ガールズバンドが人気な時代ですが、男も頑張ってみます。   作:怜哉

29 / 57
何ヶ月ぶりの投稿だろ。


やはり、俺の青春ラブコメは始まらない 後半

 

 

 

 

 

 

 『星〇王子さま』は、サン=テグジュペリが手がけた小説作品だ。

 この作品は「子供の心を忘れてしまった大人へ向けた物語」だというが、サン=テグジュペリ本人は「一人の友人に贈る物語」だと述べている。遠く離れて暮らす友人だけに向けた物語である、と。

 

 この物語は、操縦士であった「ぼく」が砂漠に不時着してしまい、そこで王子である不思議な少年に出会う話だ。作者であるサン=テグジュペリ氏本人も砂漠に不時着して生死をさまよった経験があり、その経験を神秘化、ヌミノース体験として執筆したものだという話も聞いたことがある。

 

 そんな作品に出会ったのは、俺が中学にあがったばかりの頃。当時の俺は、そりゃあもう、ひどくこの作品に浸かり込んだもんだ。

 最初は『ヒツジの絵』のシーンとか、本当に意味が分からなかった。王子のダメ出しには「自分が描いてって頼んでんのに何言ってんだこいつ」程度に思っていたのだが、一度読み終え、二周目、三周目としていくうちに、「本当に大切なものは目には見えない」というメッセージを理解した。

 いやぁ、あの時は感動したなぁ。それとタメになった。

 あの頃は蘭が荒れてたからな。クラスが別になったくらいで、なんて思いもしたが、蘭にとってはクラスという「目に見える」繋がりを失って動揺してしまったんだろう。

 グレた蘭に「目には見えなくても、大事なものはそう簡単に無くならない」とか、知ったような口を利いたっけなぁ。

 ...うーん、今思い出すと俺めちゃんこ恥ずっこいこと言ってない? 実は蘭から引かれてたりしたらどうしよ。とりま首でも吊ろっかな()

 

 

 

 とまぁ、そんな懐か恥ずかしエピソード回想と急激に襲うヘラ気分に苛まれつつ、俺はひまりたちと一緒に、わりと楽しみにしていた『星〇王子さまミュージアム』を一通り見て回った。回ったんだが...

 

 

「いやこれ、『星〇王子さま』ってより『サン=テグジュペリ』ミュージアムやんけ」

 

 園内のレストランにて少しばかりお高めのランチを食しつつ、俺はボソッと不ま...んんっ、感想を漏らした。

 

「ん〜...まぁ確かに、『星〇王子さま』って感じじゃなかったよね。その...さんたじゅぺり?って人の伝記みたいなの、多かったし」

 

 俺の感想に便乗するように、ひまりも苦笑い気味に言う。

 

「あたしは別に。そもそも、あたし小説の内容ほぼ知らないし」

「モカちゃんは楽しかったよ〜。まぁ欲を言えば? バラ園とか紫陽花園にもっとちゃんと華が咲いてたらな〜って感じ〜」

「バラはともかく紫陽花は仕方ねぇだろ、今十一月だぞ」

 

 バラは種類によっちゃ秋も冬も咲いてる。大塚駅のバラロードだか何だかに咲いてるの見たことあるし。

 

 まぁなんだかんだ言っても、別に不満だけがあったわけじゃない。ちゃんと星〇王子さまの世界観もあったし、サン=テグジュペリの話も面白くなかったわけじゃない。ただまぁ、もっとこう、ファンタジー要素バリバリのテーマパークだと思ってたから...。

 

 とりあえず昼飯を腹に入れた俺たちは、ミュージアムを後にする。

 

「さて、次はどこいくか」

 

 水分確保のために近くにあるらしいコンビニを目指しつつ、そう問いかける。

 時刻は午後の二時。まだまだ昼と呼べる時間帯だ。このまま宿に帰るのは少しもったいない気もする。

 俺としてはユネッサンっていう温水プール完備の温泉施設が気になってはいるんだが、今回俺しか水着持ってきてないしな。

 

