緋弾のアリア 黒の武偵   作:エイト☆5

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第11弾 尾行されてるってのに今日は俺の視点おやすみ?

 1時間前

 ~side 間宮(まみや)あかり~

 

「アリア先輩来ないかな・・・」

 

 あたしは強襲科棟(アサルト)2階のトレーニングジムでエクササイズバイクに乗って基礎体力を付けていた。

 強襲科(アサルト)でのトレーニングは。最低限のノルマをこなしたら後は自由だ。

 自分ががなんの訓練をすれば生き延びられるのか自ら考え自ら実践する為で、その習慣を早くから身につけさせるためである。

 そのため多くの生徒達がこの強襲科(アサルト)で、射撃、近接戦、徒手格闘、ナイフ戦の自主的に技術を磨くのだ。

 

「志乃、行っちゃったな」

 

 プッシュアップトレーナーで腕立て伏せをするライカが声を掛けてくる。

 

「うん」

 

 あたしの友達である佐々木志乃は、とある先輩の戦姉妹試験(アミカチャンス)の為に暫く都会を離れ、その先輩がいる合宿先に行くそうだ。

 一般学区の車道にベントレー・ミュルザンヌ――佐々木家の専属の女性運転手付のウン千万円する高級車が志乃を迎えに来て・・・滅多にお目にかかれないミュルザンヌに「すっげー!」と少年のように目を輝かせてたライカが印象的だった。

 

戦姉妹試験勝負(アミカチャンスマッチ)の形式にも色々あるんだね」

 

 あたしは前を向いてエクササイズバイクを漕ぎながら背後のライカと喋る。

 

「恐山で山籠もりさせるなんてヘンな戦姉だぜ――よしっ、100!」

 

 腕立て伏せのノルマを終らせたライカが、その場で仰向けでごろんと寝転がる。そして、

 

「まあ志乃がいない間、あかりはアタシが独占出来るけどな・・・ウヘヘヘェー」

「・・・・・・?」

 

 ライカがへんな笑い方をするので後ろを向くと、床に仰向けになったライカが、好アングルを見つけた写真家のように両手の人差し指と親指で長方形を作っている。

 ライカの指カメラは・・・

 エクササイズバイクを立ち漕ぎするあたしのスカートの中を捕らえていた。

 しかも斜め下から超アオリでアングルを定めている! 

 

「うわー白木綿。ガキっぽ。パンツと言うより『ぱんちゅ』だぜ」

「・・・・・・!?」

 

 そこで気付いたあたしは慌ててスカートを押さえる。

 

「バカライカ! ローアングラー! お金払え!」

「はんちゅー、丸見えー♪ キィーン」

 

 あたしは逃げるライカを追うがライカはあたしより足が速いので同じスピードぐらいに保って遊んでる。 

 ライカと恒例に成りつつある追いかけっこをしていると、1回の様子を見おろす男子生徒立ちの会話をきいてライカが足を止めてしまう。

 むぎゅ! 

 当然あたしはライカの背中に突っ込んでしまう。

 

 

「おい聞いたか? キンジが強襲科(アサルト)に帰って来るって!?」

「マジかよ! キンジって遠山キンジだよな?」

強襲科(アサルト)の首席候補って言われてた奴か!」

「遙とキンジのコンビが復活するのか!?」

 

 2年の先輩たちがそう語るのを盗み聞きしたライカは――

 勝気そうな顔に、緊張感を漂わせてる。

 

「ライカ?」

 

 シリアスな表情になったらいかに、あたしは怒りを中断させて呼びかける。

 その顔は嬉しそうでもあり、悲しそうでもあり何とも複雑な表情だ。

 

「遠山キンジ・・・あの人が帰ってくるのか」

「キンジ・・・? 誰それ?」

「2年の先輩。任務でいつもいなかったし、去年、探偵科に転科しちゃったけど・・・前は強襲科(アサルト)でSランク武偵だった」

「い・・・1年でSランク!? そんな人、いるんだ・・・!」

 

 武偵ランクの頂点――Sランク武偵は厳しい人数制限がり、各分野でと突出した能力を持つ物だけが選ばれる。大人の武偵含め、世界で数百人しかいない存在だ。

 あたしの戦姉妹(アミカ)であるアリア先輩もSランクだが、高校生がSランクに格付けされる事は稀である。

 それが1年と成るとなおさらだ。

 

「・・・入試で教官を倒したらしい、伝説の男だよプロ武偵に勝てる中坊なんてバケモノだろ」

「バケモノ・・・」

「そんな人とコンビを組んでたのが吉野遙先輩だ。こっちも入試で教官を倒して遠山先輩と格闘戦を演じたらしい。遙先輩は転科して無いけど最近は依頼(クエスト)はあんまり受けて無いから結構いる事が多いな」

 

 今あたしの頭の中には武偵高の制服がはち切れんばかりになっているくらいの筋肉ダルマで頬に傷がある黒人SPのような巨大男子2人を思い浮かべた。

 武器もただの銃ではなく、アクション映画の豪傑のようにミニガンとか。

 

