ガールズバンドが人気な時代ですが、男も頑張ってみます。   作:怜哉

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一瞬だけ日間10位以内に入ってて布団の上でガッツポーズしてました。嬉しい。


B●SSのBlues Driverは結構優秀、持ってて損はない。

 

 

 

 

 

 彼は、一言で言えば変態だ。

 

 

「くるぞ、くるぞ......あ゙あ゙〜」

 

 最近ハマったらしいバンドの曲を私に聴かせてきて、ギターソロとか、そういう演奏の見せ場になるとこうやって興奮している。

 ...まぁ気持ちは分からないでもない。むしろ同意しかない。ここのソロは確かに気持ちいいし、私も弾いてみたいなって思う。

 

「次はこの曲なんだけどな? こっちはギターもいいんだけど、Bメロに入る前ベースソロが二秒くらいあるのが良くて...」

 

 彼はロック系、しかもハードなのが好みらしい。メタルも少し嗜んでる、とかこの前言ってた。メタル系アイドルバンド、なんてものも聴いているとかなんとか。

 

 彼と出会ったのは、数週間前。高校の入学式の日だ。出会った、とは言っても、お互いクラスの自己紹介で名前を知ったくらいのものだったけど。

 最初はただのクラスメイトってだけで、話すこともなかった。ただ、私が学校でギターを弾いてた時に話し掛けられて、そこからは頻繁に話している。内容は音楽の話ばっかりだけど、すごく面白い。今までそんな話できる人はあんまりいなかったし。

 

「私はねー、最近はこのバンド聴いてるよー。ブラジルのバンドなんだけど、サビ前のリフが良いから聴いて」

 

 こうして、今日もまたお互いの性癖を暴露しあっていく。

 最近では、私が一番楽しみにしている時間。自分をさらけ出せる、幸せな時間。

 

 

 彼は、一言で言えば変態だ。

 私と同類の、大好きな変態さんだ。

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

 楽器を始める理由は人それぞれだ。

 好きなアーティストがいるから、友達や家族がやっていたから、モテたいから。

 別にどれが正解だ不正解だなんてあるわけではなく、始める理由なんて関係はない。所詮は趣味、好きなようにすればいい。

 

「見ろよ関口〜、買っちった♡」

 

 目の前のアホのように、気になってる人とお近付きになりたいから楽器を始めようというのも、不純ではあるが、間違ってはいない。

 

 

 

「親父が昔バンドやってたみたいでさー。ベース欲しいってちょろっとこぼしたら買ってくれた〜」

 

 そう言って新品のベースを見せてくるのは、友人の須田誠だ。

 テスト期間最終日の今日。筆記用具を片付けている途中で須田に話し掛けられたと思ったら、ドヤ顔でブツを見せられた。

 この前、牛込さんと話す話題になるかもとか言ってベース欲しがってたけど、ほんとに買ってくるとはなぁ...。つってもこいつ、白金さんにもアピールしてっけどな。

 

「ふーん、えっちじゃん」

「は? えっち?」

 

 見せられた木目の五弦ベースに対して率直な意見を口にしてみたのだが、どうやら伝わらなかったらしい。悲しい。

 ベースのことはよく分からないが、バンドやってた親父さんが買ってくれたってことは多分いいやつなんだろう。なんでいきなり五弦なのかは知らんけど。てかテスト期間に何してんだこいつ? これで赤点取ってたら腹抱えて笑ってやる。

 そういやベースの五弦ってあんまり必要性ないらしい。六弦ならあるらしいけど。確かに、普通に考えたら低い音増えるより高い音が増える方が実用性はあるよな。ま、五弦ってだけでビジュアル的に(いか)ついから俺は好きだけど。

 

「ん? 須田くん、ベース買ったの?」

 

 俺たちの会話に気付いた山吹さんが、荷物をすべてしまった鞄を背負いながら振り向く。

 それに続き、花園さんもこちらを振り向いた。

 

「へー、五弦買ったんだ?」

 

 意外そうな顔をして、花園さんはまじまじと須田のベースを見る。おい、照れんな須田。見られてんのはお前じゃないから。

 

「ベースはいつ頃から?」

「へ? あ、あぁ...実は昨日買ったばっかで、まだちゃんと触ってないんだよ」

「え、最初の一本を五弦にしたの?」

 

 さらに意外そうな声を出す花園さん。

 俺もそれは思った。親父さんの趣味だろうけど、いい趣味してんよなぁ。木目ってのも関口的にポイント高い。親父さんとは良い酒が飲めそうだぜ。いや俺未成年だけど。

 

