ガールズバンドが人気な時代ですが、男も頑張ってみます。 作:怜哉
彼は、とてもすごい人だ。
なんでもソツなくこなして、好きなことを本気でやれば誰よりも前に行く。そんな印象。
そして、みんなから信頼されてる。こころんも、薫くんも、かのちゃん先輩も、みーくんも、そしてミッシェルだって。みんなみんな、彼を信じてるし、頼ってる。
はぐみもそう。彼を信じて、頼ってる。
「だからな? ここにxを代入してだな?」
「xさんが代打になるんだね!」
「ああうん、それでいいよ。んでな? こっちの公式を使ってな?」
「なるほど! ...んとね...わかんない!」
「なるほどなぁ」
試験が迫るたびに、彼のところへ訪れる。
かーくんと、あとおたえも一緒に。
最初こそ「俺は知らん。もう知らん」とか言ってた彼だけど、なんだかんだで最後まで面倒を見てくれている。とても優しい人だ。
そんな彼は今──
「バカヤロウお前! 俺は打つぞお前!!」
はぐみと同じユニホームを着て、意気揚々と打席に向かって、そして豪快に空振りしていた。
★ ☆ ★ ☆ ★
『一球外にはずれてカウントはフルカウント。両チームのファンも、固唾を飲んで見守ります』
日本プロ野球、日本シリーズ、第七試合目の延長十一回裏で、先攻側が一点リードのツーアウト二、三塁。しかも打席に立つのは、昨日今日と五打数0安打三三振という戦績の選手。前の打者は敬遠され、歩かされている。
これで分かる人は分かるだろうが、試合は近年稀に見る熱狂を迎えていた。
「ふざけやがってぇ...! うちの松〇ナメんなよ!!」
今打席に立っている選手の前の打者が敬遠された時、姉ちゃんはビール片手にそう激昂していた。本日八本目のゴールデンバールリーだ。飲みすぎだろ。
まぁ、相手方の考えも分かる。敬遠した選手は、今日四打数四安打と絶好調だった。打たれれば同点、外野の深いところまで運ばれてしまえば負ける。そんな状況で好調の選手と勝負するより、戦績の悪い方と勝負したいのは当たり前っちゃ当たり前だろう。
これが甲子園とかならブーイング間違いなしだけどな。
苦しそうな表情のピッチャーが腕を振り、ボールを投げる。
球は内角高めのストレート。キャッチャーは低めに構えていたから、狙った通りというわけではなさそうだ。
そしてその球を、松〇は体を大きく開いてバットを振り抜き、ボールを捉える。
『どうだ打った! 打ったァ!! 高く、高く上がった打球はそのまま吸い込まれるようにレフトスタンドへーッ! レフトのゲ〇ーレ、見上げることしかできません! マウンド上のク〇クも呆然としています!』
「ッしゃオラァ!!」
空になったアルミ缶を握りつぶし、姉ちゃんがガッツなポーズを披露する。
どうでもいいけど酔うにつれて徐々に脱いでいくな。もう下着しか残ってねぇじゃん。ちゃんと服着ろ、服。
「熱男ーーッ!!」
うるせぇ。
しかし、これで日本シリーズも終わりか。明日から優勝セールが始まるんだろうなぁ。
夏が終わり、秋や冬を迎える霜降の風物詩。その終わりを眺めつつ、俺はふと思う。
「野球、やってみてぇなぁ」
俺は今まで運動部に所属したことはない。
小学校までは友達と河原で野球やサッカーをした時期もあったが、そんなものは遥か彼方の記憶だ。よく憶えちゃいない。
硬式とは言わないから、軟式とかやってみたい。草野球みたいなの。
そう思い、何の気なしにSNSで呟いた。
別に誰かに反応して欲しいとかじゃない。思ったことを、そのまま吐き出す。Twitterってそういう場所だろ? だからそうした。
──夏の反省を、俺はもう忘れていたらしい。
翌朝の出来事だ。
「「「せっきぐーちくんっ! あっそびーましょっ!」」」
うるせぇ。
✿ ❀ ✿ ❀ ✿
二日酔いの姉ちゃんから「外で遊んでこい」というお叱りを受けた俺らは、何故かドーム型の球場にいた。ここ昨日テレビで見た気がすんな。気のせいかな。
「野球をやるわよ!」
綺麗に整備されたマウンドの上で、俺を連れてきた張本人でもあるお嬢が比較的アレがこうしてる胸を張って宣言する。
