緋弾のアリア 黒の武偵   作:エイト☆5

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第21弾 みんなどれだけだけ強くなったか見学と行きましょうか!

 取り合えず、全員分の指導を終らせた俺は、何故かその後理子との組み手をする事になった。

 

 て言うか、理子の奴思ってた以上に強かったんですけど・・・

 電気パッド付きウェイトに、蹴り無しという条件付きとはいえ、強襲科(アサルト)のSランクが、探偵科(インケスタ)Aランク相手に攻め切るのにかなり掛かったのは地味にショックだった。

 

 中国拳法(クンフー)を使う事は知ってたがここまでとは思って無かった・・・

 そんな理子達は現在、特訓を終えて佐々木低のでかい風呂に入りに行った。

 そして、俺は何故か佐々木邸の外で理子が出てくるのを待っていた。

 

 特に外に出ていろとも言われてないし、俺自身特に外に用事も無かったのだが・・・

 なんとなく、風呂に入ると言う話しになって、なんとなく俺ここにいたら駄目だと思い、佐々木邸を出たのは覚えているが・・・

 ハッキリ言うとまったく佐々木邸を出た意味が分からない状態だ。

 

「かったるい・・・」

 

 ため息を付きながら何時もの様に呟く。

 気付けば日も完全に落ちて暗くなっているし、帰るのも面倒な時間になってきている。

 

 早く出てこねーかな理子の奴・・・こっちは筋肉痛がどえらい事になってるんだが・・・

 ウエストポーチに入っていた、市販の棒付きキャンディーを右手の指先で遊ばせつつ待っていると――

 

「お待たせハルハル~!」

「ったく、やっと出てきたか・・・待つのは男の甲斐性だとしても、待たせすぎると嫌われるぞ」

「もう! ハルハルってばデリカシーな~い!」

「はいはい分かりましたよ、かったるい・・・」

 

 棒付きキャンディーの包装を外し口に咥える。

 俺好みのイチゴミルク味に口の中が犯されていく。

 

 控えめに言って、幸せ・・・

 

「じゃ、帰るぞ理子」

「うー! らじゃー!」

 

 と言うわけで俺の休日出勤は、割に合わない安い晩飯が報酬で幕を閉じたのだった。

 

 

 


 

 

 4対4(カルテット)当日

 昼過ぎに俺は高千穂班と間宮班の陣地の中間地点近くを歩いていた。

 

「このへんで良いか・・・」

 

 適当に見つけたビルで今回の4対4(カルテット)を観戦する事に決める。

 左胸のホルスターからフックショットを取り出し、右手の袖口のベルトと繋げる。

 

「よし、行くか・・・」

 

 ビルの屋上にフックを射出し、屋上の柵に引っ掛ける。

 ワイヤーを巻き取り、屋上に引っ張られるように屋上に移動する。

 

 これ、客観的に見て大分シュールだよな・・・

 そんな事を考えながらも、屋上に到着する直前でフックショットを引き、屋上のフェンスを飛び越える。

 フックショットのベルトを外してホルスターに戻す。

 

「あら? 遙じゃない。あんたも見に来たの?」

 

 そこにはあかりちゃん達の試合を見に来たのか、アリアとレキがいた。

 と言うよりレキは結構強引に連れ回されていると言う感じだが・・・

 

「アリアにレキも、お前等も見に来てたのか」

 

 レキは無言でコクンと頷く。

 やっぱり喋ってくれないよな・・・

 

 

「あんたもあの子達を鍛えてくれたそうじゃない。やっぱり自分の鍛えた子達の事は気になるの?」

「いや、そこは全然気にして無い。ただあの子達の内いくつか気になる点があったから見に来ただけだ」

「それってやっぱりあかりの事?」

 

 アリアの口から、予想していた人物の名前が出てきた。

 やっぱりアリアも気付いていたか・・・

 

「あの子だけじゃないけどな。遠目だったから確信は持てないけど知ってる技に似てたからチャンスがあれば確認しようと思ってな」

「ふーん・・・」

 

 ズボンのポケットから単眼鏡を取り出し、開始前の集合地点を見てみる。

 高千穂班と間宮班の面々が、ブランドスーツにネクタイを締めメガネを掛けた、細身で挑発の美青年の教師にルール説明をされているようだ。

 

「小夜鳴か・・・また面倒くさい奴が出て来やがったな・・・」

 

 小夜鳴(さよなき)(とおる)

 東京武偵高の救護科(アンビュラス)の非常勤講師で、誰に対しても敬語で話す武偵高では珍しい礼儀正しい人物。

 女子からの人気が高く、一部の男子からは嫉妬の目で見られている。

 ただ、どことなく胡散臭さがあり、俺の軽い殺気をやんわりと受け流したり、本人に少しだけ踏み込んだ質問をしても逃げられるなど、得体の知れなさがあって俺は少し警戒している人物だ。

