ガールズバンドが人気な時代ですが、男も頑張ってみます。 作:怜哉
多分読みにくいです。
三賀日。
日本の代表的な祝日だ。
そう、三賀日は祝日。日本国民たるもの、休むべき三日間なのだ。
だというのに、俺は全く休めなかった。
一日はひまりたちに連れられて激混みの神社へ初詣、からの新年会 in 弦巻家。なんか見覚えのある、というか夏にインスタを交換した大統領がいた。日本語めっちゃ上手くなってた。
二日は限界アルバイター。朝から夕方まで働いて、夜はなんか知らないけど店長に「新年会やんぞオラァ!」って言われて何人かでカラオケオールした。ひまりと松原さんもいた。
三日は久方ぶりに帰ってきた親父に連れられ、親戚のおっちゃんらとの飲み会に参列。俺以外全員成人なので、一人酔うこともできずに延々と
散々である。マジでホントにもう散々なのである。俺のライフはゼロに等しい。
そんな激動の三賀日を越え、一月四日。
ブチ切れながら、自室で久々にアコギを手に取った。
「えー。それじゃあ配信始めまーす」
【速報】関口、YouTuberになる。
✿ ❀ ✿ ❀ ✿
「あー...見えてんのかなこれ」
カメラ...まあスマホだが、その画面に向かって話しかける。
その隣にはmy PC。YouTubeに接続し、俺の配信を開いている。
「お、見えてるっぽいな」
やっほー、と手を振ってみる。
現状の視聴者数は一。つまりは俺だけだ。
まぁ無理もない。俺がこのチャンネル作ったのって十分前くらいだし、登録者はおろか認知すらされていないのだ。逆にこれで視聴者がいたら怖いまである。
「人生初のYouTuber配信始めました、っと」
自身のTwitterアカウントでURLと共にツイートしてみる。
最近はテレビの露出もあったからか、フォロワー数は二千五百と少し。プチ有名人と言っても過言ではないだろう。
...いや過言か。瀬田先輩はこの前フォロワー十五万人いったらしいからな。どこまでいってしまうんだあの人は。
まぁ俺の配信は一人が二人くらい見てくれたら嬉しいな。
そう思い、ギターを構える。
一フレにカポを噛ませ、ポディを軽く二回叩いた。
まずは六弦、三フレットを親指で弾き、隙間無くGm7。一度六弦のゴーストノートを挟み、続いて六弦二フレ、F#7と刻む。
似たようなことを何度かやり、ボーカルを入れていく。
丸〇内サディスティック。それの軽いアレンジだ。
まぁアレンジつっても、大〇昌良さんがやってることとそんなに変わってないけどな。
Aメロを歌っている時、視聴者数のカウントが一増える。
誰か見に来てくれたのか。そう思い、演奏しながらも歌うことは止め、コメント欄に目を向ける。
「あ、丸山さんだ。こんちわ。え? 『祝YouTuberデビュー』あはい、ありがとうございます〜」
俺の記念すべき配信視聴者第一号は丸山さんだった。多分ツイート見てきてくれたんだろうけど、あの人いっつもSNS見てるよな。
俺は基本ツイートなんざ月に一回か二回くらいしかしないんだが、だいたいツイートから十分以内にはいいねとかの反応してくるし。俺のツイートの通知がくるように設定でもしてんのか?
「あ、ちょうどいいや。丸山さん、なんか曲のリクエストありますか? 弾き語りするんで」
サビに入ったくらいで演奏を止め、画面の向こうにいるであろう丸山さんに問いかける。
せっかくのリアルタイム配信なんだから、こういうのを楽しまなければ。
何がくるんだろう。パスパレの曲とかかな。
そう予測しているうちに、視聴者数が二から十五に変わる。突然増えたな、丸山さんが俺のツイートをRTでもしたか?