いつも通りすぎる非日常。もはや慣れてきた俺は、はぁと嘆息だけしておく。慣れたくなんてなかった。
「わーい!」
「ふっ...儚い」
三馬鹿の残り二人がなんか言ってる。
松原先輩はふえふえ言ってるし、奥沢さんは俺と同じく諦めているらしい。
そんないつもの非日常の中に、今日はいつも通りじゃない非日常が混じっている。
「今日は須田と五十嵐もいるんだな」
そう。今日は須田と五十嵐の姿もあるのである。珍しい。
「寝てたら黒服の人達が来て...」
「俺も朝トレ(朝の筋トレ)してたら...」
とうとうお前らも
よ う こ そ 。
歓迎するぜブラザー共。
それにしても野球ときたか。
北沢がいるからソフトボールは分かるんだが、野球はいっちょん分からん。そんな突然やりたくなるやつが...ここにいますねぇ。
「海! あなた昨日、野球がやりたいって言っていたでしょう? あたしもちょうど、そう思っていたのよ!」
俺が悪かった。軽率にツイートしたのは反省してるから、そんな目で見ないでくれ奥沢さん。つーかあれだろ、俺が言ってなくてもお嬢なら勝手にやってただろ。
半眼を向けてくる奥沢さんに謝罪やら開き直りやらの感情を込めた視線を送る。そんな俺の隣で、五十嵐がふむと口を開いた。
「野球かぁ。いいね、俺も久々にやりてぇ」
「久々?」
「あれ、言ってなかったか。俺小中で野球やってたんだよ。中学じゃ結構有名だったんだぜ?」
ほえぇ。それは知らなんだ。
須田もなんかサッカーで全国行ったとか言ってたけど、お前ら才能を無駄にしてない? 元女子校でバンドなんかやってて大丈夫? 各界の偉い人に怒られない?
「それはすごいわ! それじゃあ早速やってみましょう! ...何をすればいいのかしら?」
「そこからかよ」
というか、今日ここにいるのは八人だ。野球は九人でするもんだし、相手も必要ってなったら最低十八人は必要になるだろ。野球をするしないの前に頭数が足りない。
「あら、そうなの? じゃあ香澄たちも呼びましょう!」
ま?
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お嬢が声を掛けて新たに集まったのは、ポピパの五人とAfterglowの五人。Roseliaやパスパレにも声をかけたらしいが、ライブやら仕事やらで断られたらしい。
しかしながら、なんと十八人ぴったり集まった。お嬢には天が味方しているのかもしれない。
「野球をやるわよ!」
再びそう宣言するお嬢を前に、香澄とおたえのみが拍手する。
ほかのメンツは事態をよく飲み込めていないらしい。諦めな。
黒服さんたちに渡されたユニホームに身を包み、同じく黒服さんたちから渡されたグラブを手にはめ、俺たちはグラウンドに立つ。
ちなみに靴はスパイクではなくアップシューズだ。安全面に考慮したらしい。球ももちろん軟式。
慣れない衣服への着替えに戸惑っていた俺とは違い、お嬢と北沢、元野球部の五十嵐、演劇で着替え慣れしている瀬田先輩が先にグラウンドに出ていた。
お嬢と北沢、五十嵐と瀬田先輩という二人一組になり、外野の芝生の上でキャッチボールをしている。
「いくわよはぐみ〜! えーいっ!」
「...わ! っと! すごいねこころん! 今のボール、すっごく曲がったよ!」
「このボールさん、曲がるのが好きなのかもしれないわ!」
そう言って、横から見ても曲がっていることが分かるレベルのエグいカーブだかスライダーだかを投げるお嬢。あれは打てない(確信)
「よ、っと。薫先輩、いい球投げるっすねー。めちゃくちゃ綺麗な縦回転っすよ」
「そうかい? ありがとう。でもまだ足りない...儚さが...足りない...」
なーに言ってんだあの貴公子。
まぁそれはおいといて。
「関口〜、キャッチボールやろうぜ〜」
「ほいさい」
須田の申し出を有難く受ける。
せっかく用意された場だ。タダでこんなに良い球場が使えるってんだから、目一杯楽しまなきゃ損というもの。やるぞー。
...突然投げたら肩痛くなった...。
準備運動は大事、はっきり分かんだね。
