ライカと麒麟ちゃんが
あかりちゃんの基礎体力アップと、ライカの尾行看破スキルの特訓につきあっていた。
まぁ、ライカに俺の尾行をさせて1つ1つ解説しているだけだが・・・
そして現在・・・
「・・・ひ、人前で喋るのが苦手だからって、なぜこんな仕事を・・・」
ガチガチに緊張して今にも吐きそうな顔色をしている美咲と一緒に廊下を歩いている。
「大丈夫だよ、仕事って言っても1クラスだけだろ? すぐにすむんだから早く済ませて昼飯食べようぜ!」
今回、
俺は今日、昼飯を美咲と食べようと美咲のとこに行ってみると今回の事が発覚。俺は美咲が少し心配だったのと、美咲の成長振りを確かめるべくついて来た次第だ。
「一応俺も教室の外にいるんだからそこまで怖い事ないだろ?」
「は、はい・・・」
そんな訳で俺達は1年A組の前に到着した。
よく見たらライカとかあかりちゃんとか居るじゃん・・・
「俺はここで待ってるから行ってきな!」
「は、はい・・・い、行ってきます・・・」
美咲は自分で強めにドアを開け、その音にビビって両目が隠れるほど長い前髪を揺らしてキョロキョロと辺りを見渡す。
おそらく強くドアを開けたのは緊張により意気込みすぎたと言う事だろう。
ウサギだ・・・飼い始めたばかりの頃のウサギだ・・・
そのままクリップボードを抱っこしながら身を縮めて入っていく。
そしてガチガチの状態で教卓についた美咲は、前髪で班武隠れたメガネを光らせ、
「こ、
裏返ったり掠れたりのおっかなびっくりな声で、クラス中にそう告げる。
普通の学校なら舐められるだろうがここは武偵高。
基本的に卒業すればそのまま社会に出る人間が大半のこの世界では、在籍中に縦社会の厳しさを叩きこまれる。
ゆえにどれだけ弱そうでも、どれだけだらしのない相手でも失礼は許されない。
だから、美咲みたいな臆病な人間の言葉でもちゃんと背筋を伸ばし、真面目に話を聞く。
「こ、こ、このクラス、は!
記載された文章を読みあげる美咲。アナウンスやオペレータをするよう学科なのにその喋りは吃音気味で聞き取りづらかった。
中空知美咲のあがり症克服レポート31
1クラス分の人間の前で記載された文章の音読。
吃音が5回 余計な区切が4回 言葉のかすれ、強弱の乱れ7割強 以後改善の余地アリ。
克服にはまだ時間が掛かる模様。
「かったるい・・・」
軽くため息をつく。
美咲は教卓にプリントの束を置いてヨロヨロと出てくる。
「お疲れさん、さっさと行こうぜ!」
「は、はい・・・」
と言うわけで俺達は屋上で昼飯を食べたのだった。
次の日、俺は自分の寮の部屋でナイフを砥いで居た。
指先で軽く刃に触れてみると、予想以上の切れ味で少し深めに指先が切れる。
「痛ッ・・」
指先の切り傷から、肉体が思い出したかの様に送れて傷口から血が溢れ出てくる。
これが嫌でも自分が生きてるって事を俺に分からせて来る。
俺は軽く舌打ちすると、ベットの下においておいた救急箱から止血剤と絆創膏を取り出す。
気が緩んでるな・・・
軽く手当てをしながら考える。
つい先日後輩に指摘した事をできてないとは我ながら情けなくなってくる。
気を引き締めないとな・・・
「かったるい・・・」
その時電話が掛かってくる。
誰だよこんな時に・・・
ベットの上に放置してた携帯を取り電話に出る。
「もしもし・・・」
『ハルハル! 今日暇だったりする?』
「別に用事はないけど・・・」
『じゃ、1時間後に白金高輪駅に来て!』
「行くとは一言も言ってないんだがな・・・」
『いいじゃん別に! 今日の夕飯奢ったげるからさぁー!』
「たっく、1時間後に白金高輪駅だな?」
『うん! なんだかんだ理子のお願い聞いてくれるからハルハル大好き!』
「はいはい、俺も休日になんだかんだ誘ってくれる理子が大好きだよ・・・」
電話を切ると、携帯をベットの上に放り投げる。
頭を掻くと、部屋着を脱ぎ捨て、部屋に掛けてあったYシャツとジーパン、黒いジャケットに着替える。
いつものS&Wとサバイバルナイフをベルトに挟み、オリジナルの手裏剣6枚とフックショットをウエストポーチにしまい装着する。
「行くか・・・」
ベットの上の携帯と財布を取りポケットに入れると、キンジに出かける事を伝えて寮を出た。
電車に暫く揺られ白金高輪駅についた俺は、改札を抜けた先の柱に凭れ掛かり理子を待っていた。
少し早く着き過ぎたが、遅れるよりは良いと思っていたが・・・
「暇すぎてかったるい・・・小説でも持ってくればよかった・・・」
近くの自販機で買った缶ジュースを啜りながらぼやく。
て言うかなんで俺が呼ばれたのかも不明なんだよな・・・・
「吉野先輩?」
「えっ?」
声を掛けられて振り返ってみるとそこには見知った顔があった。
「あかりちゃん? ライカに麒麟ちゃんも・・・」
そこには見慣れた後輩達の顔があった。
なんで休日なのにみんな制服なんだ?
