

「ん〜...なんだろ、一言で表すのは難しいかな」

「デモ音源はあるかしら? どんな音楽も、直接聴くのが一番よ」

「あ〜、あるにはあるんですけど...」

 

 歯切れの悪い俺に、友希那さんも、ほかのみんなも不思議そうな目を向けてくる。

 

「貴方が何を躊躇っているのかは知らないけれど、あるのなら是非聴かせてほしいわ。気になるもの」

「いやまぁ、いいんですけど...その、この曲九分近くありますけど、ほんとに今聴きます...?」

「.....随分と大作を作ったのね」

 

 少しだけ目を見開き、友希那さんは答えた。

 分かる。俺も、あと五十嵐や須田も、曲が完成した時は曲の長さに首を傾げた。

 

「そういう事なら仕方がないわ。練習が終わったあと、ゆっくり聴かせてちょうだい」

 

 ということで、とりあえずRoseliaの練習を戻ることになった。

 

 てか思うんだけど、俺がRoseliaの練習にいる意味ってそろそろ無くない? もうあんま指摘するところもないんだけど。新曲できた時に感想聞きにくるくらいでよいのでは? 関口は訝しんだ。

 

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

「.....随分と大作を作ったのね」

 

 Roseliaの練習も終わり、CiRCLEのカフェスペースで俺たちの曲の録音を聴いた友希那さんは、さっきとまるっきり同じ感想を口にした。

 そしてリサさんが作ってきてくれたスノーボールも口にする。

 

「なんて言うか...すっごいねぇ。荘厳っていうか雄大っていうか...」

「すーっごいカッコいい!! ちょっと長いけど、ゆっくりになったり速くなったり...えと、ズーン...とバーン! が折り重なって、今サイキョーに見える! ...あれ? サイキョーに聴こえる?」

「うん。緩急も...凄い、ね。それに、音が揃ってる。すごく...その、綺麗、というか...」

「ええ、これだけ猛然なリフが並んでいるのに、曲としては成立している。初めての作曲とは思えないわね。それに、関口くんはもちろん、もう二人の演奏レベルもとても高い」

 

 これ褒められてるんだよね? やったぁ!(歓喜)

 

「海兄! この曲の名前って何?」

「曲名? 『既存国家の転覆からの迅速な建国』だよ」

「へ? ...なんて?」

「『既存国家の転覆からの迅速な建国』」

 

 既存国家の転覆からの迅速な建国。

 

「それは...ユニークな曲名ね。海、貴方が考えたの?」

「はい。いやぁ、ネーミングセンス無いのは自覚してるんですけどね? 曲のイメージっていうか、そういうのをそのまま曲名にしました」

 

 この曲はインストだが、奏でる音で“ソレ”を表現したつもりだ。

 “ソレ”...即ち、『圧政を敷く権力者への叛逆と、自由国家の建国』までをイメージしたストーリー。一曲の中に一つの物語を収縮させており、物語の進展に伴い、音も重々しく遅いものになれば、颯爽と速いものにもなる。

 なんだろうな。ドゥームメタルとスラッシュメタルが折り重なったような、なんとも言えないジャンルの曲だ。

 と言っても、何もベ〇スみたいな「お前それ今別の曲始まったろ」ってレベルの転調をしてるわけじゃない。白金さんの言った通り、あくまで『緩急』で収まる程度だ。

 

 俺は、この曲は見方次第ではメロデス、あるいは一種のプログレ辺りに分類されると思うんだが、須田曰く『すごくへびぃですめたる』であり、五十嵐曰く『エモーショナルヘビィロック。え? そんなジャンルはない? じゃあオルタナで』。

 

 元々ジャンルなんてものは曖昧なもんだが、これは自由に作りすぎた。作曲者である俺たちがその正体を掴めずにいる。いや個人的にはめちゃくちゃカッコよく作れたと思ってるけど。

 

「音楽は自由よ。アーティストのやりたいようにやればいいの」

 

 友希那さんがフォローっぽいなにかをしてくれる。ありがとうございます。

 

「二週間後か〜。まだバイトのシフト出してなくて良かったよ〜。絶対見に行くね☆」

「え? いや、Roseliaに出演依頼したいんですけど?」

『え?』

「え?」

 

 え?

