緋弾のアリア 黒の武偵   作:エイト☆5

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第19弾 ライカと何してたって? それは内緒・・・ 麒麟ちゃん嘘だからそんなに睨まないで・・・グホッ!!

 俺達は佐々木邸の庭に集り、特訓の準備をしていた。

 ただ、俺は彼女たちの特訓に付き合うだけのお人好しじゃない。

 俺はウエストポーチに以前から収納していた、フックショットの製作者が送って来ていた最新型のウェイトを取りだす。

 脹脛と前腕の素肌全体にジェル状のパッドを貼り付け、その上にマジックテープで装着する。

 パッド自体が重く、1つ3キロほどあり、多少動くだけでもかなりの負荷だ。

 そしてこのウェイトは更に別の機能がある。

 このウェイトは、ダイヤルを調整すると電流が流れ、自動的に装着者の筋肉を一定のタイミングで伸縮させ負荷を与え続ける機能がある。

 試しに右手のウェイトのダイヤルを1つ変えてみると・・・

 

「うおっ!?」

 

 電流が強すぎ、開いていた右手を握りかける。

 製作者曰く「腕立てがダルイ奴が装着したら健康的になれる程度だから」だそうだが――

 

 腕立てダルイ奴がこんなのしたら最低1週間は筋肉痛だっての!! 

 

 電流はあろう事か、市販で売られている筋肉増強用の電流パッドの電流を軽く超えていた。

 てかこれ絶対に特許取れねーだろ・・・

 ウェイトの上から理子が持ってきたプロテクターを装着し、捲くっていた服を下ろす。

 これで、格闘したとしても怪我しないだろう。

 

「さて、やるか・・・」

 

 準備が終わり、その場から立ち上がり辺りを見渡す。

 理子は何故か竹刀の鍔にリボンを結んだ物で指導しているが、キャラのせいで場が、良い意味で言うと明るく、悪い意味で言うと少し締りが足りない雰囲気だ。

 

 佐々木さんは、愛沢姉妹対策として、佐々木家の双子メイドと戦っている。

 何故か剣道の防具を来て木刀だが・・・

 

 あの防具ってそこまで耐久力あったけ? 

 対する双子は、2人とも2本ずつ木刀を持って折り、計4本の木刀を佐々木さんは一本の木刀で捌いている。

 

 そこから右を見ると、ライカと麒麟ちゃんの特訓が行われている。

 組み手のようだが、相手の死角に潜りこむ諜報科(レザド)対策か、目隠しをした状態で一切攻撃なしの防御主体の訓練になっている。

 ライカは両腕で顔面をがっちり守り、ボクシングのピーカブースタイルで麒麟ちゃんの攻撃をガードし続けことしかできない。

 対する麒麟ちゃんは、手刀や掌底でライカに打撃を叩き込み続ける。

 

 1番強い奴ほど最大の防御力になるという考え方なのだろう。

 だが、この訓練は軽い攻撃でも、何十発と食らっていればきつくなって来る結構ハードな訓練だ。

 そして麒麟ちゃんは、特殊な状況における諜報活動に特化した学科の人間であり、普段から戦闘の訓練をしない最低限の防衛力だけしか身に付けていない。

 故に、すでに体力が尽きてしまっている。

 

 そして庭の片隅の方を見ると――

 

「な、な、なんであたしだけこんなのなんですかー!」

 

 あかりちゃんは、健康器具の乗馬マシーンに跨がらされた状態で、不満の声を叫ぶ。

 

 ごめんあかりちゃん。俺もこれの意味は一切分からないよ・・・

 

 確かに体感は鍛えられるが、そんな不安定な場所で戦う状況なんてこの対決ではないはずだが・・・

 まぁ、理子の考える事なんて凡人の俺には測れるところではないから、考えるだけ無駄だろう。

 

 とりあえず最初は・・・

 

「ライカ! カモーン!」

「はい!」

 

 

 


 

 

 ~side 火野ライカ~

 

 アタシ達は室内の方に移動し、おそらく普段食堂だろう部屋に来ていた。

 

「さて、まずライカに覚えてもらうのは、感覚を研ぎ澄まし視覚情報以外の部分で視覚を補う技術をおぼえてもらう」

「はい!」

「とり合えずは、その目隠しを貸してもらえるか? まず俺がどう言う物なのか実践して体感してもらう」

「わかりました!」

 

 アタシは目隠しの布を外して手渡す。

 遙先輩はそれを受け取り、眼を瞑り目隠しで蓋をするようにきつく結ぶ。

 

「よし! いいぞ、全力で来い!」

「じゃ! 遠慮無くッ!!」

 

 アタシは遙先輩に言われた通り、全力で右拳で顔面を狙って殴り掛かる。

 それを遙先輩は、見えているかのように左に避け、カウンター気味に右肩に拳をぶつけて来る。

 

「クッ・・・!」

 