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しっかりアップをし、軽くキャッチボールと素振りだけ習った後。
せっかくなら試合がしたいということで、九対九に別れてチームを作った。
お嬢率いる赤チームは、松原さん、奥沢さん、蘭、モカ、ひまり、市ヶ谷さん、牛込さん、須田。
対する白チームは、瀬田先輩、北沢、巴、つぐみ、おたえ、香澄、山吹さん、五十嵐、そして俺。
テキトーにくじ引きで決めたチームだが、わりとバランスはいいんじゃないだろうか。男が固まったわけでもないし、ハロハピもうまくバラけていると思う。
それから俺たちはチームごとに別れて、各二時間ずつ練習するとこになった。
レフト側ライト側に別れてとか、そんなちゃちなレベルじゃない。球場別で、だ。近くにあったものを当日貸切にしたらしい。どんな金額を積めばそんなことが可能になるんだろうか。弦巻家しゅごい。
「数時間使うくらいならそんなにかかんねぇぞ」
「あ、そうなの?」
別球場に移動中、五十嵐に言われてそんなもんなのかと思う。
いやでも少なくとも十万単位だろ。球場二つと備品もいくつか借りてんだから。やっぱ後で黒服さんたちにいくらか払った方がいいかなぁ。
そんなことを考えているうちに別球場へと辿り着く。
俺たちが使う球は軟式だが、球場は硬式用。軟式用の球場と比べると、主にベース間やマウンドの距離なんかが違う。全体的に長く、広くなってる感じだ。ってさっき五十嵐が言ってた。
「さて、まずはポジション決めなきゃな」
グラウンドに一礼してから入る五十嵐を真似て入場した俺たちは、とりあえずファースト側のベンチ前に集まった。
野球経験者の五十嵐を中心にして話が進んでいく。
「キャッチャーは俺がやるわ。中学までキャッチャーだったしな。はぐみはソフトでどこ守ってんだ?」
「ピッチャーだけど、ソフトボールと野球じゃボールの感覚が違うし...はぐみ、サードがやりたいな!」
「んじゃはぐみはサードな。じゃあ次はピッチャー決めっか。誰かやりたいやついる?」
「投手...ふっ、儚いポジションじゃないか」
「何が儚いのかは知らんけど、そんじゃピッチャーは薫先輩で」
「嗚呼、儚い...」
「じゃあ順番で、次ファースト。やりたいやつー.....いない? んじゃあ巴やってくんね? 手足長いし」
「ん? ああ、いいぞ!」
「あざ。そんでセカンドは...沙綾で。二遊間は大事だし、沙綾はカバーとかの気がよく回りそう」
「え、私? できるかな〜...頑張ってみるね」
「サード...ははぐみだったな。んじゃショートは...強い打球とかきやすいし、関口頼むわ」
「あいあい、任された」
「レフトはー、どうしよ。香澄でいっか」
「でいっか!?」
「センターはおたえな。足速いし、体力もあるし。レフトとライトのカバーに走ってくれ」
「ん、りょーかい」
「ねぇ五十嵐くん! でいっかって言った!?」
「最後、ライトはつぐみに任せる。軟式だったらファーストやセカンドと連携取ることもわりとあるし、そこは仲良いからいけんだろ」
「う、うん...! 分かった、
「つぐる...? まぁいいや。うっし決まり! んじゃあノックから初めっかー」
「五十嵐くんねぇってばぁあ!!!」
まあ、そういうことになった。
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「巴ー。お前足腰強いし、もっと足開いて腰落としてもいいんじゃねぇか?」
「お、おう! こうか?」
「ん、そうそう。沙綾は、サード側にゴロ転がったら一応ファーストのカバー行ってほしい。俺たち素人の集まりだし、暴投やエラーでボールが後ろに逸れることも多いだろうから」
「分かった〜」
「オラコラ関口ゴラァ! 今のは取れただろ、タラタラやってんじゃねぇぞォ!!」
「んだとテメェ!!! やってるわボゲェ!!」
意外とスパルタだった五十嵐のノックを乗り越え、次は打撃練習。