(そんな人達がこの学校にいるなんて・・・あたしなんか入試、補欠合格だったのに・・・)

 

 想像しただけで震えてしまうあたしの横で、

 

「話した事はないけど、顔は知ってる。あっ、あれだ」

 

 ライカが1階のホールの方を指差す。そこにいるのは・・・

 

「おーうキンジィ! お前は絶対帰ってくると信じてたぞ! さあここで1秒でも早く死んでくれ!」「まだ死んでなかったか夏海。お前こそ俺よりコンマ一秒でも早く死ね」「キンジぃー! やっと死にに帰ってきたか! お前みたいなマヌケはすぐ死ねるぞ! 武偵ってのはマヌケから死んでくもんなんだからな」「じゃあなんでお前が生き残ってるんだよ三上」

 

 と言い合いながら強襲科(アサルト)の2年生にもみくちゃにされている根暗そうな人がいた。

 

(・・・・・・?)

 

 彼が遠山キンジ先輩・・・? 

 あたしの想像とは程遠い、どこにでもいる男子高校生に見える。

 最近見たと様な気がするが、だとしても5分ほどで忘れてしまいそうな風体だ。印象が薄く、存在感が無い。

 だが強襲科のみんなは遠山キンジが強襲科(アサルト)に戻ってきた事を喜んでいるムードだ。

 

「それであっちが遙先輩」

 

 ライカは更に指を動かし、人ごみから少し離れた生徒を指す。

 長い黒髪をポニーテールにしめんどくさそうに人ごみを眺めている、身長の低い小顔の生徒がいた。

 男子用の制服を着て・・・

 

「男? 女?」

 

 見た目的にはかなり華奢なのに何故か男子用の制服を着ている。

 性別を偽って活動する『転装生(チェンジ)』もあるが、それならあの髪型は説明が付かない。

 

「あの人は男だ。あんな見た目だけど・・・」

 

 女の子より女の子っぽい男の子って・・・

 しかもそれでSランクって凄いな・・・

 

「な、なんかイメージと違う・・・」

「遠山先輩はそう見えるんだよな。上勝ちすると大手柄だから狙ってる1年もいるけど・・・なんか、勝てなさそうな気がするんだよな・・・遙先輩には実際負けたし・・・」

 

 ライカの言う『上勝ち』とは武偵を1年経験した下級生が、2年経験した上級生に勝つと言う隠語である。

 通常1年と2年の実戦経験が大きく通常では起こりえないため、勝った場合教師達や周囲からの評価が上がるという物だ。

 口ぶりからするに、ライカも少し狙っているのかもしれない。

 

 そんな事を考えていたら吉野遙を見て笑っている男子達がいた。

 あれは、今年の入学試験でAランクになって天狗になっていた男子だ。

 

「おいおい! これが切り裂き魔(スラッシャー)かよ!」

「らしいぜ! こんな女っぽいチビが切り裂き魔(スラッシャー)だってよ!」

 

 男子生徒達は敢えて吉野遙に聞えるように行っているみたいだ。

 だけど吉野遙は慣れていると言わんばかりに余裕を保って無視している。

 

「あんなのがSランクなら俺がSランクに成るのも遠くないな!」

 

 その時、吉野遙の雰囲気が変わった。

 

「待てよお前等」

 

 吉野遙は静かに男子達を呼び止める

 明らかな殺気を放って。

 

「アッ?」

「訂正しろ、Sランクはお前等みたいなカス共が成れるもんじゃねーよ」

 

 吉野遙の口から、その見た目や高い声に似合わない言葉が出てくる。

 確認するまでも無く怒っている。

 しかも殺気を針のように細くし男子達に向けながら。

 少し敏感な子ならこの殺気を向けられ、なにも言わずにため息を付かれただけで失神するだろう。

 怖い・・・

 吉野遙に対してアタシは純粋な恐怖を感じる。

 

「武偵ってのは市民の信頼の上で武装を許可されてる。そのなかでもSランクの人間は更なる信頼と実績、能力を認められた者に与えられんだよ。お前等みたいに見た目だけで自分より下だと思い込んで人を笑い物にする奴等がSランクに成れるわけねーだろ」

 

 前髪を掻き上げ首を鳴らす。

 この場ではもう吉野遙を女の子っぽいと思う人間はいないだろう。

 そう、あれはあたし達『間宮』に近い何かだ・・・

 

「もし他にも簡単にSランクに成れると思っている奴が居るなら出て来い。お前等全員まとめて相手してやる」

 

 

 


 

 

 あの後、蘭豹先生が入ってきて急遽、吉野遙VS1年男子全員で試合になった。

 結果は吉野遙の完勝だった。

 常に敵全体を視界に入れ、倒した相手を盾にして武器を奪い取り、時に相手の銃をナイフで叩き切り、相手に反撃を許さない早業で相手の懐に入り込み昏倒させ、銃を持っても足を積極的に狙い致命傷になりえそうな攻撃は一切していなかった。