「え、ベースって弦五本じゃないの? へー、そうなんだ。なんかカッコよかったからこれ買ったんだけど」

「須田。俺達、これからも友達でいような」

 

 いい趣味してんの須田父じゃなくて須田本人だった。さすがだブラザー。ベースの知識とか皆無でそのベース(五弦木目ベース)選ぶ辺りさすがだよマイフレンド。

 

「あっ、そうだ。花園さん、確か牛込さんとバンド組んでたよね?」

「うん、そうだよ〜。香澄も一緒」

「戸山がリーダーだっけ? まぁとりあえず、須田にベース教えてくれないか、牛込さんに聞いてくんない? 教則本と睨めっこするより、人に教えてもらった方がいいだろうし」

 

 須田がベースを始めるきっかけとなった人物。牛込りみさん。

 須田ができるだけ楽しくベースの練習をするには、彼女の力が必要だろう。実際、人に直接教えてもらった方が成長も早いだろうしな。

 

「うん、いいよ〜。っていうか、この後有咲の家の蔵で練習するから、須田くんも来なよ」

「い、いいのか!?」

 

 その食いつき気味な須田を見て、山吹さんは何かに勘づいたらしく、少し目を見開いてから俺の方を見てきた。彼女はこちらを向いたまま、須田と、教室の端っこの席に座っている牛込さんとを交互に指差す。

 あー、うん、多分山吹さんの想像通りだと思う。そういう意味を込めて、俺は軽く頷いてみせる。すると、山吹さんの口元がだんだんニヨニヨと歪んできた。まぁ他人の恋路って見てる分にはめちゃくちゃ面白いからな。気持ちは分かる。

 

「あ、海も来て」

「はぇ? 俺も?」

「うん。じぁあ行こ〜」

 

 なんでか俺もどっかの誰かん()の蔵に行くことになった。

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

「市ヶ谷有咲ってアレだろ? 学年一位の天才」

「何の?」

「成績」

「そうなん?」

 

 どこかの蔵に向かうため、花園さんに付いて行っている途中。須田が思い出したかのように市ヶ谷有咲って人の名前を出す。俺は初耳だな、市ヶ谷有咲って名前は。有名なのか?

 

「あー、お前遅刻してきたから知らないんだっけ? 入学式ん時の新入生代表挨拶。あれって学年首席がやるらしいんだけど、なんか無断欠席してたとかで教師陣が慌ててたんだよ」

「へー」

 

 そりゃ知らんわけだわ。俺が体育館入った時、もう最後の国歌斉唱始まってたもん。列に並んだその二分後に退場した。

 

「有咲、面白い子だよ。引きこもり気味だけど」

 

 俺達の会話を聞いていたのだろう。花園さんがそう言ってくる。

 

 現在、その市ヶ谷さんとやらの蔵に向かっているのは三人。俺、須田、花園さんだ。本当なら牛込さんも一緒に行くはずだったのだが、練習に行く前に少し用事があると言って、山吹さんと一緒に教室から出て行ってしまった。

 戸山? あいつは知らん。気付いたら教室にはいなかった。

 

 そんなこんなで歩いていると、とある大きな店に着いた。店というより普通の家に見えるが、『流星堂』という看板が出てるから、家兼店舗、って感じの建物なのかもしれない。

 須田と二人してボケっと店(家)を見ていると、花園さんはそちらには目もくれず、端にある蔵らしき建物へと歩いて行く。あれが蔵...うん、蔵だわ。

 

 花園さんが蔵の扉を開けて中に入る。俺達も中に入ると、次は地下へと続く階段が待っていた。

 

「この下、スタジオ代わりにしてるの」

 

 そう言った花園さんは、慣れた足取りで階段を下った。

 須田と一度目を合わせてから、俺が先に階段を降りる。

 埃っぽくジメッとした空間から一変。階段を降りた先には、明るい空間が広がっていた。

 

「あ、おたえ〜! ...と、関口くんに...えと、須田くん?」

 

 俺と須田が恐る恐る地下の部屋に足を踏み入れると、そんな声が聞こえてきた。

 

「あ、お邪魔します」

 

 とりあえず、挨拶だけはしておく。

 俺と須田がぺこりと頭を下げた相手は、戸山香澄。ウチのクラスの不思議ちゃんである。

 それからその奥。いかにも女子が好みそうな可愛らしいソファに腰掛ける、金髪のツインテの子。あの子が噂の天才、市ヶ谷有咲だろうか?