「どうしたんですかこんなところで?」
「とある馬鹿を待ってるんだけど、ちょっと早く来すぎてな・・・」
ため息をつき、頭を掻く。
その時――
「あっ、いたいたお姉ちゃん!」
見覚えのある顔がこちらに向かってくる。
ああ、これが見たかった。
俺は、助けた人達が笑って居られる日常を見たいから、だから俺は戦うんだ。
武偵でも救済者願望でもなく、それが俺の原点だ。
「あ,あの時の・・・!」
「やあ、久し振りだね間宮さん」
間宮ののか
数日振りに見た彼女は、犯罪者や、俺みたいな人間とは縁が無さそうな日常を謳歌しているようだった。
「ののか、吉野先輩のこと知ってるの!?」
「うん、この前助けてもらったの!」
「そうなんですか!?」
「さてはて、どうだったか・・・おじさん最近物忘れが酷いからなー」
二ヒヒと笑って言ってやる。
改めて見てみるとこの子達、姉妹だけあってやっぱり似てるなぁ・・・・
「ところで、そっちはどうしてこんな所に?」
「
俺の問いにライカが応える。
このメンバーで合宿てことはこの間のラクーン台場に居たあの黒髪の彼女の家だろう。
「なるほどな、合宿も良いけど気を抜きすぎるなよ! 友達の家って自分で思っているより気が抜けるもんなんだから!」
「「はい!」」「はいですの!」
「よし! 言い返事だ!」
そうして俺は彼女達を見送ったのだった。
あかりちゃん達を見送って数十分後。
俺は飲みきった缶ジュースの缶を、人差し指の先でボール回しの要領で直立に回し遊んでいた。
「待ち人来ないか・・・かったるい・・・」
今年の初詣の時に引いたおみくじの内容を思い出し、ため息をつく。
本当に俺って女運が悪いみたいだ・・・
そろそろ1時間のはずなんだけどな・・・
「だ~れだ!?」
缶を捨てようと凭れていた柱から離れようとした瞬間、そんな声と共に視界がふさがれる。
そして俺は・・・
「あ、藍田さん・・・?」
「だ、誰それ・・・?」
「多分とある学校で女子バスケ部に所属してる小学生、おそらく高飛車な正確だと思う」
「それ本気で言ってる?」
「俺は冗談をいう時も本気だ。って訳でいい加減離せ理子」
そこで俺の視界が晴れる。
少しため息をつきながら振り返る。
「で? なんで俺を呼び出したんだコラ?」
そこには何故か、いつもの改造制服を着た、大きなバックを持った理子がいた。
外出時は制服着用と言う校則を
「ハルハルなんかご機嫌斜め? オコなの?」
「別に・・・ちょっと気が緩んでたから気を引き締め直しただけだ」
俺は飲み干した缶ジュースの缶を近くの自販機の横にある、缶瓶専用のゴミ箱に投げ込む。
缶はぶつかる事なくゴミ箱の穴に正確に入っていった。
「そろそろ俺を呼んだ訳を聞かせろよ、俺がブチギレた上でお前に傷害罪じみたセクハラしだすぞ?」
「そ、それはちょっとご勘弁願いたいかも・・・こないだハルハルとラクーン台場に行った時助けたあの子たちに
「それでなんで俺なんだ?」
「理子じゃ戦略と対策しかしてあげられないもん! 純粋な戦力アップはハルハルの方が得意でしょ?」
「人に物教えるのが得意じゃないんだけどな・・・」
「と言う訳で、はい!」
と言いなら俺にバックを差し出す理子。
俺はそれを受け取らず・・・
「何のつもりだコラ」
軽く見るだけでもわかるが、このバックは嫌がらせだろう。
何故ならこのバック、男が持つにはちょっと躊躇うほどにまっピンクだからだ。
それだけなら良い、なぜフリルにビーズでデコッてんだコイツ!!