打線は水ものとは言うが、練習しないよりは万倍マシだ。つーか守備練よりバッティングの方が俺は楽しい。
コントロールが良い五十嵐がバッティングピッチャーとなり、一人十分程度打席に立つ。キャッチャーは無し。備品のネットを置いて代用する。
打席に立つやつ以外は守備につく。できるだけ自分に当て振られた場所の守備だ。シートバッティング? っていうらしい。
「薫先輩、センスありますね。ほとんど芯で捉えれてるっすよ」
「そうかい? ふふ、ありがとう。でもまだ儚さがいまひとつでね...」
「つぐみー。ボール打つ時はちゃんと目ぇ開けー。打てるもんも打てねぇぞー」
「う、うん.....えいっ!」
「目ぇ開けー」
「おっ、おたえバント上手いな」
「動かざること山の如し」
「上手いこと言いたかったのかもだけど、それは上手くないし意味分からん」
「がーん」
「おいコラ関口ゴラァッ!! ちゃんとバット振れボゲェ!」
「いやいやいやいやいや! おまっ、今の速すぎんだろボール! 怖いわ!」
「ド真ん中の真っ直ぐだろウスラトンカチ!」
「うるせぇバーカ! つーか今の何キロ出てんだよ、さっきまでより明らか速ぇだろ!」
「球速141km/hですね」
「うわ黒服さんいつから
「そうなります」
「おま、いや、軟式でそれとか五十嵐ほんとお前、花咲川にきてよかった人材なん...?」
「ごちゃごちゃうるせぇ、次投げんぞ! 次真っスラ*1な!」
「え、真っスラって何!? うわ速怖!!?」
「振れっつってんだろ関口ィ!」
「うっせぇバーカ!! 五十嵐のバーカ!!!」
バットに当たるくらいにはなった。
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お嬢発案、総練習時間約三時間程度の素人が九割を占めるドキドキ✩草野球大会が始まった。まぁ大会っつっても初戦から決勝戦なわけだが。
一応、勝者には賞品が用意されているらしい。なんだろ、ハワイ旅行とかかな(弦巻スケール)
「いいか関口。大事なのは“エッジ”だ」
「カッティングの話?」
「耳コピの話じゃねぇ」
赤チームのオーダーは、
遊 須田
三 蘭
二 奥沢さん
投 お嬢
中 モカ
右 ひまり
捕 松原さん
左 牛込さん
一 市ヶ谷さん
対する俺たち白チームのオーダーは、
三 北沢
中 おたえ
捕 五十嵐
一 巴
遊 俺
左 香澄
二 山吹さん
投 瀬田先輩
右 つぐ
五番というクリーンナップに配備されてしまった俺は、試合前にちょっと素振りをしていたのだ。
そこで五十嵐にアドバイスを受けたのである。エッジってなんだろ。
「強い打球を打とうとする時、一番大切なのは体重移動だ」
「体重移動」
「右脚に溜めた力を、左脚の踏み込みと一緒に腰へ、そんで腕、最終的にバットに移す。これをする時にエッジ、足の裏の内側の部分が重要なんだ」
「足の裏の内側」
なぜ俺はこんなに本格的なバッティング指導を受けているのか。
疑問ではあるが、五十嵐が楽しそうだから黙って受けとこう。今までにないくらい目が輝いてるんだよなぁ。
「お前、無駄に筋肉はあるから、スイングは多少アッパー気味になってもいい」
「無駄て」
「あと重心な。体重移動はしろっつったけど、重心がズレるのはNGだ。目線がブレて打てるもんも打てねぇ。腰をしっかり落として、膝を柔軟に使え」
「重心ズレるのNG」
「こころの玉はよく曲がる。球速も中々だし、高速スライダーの域だ。なんで女子なのに変化球で120km/hも出るんだろうな?」
「お嬢だからさ」
常識なんか通用しないよねえ。
「とにかく、中途半端なスイングをすると、いくら軟式とはいえ球威に負けるからな。しっかり振り抜けよ」
「あいあい」
正直よく分からんが、とりあえずフルスイングしろってこったろ。
あと重心ズレるのNGね、覚えた。
「それでは試合を開始します! 両チーム、整列してください!」
防具を付けた黒服さんが、ホームベース付近でそう宣言する。
主審球審は黒服さんたちがやってくれるらしい。なんか免許も持ってるとか言ってたけど、ほんとかな?