と、丸山さんからコメントがくる。
「みなさんあけおめでーす。...あ、残〇散歌? 鬼〇ですよね。面白いっすよね、あのアニメ。一期しか見てないけど」
無限〇車編見たいなって思い続けて結局見てないんだよな。
言いながら、PCで開いていたYouTubeから、俺の配信を出て曲を検索する。
「えっと...あ、MVあんのか。これでいいな」
動画をクリックし、イヤホンを付けて聞いてみる。
うーん、普通に良曲。やっぱりAi〇erの声は耳触りがいいな。I b〇g youとかも好きだよ俺。
「イントロが...えー、まぁ単純にコードで...Bじゃないな。カポ付けた方が楽そう。Dmとかそんなもんかな。...これだ。えっと、こっから...F...E...まぁEでいっか」
ピアノの音をギターに置き換えて出し、ボディを叩いたり弦ごと指板を叩いたりして、バスドラやスネアの真似事なんてしてみる。この技法なんつうんだったっけな。スラムだったかパームだったか。
スネアの真似事の方は、全ての弦を叩くんじゃなく、ローのみ、まぁ六弦と五弦だけでいいだろう。そこだけを叩くようにするのがポイントだ。
そうすると、コードの音は消えることなく響き続けるため、あたかも複数の楽器がなっているかのように聞こえる。
もう少し時間があればトレモロ奏法、まぁ簡単に言えばベースラインとメロディをギター一本で出すっていう奏法など、いろいろとやってみてもいいところなんだが、即興耳コピでそこまでやらなくてもいいだろう。
そんなこんなでとりあえず一番だけなんとかし、あとはノリと勢いでどうにかするとして、曲の頭から弾いてみる。次はちゃんと歌も付けて。
「たーったーらったーらったーらた」
気分よく口ずさみ、PCで開いている歌詞ページの文字を追う。さすがに歌詞までは覚えられなかった。
二度目のサビが終わり、Cメロ前の間奏に入る。
バンドであれば、ここはスーパーギタータイムに入る。つまりソロの時間だ。
最近はギターソロをスキップするなんていう輩がいるそうだが、そんなのはマジ愚か(個人的意見です)
曲の最大の絶頂ポイントをスキップするやつに本当の音楽好きはいない(過激派個人的意見です)
まあそれは置いといて。
アコギ一本でやるなら、普通にコードとか弾いときゃいい。
そのままCメロまで駆け抜け、最後、Amで終わる。
うーん、我ながら耳コピ早くなったな。エセゆゆ〇たみたいな真似ができるようになってきた。
これも地獄の連続ライブを乗り越えてきた賜物かな(白目)
「まぁこんな感じで...うわっ。何これ、めちゃくちゃ人増えてんじゃん。あ、あけおめっす〜」
演奏に集中してて全然気にしてなかったんだけど、気付いたら視聴者数が五百を越えてた。
すげーな。まだ配信始めて三十分も経ってねぇぞ。
コメントもたくさんきている。...あ、なんか投げ銭されてんな。スーパーチャットってんだっけ。
「え、マジか。こんなテキトーな弾き語りモドキに千円も投げてくれたんすか。あざす。えと...『夜に駆けるききたいです!』? おけっす。これは前に暇つぶしでコピったからすぐできるな」
ほかにも曲のリクエストはいくつかきていたが、せっかく金を出してまでコメントの権利を買った人の頼みだ。応えなければ不誠実というもの。
カポは一フレットに付けたまま、とりあえずG、A、Fと弾いてみる。多分こんな感じだったはず。
一分くらい確認をした後、完全に思い出したので曲の頭から演奏、歌っていく。
この曲は、はっきり言って難しい。
テンポはまぁ普通、ないしゆっくりめだと思うが、それは俺が日常的にメタルなんてものを聴いているからだろう。一般的にみたら少し速いくらいなのかもしれない。
ギターテクニックの面でいうと、初心者なら夢に出てきそうなくらいカッティングが多い。あとミュートも少し面倒かな。
まあ俺が原曲のエレキギターにつられてカッティングの山になってるだけで、もう少し楽に、簡単にできる部分はあるんだろうけど。
そして何よりこの曲の難しいところ。それは歌だ。
シンプルに高いし、ボーカルのik〇raさんの技術もハンパじゃない。表現力っていうのかな。抑揚がえげつないし、あと元から超高いのに転調もすんのはただのイジメ。
これを男が歌おうとしても、原キーで歌えるやつはそうそういないだろう。女性でも厳しいかもしれない。
ま、俺は歌えるんですけどね(急なドヤり)
「〜〜〜♪」
気持ち良くサビを歌い、静かに語り、ラスサビで喉をかっぴらいて最高音を叩き出す。
まあ正確には喉を開くっていうか、声の向きを上側にするイメージに近いかな。
普通に声を出したところで、それはどうやっても中音域を出ない。高音を出したい時は少し工夫が必要だ。
音楽の先生が、ウツボみたいなアホ面を晒して口を開きながら、手で山のような弧を描く仕草をしていた。そんな記憶はないだろうか?