「みんなの特訓に良さそうな道具用意しておいたんだ~! ハルハルなら使いこなせるでしょ?」
バックを受け取り中身を確認してみる。
中には、手足のプロテクターとモデルガン、小太刀竹刀が入っていた。
なんと言うか・・・
「二刀流用の小太刀竹刀を単体で渡してくる奴なんて始めて見たぜ・・・」
そしてバックを受け取ったからには返品不可だろう。
そう、これが・・・
「かったるいと言う奴だ・・・」
バックを右肩に担ぐとため息を付きながらそう呟く。
「じゃ! 行こハルハル!」
「はいはい・・・」
~side 間宮あかり~
夕食後、あたしたちは佐々木邸のオーディオルームに集っていた。
部屋の壁には大きなスクリーンがあり、メイドさんたちが手際よく資料を投影させてくれた。
それを司会役の志乃ちゃんが読み上げる。
「
続いてスクリーンには毒虫である、『蜂』と『蜘蛛』のイラストが表示される。
「間宮班、高千穂班はそれぞれ『蜂』と『蜘蛛』の描かれた攻撃フラッグを持ちます」
蜂と蜘蛛のイラストの下にそれぞれ4人ずつの人型のマークが現れる。
そのてには、それぞれの班のマークが描かれた小旗を持っていた。
あたしたちは蜂で、相手の高千穂さんたちが蜘蛛の旗だ。
「双方が守るべきフラッグもあり、それには『目』が描かれています」
フィールドの沿う方の陣地に、目の描かれた旗が大きく表示される。
「――目を毒虫に刺されたら負け、って意味だね?」
あたしの言葉に志乃ちゃんは『そうです』と頷く。
「アタシ達はハチかぁ」
「うひぃー、蜂はキライですの!」
ライカの声を聞き、麒麟ちゃんは可愛く悲鳴を上げる。
続いてプロジェクタースクリーンには、ほぼ正方形の地図が表示された。
「試験場は武偵高第11区全体で、区内に有るものは何を使ってもOKです。間宮班は南端、高千穂班は北端からスタートします」
11区の地図を見ると間宮班は公園の敷地内、高千穂班は工事現場の敷地内にそれぞれスタート地点があった。
つまりこっちは公園が、向こうは工事現場が陣地になると言うわけだ。
「基本ルールは――以上」
指示棒を下ろし、志乃ちゃんは説明を終える。
「シンプルだねぇ」
「だな」
アタシの呟きにライカも同意する。
だが麒麟ちゃんはこの説明を聞いてもシリアスな顔を浮かべている。
この場で最年少の麒麟ちゃんは、この中で最もこの戦いの深い意味を見抜いているようだ。
「・・・でも、隠匿・強襲・逃げ足・チームワークいろんな能力が試されますわね」
目の旗を隠す。守る。持って逃げる。
それを見つけ出す。攻める。旗を追いかける。
争奪戦には、守り手も攻め手もチームワークが要される。
そしてもちろん、この協議は武器による攻撃がアリ。
旗に接近された、或るいは接近した場合は、チームの線応力も問われる。
それに気付いた麒麟ちゃんを褒めるように――
「――その通り! さっすがりんりん、あたしの教え子だぁー!」
オーディオルームに、弾むような声が響き渡る。
その声に振り向くと――
「
「吉野先輩!?」「理子お姉様!」
先輩と思しきセーラー服の女子がいて、彼女の方へと麒麟が飛びついていった。
「ご紹介しますわ! 私の元
「そんなお姉様の無茶振りに応える健気なおじさん吉野遙でーす!」
吉野先輩は見るからにやけくそと言った様子で自己紹介するのだった。