言われた通りに整列し、礼をする。と同時、球場内に聞き覚えのある声が鳴り響いた。
『日本の皆様、こんにちは。ブラジルの人、聞こえますか? ついに始まろうとしています、弦巻家主催の軟式野球紅白戦。実況は
時給たっか。いやたっか。
つーか梶原ってうちの高校の? あいつ何やってんの?
『解説はこの方。中学時代は野球部の敏腕マネージャーとしてブイブイいわせており、今ではギャルの超新星。先月の花咲川ネイルモリモリ選手権ベスト8に輝いた五十嵐の彼女、
『しまーっす』
ねいるもりもりせんしゅけん。
つーか澤田さんもなにやってんの。あんたら暇なの?
『先攻は白チーム。先頭バッターの北沢、気合いに満ち満ちた瞳で弦巻投手の投球練習を見つめます』
『てかこころんの球エグくない? あんなのコースに決められたら現役でも中々打てなくない?』
相も変わらず、お嬢の球はよく曲がっている。正直打てる気はしない。当たれば御の字って感じだ。つーか松原さん、よくあの球取れるよなぁ。
十球くらいの投球練習が終わり、北沢が打席に立つ。
『試合開始を告げるサイレンが無人の客席を駆け巡り──っと初球打ちーッ! 北沢、初球アウトコースのスライダーを綺麗にセンター返しーッ!!』
すっげぇ...あれ打つんだぁ...。
一塁ベース上でガッツポーズをする北沢に、俺は素直な尊敬の目を向ける。しゅごい北沢。
『さて、続く二番は花園。実家では二十羽もの兎を飼育する花園ランド園長、《兎追いし花園》、送りバントの構えをとる───が、空振り! 弦巻の球は大きく曲がりますからねぇ、ただのバントも難しいのでしょう。...多分。きっと。野球そんなに詳しくないから分かんないけど』
『まぁシロートにはムズいっしょ』
安心しろよ梶原、それっぽいこと言えてっから。
『ピッチャー二球目投げた! が、これは外に外れてボール。カウントワンワン。花園、変わらずバントの構えです』
ちなみに、今回は盗塁はナシというルールが設けられた。
松原さんの肩を考えると盗塁なんてしたい放題になってしまうし、それじゃあ面白くないだろうってなったからだ。逆に五十嵐だと強肩すぎて誰も盗塁できない。
『ピッチャー第三球投げて...花園バント成功! ファースト側に転がった球をピッチャー弦巻が取るが、二塁間に合わず! 花園はアウトで、ワンナウト二塁』
『おっ、うまーい。ちゃんとファースト側に転がせるのエラいじゃん』
おお...! おたえもすごいな、俺バントとか怖くてできないもん。指がボールに当たりそうで怖いんだよね。それにほら、俺ギター弾くから指大事だし(言い訳)
『さぁやって参りました、この男の登場です。中学時代はリトルシニアの全国大会決勝進出チームでキャプテンとしてプレイし、U-15にも選ばれた逸材! 未だプロでも注目しているスカウトは多いとの情報も入っているこの男! 五十嵐ぃぃ...(溜め)...YUUUUTAAAA!!!』
...え? 待って待って待って。え? 五十嵐お前...お前...え??