 

「え.....誰?」

 

 市ヶ谷さん(仮)は、俺達を見て率直な意見を述べた。

 当たり前だ。突然知らない男が二人も入ってきたら、そりゃ困惑もするだろ。俺なら手元に武器になるもん置くね。ギタースタンドとか。

 

「ごめんね有咲、香澄。友達連れてきちゃった。海と須田くん」

「いや、連れてきちゃった、ってお前...」

 

 納得のいっていなさそうな顔をする市ヶ谷さん(仮)。

 そりゃそうだ。俺もなんでここにいるのか分からん。その場のノリって怖いよな。

 

「なんかすんません...。えと、市ヶ谷さん、で合ってます?」

「え? あ、はい。...んんっ。ご機嫌よう。私、市ヶ谷有咲と申します」

 

 何やら随分と芝居がかった仕草で挨拶をしてくる市ヶ谷さん(真)。なんか良家のお嬢様みたいだな(小並感)

 市ヶ谷さん本人だと確認が取れたのは良かったが、この微妙な空気はどうするんだ。

 

「りみ、まだ来ないから、須田くんは待ってて。海、ギターとアンプあるけど、弾く?」

「弾く」

 

 え〜アンプ完備かよ最高じゃねぇか〜(脳死)

 しかもミニアンプじゃなくて普通のマーシャルだし。何? タダでギター弾けるとかここ天国か?

 

 俺がウキウキしていると、花園さんがギターのセッティングを済ませてくれる。音を調整し、いい感じになったところでギターを渡してくれた。

 

「海。なにか一曲弾いてみて。聴きたい」

「あっ! それ私も! 海くんのギター、私も聴きたいな!」

 

 花園さんに続いて、戸山も目をキラキラさせながら近寄ってくる。

 しょーがねーなー(嬉) じゃあなんかテキトーに一曲。まぁゆーてすぐできんのは弾き語りくらいなんだけどな。

 んー...RA〇WIMPSの「そっけない」とかどうでしょうか。最初のコードはCとかだろ、多分。

 

「届きそうで、届かなそうな〜」

 

 須田と市ヶ谷さんを完全に無視して、俺の弾き語りショーは始まった。んー、アコギと音違ーう! まぁ(ひず)みとか普通にかかってるし、多少はね? 弾き語りとして聴けないこともないけど、この曲終わったら練習してたリードの方も聴いてもらおー。

 

 

 ...ふと我に返って、この蔵の主である市ヶ谷さんに頭を下げるまで、残り十数分。

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

「んー...無難にBO〇Sのディストーションとか買っときゃいいのか?」

「ちゃんとロック系やりたいなら、やっぱエフェクターにはお金かけた方がいいと思うよ。買うなら、色んなもの比較して吟味した方がいいかも」

 

 場所は代わって、江戸川楽器店。エフェクター売り場。

 壁いっぱいに並ぶ長方形の機材と睨めっこしながら、俺が唸る。

 それに応えるのは、クラスメイトの花園...じゃない。おたえだ。

 エフェクター欲しいんだよねー、って言ったら、じゃあ買うのに付き合うから今から行こう、って言われて現在に至る。

 

「歪み系はブースター用に二つくらい持ってたほうがいいかもだけど、空間系も充実させたいよね。とりあえずはリバーブとディレイかな? 有名なギタリストには、良いアンプと良いリバーブがあれば十分だって言ってる人もいるくらいだし」

 

 いつも以上に口数の多い彼女。やはり楽しいのだろう。

 そんな彼女に俺は数時間前、名前の呼び方を矯正された。「花園さん」から「おたえ」へ。なんでも、親しい人に苗字で呼ばれるのはなんだかむず痒いらしい。それに便乗したのか、戸山からも自分のことを名前で呼んでくれと言われた。

 ふぅむ...おたえに香澄、か...。正直むず痒いのはこっちなんだが。蘭達以外の女子を下の名前で呼ぶのなんて小学校以来だわ(思春期)

 

「歪み二つじゃなくて、このFUZZってやつじゃダメなの? ディストーションの強化版的なやつなんだろ?」

「んー、それだと強すぎるかな。まぁ海の好きなジャンル考えたら別に持っててもいいだろうけど」

 

 念願のエフェクター購入ということもあり、俺の目は真剣そのものだ。てかこの時間も楽しい。ワクワクする。

 ちなみにだが、須田は蔵に置いてきた。今頃牛込さんにベースを教えてもらっていることだろう。大量のパンを持ってきた牛込さんは、意外に須田と話が合うようで、須田にベースを教えることも快諾してくれていた。是非とも五弦ベースを使いこなせるようになってもらいたい。

 