 少しよろけるも、そのまま左足でミドルキックを出す。

 だが、これも右腕でガードされる。

 そして、その足を左手で掴まれ勢いよく引っ張られる。

 

「なっ!?」

 

 予想もしていない行動に、アタシは当然反応できず、右足を払われる。

 そのまま右手で左胸を押され、左手で右肩を掴まれたと思った瞬間――

 

「ラッアァ!!」

 

 アタシの背中は完全に床につき、吉野先輩はアタシを押し倒していた。

 アタシの胸を鷲掴みする形で・・・

 

「~~~~ッ!!」

 

 目隠しをしているとは言えかなり顔が近く、遙先輩の吐息の1つ1つが感じられる程の距離しかない。

 

 熱い。

 自分の顔が熱くなっていくのがわかる。

 これは、恥ずかしいとかそう言うレベルの問題じゃない。

 

「取り合えず、ライカにはこれからこれ位はできる様になって――」

 

 遙先輩は、そう言いながら目隠しを外そうとして――

 固まった。

 

「・・・・・・」

 

 遙先輩の顔はみるみると青くなっていく。

 そして、確認するかのように、吉野先輩はアタシの胸を揉む。

 

「――ッ!!」

 

 それがトリガーになったように今度は、土煙色に顔色が変わり――

 

「すいませんでしたッ!!」

 

 いきなり飛び退き、それは綺麗な土下座をしていた。

 

「ちょ、や、やめてください遙先輩! アタシは気にしてませんから!」

「いや、それでも麒麟ちゃんと言う伴侶がいるお前に、俺はとんでもない事をした。謝らせてくれ」

 

 はっ、伴侶!? 

 

「麒麟はそんなんじゃないです! とりあえず頭を上げてください!」

 

 ほんとに、遙先輩は変なところで律儀だなぁ・・・

 ここまで言ってやっと、遙先輩は顔を上げる。

 

「とにかく、事故はあったがライカにはあれ位の動きができるようになってもらう」

「はい!」

 

 吉野先輩は、立ち上がると外し掛けだった目隠しを取り手渡してくる。

 

「次はお前の番だ。ちゃんと学ぶんだぞ」

 

 目隠しの布を持った手をアタシに差し出してくる。

 アタシは遙先輩の手にある目隠しを取ろうとした瞬間。

 遙先輩はアタシの手を取り、アタシを引っ張りあげる。

 

「さて、やるか!」

 

 アタシは、きつく目隠しを締めファイティングポーズを取る。

 目隠しのせいで視覚情報が一切カットされ、予想以上の恐怖が襲い掛かって来る。

 

「視覚情報が一切起動しないのなら聴覚を使え、視覚情報の次に感覚が鋭いのが聴覚だ。それを使えば大雑把な位置までは掴めるはずだ」

「ッ!?」

 

 その声は、気付けばアタシの後ろから声が聞こえてくる。

 アタシはその声の方に振り向く。

 だけど、少し立ってもぜんぜん攻撃の気配が無い。

 どう言う事だと思っていたその時――

 

 フゥ~

 

「――ッ!?」

 

 背後から首筋に息を吹きかけられ、その場から飛び退く。

 今、凄いゾクッと来た・・・

 

「初心者は聴覚による空間把握は限度がある。だから触覚による僅かな振動や空気の乱れも探れ、それができたら・・・」

 

 その時、足元に僅かな振動を感じた。

 その振動の方に向かって走り、右足で前蹴りを出す。

 その蹴りはそこまで大きな期待はしていなかったが、右足には確かな感触があった。

 

「良いぞ! その感覚をもっと研ぎ澄ませば実践レベルで言うなら及第点だ」

「はい!」

 

 遙先輩が離れて行く感覚の後、急に額を指先で押された。

 アタシは少しよろけて後ろに下がる。

 

「ただ、この状態は急ごしらえのその場凌ぎの為の物だ。視覚障害者や目を潰されて何年も立った人間のように完全に把握できる訳じゃない。だから視覚が使えない状態で戦うのなら一撃で確実に倒すか、組み合いに持ち込み相手の体の動きを把握できる様にしておけ」

「はい!」

 

 その後、しばらく特訓を続けた後で次の奴に変わったのだった。

 

 

 


 

 

 ~side 吉野遙~

 

 今目の前にいる麒麟ちゃんは俺を睨んでいる。

 て言うか、この部屋にくるまでに腹に一発結構良いの貰ってしまった。

 

「まっ、ぐちゃぐちゃ言っててもしょうがない。やるか!」

「はいですの」

 

 取り合えず、話そうと思ってた事を言葉を選びながら話しだす。

 

「君はこのチームの司令塔だ。君はこのチームにおける要、それと同時にこのチームの最大の弱点でもある。狙われるとしたら多分君が1番狙われる。そしてその状況で1番最悪な展開が何かわかるかい?」

 