そんなことをしている時はたいてい「腹から声出せ」とか運動部みたいなことを言ってるんだが、高音を出したい時のイメージ自体はそれ似ている。
腹から鼻にかけて、空気の流れを一直線にするようなイメージだ。
口蓋垂のつけ根に向けて、という感覚も似てるかもしれない。
とにかく、普段まっすぐ出している声を、上に向けて出してみる。そういうイメージが大事。
まあいろいろ言ったが、あとは喉が潰れるまで高音を出し続けて、しばらく療養期間を取ってからまた限界まで高音を出し続けるのが良い。
そしたら筋肉の超回復みたいになって、いつの間にか高音出るようになるから。マジで。
※※※※※※※※※※※※
これは正しいトレーニングではありません。独学でのボイストレーニングは危険が伴う場合もあるので、良い子は軽率に真似をしないでください。悪い子は覚悟しといてください。
※※※※※※※※※※※※
最後、Bmの音をチャッ、チャッ、チャッ!と区切って鳴らし、曲が終わる。
うーん、気持ちイイですねぇ(恍惚)
『確かに上手いがドヤるな』
『キモいゾ』
『顔さえ無ければ惚れてた』
コメントうるせぇザンス。
「って、は? 何、何で視聴者千人超えてんの? みんな暇なの? あ、はい、あけおめです」
自分で始めといてなんだが、予想以上の視聴者数に軽く引く。
コメント数も伸びてるし、スパチャもいくつかきて...は?
「オイオイオイ、死んだわこいつ」
思わず無意味なセリフが漏れる。
それも無理のないことだと思ってほしい。
俺の目に止まった一つのスパチャ。
そこには数字の五と、四つの0が並んでいる。
お き づ き だ ろ う か 。
いやお前、五万円のスパチャ飛んできたらどんな反応するのが正解なんだよ。怖ぇよ、誰だよ、何が目的なんだよ。
「え怖...何書いてあんの?」
数字に気を取られて内容まで目がいっていなかった。
恐る恐る、その五万円のスパチャの内容を読んでみる。
『今日の晩ご飯代にどうぞっ(*^^*)
あ、あと崎〇蒼士の五〇雨とか弾いてくれたら嬉しいです! 自分で耳コピしようと思ったんですけど、全然わからなくて...チラ(´ ・ω|』
「よーっし。今夜は
この後、全力で崎〇蒼士の五〇雨のギター講義をした。
✿ ❀ ✿ ❀ ✿
一月五日。
今日は昼までバイトをした後、少し宿題をやってからアコギに手を伸ばす。
最近はずっとエレキを触ってたからか、昨日の弾き語り配信が楽しすぎてな。高額スパチャ? あれはただの脅迫文だった。
今日は事前にTwitterで配信の告知をし、時間通りに開始する。
「こんちゃっす。昨日に引き続き配信始めまーす」
開始早々数十人の方が見に来てくれており、少し嬉しくなった。自己顕示欲が満たされていくのを感じる。
「昨日指摘のあったマイクとかの機器なんですけど、時間なかったので準備できてないっす。今月中には買い揃えたいな」
インターフェースとかもあればエレキもやれるな。ミニアンはあるからそっちからの音でもいいんだけど、さすがに近所迷惑になりそうだしな。
...あ、なんかもうスパチャきた。機材代にって一万円も。ほんと正気かこいつら? ありがたいけどさ。
「『昨日何食ったの?』。ああ、昨日は久々に家族四人でサ〇ゼ行ったっす。俺の奢りで」
機材代をくれた人が一緒に投げてきた質問に答える。
家族四人で飯を食うのはマジで一年ぶりくらいだったから嬉しかったっちゃ嬉しかったけど、俺の奢りって知った瞬間アホみたいに酒をバカスカ頼むの止めてほしかった(過去形)
終わってみれば、俺らの卓にはマグナムの空瓶が十一個転がっていた。
マグナム一本が千五百ミリリットルだから、かける十一で、総量一万六千五百ミリリットル。
一万ミリリットル以上の飲酒なんて......わけが分からないよ(キュ〇べえ)
でもそれだけ飲み食いしても合計は二万円を超えなかった。ワケワカンナイヨー!!!(テ〇オー)
「ほんじゃまぁ今日も弾き語りの垂れ流しってことで。曲のリクエストとかあります?」
そう言うと、何曲ものリクエストが飛んできた。
基本は最近流行りのJポップか。いや、ボカロ系も多いな。
お、スパチャ。五百円か...うん、正しい値段だ。こういうのでいいんだよ、こういうので。
あんまり高額だと気が引けちゃうからな。
「じゃあスパチャくれた人のリクエスト優先で。...君じゃなきゃ〇メみたい。またムズいのきたなぁ...まぁ俺は弾けますけどネ! ...『ドヤ顔定期』? うるせぇ、得意分野でくらい威張らせろ」