 

 おそらく奴が監督しているなら多少の不正やイチャモンを付けても意味ないだろう。

 

「となると、やっぱり純粋な実力押ししかないか・・・」

 

 ただ、あかりちゃん達は以前、高千穂班の面々に1分足らずで負けたと言っていた。

 そして、ランクも戦闘系の学科を受けている人数も向こうの方が上だ。

 つまりあかりちゃん達が勝てるとするのなら、この短期間に教えた技術をどこまで習得しているかと、その場その場での機転を利かせられるかだろう。

 

「はてさて、お手並み拝見と行きますか・・・!」

 

 

 


 

 

 ~side 間宮あかり~

 

 4対4(カルテット)が始まり、あたしは志乃ちゃんと共に、ライカ達と分かれ高千穂班の陣地である工場地帯に向かうべく、11区のかなり見通しの良い大通りに差し掛かる。

 この大通りは高千穂班の陣地があるフィールド上の北側であり、高千穂班からするとここは絶好の防衛ラインだろう。

 

「奥に行くには、この先の通りを通るしかありません。待ち伏せ(アンブッシュ)に注意して下さい」

「うん」

 

 今まで以上に警戒しつつ、志乃ちゃんの先導で目的地に少しずつ近づいて行く。

 4対4(カルテット)だからと言ってフィールドエリアは封鎖されていない。

 むしろ、一般的日常を舞台にした模擬戦だから、周りの店も通常営業であり、武偵高の生徒も一般人も普通に行き来している。

 

「あははは」

「だよねー」

 

 女の子向けのカジュアル衣料店からは、武偵校のセーラー服を来た女子2人が楽しげに笑いながら出てくる。

 最近増えつつあるハイブリッド車が、片側2車線の道を静かに通り過ぎていく。

 何もかも、日常の風景なのだが――

 

(いつもの町なのに、不気味に見える・・・)

 

 疑心暗鬼とはよく言ったもの。ここが敵地と思うと、町のあちこちに敵が潜んでいるような気がしてくる。

 駐車している車の裏に潜んでいるかもしれない。建物の窓や屋上から狙撃してくるかもしれない。

 そう思うとあたしは――

 

(感じる。あたしに向けられる視線が・・・)

 

 先ほどの2人組みの明るい女子生徒の隣を通過しようとしたその時――

 

(殺気ッ!!)

 

 通り過ぎると同時に、感じた殺気から逃げるように前方倒立回転跳びで前に移動し振り向く。

 

「「なっ!?」」

 

 振り向くと先ほどの2人の女子生徒は、カツラを外して同時にローキックを放とうとしてた様で、あたしが避けた事で空振りしたようだ。

 その2人の顔は・・・

 

(愛沢姉妹!?)

 

 正体を現した愛沢姉妹に、あたしは太腿のホルスターからUZIを引き抜こうとしたその時――

 

「あかりさん!!」

 

 志乃ちゃんの声が後ろからしたと思った瞬間、志乃ちゃんはあたしと愛沢姉妹との間に割り込む。

 いや、より正確に言うなら――

 

 志乃ちゃんは愛沢姉妹を真後ろに引き倒してた。

 

(ランニング・ネックブリーカー・ドロップ!?)

 

 ランニング・ネックブリーカー・ドロップとは、とあるプロレス技で、相手の首にラリアット気味に腕を引っ掛け、駆け抜ける力を利用して相手を後ろに引き倒すと言う荒業である。

 少なくとも高校生が使う技ではない。

 間違ってもスカートを穿いた女子が使ってもいい技ではない。

 そして、そのまま湯湯さんをスピニング・トーホールド――倒れた相手の足を自分は立ったまロックする関節技で封じる。

 

「2対1は、特訓してきました!」

 

 更に、志乃ちゃんは夜夜さんに鎖分銅を投げ拘束する。

 峰先輩の特訓と吉野先輩の個人指導の成果か、以前より技のキレが増し、2対1でも余裕を持って愛沢姉妹の自由を奪って見せた。

 

「ここは私に任せて、先へ!」

 

 あたしは一瞬、志乃ちゃんと残るべきかと考えたが、次の言葉でこの考えも霧散した。

 

「勝ちましょう!」

 

 志乃ちゃんは勝気な笑顔を浮かべて激励を飛ばしてくれる。

 その顔を見た瞬間――

 ここは任せて大丈夫、いや、志乃ちゃんに任せるべきだと言う気持ちが固まる。

 

「・・・!」

 

 あたしは志乃ちゃんに頷き返すと、北にある高千穂班の陣地へと。

 

 