「こっちの、スイッチがたくさん付いてるやつは?」

 

 ふと目に付いた、今見ていたものより二回りほど大きいエフェクターらしきもの。なんか色々なスイッチがある。強そう。

 

「それはマルチエフェクターだね。それ一つに色んなエフェクターが入ってるんだよ」

「へー、便利じゃん。これ一つ買うのじゃダメなの?」

「んー...悪くはないんだけど、やっぱりコンパクト...こっちの小さいやつをたくさん買って繋げた方が、音はいいと思う。歪みなんかは特にね」

 

 ふむ...分からん。やっぱ実際に音聴かないとダメだな。

 

「ちなみに花ぞn」

「おたえ」

 

 えぇ...(困惑)

 

「.....おたえのオススメは?」

「私は...そうだね。初心者向けってなると、歪みはB〇SSのBD-2とか? ちょっと高音暴れたりノイズ気になったりするかもだけど、バンドで合わせたらしっくりくるし。それと〜...あ、これとか。TC Electronicのリバーブ」

 

 青色をしたBlues Driverって書かれたやつと、赤色でHALL OF FAME 2って書かれてるやつ。おたえはその二つを指差した。

 

「ふぅむ...見ても分からん」

「試奏してみたら?」

「そうする」

 

 近くにいた店員さんを呼び、BluesDriverとリバーブを出してもらい、セッティングまでしてもらう。

 椅子まで用意されたし、ピックも色んな形のが置いてある。なんだこれいたせりつくせりかよ。最高だな。

 

「じゃあとりあえず、クリーンからかな」

 

 おたえの言葉に従い、まずはエフェクターを踏まずに軽く弾く。

 

「次、先にブルース」

「うい」

 

 まだ買っていないものを足で踏むわけにもいかず、少し前屈みになりながら右手で青色のエフェクターのスイッチを押す。

 ジャーン、と。軽くAのコードを鳴らしてみた。

 

「おぉ...!」

 

 明らかに音が違う。

 言い表すなら、ラジオなんかを聴いてる時に走るノイズのような音。

 元々歪みの概念が生まれたきっかけは、アンプの故障から偶然発生したノイズらしい。本来なら取り除くべき音をどっかの変人(褒め言葉)が「あれ? この音良くね?」と思ったことが発端らしい。そこから「歪み」って音が普及したんだとか。

 全く、昔の人は凄いこと考えるよな。まぁ今から百年以内の話だけど。

 

「じゃあリバーブも踏んでみよっか」

「おう!」

 

 テンション上がるなぁ〜。

 

 もう一度前屈みになり、ブルースは着けたままでリバーブを押す。

 またAコードを弾くと、歪みに加えて微かな残響が聴き取れた。あ゙あ゙〜(恍惚)

 

「そのまま弾いててね」

 

 俺が勝手に気持ちよくなっていると、おたえがエフェクターのツマミを弄り出した。

 

「また音が変わったな」

 

 少し高い音が聴こえやすくなった気がする。

 あと全体的に歪み具合が増えた。

 

「今のはブルースのGainを上げて、Toneも少し弄ったの。こっちのリバーブのツマミを弄れば...」

「...お、変わった。なんかこれ、カラオケで歌ってる時のアレに似てるな」

「エコー? まぁどっちも残響だし、同じ感じかな」

 

 へぇ。

 でもこれ、カッコイイっちゃカッコイイんだけど、やりすぎると気持ち悪いな。イントロとかゆったりめのソロとか、そういう局所局所で使う分には全然いいんだけど。

 

「このリバーブにはね、感圧式のスイッチが使われてて、踏み込んだ強さでエフェクトの掛かり具合とかが変わる『MASH機能』ってのが付いてるんだよ。最初は使いづらいかもしれないけど、使いこなせればすっごく便利」

「はぇえ...」

 

 なんか凄そう(小並感)

 試しに自分でも色々弄ってみたが...いやはや、楽しいなこの野郎。色んな音色が出るわ出るわ。ずっと弄っていられる。

 

「.....よし、決めた」

 

 

 ✿ ❀ ✿ ❀ ✿

 

 

 江戸川楽器店を出ると、街は朱色に染まっていた。

 最近は暖かくなってきたとはいえ、日が傾くとそれなりに冷える。

 今日は朝から暖かかったし、制服の上に着るものは持ってきてなかったな。まぁ無くても耐えきれないほどじゃないし...