言いながら、チューニングを合わせる。
この曲は三年くらい前、中一の夏くらいにコピーした。
それを音楽の授業中に弾いたら、その後女の子にたくさん話しかけられたっけな。二週間くらいで突然なくなったし、その後はなんか遠慮気味に話しかけられること増えたけど。なんだったんだろ。
まぁ当時は恋愛対象としては同級生に興味なんてなかったからな。特に落ち込むこともなかったけど、今同じことやられたら落ち込みそう。
チューニングを終え、改めて構える。
あ、歌詞だけ出しとこ。
六弦、十二フレットを抑え、右手の親指で六弦を
そこから、かの有名なスラップが始まる。
六弦開放、三弦開放を人差し指でプル、からの三弦一フレをハンマリング。
一度六弦を叩くようにしてゴーストノート、まぁ昨日言ったパームと同じようなものか。
四弦二フレ、六弦開放、三弦開放からの一フレハンマリング。
とまぁ、こんな感じでスラップしていく。
スラップは難しいというイメージが先行しすぎている節がある気がする。
まぁ確かに難しくないことはないが、超絶技法、ってわけでもない。言っちゃえば叩いて引っ張ればいいだけだからな。
一朝一夕では確かに上手くいかないかもしれないが、何事も継続が大事だ。やり続けていればできるようになる。
...まぁ、須田とかいうウチのベーシストはスラップっていう技術を知った二時間後にはほぼ完璧に習得してたけどな。化け物め。
改めて須田という化け物に恐れ戦いているうちに、曲が終わる。
ふぅ。この曲疲れるんだよな。めちゃくちゃ楽しいけど。
「こんなもんでどっすか」
渾身のドヤ顔を晒すと、面白い具合にコメントがくる。味をしめてしまった。
と、気になるコメントがちらほらあるな。
「『スラップめちゃかっこいい』『スラップできる人本当にギター上手いなって思う』か。そーなんすよ。スラップってインパクト強いからめちゃくちゃカッコよく見えるんですよね。実際そんなに難しいことしてないんすけど」
さっきも言った...あいや、俺が勝手に思ってただけか。
「個人的には早弾きとかより簡単だと思いますよ。極論、叩いて引っ張るだけっすからね」
そう言うとコメント欄が荒れる荒れる。
そんなに簡単だったら苦労しないとか、そんなこと言ったらジミ〇ンとかもただ弦弾いてるだけになるとか、そういう類のコメントだ。
まぁ、コメントが正論だわな。
「そんじゃあちょっとスラップ講座やります? はい、ギターが手元にある人は構えて」
簡単つっても即座にできるほど甘いもんでもない。
「スラップってのは二つの弾き方でできてるんですよ。親指でやるサムピングと、人差し指で引っ張るプル。んであとはサムピングの亜種みたいなのでゴーストノート。まずはサムピングからっすね」
言って、何度かゆっくり六弦を叩く。
「最初はこれがなかなかできないって人が多いですかね。ベースと違って弦の隙間が狭いんで、なかなか狙ったところが叩けないって」
俺もそうだった。
「何事もまずはゆっくりやってみようってことで、サムピングだけをゆっくり。突然叩くとかじゃなくて、最初は六弦に指を着けた状態から、こう弾いて、そんで親指を五弦に着地させてあげる感じですね」
ゆっくりと同じ動作を繰り返す。
単純だが、反復は一番効率がいい練習方法だと俺は思ってる。
「そんで慣れてきたら、次は少しステップアップして、親指を六弦より上から振り下ろして六弦に着地、弾いて、五弦に着地。これを繰り返してみます」
「それをどんどん速くしていきます」
「はい、これでサムピング完成。慣れれば簡単ですね。次はプルです」
そんな感じに、スラップの動きを少しずつ説明していく。
今度、本格的にギター講座とかやってみるのもいいかもしれないな。
最近じゃあ大ガールズバンド時代なんてもんが襲来してるみたいだが、男もたくさん楽器をやるべきだ。
世に楽器演奏者が増えるのはなんだか嬉しい。そんでギタリストが増えるのはもっと嬉しい。
「プルも単体でできるようになったら、あとはサムピングと合わせてやりましょう。ゆっくりで大丈夫です。慣れてきたらだんだん速くしていって、気付いたら高速スラップもできるようになってますよ」
そう締めくくり、スラップ講座は一旦終了させる。
「そんじゃ本筋に戻して。さっきもらってたリクエスト曲やりまーす。えと、『リュックと添〇寝ごはんのあたらしい朝、お願いします!』...リュックと添〇寝ごはん??? 何それ初めて聞いた」
そういうバンド名流行ってんのか?