「...あ、これ行きたいかも。ガラスの森美術館」

 

 スマホを弄っていた蘭が、その画面を俺たちに見せてくる。

 ふむ...。日本初のヴェネチアン・グラス専門の美術館でヴェネチアン・グラスの名品を中心に約100点を展示、四季折々の花々とガラスのオブジェが楽しめる庭園や、世界各国のガラス製品を集めたミュージアムショップ...か。

 

「うん、いいじゃんそこ。俺もそこ行きたい。ひまりとモカは?」

「私はいいよっ! ガラス綺麗だし、実は私もちょっと気になってたんだ〜」

「美味しいお茶や料理を楽しめるレストラン...ほうほう、ハイカラな施設だし〜、美味しいパンも置いてるかも?」

「ハイカラてお前」

 

 つーか今昼飯食ったろ。モカの腹は底なしか? いや底なしだったな。カロリーとかは全部ひまりに行ってるんだっけ。

 

「え、なんで海は私のことそんな可哀想なものを見る目で見るの...?」

「いや別に」

 

 どれだけダイエット頑張っても他人からカロリー強制供給されるひまりさん可哀想。

 ちなみにここで「ダイエットとかしなくてもそんな太ってないじゃん」とか言ってはいけない。男には分からない女の事情があるのだと、昔姉ちゃんが言っていた。

 俺としては少しくらいムチムチしてる方が好みではあるが、まぁそんなものは所詮俺の好みでしかない。世の女性が俺のために痩せたり太ったりしていると思ったら大間違いだ。

 ひまりの彼氏でもないただの幼馴染みな俺が、ひまりの肢体の肉付き事情に口を出す権利なんてない。

 

 ただまぁ、これくらいは言わせてもらおう。

 

「俺は今のままのひまりが好きだよ」

「ぴっ!??!?」

 

 蘭に三発殴られた。

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

 時は進み、もう日も落ちてきた夕暮れ時。

 ガラスの森を楽しみ、強羅公園を散策して満喫した俺たちは、宿へ戻ってきていた。

 途中のバスで巴たちと合流し、わいわい喋りながら宿へと入る。

 つーかあれだな、車欲しいな。箱根広すぎ。免許取ったら車でこよ。一人旅なら原付でもいいか。あれって十六歳から取れるんだっけ? 俺もう取れるじゃん。金貯まったら取ろうかな。

 

 費用はあとで調べることにして、とりあえず駄弁るために姉ちゃんと蘭パパがいる(であろう)部屋へみんなで向かう。

 結局蘭パパが復活したっていう連絡はこなかったけど、生きてるかなあの人。

 

「あ〜、おかえりぃ〜」

 

 部屋に入ると、姉ちゃんの間延びした声が聞こえてくる。

 姉ちゃんめ、だいぶ酔ってるな?

 蘭パパは...こっちに背を向けてはいるが、座椅子に座っている。その程度には回復したということだろう。

 だとしたらこんな酔っ払い押し付けちゃって申し訳ねぇな。

 

「ただいま。蘭パパ元気になった?」

「げんきげんき、ちょーげんきっ。ねーっ、みたけさぁん?」

 

 そう言う姉ちゃんは、蘭パパと肩を組む。

 おい姉ちゃん、その人も一応男だから距離感考えろ。

 ほら見ろ、蘭パパだって色々当たってるからなかなか動けずに...蘭パパ?

 

「...................ヒック」

 

 蘭パパが静かだ。

 まぁ普段からうるさい方ではないんだが、それにしても静かすぎないか?

 蘭と観光できなかったことに嘆いているものだと思っていたのだが、聞こえる声といえば小さいしゃっくりくらい。...しゃっくり?