 

「ほれ。俺のだけど、蔵帰るまではこれ羽織っとけ。寒いんだろ?」

 

 少し両腕を抱くような仕草をしたからか、海がブレザーを渡してきた。無くても耐えきれないほどじゃないけど...あるなら欲しい。

 

「ありがと、海。...海の匂いがする」

「うちの母親、柔軟剤には拘ってるらしいからなー。いい匂いだろ?」

「うん、とってもフローラル。磯臭くなくて良かった」

「.....え? もしかしてそれ、俺の名前の漢字が(うみ)だから言ってる?」

 

 困惑したような顔をする彼の手には、江戸川楽器店のレジ袋が二つ。片方にはエフェクターが二つ、もう片方にはパワーサプライが入っている。

 

「海。エフェクター、私が勧めたので本当に良かったの? せっかくなんだから、もっと色々自分で吟味してみても良かったのに」

 

 そう。彼が購入したエフェクターは、二つとも私が勧めたものだ。

 私も本気で考えて勧めたから性能については文句のほぼない製品だけど、もっと他のを試してみても良かったんじゃ...

 

「ああ、いんだよ。おたえのオススメってのもあるけど、俺がコレがいいって思ったから買ったんだ」

「そう? ならいいんだけど」

 

 海のブレザーを羽織りながら、私と彼は二人並んで歩く。

 それにしても、このブレザーおっきいなぁ。やっぱり男の子なんだよね、海も。...改めてそう思うとちょっと恥ずかしいな、ブレザー借りてるっていうこの状況。

 

「海はこの後どうするの?」

 

 最初は合わなかった歩幅も、すぐに海がこちらを気遣ってくれて、今は同じ速度で歩いている。

 そんな彼の優しさに対するふわふわした気持ちを感じながら、私はブレザーのポケットに手を突っ込んでみた。あ、ピック入ってる。

 

「とりあえず市ヶ谷さん()の蔵に行くわ。須田置いてきたままだし」

「須田くん、りみりんにベース教わってるんだよね? 海とバンド組むの?」

「分からん。あいつが続けるんなら組むかもな」

「続けるといいね〜」

「ん」

 

 大通りに出る角を曲がると、海がスっと車道側に出た。

 私知ってる。男子が女子に対してやると好感度が上がるって嘘くさいサイトとかに書いてあるエスコートだ、これ。

 けど多分、海はそんなの気にしてない。この前須田くんと海が話してた時、海は「異性のタイプは年上」って言ってたし。あ、盗み聞きしたとかじゃないよ? ただたまたま聞こえてきただけ。

 ちょっと前に須田くんが吹聴してた紗夜先輩との交際疑惑は嘘だって海本人は言ってたけど、紗夜先輩みたいな人がタイプなのかもしれない。私は...お世辞にも大人っぽくはないからなぁ。

 

 ...けど、だからこそ。これは海が本当に優しいってことの証明になるんじゃないかって、私は思う。誰にでもしてるんだって思うと、それはそれで複雑だけどね。

 

「ねぇ海」

「ん?」

「海ってあれだよね。モテそうだけどモテない人」

「なんだ突然。喧嘩でも売ってんのか?」

「んーん、違うよ? ただ、ふとそう思っただけ」

「そんなふと思われるレベルでモテなさそうなの俺?」

 

 逆に私のタイプは、渋い感じ。熟練のギタリスト感があれば完璧。けど、仮にそんな人が目の前に現れたとしても、好きになるかなんて分からない。

 そもそも、私のこのふわふわした気持ちがなんなのか、それもまだちょっと分かってないのだ。何か特別なイベントがあって、それ(イベント)を経てから発生した気持ちだったら、まだ何か分かったのかもしれない。けど、気付いたら思ってたからなぁ。

 これは恋なのかもしれないし、単なる友情の延長線なのかもしれない。この感情がなんなのかを知ること。そこから始めよう。

 

 じゃあ、まずは手始めに。

 

 夕日に照らされて長く伸びた二つの影を、私はちょっとだけ近付けた。




ラブコメ書くのって難しいですよね。アドバイスとかあったら欲しいです。

エフェクターについてはもっと語ろうかとも思ったんですが、なんかキモかったし長かったので適度にしときました。BD-2は私が実際に持ってるもので、HALL OF FAME2は私が今欲しいリバーブです。詳しく知りたい(沼にハマりたい)方は某動画投稿サイトとかで検索してみてください。マジでキリないです。歪みとかは特に。

専門用語とかマイナーすぎるバンド名とかについて。

  • 伏字で出されても分かんねぇわ!辞めろ!
  • 好きにやってええんやで(菩薩)
  • 全然分かるけど辞めな
  • 分かるからそのまま続けて、どうぞ。
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