『裕太はすごいんだから!』
『いや、実際すごすぎて引くし、つーかなんであいつ元女子校なんかにきたの?』
マジで俺、そっちの世界の偉い人たちに目ぇ付けられたりしない? よくも有望株を
「次はユータね! 打たせないわよ!」
「悪ぃなこころ。美穂も見てっし、軽くホームラン打たせてもらうわ」
『打てー! 裕太ー!』
おい解説。一方に肩入れすんな。
ちくしょう、股間に自打球当たんねぇかな(呪詛)
『ちくしょう、股間に自打球当たんねぇかな』
いきなりピンチを迎えた赤チームだったが、その投手であるお嬢に緊張の色は見られない。まぁお嬢が緊張してるとこなんて俺見たことないけど。多分どっかの王様と話す時も緊張なんかしないんじゃないかな。
『ピッチャー振りかぶって...投げた! 低めに僅かに外れてボール』
二塁にランナーがいるが、盗塁ナシのルール下ではクイックモーション*2で投げる必要性がない。お嬢はワインドアップの方がお好みらしく、さっきからそれで投げている。
てかどうでもいいんだけど、実況解説がプレイ中の俺らにも聞こえるってどうなのん?
『中々際どいコースでしたが、五十嵐ピクリとも反応しませんでしたね。澤田さん、これは五十嵐は高めを狙っているということなんでしょうか』
『まぁ裕太の得意なコースはインハイ*3だし? 初球から狙ってないトコの厳しい球に手ぇ出さないっしょ』
いやこれやっぱ聞こえてちゃダメなやつっしょ。
そうこうしているうちに、お嬢が二球目を投げる。
お嬢の投げたボールは、なんということか高めに浮いた球だった。
変化球とはいえ、非常に甘い球。そんなものを世界を相手にできるようなやつが見逃すわけもなく────
『打ったァ!! 高ァく上がって、センター青葉は見上げるだけー! バックスクリーン、ビジョン直撃! ビジョンの上段です! 五十嵐の一発が初回から炸裂、先制点を上げるー!』
『ふっ...裕太なら当然だわ!』
『澤田さんはちゃんとキャラ作ってきてください』
お前には言われたくないだろうなぁ。
それにしてもすげぇ。さっきからすげぇしか言ってなくて語彙力の無さが露呈しちゃうけど本当にすげぇ。マジでホームラン打ちやがったぞ五十嵐のやつ。
悠々とダイヤモンドを回り、ホームベースを踏む五十嵐。なんだこいつかっけぇな。
続く四番の巴もレフト前にヒットを打ち、打順は俺に回ってきた。
重心ズレるのNG、膝柔らかく、ちょっとアッパー気味、フルスイング。
よし、行ける────!!
『ああーっと! 関口、ボールをバットの先に擦らせてボテボテのピッチャーゴロ! 1-6-3のダブルプレー! ざまぁ関口!』
梶原お前、なんか俺に恨みでもあんのか!?
『カジさー、よく1-6-3とかって言葉知ってんね?』
『さっきルールブックとか死ぬ気で読み込みましたから』
『なんだかんだで真面目だよねー、カジって。ウケる』
『ウケる!?』
★ ☆ ★ ☆ ★
『試合も終盤に差し掛かってまいりました、七回表。現在得点は
『こころんのホームランは分かるけど、美咲っちのホームランは意外だったし。あの子運動神経いいねー。伊達にミッシ『それ以上はいけない』...そーりー』
今日の試合は七回まで。つまり、このイニングが最終回だ。
今は後攻のこころんチームが一点リードしてるから、もしこの回にはぐみたちが点を取れなければその時点で負け、ということになる。
この回の先頭バッターは三番のゆーくん。今日の成績は三打数二安打一本塁打で、打点は三。つまり、今日の試合の打点は全てゆーくんの功績だ。ゆーくんすごい!