 

「...姉ちゃん、蘭パパほんとに元気?」

「え〜? だから元気だってぇ〜! お酒もほらっ、こんなに飲めるくらいげんきっ!」

「こんなに...ってこれ全部飲んだの!?」

 

 後ろから部屋を覗きこんだひまりが声をあげる。

 俺も言われてから気付いたが、床に転がっている空き缶の数は十を超え、さらに日本酒らしき空き瓶も五、六本ある。

 これを姉ちゃん一人で飲んだとは考えづらい。彼氏に浮気されてたとかでヤケ飲みしてた時のペースから考えても、姉ちゃんが飲めるのはせいぜいがこれの八割程度。

 つまり、少なくとも日本酒一升瓶程度は蘭パパが飲んでいるということ。え、待って俺らが観光してた時間って五時間もないよ? その短時間でこれだけ飲んだの? 嘘でしょ?

 

「ちょ、蘭パパ大丈夫!?」

「だぁから大丈夫らって〜! 姉ちゃんを信じなっ!」

「うるせぇ酔いどれ!」

 

 慌てて蘭パパに駆け寄る。

 こっちに背中を向けていて見えなかった顔を覗きこみ、絶句した。

 

「...ヒック...ウプ...ウゥ.....」

「ひまり水ぅ! 水持ってきて! あと袋! 袋!!」

 

 顔色真赤こえて真紫じゃねぇか誰だこんなになるまで飲ませたの! 俺の姉ちゃんだよバカヤロウ!(焦り)

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

 蘭パパの介抱も終わり、夕食を食べた後。

 蘭パパを部屋で寝かせ、俺たちはひまりたちの部屋に集まり人生ゲームをしていた。

 

「『縁起を気にして左足から玄関を出てみた。五百円を拾った』だって! やったー!!」

 

 ひまりが大袈裟に歓声を上げ、五百円を獲得する。

 つーかどういうマスだよ、縁起が小せぇよ。

 

 この人生ゲームの参加者は七人と大所帯だ。

 俺、ひまり、蘭、モカ、つぐ、巴、あこちゃん。

 姉ちゃんはだいぶ酔ってめんどくさくなってたから蘭パパと同じ部屋に投げてきた。布団敷いて部屋暗くして安眠アロマスプレーでもぶち撒いとけば酔った姉ちゃんは簡単に寝る。

 異性(蘭パパ)と同じ部屋? そんなん知らん蘭パパをあんなにした姉ちゃんが悪い。絶対に無いとは思うけど万が一何かあっても全部姉ちゃんのせい。.....いや普通に嫌だな、自分の姉ちゃんと幼馴染みの父親との間でナニかがあるの。あとで様子だけ見に行こ。

 

 ゲームを初めてかれこれ一時間が過ぎていた。

 そろそろゲームも中盤。みんな大人になり、社会の荒波に揉まれてきている。

 

「次はあたしか! それっ.....ちぇっ、一マスか。なになに...げぇ!? 株価暴落したぁ!」

「え!? ど、どうしようお姉ちゃん、あこたくさん株買っちゃったよ!?」

「だからあたし、株はやめといたらって言ったのに」

 

 女子高生が株株言ってるのちょっと面白いな。

 

「それじゃあ次は私だね。えいっ.....やった、六マスだ! えっと.....ああ! 『会社が倒産した挙句、ヤケでやった競馬・パチンコは両者とも大負けして破産! 全財産を失い、さらに詐欺にも遭い借金三百万円! 一回休み』!? わ、私今まで真っ当に生きてきたのに!?」

「つぐは一流大出て大手メーカーに就職してたのにね〜。人生、何が起こるか分かりませんなぁ〜」

 

 ギャンブルに逃げるつぐとか絶対に見たくねぇ。現実でもしそうなったら堕ちる前に俺らが面倒みてやるからな。

 