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

「ライブをやります」

 

 Roseliaに出演依頼をした後、ポピパとAfterglow、ついでにハロハピにも声を掛けた。返事は全てオッケーというもの。快く受けてくれた。いい友達を持ったもんだ。

 

 そしてどこからこの話を嗅ぎ付けたのか、パスパレの事務所も出張ってきた。『何? 海くんのバンドが出るライブ? よろしい、ならば参戦だ』という謎のメールが俺に届いた翌日、パスパレのライブ参加をGalaxyの方から知らされた。いやバカお前、こちとら(Galaxyは)最大収容人数百人前後の箱なんやぞ。現役バリバリ人気沸騰中のアイドルぶっ込んでくんな。

 

 元々Roseliaっていう、この“大ガールズバンド時代”の“”四皇“”と評されたりされなかったりするプロ級の実力と人気を持つバンドが参加するってだけで、今回のGalaxyで行われるライブは業界内で話題を集めていたらしい。

 そこに加えてモノホンのプロが来ちゃったら、そりゃもうてんてこ舞いだ。ライブチケットが消し飛ぶように売れたらしい。

 あまりの出来事に業界が動き、もっと規模のデカい箱でライブをやろうとか言い出したらしいが、そんなん『過疎ってたGalaxyにもっと光を』のコンセプトの元で開催が決まった本ライブの趣旨に反する。よって俺は何がなんでもGalaxyでライブするぞコノヤローという強い意志があったりしたのだが、まぁそんなことはどうでもいい。最終的な結果として、ライブはGalaxyで行われる。

 

 

 そんでもって、今日はそのライブのちょうど一週間前。

 Roseliaの練習が終わり、いつものようにCiRCLEのカフェスペースでリサさんや氷川さんの作ってきてくれたお菓子類をモグモグペロリと平らげていた。

 

 今日の練習はどうだったとか、来週のライブの演出はどうするだとか、そういう話が一通り終わり、多少弛緩した空気感の中でオレンジジュースを飲んでいたあこちゃんが、ふと俺に聞いてくる。

 

「そういえば、海兄たちのバンドの名前って何?」

「オスバンド(仮)」

「それは仮称でしょう? オリジナルの曲も発表するのだから、そろそろ正式な名前を考えた方がいいと思うわ」

 

 友希那さんの言う通りだ。

 ぶっちゃけバンド名なんて忘れてた。オリジナル曲を引っ提げてライブできるっていう興奮の前にはバンド名なんて些細な問題すぎたからな。

 

「つっても、俺のネーミングセンスは曲名でお察しって感じですし、須田や五十嵐も、あの曲名を止めるどころか『いいジャン!』って言ってましたからねぇ...」

 

 ロクな名前が出てくる気がしない。なぜ須田はあれだけ多才なのにネーミングセンスはないのか、これがワカラナイ。

 曲名の不出来は曲の内容で黙らせればいいだけだが、バンド名ともなると話が違ってくる。下手なもんは付けられないよな。俺たちの顔になるもんだし、たくさんの人に『カッコいい!』って思ってもらえる名前がいい。

 

「ちなみにさ、今海くんが思い付くバンド名とかはあるの?」

「.........。朝焼けの慟哭」

「頭大丈夫?」

 

 リサさんに正気を疑われてしまった。

 確かにこりゃバンド名じゃないよなぁ。曲名ならアリか()

 

 LINEで須田と五十嵐にも聞いてみよう。

 

 

kai『バンド名、なんかいい案ある?』

 

誠『ビッグゴールデンスターズ』

Yuta『サンシャインメモリーズ』

 

 ダメだこりゃ。

 

 

「これは.....」

 

 トーク履歴をみた氷川さんが頬を引き攣らせている。笑いたきゃ笑えという気持ちだが、これは笑えすらしないのか。本格的にヤベーな。

 

「はいはい! あこね〜、『カプリス』とかいいと思う!」

 

 今日も元気なあこちゃんが、小さい体を大きく動かして主張してくる。俺たちの壊滅してるネーミングセンスを見兼ねて、案を出してくれたらしい。

 てかそれ最近どっかで聞いたことあるぞ。

 

「それはNFOの最新ストーリーに出てくる味方の新キャラが昔所属していたという伝説的なパーティの名前ではなかったかしら」

 

 あったねぇ、そんな設定。そんな細かい設定、わしゃ覚えとらんで。物語には直接関係のない部分だし、普通に流し読みしてたわ。氷川さん、この前NFOやってから何気どハマりしてるよな。

 

「そうなんですよ〜! どこかの国の言葉の意味で、気まぐれって意味らしくて〜」

「確か...フランス語、だったかな...」

 

 ほえぇ。

 

「カプリス、いい響きね。でも、単語をそのままというのは少し味気ないかもしれないわ」

 

 なるほどなぁ。

 

「.....そうね、同じフランス語で「自由」という意味の、リベルテという単語。これを組み合わせて───『Capliberte(カプリベルテ)』、というのはどうかしら」

 

 友希那さん、勉強はできないのにそういう知識は堪能だよな。異国語や、日本語の難しい言い回しの知識。歌詞書くように仕入れてんのかな?