『先頭打者の五十嵐、初球を捉えてライトフェンス直撃の二塁打! 右打ちのくせにライト側に弾丸ライナー打つな!』
『うんうん、裕太はやっぱりすごくてしゅごいの』
『解説の仕事ちゃんとしてください』
続くトモちんは粘ってフォアボールを選んで、ノーアウト一、二塁。
ゆーくんは足も速いし、右中間辺りに打球が飛べばホームまで返ってこれるだろう。
「かっちん頑張れー! ダンって踏み込んでギュンって振るんだよ!」
「いや分からん」
今日のかっちんの成績は、三打数無安打。ピッチャーゴロが一つと、レフトフライ、そして三振だ。あんまり良い成績とはいえない。
けど、かっちんのスイングは気持ちがいいくらいの豪快なフルスイングだし、当たれば飛ぶと思う。それに期待する。
『ノーアウト一、二塁。ここで回ってくるのは、本日まったく良いところのない関口です。打てば凡打と三振に倒れ、守ればエラーが二つ。フッ』
「んだコラ梶原ゴラァ!!」
『弱い犬ほどなんとやら。負け犬の遠吠えが聞こえてきます。文句があるならそのバットで訴えてほしいものです。恥も外聞もかなぐり捨てたビヨンドマックス*4を使用しているにも関わらず未だ無安打。高級感のある光沢があった黒のバットも、心做しか色褪せて見えます』
「チックショ...! バカヤロウお前! 俺は打つぞお前!!」
放送席にバットの先を向けたかっちんは、声を荒らげながら打席に立つ。
興奮状態のかっちんにこころんの球がちゃんと見えているわけもなく、ブォンッ!! という風をきる音と、キャッチャーミットを打つボールの音が虚しく響く。
『プークスクス』
「あ゙ぁ!?」
『カジさー、そーゆーとこだよ?』
「かっちん落ち着いてー! ボールしっかり見なきゃ打てないよ!」
ベンチから声を張る。
そんなはぐみの声が届いたのか、かっちんは一度こっちを見てから、バッターボックスを一歩出て屈伸をする。気持ちのリセットとか、そういうのだと思う。
ふぅ、と息を吐いたかっちんは再び打席に立った。
すっかり落ち着いた様子で、綺麗な姿勢で構えている。
「いっくわよ〜っ!」
こころんがそう言いながら、大きく振りかぶった。
もう百球くらい投げてるはずなのに、こころんに疲れは見られない。さすがこころん、すごい体力だよ!
こころんが投げたボールは、綺麗な横向きの弧を描く。
インコースから抉るように変化するこころんの球を、かっちんは芯で捉えた。
鋭く、地面と並行するように飛ぶ打球は────
「え゛っ」
かっちんのそんな声が聞こえた。
『強い打球だったがこれはショート正面ー! ランナー慌てて戻るも、二遊間素早い連携を見せる! 6-4-3のトリプルプレーーッ!!』
『うーん...今のはまこっちゃんのポジショニングが絶妙すぎだねー。普通なら抜けてるよ、仕方ない仕方ない。というか美咲っちの動きが良すぎない? なんで今の打球で当たり前のようにベースカバー入ってるの? やっぱパないわー、さすがミッシェ『試合終了ー!!! 試合終了ですよ澤田さん!』...
.....なんとも言えない終わり方になっちゃった。
で、でもまあ! 試合は楽しかったよ!
こういうのは勝ち負けが全てじゃないしね、うん!
オチはない定期。
今回のはさすがに猛省します、ごめんなさい。オチが思い付かなくて...。はぐみ一人称視点難しいよぉ...。
ここまで野球の話をする予定じゃなかったんですけど、気付いたら野球の話になってました。不思議。
プロ野球、試合数減らしたりとかはありますけど、開催できてよかったですね。
ちなみに私はプロ野球より甲子園派です。泣きそう。
専門用語とかマイナーすぎるバンド名とかについて。
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伏字で出されても分かんねぇわ!辞めろ!
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好きにやってええんやで(菩薩)
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全然分かるけど辞めな
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分かるからそのまま続けて、どうぞ。