漫画のタイトルみたいだな。
知らないバンドだったので早速YouTubeで調べてみる。
お、MVあるな。とりあえず一回聞くか。
「スリピなんすね。.........あー、なるほど。一般大衆受けしそうな曲。いや悪口じゃなくて。なんだろ、なんか既視感っぽいのがある。この場合既聴感か?」
曲を流すと著作権がどうこうっていうので訴えられそうなので、イヤホンからの音を俺だけ聴きながら感想を口にする。
にしても、まじでなんか既視感っぽいのがあるな。
「...あ、スピ〇ツ! そうだ、スピ〇ツっぽいんだ」
コメントをチラッとみたら『令和版スピ〇ツみたいなもん』っていうのがあった。
それをみて、なんとなくスッキリする。su〇ikaにもちょっと似てる気がするな。
「うーん、これなら全然いけそう。難しいことはしてないっすね」
とりあえず、MVの中でギターの人はカポを二フレットに付けていたので、俺もそこに付ける。
「最初はCかな、んでGで、こうなって...なんかスピ〇ツで似たようなコード進行みたことあんぞ」
いやまぁ、音楽理論的に作曲するならコード進行は似てる曲も多いんだが...ダメだな令和版スピ〇ツに引っ張られてる。
その後、十分程度で簡単な耳コピを終わらせ、披露する。
お褒めの言葉をたくさんいただいて気分がいい。褒められるってほんと嬉しいのよ。
満足して次の曲へ進もうとしたとき、事件は起こる。
「そんじゃ次のリクエストは『大石サーキュレーション』...? ってあれか大〇昌良さん版の──」
「弟ー! 代えの弦持ってない? 切れちゃってさ。持ってたら寄越せ。無かったら買ってこい」
山賊(姉ちゃん)が乱入してきた。
ノックはしろってあれほど...年頃の弟の部屋に入ってくんの怖くないのかよ。アレをコレしてる場面に出くわしたらどうすんだ。
「姉ちゃん、親しき仲にも礼儀ありつってな。せめてノックくらい」
「あ?」
「なんでもないっす。あ、弦はそこの箱に入ってるっす、はい」
俺は!! 弱いッ!!!(ル〇ィ)
「貰ってくね〜。...ってあんた、何してんの」
「え? あ、配信です。昨日デビューしました」
『姉か!??!?』『実の姉に敬語なのウケる』など、姉ちゃんに対するコメントが溢れていた。
「配信ン〜? 何してんの」
「え、ああ。今は大石サーキュレーションをリクエストされてて、それのコピーでもしようかと」
「大石サーキュレーションって昌良版の恋愛サーキュ〇ーション?」
「うん、多分」
共通認識なのか()
俺が勝手に言ってるだけだと思ってたんだけどな。意外と一般知識なのかもしれん。
「あたし先月辺りサークルで弾いたよ、それ」
「マジか」
「まじまじ。アコギ貸してみ」
言って、姉ちゃんは俺からギターを奪い取る。
文句はない。絶対的なヒエラルキーがあるので、俺のものは姉ちゃんのものだからだ。
「お、視聴者さんけっこういるじゃん。あんたパスパレ公式の男とかって言われて認知度はあるもんね。はーいこんにちは。愚弟の姉でーす」
挨拶してから、姉ちゃんはギターを弾き始めた。
相変わらず歌も楽器も上手いんだけど、なんで俺の配信で姉ちゃんが弾き語ってんだ?
まじでやりたい放題だなこの女。
憎たらしいくらいに完璧な大石サーキュレーションを披露した姉ちゃんは、満足そうにギターを返してくる。
「弟。楽しくなったから久々にセッションするよ」
「セッション」
「ほら、コメントでもあたしの歌聴きたいって人けっこういるし」
「あ、はい」
そんなこんなで、何故か姉ちゃんと一緒にギターを弾くことになった。
ゆ〇の夏〇とか、千〇桜とか弾けて楽しかったけど、一体どうしてこんなことに......。
そんで姉ちゃんが出てからYouTubeの登録者数が倍くらいになって、マジで泣きそうになった。
一体...どうして......。
あと収益に関して、なぜか六対四で姉ちゃんに取られることになった。
と゛お゛し゛て゛た゛よ゛お゛お゛お゛!!!
蛇足書いてたんですけど、文字数思ったより多くなったので、次の話として投稿します。