「それじゃあ次あたし〜。よっと...三マス〜。なになに〜? 『詐欺に遭うが反撃し、詐欺師から一千万騙し取る』だって〜。えへへ〜モカちゃん大金持ちになっちゃった」

「詐欺師騙すとかなんだよそれ。普通に宝くじ当たるとかで良かったろ」

「いやでも、モカなら詐欺師なんかのらりくらり躱して、騙される前に騙し取りそう」

「いや〜、蘭にそこまで褒められると照れますなぁ〜」

「褒めてないし」

 

 なんだこの人生ゲーム。社会の荒波が過ぎるだろ。もう少し易しくあれよ世界。

 

「次、海の番」

 

 蘭に促され、いやいやながらルーレットを回す。

 いや本当にもう辞めたいんだけど。しんどくなる予感しかしない。

 

 ルーレットが止まり、針が指した数字は五。

 俺は自分の駒を五マス進め、辿り着いたマスに書かれている文を読み上げる。

 

「え〜...『結婚詐欺に遭い、五千万円を失う』ってこの人生ゲーム詐欺師多すぎだろいい加減にしろ!!」

 

 つーか五千万て! 破産どころか一気にドンケツだが!?

 

「まぁ、確かに海は騙されそうだよな。悪い女に」

「あこもそう思う! 紗夜さんも『関口くんは壺とか買っちゃいそうよね。守らないと』って言ってた!」

「えっ」

 

 何それ詳しく。

 え、俺そんなに騙されやすそう? そういうオーラでも出てんの? 自分で言うのもアレだけど、俺わりと利口な方よ?

 てかあこちゃん悪い女知ってんのか世も末だな、あと氷川さんはなに?

 

「大丈夫だよ海! 私、頑張るから!」

「いや何をだよ」

 

 何かを頑張るらしいひまりはフンス、と(りき)む。

 いや本当に何を頑張るの。弁護士にでもなって詐欺から守ってくれるの?

 

「とりあえず海は彼女とかが出来たらあたし達に報告して。ちゃんと見定めるから」

「モカちゃんに任せなさ〜い。定めちゃうよ〜剪定しちゃうよ〜」

「私も、責任持ってその彼女さんが海くんに相応しいか見極めるからね!」

 

 なんの責任があるってんですかね(困惑)

 まぁこいつらは家族みたいなもんだし、兄妹の恋人が気になるアレなのかもな。俺も姉ちゃんに彼氏できた時はめちゃくちゃ気になったもん。彼氏さんが姉ちゃんに幻想抱いてて、そんで付き合うことでそれがぶち壊されてないかなって。

 姉ちゃん外面はいいからな。顔とかスタイルもそこそこ良いし、中身を知らなかったら男が惚れても仕方がない。

 

 

 ...ってそうじゃないんだわ。

 ゲームと現実をごっちゃにしてはいけない。さっさと次行こう次。

 

「蘭。次お前」

「ん。.....『父親が詐欺に遭い、三千万失う』」

 

 詐欺多すぎんだろいい加減にしろ(憤慨)

 

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

 

 人生ゲームはなんやかんやであこちゃんの圧勝で幕を閉じ、夜が更ける。

 寝る前に風呂に入ろうということで、みんなで浴場へと向かった。

 みんなと言っても、当然のように男女は別れている。今日は俺たちの貸切らしいし、入口まではひまり達と一緒に行ったから、ラブコメ漫画でよく見る『なんやかんやで全裸の女子と遭遇!』なんてラッキースケベは発生しない。

 つーか発生しないでほしい。顔見知りの女子の裸なんて見た日には、気まずいなんてレベルじゃない。顔を合わせられなくなるくらいどうしていいか分かんなくなりそうだからな。

 幼馴染みの裸なんか見たくもない。どうせ見るんなら面識のない年上のお姉さんに限る。いや別に覗きとかはしないけど。

 

 妙なことを考えながら、体と頭をサッと洗い流し、浴槽に浸かる。

 露天風呂ではなく、内風呂だ。露天風呂もあるにはあるが、それは本館の方で、貸切ではなく大衆用。てっきり露天も貸切だと思っていたんだが、さすがにそこまでの贅沢はないらしい。いや十分贅沢だけど。