 ただ一度も攻撃を食らわず、ただ一度も致命傷を与えず、男子30人を5分と掛からず倒しきってしまった。

 次元が違うと感じた。

 EランクとSランクの差を改めて思い知らされた。

 そんなあたしは今人生最大急の修羅場にいる。

 

「・・・あんた人気者なんだね。ちょっとビックリしたよ」

「こんな奴らに好かれたくない」

「ヒデーこと言うなキンジ。親友だと思ってた奴にそんな風に思われてたなんて傷付くぜ・・・」

「遙に言った訳じゃねーよ」

 

 アリア先輩と遠山キンジ、吉野遙が仲良さげにあるいていた。

 

「あんたって人付き合い悪いし、ちょっとネクラ? って感じもするんだけどさ。ここのみんなは、あんたには・・・なんていうのかな、一目置いてる感じがするんだよね」

 

 遠山キンジの方を見てアリア先輩はそんな――

 褒め言葉に類するような事を言っている。

 

(なに!? なに!? なに!? なに!? なに!? なに!? なに!? なに!? なに!?)

 

 あたしはパニックになりかける。

 遠山キンジ、吉野遙・・・何者!? 

 絶対、絶対に突き止めねばあの胡散臭い男達が、何者なのか! 

 

「ついてくんな! 今、お前の顔なんか見たくもない!」

「あたしもあんたのバカ面なんか見たくない!」

「じゃあなおさらついてくんな!」

「やだ!」

 

 数分後、遠山キンジとアリア先輩は路上で追いかけっこをしながら帰宅していた。

 仲は悪そうに見えるが、喧嘩友達と言う物なのかもしれない。

 

「かったるいな・・・どこもかしこも・・・」

 

 吉野遙は呆れた様に走っていくアリア先輩と、遠山キンジを見送る。

 そしてそう呟くと、すこしため息を付き走って二人を追いかけていく。

 

 これはあたし的に大変良くない。

 というのも、ケンカ仲というのは後々スルッと恋人関係になってしまいかねない関係。

 それも、何時もその2人と一緒にいる男子なんて、少女マンガ的には3角関係まっしぐらな関係だと言う話だ。

 憧れのアリア先輩があんな男子達と万一そんな関係になってし待ったら・・・! 

 

 ・ ・ ・ () () () () () () () () () () () ! 

 

 遅れていた吉野遙に付いて行くとなんと、ゲームセンターに向っていた。

 挙げ句、UFOキャッチャーでぬいぐるみのストラップを3つ取って分配したりしている。

 2人はともかく、アリア先輩はぬいぐるみを気に入ったのか・・・

 笑顔になっている。アリア先輩が。

 

(た、楽しそうにしてる・・・!)

 

 そんな三人を道端のポストの影から盗み見る。

 

(遠山キンジ、吉野遙・・・! あの人達、もしや・・・アリア先輩につく悪い虫ってやつ!!?)

 

 アリア先輩は女神に等しい完璧な人物なので、問題があるハズはない。

 つまり、悪いのは全て遠山キンジと吉野遙だ。あの男達がアリア先輩を唆したに違いない。

 

「さてと、キンジ、アリア、俺ちょっと用事ができたからここで失敬させてもらうぜ」

「どうしたんだよ遙? 任務は無いんだろ?」

「可愛い子がいたから声掛けてくるだけだ。ついでに晩飯の材料も買って来る」

 

 と最低な事を言いながら2人からはなれて行く。

 遠山キンジと吉野遙のどちらが危険か目に見えている。

 アリア先輩に付いて行きたいけど、吉野遙の方が気になる。

 吉野遙を追おう! 

 

 吉野遙は軽い足取りで公園の方へ歩いて行く。

 左手はズボンのポケットに入れ、右手でゲームセンターの袋を担いで。

 なんであんなに重そうな袋を担いで軽やかに歩けるのだろう・・・

 

 しばらく歩いていると少し開けたところに、吉野遙が曲がって行く。

 

 桜の木の影に一瞬入って――

()()()()()

 

 あたしは慌てて追いかけるがそこには誰もいない。

 見逃した事に焦っていると、行きなり語りかけられる。

 

「何か御用かな? 可愛いお嬢さん」

 

 斜め上の方から声が聞えてきて、慌てて振り向く。

 桜の木の枝の上で幹に手を軽く付き、軽い微笑を浮かべている。

 気持のいい風が、吉野遙の長い髪を靡かせ、黒い髪と薄紅色の桜が独特のコントラストを描き不覚にも綺麗と思ってしまう。

 

 奇しくもそれはあたしの憧れであるアリア先輩とあたしの始めての会話のシーンとそっくりだった。

 

「なんてな!」

 

 冗談のように最初に言った言葉に添えるように。

 稀にライカが浮かべるようなイタズラ小僧のような笑みを浮べてそう言った。

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