 俺は麒麟ちゃんに質問する。

 俺の教育的方針は『自分で考え自分で行動する』だ。

 武偵憲章と被るが、教えられた答えと自分で導き出した事えは本質が違うと言うのが俺の持論であり、その結果自分自身で行動するか人を使いやらせるのかは本人次第。

 その結果含めてその人の答えだというのが俺の考え方だ。

 故に俺は基本的に重要では無い場合や、逆にかなりの緊急時以外は情報は与えても、答えは与えないようにしている。

 そして麒麟ちゃんは、俺の質問に答えを出した。

 

「人質、ですの?」

「正解! ちなみにそれがどうして最悪かわかる?」

「お姉様達の性格上、人質を第一に考え行動すると思います。その性質上受身に回り反撃もできずに全滅してしまう可能性が高いかと思いますの」

「そう、俺もまったく同じ考えだ。それに武偵は現地の人間や他の武偵との連携も重要になって来るが、人によっては人質を犠牲にする奴だって中にはいる。それが同業者だとわかれば優先度が落ちるのもよくある事だ。そして君は基本的に人質に取られやすい立場の人間だ。ここまではいい?」

「はいですの」

「今回特訓するのは、人質に取られたときの対処法だ。だけど勘違いして欲しくないのは、教えるのは飽くまで自衛方法であって攻撃方法じゃない。もし掴まった状態で他に人質がいたとして君だけが犯人を無力化できたのなら、他の人質を救うために犯人達と戦おうとは思わないでくれ。たとえ誰かが犠牲になっても人命が優先だ。たとえ同業者だろうとそれは変わらない。自衛能力しかないのに無理に戦おうとすれば被害が増すだけだ。そんな事になるくらいなら情報を持ち帰ってきてくれるだけ100倍マシだ」

「了解ですの!」

 

 取り合えずは俺の話しは理解してくれたようだ。

 後は実際に行動してみるしか無いだろう。

 

「まっ、実際にやってみようか。俺が犯人で麒麟ちゃんが人質、犯人が直接人質を拘束しているって状況で始めようか」

「はいですの!」

 

 俺は麒麟ちゃんの後ろに回り、右腕で軽く首を締めるように拘束し、理子の持ってきたモデルガンを左手で麒麟ちゃんのこめかみに添える。

 麒麟ちゃんと密着する事によって、麒麟ちゃんから少し甘い香りが漂って来る。

 その匂いはなんと言うか、俺の好きなお菓子の様な匂いだ。

 そんな思考を振り払い、今のやるべき事に意識を戻す。

 

「麒麟ちゃん大丈夫そう?」

「はいですの」

「実際はもっときつく締められれることを想定しておいて、まずは締められてる腕を少しだけ崩し息を吸い込む」

 

 麒麟ちゃんは俺が閉めている腕を前に引っ張り、呼吸に楽な程度のスペースを作る。

 人質を取る犯人は基本、脅しや牽制が目的であり、反抗すると危険だが苦しんでるそぶりや多少抵抗する程度なら犯人からすれば、自分より弱い相手を捕まえていると言う主張ができるので犯人達からはそれについて危害を加えられるの可能性は低い。

 

「多少息ができたら、次に銃を自分から引き剥がして遠ざける。このときの注意は無力化のために使う腕とは逆の手で銃を掴む事。そして相手が銃を持っている方の手と同じ方の手で無力化する事。そうじゃないと振り返る時に手間取り最悪の場合君が無力化される。無力化は速度が命だ。タイミングを見て素早く的確にする事を心がけておいて」

「了解ですの!」

「後は鳩尾や顎、こめかみを打ち抜けば油断している奴は無力化できる。ただし確実に相手が油断している状況である事が前提だ。そしてやるなら相手の意識が確実に無くなるまでやる事、それと無力化したらできるなら拘束しておく事だ」

 

 説明した事により少し気が抜けた瞬間、いや油断したその一瞬――

 

 ズダンッ!! 

 

 俺は背中から床に叩きつけられていた。

 

 て言うか! 大理石!! 

 油断して他からモロに入った・・・

 

「こう言う事ですの?」

 

 麒麟ちゃんはあどけない笑顔が少し怖かった。

 そして俺は搾り出すように・・・

 

「ナイス、一本背負い・・・」

 

 俺はそこで意識が途切れたのだった。

 

 

 


 

 

 数分後、痛い背中を庇いつつも取り合えず意識を取り戻した。

 本当に、女の子って怖いなと再確認させられたのと同時に、俺のトラウマが更新されていた。

 

「さっきの俺が教えたのは、君がやって見せた一本背負いの打撃バージョンだと思ってくれて良い。ただ投げ技は安定した技ではあるが確実性に不安が残る。そっちの方が得意なら投げ技を主体にしても良いと思う。だけど無力化しないといけない場面は必ず増えると思う。だから拘束している人間を無力化する。もっと直接的な事を言うなら相手の脳を確実に揺らしきる技を磨いておいて」

「はいですの!」

 

 そうして俺は麒麟ちゃんとの特訓を終えたのだった。

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