 別に露天に行っても良かったのだが、せっかく貸切なのだからとこちらに来た。

 

「わ〜! こんな広いお風呂貸切なんてすごいね!」

 

 明日の朝方に露天に行ってみるのもいいかな、となんとなく考えていると、そんな声が響く。ひまりの声だ。

 発生源は壁の向こう。つまり女子風呂だ。壁はあるものの天井付近は繋がっているため、あちらの声も聞こえてくる。

 頑張れば覗けなくもないだろうが、本当に幼馴染みの裸なんて見たくない。興味がないわけじゃないが、今後を考えると絶対に嫌だ。姉ちゃんの裸を見るのとはわけが違う。

 

「あ、天井となりと繋がってる。おーい、海〜!」

 

 声が届くことに気付いたひまりが声を張った。

 うるせぇ。そんなに大声出さなくても聞こえるっての。

 

「何」

 

 無視する理由もないし、十分聞こえるであろう声量で返答する。

 

「そっちどう〜? 広い〜?」

「まぁそこそこ。そっちと違って完全に一人だし優越感パない」

「いいな〜! 私もそっち行きたーい!」

「はぁ!? バッカお前来るんじゃねぇぞ! 絶対来るんじゃねぇぞ!? フリじゃないからな!」

 

 ひまりのアホならやりかねない。男と女ってのをしっかり意識してるくせにたまにぶっ飛んだ行動に出るアホピンクは信用ならない。

 思わず声も荒らげるってもんだ。なにせ前科があるからな。

 あれは忘れもしない、中学の修学旅行で京都に行っていた頃───

 

「海、うるさい。ひまりも」

 

 なんか普通に蘭に怒られたんだが。

 つーかお前らはちゃんとひまり見張っとけよ。マジで。中学の二の舞は御免だからな。

 

「ひまり〜、はしゃぐのはいいけど、中学ん時みたいに海に迷惑かけるなよ〜」

「ちょ、やめてよ巴! その話はもうしないって約束じゃーん!」

「? ひーちゃん、中学の時に何かしたの?」

「あこは知らないか? まぁ同学年のやつしか知らないのか。ひまりのやつ、ひまりとは思えない小賢しさで───」

「とーもーえー!!」

 

 あれは悲惨な事件だった。

 今とは違い、ひまりも中学ん時は色々そうでもなかったから事なきを得たが、今されると俺は理性を失う自信がある。幼馴染み? 今度の関係? 知らんよ。男子高校生舐めんな。

 

 いやしかし、ひまりはとても実ったものだと改めて思う。中学卒業間際に突然変異したのだ。当時は男女が湧いた。

 もし成長痛なんてものが存在するなら今頃ひまりはショック死していたかもしれない。いやマジで、冗談抜きで一週間くらいでのビフォーアフターだったからな。人体の神秘だよ、うん。

 

「海! 今変なこと考えたでしょ!」

「カンガエテナイヨ」

 

 女の勘ってやつはどうしてこう...。

 

「最低」

「海のへんたい〜」

「え、えっちなのはダメだと思うな!」

 

 女ってのはどうしてこう...!

 蘭のわりと本気っぽい侮蔑は慣れてるし、モカは...ちょっと分からんけどそこまでいろいろ考えての言葉じゃない。そこは許容しよう。

 ただつぐの発言はダメだ。ぴゅあぴゅあはーとなつぐからの「メッ」は罪悪感とか嗜虐心とかが胸に響く。なんで嗜虐心刺激されちゃってんの俺意味分かんない、変態かな?(変態)

 

 まぁいいさ。言葉にしない妄想のうちは全てが許される。いや幼馴染みでそういう妄想はあんましたくないけど。どうせするなら年上の以下略。

 