 

 まぁそれはともかく。

 カプリベルテ、か。スペルはCapliberteで合ってるかな。

 うん、カッコいいんじゃないだろうか。

 

「自由気侭に、何ものにも縛られることなく進む。そういう意味を込めたのだけれど...どうかしら」

「すっげぇいいと思います」

 

 なんであこちゃんや友希那さんが俺たちのバンドの名前を考えてくれたのかは分かんないけど、少なくとも『朝焼けの慟哭』『ビッグゴールデンスターズ』『サンシャインメモリーズ』よりは全然良い。

 

 

kai『友希那さんから『Capliberte』って名前はどうかって言われた。俺はいいと思うが、キミたちは?』

 

誠『腹立つな、その言い方』

誠『でもまぁいいんじゃねぇの? 横文字カッコいいし。読み方『カプリベルテ』で合ってる?』

 

kai『あってる』

 

Yuta『異議なーし』

 

 

 俺たちのバンド名がぬっとり決まった瞬間だった。

 

「満場一致で『Capliberte』に決まりました。ありがとうございます」

「そう。...自分で言っておいてなんだけど、貴方たちそれでいいの?」

「カッコよければ万事OKです」

「カプリベルテ、チョーカッコいいよ!! カプリスの百倍くらい!」

 

 あこちゃん、興奮の巻。

 ...いや字面がちょっと怪しいな。こんなこと考えたの、何があっても巴にだけは知られないようにしとこ。

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

『ライブをやります』

 

 再三、俺はそう宣言する。

 過去二回は『?』な反応が主流だったが、今日は違う。

 なんと言っても、今日はそのライブ本番当日だ。マイク越しに放った宣言は、このイベントの開始を告げる合図となる。

 故に、返ってくるのは割れんばかりの歓声だった。共演するバンドの人気もあり、今日のGalaxyは近年稀に見る大満員。動員数百三十四人と、キャパを少しだけオーバーしている状況だ。

 この中で俺たち『Capliberte』目当ての人が何人いるかは知らないが、少なくとも0じゃない。さっき『今日のライブ見に来てます!』ってTwitterのDMあったし。嬉しい限りである。これには俺も思わずニッコリ。

 

『えー、すでに告知はしてあるんですが、改めて。オスバンド(仮)改め、『Capliberte』です。よろしくお願いします』

 

 俺たちは今回、トップバッターを任された。というより自分らから進み出た。

 以前までもいくらかライブはさせてもらっていたが、『Capliberte』としてライブに出るのは今回が初めて。ならば一番最初に出るのがいいだろうという結論に至ったわけだ。

 若輩が前座として場を温めるのは世の常よな。まぁ単なる前座で終わる気はサラサラ無いけど。

 

『名前だけでも覚えてってくれよなー! カプリベルテな、カプリベルテ!』

 

 須田も名前を売るために声を張り、笑顔をばら撒く。人懐っこさのある須田はこういうのも得意なのかもしれない。

 五十嵐? やつにはマイクが無いから。残当。

 

『今日は三曲やります。さて、早速ですが一曲目。これはカバーっす。スリッ〇ノットで『Bef〇re I F〇rget』』

 

 言って、俺はリフを刻む。俺が大好き、スリッ〇ノットのカバーだ。「お前らに本当の『ドラム』を見せてやるぜ」とでも言いたげにドラム“缶”を叩き出すバンドは他にないと思う。もうね、大好き。

 

 この曲はわりと賛否両論の曲だが、俺はめためた好きだ。どちらかと言えばハードロックに近いのかもしれない。サビの「ッア゙ーイ!!」のとことかすっげぇライブ映えすると思うんだよな。

 

 元々スリ〇プノットが好きだった俺は、随分前からこの曲はコピーしていた。それこそ夏休み前くらいから。だから、今回のカバーは大した苦にはならなかった。というか、正直この曲のギターの難易度はそこまで高いわけじゃない。本家がやってないギタボをやるからアホみたいに難しくなってるけどな。そろそろメインボーカル張れる奴が欲しい。

 

 ギターが一人では、どうしても音圧が足りない。その分は打ち込みではなく、須田に任せている。

 ベース用のエフェクターを買わせて、ブーストした音で補っているのだ。最初は「え〜...エフェクターって高いじゃん...」とあまり乗り気じゃなかった須田もあら不思議。牛込さんの協力もあり、無事(?)エフェクターの沼に引き摺り込むことに成功した。 よ う こ そ 。これからもよろしくな、ブラザー。