「わ〜! ひーちゃんのおっぱい、ほんとにおっきいね!」

「ちょ、あこ〜! ダメだってそんなに揉んじゃ...ほんとに、ん...ダメ...あっ」

 

 流れ変わったな。

 露天行こ(逃避)

 そそくさと浴槽から上がったところで、男風呂の入口が勢いよく開け放たれた。

 

「海くん! 話は聞かせてもらった! おじさんもえっちなのはいけないと思うぞ!」

 

 流れ変わったぞ(二回目)

 

 なんか蘭パパが全裸で浴場入ってきた。

 なんだテメェ蘭パパテメェしゃしゃんな。

 つーか何の話を聞いてきたんだってかキャラブレてんじゃねぇか酒残ってんだろ寝とけあとほんと酒入った状態で風呂とか危なすぎるからマジ帰れ寝ろこっちくんな(怒涛)

 

 いっそのこと殴り倒して強制連行でもするかと早まろうとしたところ、隣の、つまり女風呂の方から勢いよく扉を開く音がした。

 

「海の性癖と好きなA〇女優知りたい人この指とーまれっ!」

 

 流れ変わったぞ(三回目)

 

 隣の浴場から姉ちゃんの声が聞こえてくる。

 まてまてまてまて、おいまて姉貴早まるな。話せば分かる。つーか俺悪くないでしょ何もなんで突然窮地に立たされてんの意味分かんないこの場は誰も悪くないはずだ強いていうなら蘭パパが悪いもうホント何もしないで。

 え、てか何これほんと何これ? え、助けて千聖さん!(混乱)

 

(──『女の敵は修羅場に圧されて死んじまえ』)

 

 どォうしてだよ千聖さん!!(シ〇ジくん)

 

「お、ひまりちゃんは想像通りだけどモカちゃんまで聞きたいの? 海の性癖。いいねいいね、我が弟ながら面白いことになってんじゃないの」

「海の弱み握っておけば〜、またパンとかゆすれるんで〜」

 

 僕が何をしたって言うんだ!(ほんとに何もしてない)

 い、いや待て、落ち着け。そもそもだ。別に俺の性癖や好きな女優が暴露されたって何も問題はない。そう、俺はいたってノーマル。模倣的な性欲の持ち主だ。模倣的な性欲ってなんだよ(自問)

 とにかく、暴露されたって「ふーん、男子ってほんとバカ」程度で終わる話。あとでお母さんに姉ちゃんの所業を報告して叱ってもらえばいいだけの話だ。いやお母さんはダメか。どうしてマイダディは単身赴任なんてしてんの、マジ秒で帰ってこいユアサンの頼みだ。

 

「みんな何だかんだ知りたいだろうし言っちゃお〜。我が弟はね、わりとドよりのM──」

 

「さすがに待てやクソ姉貴!!!!」

 

 大ボラ吹くな! 俺はMじゃない、決してMじゃないぞぅ!!?

 .......ないよね?(不安)

 

「海くん...」

 

 何か同情でもしてくれたのか、蘭パパが微笑を浮かべてこちらを見てくる。いやなにわろてんねん。

 パーではっ倒してやろうかと思い蘭パパを睨むと、なんとも朗らかに微笑む蘭パパが、教えを説く神父のような和やかな声音で言ってくる。

 

「“ドMの道(こっちの水)”は甘依存」

「寝てろ、永遠に」

 

 トーで蹴った俺は決して悪くないはずだ。

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

 その後逃げるようにして俺は部屋に篭った。

 中から鍵を掛けて引き篭った。心配したひまり達が「大丈夫、私達はどんな海でも受け入れるよ」なんて優しい言葉を掛けてきて枕を濡らした。嬉しさとかじゃなくて悲しみの涙だけど。

 

 

 翌日も死んだ目で箱根を観光し、家へ帰った。

 みんなの慰めが心に染みた。虚しさでいっぱいだ。

 俺は一週間自室に閉じこもった。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。