 

 そんで今回のカバーで一番の難関。それがドラムだ。スリ〇プノットのドラムは異様なほどに難しい。Bef〇re I F〇rgetもその例に漏れない。

 しかしながら我らがCapliberteのドラマー、五十嵐裕太はそれはもう見事なリズムキープで叩きこなしている。正直こいつ絶対高校レベルじゃない。

 単純なドラムテクニックという面では、五十嵐よりも大和麻弥の方が上だろう。しかしながら、五十嵐はその体格に違わぬパワーと、刻むリズムの安定性なら大和麻弥にも比肩する。パゥワー型安定ドラマー。これは強い(強い)

 

 そんな俺たちが織り成すスリッ〇ノット、最高すぎるな(自画自賛)

 こいつらとバンド組んで本当に良かったと思ってる。ホントに。

 

『ォォォゥヲウッ!!!』

 

 曲を閉める。あー、楽しかった。

 チラリと観客席を見れば、オーディエンスもそれなりに盛り上がっていたらしいことが分かる。初っ端からいい汗かいてんなお前ら。

 

 これで満足しかけた俺だったが、本番はここからだ。

 

『えー、じゃあ次。俺たち『Capliberte』の初めてのオリジナル曲、やります。題して『既存国家の転覆からの迅速な建国』』

 

 何だそれ、という野次が最前列から飛んできた。

 見ればそれはGalaxyのオーナーの娘ではないか。うっせぇネーミングセンスについては黙っとれ、とにかく俺たちの音を聴けとだけ言っておく。

 

 

 静かに、重く、深く。

 砂塵に塗れ、気力を失った人々をイメージした音を奏でる。

 ゆっくりと、殊更にゆっくりと。愚かな圧政者により退廃した、乾いた土地。静かに、しかし確実に。這いより迫る“死”を彷彿とさせる。

 

 そこに流星の如く現れた、一人の英雄。

 荒んだ人々が望んだ僅かな希望を体現した英雄の活躍やその他諸々により、圧政者は駆逐される。

 ここはパワフルに。力こそがパゥワー、力こそが正義だと言わんばかりに音を暴れさせる。

 

 そして建国。迅速に建国する。

 速く、そして鋭く。攻撃的なリフを、より高速に。指つるかと思った。

 

 

 ───とまぁ、そんな感じで。その後も嵐の海のように荒れ狂うストーリーを表現した俺たちの曲『既存国家の転覆からの迅速な建国』は、その音でGalaxyを埋め尽くした。

 

 演奏が終わり、観客席を見る。

 彼らの反応はそれぞれだった。通常の曲の二倍ほどはある曲の長さに若干ながら困惑する人、ストーリー性への理解が追い付いていない人、逆に“こちら側”に精通している面々も少なくはないらしく、静かに噛み締めている人もいる。

 

 初めて、自分たちが作った曲を大勢の人間に聴かせた。

 緊張もしたし、恐怖もした。当たり前だ。ライブが決まってから今日まで、俺たちの曲が受け入れられなかったらどうしよう、という思いは常にあった。事実、俺たちが作った曲は大衆受けするものじゃないしな。

 けど、やはり。演奏を終えたこの胸に踊る感情は、溢れ出るモノは、“喜び”と言って良いだろう。言い表しようのない感動が、俺の中を駆け巡る。

 

『──ありがとう』

 

 意識もせず、その言葉が漏れ出た。

 それは聴いてくれた観客に対する礼であり、場を用意してくれた関係者への謝辞であり、共に演奏してくれた二人への感謝だ。

 

 胸の内がどうしようもなく熱くなるのを感じながら、俺は最後の曲を高らかに謳った。

 

『それじゃあラスト、三曲目。サ〇サイの『チェ〇ボム』いっきまーす』

『『『!?』』』

 

 

 ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

 

 Galaxyの、思ったより広めだった控え室にて。

 あこたちRoseliaや、ほかのバンドのみんなは、備え付けの中継モニターに写し出されている映像をじぃ〜っと見ていた。

 モニターに写っているのは、海兄たちのバンド『Capliberte』。ちょうどオリジナル曲をやっているところだ。

 

「かっこいい...」

 

 隣で見ていたたえちゃんが、ほぅと吐息と共に声を出す。

 それは一人の感想じゃなく、この場のほとんどの人が感じていることだと思う。

 この前聴かせてもらった音源よりも、ずっともっと深い。深淵より這いよりし混沌の...アレが、なんかこうドドーンズバーンってしてて、すっごくカッコいい。

 

 言葉も出ないくらい聴き見入っていると、九分くらいはある曲がもう終わっていた。長いのに短い。もっと聴いていたかった。

 

「いやぁ、変態ですなぁ〜」

 

 モカちんが呟く。変態は褒め言葉、ってこの前海兄が言ってたから、きっと褒めてるんだろう。変態が褒め言葉なのは全然分かんないけど。

 

「ちょっと時代に逆行しすぎだと思うけど...うん、海らしい」

「だよなー。こう、媚びないっていうのか? まぁちょっと違うかもだけど、そういうとこは海らしいよな!」

 

 蘭ちゃんとおねーちゃんも、モカちんに続く。

 ほかのみんなも、それぞれ感想を言っている。その全部が海兄たちを褒める言葉で、海兄たちの曲はすごくこーひょーみたいだ。

 

『──ありがとう』

 

 画面の向こう、ステージの上で海兄が言う。

 静かだけど、すっと通る声。心が篭っているっていうのかな、そんな声だった。

 ラスト一曲。セトリ*2は聞いてないから何をやるのかは知らない。

 何やるんだろー。ハードロック系かな、それともメタル? 海兄が好きそうなのってその辺だよね。

 

 

『それじゃあラスト、三曲目。サイ〇イの『チェリ〇ム』いっきまーす』

『!?』

 

 プロで活躍するガールズバンドの、その中でもけっこー女の子女の子してる曲が流れ始める。なんだろう、あこ追い付けないよ。急展開が過ぎるよぉ...!

 

「ジェットコースター.....」

 

 ゴクリ、と唾を飲むようにたえちゃんが呟く。分かんないよぉ。

 そうこうしているうちに、曲はサビへ。(はじ)けて、そしてより甘美に熟すらしい。分かんないよぉ。

 

「ぷ、くくっ...か、海くんの、一番、弱いとこ...!!」

 

 お腹を抑えて、くの字にしゃがむ格好で必死に笑いを堪えているリサ姉。

 せんじょー的な歌詞だけど、海兄が歌うと何かが絶対的に違う。海兄の声質はいつになく柔らかくて高音だけど、それでも違う。

 みれば、さあやちゃんやヒナさんも笑ってた。りんりんとかはちょっと顔が赤い。

 

 

 

 何もかもを置き去りに、やりたいことをやりたいように表現する、海兄たち『Capliberte』。

 自由で、気まぐれ。型に嵌らず、煌めき、翔く。闇夜を斬り裂く陽炎が如き赫灼の閃光。聖魔の化身にして.....えと、奥底からなんかすごい力がバーン!

 

 一番かっこいいのはおねーちゃん...いやRoselia...やっぱりおねーちゃん.....でもでもRoseliaだって.....。

 ま、まあとにかく! 世界で“三本の指”に入るレベルのカッコ良さ! つまりそういうこと! でも自由すぎてちょっと人類には早すぎたのかもしれないとも思い始めた。

 

 そんなCapliberteの演奏が終わる。

 観客席はどういうワケか大盛り上がり。なんだろう、確かに海兄たちはカッコイイけど、今のセトリのどこでそんなに盛り上がれたんだろう。あこには難しすぎるよぉ...。

 

「...私たちも、負けられないわね」

 

 友希那さんが力強く言う。

 しんみょーな顔で頷く紗夜さんとりんりん。リサ姉はまだ笑ってる。

 あこだけ? この雰囲気についていけてないのはあこだけなの? 助けておねーちゃぁあん!!!!

 

 

 

 

 

 

*1
ライブハウスのこと

*2
セットリストの略。ライブで演奏する曲の一覧のこと。




もう収拾もつけられない始末。反省はしてます。ホントに。
あとあこちゃんの厨二セリフ難しすぎる。あこちゃんらしく言葉が難しくなり過ぎないように注意しつつも厨二っぽさを損なわない言い回しってこんなに難しいのか。

こんなにも拙いモノにたくさんの感想、お気に入り登録、評価、ありがとうございます。とても嬉しいです。そういうのもっとちょうだい、とは言いません。まだまだたくさんください(???)(ちょっと丁寧に言えばいいと思った)(いい加減にしろ)(感想評価お気に入り登録が欲しいのは本音)(見捨てないで...見捨てないで...)

専門用語とかマイナーすぎるバンド名とかについて。

  • 伏字で出されても分かんねぇわ!辞めろ!
  • 好きにやってええんやで(菩薩)
  • 全然分かるけど辞めな
  • 分かるからそのまま続けて、どうぞ。
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