 


 

 

 ~side 吉野遙~

 

 佐々木さんが愛沢姉妹を拘束し、あかりちゃんを先に行かせる。

 あかりちゃんも覚悟を決めたように頷き返し敵陣地に向って走っていく。

 

「良い判断だな」

「そうね、風魔がライカの方に行っているのはあの子達もわかるから、志乃が愛沢姉妹を相手してる状態なら高千穂班の陣地には高千穂本人しか居ないから1対1に持ち込めるのはわかるけど、高千穂の方があかりよりランクが上だから普通に負ける確率の方が高いんじゃない?」

 

 確かにアリアの言う事はもっともだ。

 俺もあの子達の特訓に参加していなかったらアリアと同じ意見だっただろう。

 

「確かにランク的な意味では負けてるけどランク=実力じゃない。それに最低ランクのあかりちゃんなら高飛車な高千穂の油断を誘える可能性がある。理子の特訓は俺が見ても意味がわからなかったがあいつなら無駄な事を教える事はないし、俺が教えたのは監視の可能性がある佐々木邸の庭ではなく佐々木邸の室内だ。佐々木と高千穂は家柄的に対立しているから室内の監視、盗聴の恐れはほぼ無いと言っていい。だからあかりちゃんは高千穂の知らない切り札を持ってる事になる」

 

 もちろん、高千穂が油断するかしないかで成功率も変わるし、挑発されたあかりちゃんが冷静さをなくして攻撃をしだしたら負ける確率もある。

 けど、実戦形式の訓練なのだからそれも良いのかもしれないが・・・

 

「それならあかりも一緒に愛沢姉妹を倒してから志乃と一緒に行った方が良かったんじゃない? もっと言うならあかりと志乃の立場を逆にしたって・・・」

「それは逆に、2対1を想定した訓練をしてたのが佐々木さんだけだからな、あかりちゃんが入った事で佐々木さんのテンポが崩れると逆にやられる可能性が出てくる。そして、佐々木さんの武器はサーベルや日本刀が基本。銃を持つ事が少ないらしいから相手が近接戦ではなく遠距離戦を挑んで来たら佐々木さんにほぼ勝ち目はない」

 

 基本的に剣の強みは、間合いに入った者に対する素手以上に速く、致命的な攻撃を与えられる点であり、懐に入ってきた物を撃退できるところにある。

 だが基本的に剣の間合いは、腕のリーチ+剣のリーチ+一瞬で詰めれる距離であり、当たれば必殺という考えのもと作られているのに対し、銃は腕の長さ+火薬量であり、火薬量=速度にもなる。

 詰まり、銃とは剣よりも長大なリーチから、剣と同等からそれ以上の速度で攻撃し、そのうえ、剣とほぼ変わらない致命傷を与えられる武器であり、剣より銃が強いのは明白である。

 

「対してあかりちゃんの獲物は短機関銃(サブマシンガン)のマイクロUZI、命中率こそ良くないが銃撃戦において獲物を投げるか、俺みたいに無理矢理弾を避ける戦闘法しかない佐々木さんより、弾丸ばら撒いて弾幕張れるあかりちゃんの方が勝率が上がる。逆に佐々木さんは高千穂の居場所まで行くあかりちゃんの護衛役として付いて行き、銃撃戦より近接を選んだ愛沢姉妹の方が佐々木さんの実力は活かせるってこと」

「なるほどね・・・」

 

 ただ、やはりあかりちゃん1人で高千穂と戦うのは得策とは思えない。

 特に時間制限があるわけではないから仲間の到着を待つべきではあるが、仲間がやられる可能性があるし、合流できたところで2人同時にやられてしまうかもしれない。

 全ては神のみぞ知ると言う事か・・・

 

「まっ、問題はあかりちゃん達だけじゃないんだが・・・」

 

 俺は単眼鏡を間宮班の陣地に向け直した。

 

 

 


 

 

 ~side 火野ライカ~

 

 アタシは耳に装着したヘッドセットで、あかりからの状況報告を受け取る。

 あかりの情報によると、あかり達は愛沢姉妹と遭遇し、志乃と姉妹が交戦中。あかりは北側、詰まり高千穂班の陣地深部の侵入に成功した。

 状況としては、一進一退と言ったところか・・・

 

「お話を窺うに、愛沢姉妹の動きは遊撃的でしたわ」

 

 公園の林に陣取って、目のフラッグを一緒に守る麒麟が言う。

 愛沢姉妹が居たのは11区の南北を分ける道路近辺だったから、あかり達を待ち伏せてカウンターに転じようと言う作戦だったのだろう。

 となると、攻撃を姉妹に任せて守備を固める可能性もあるが、あの高千穂の攻撃的な正確を考えると、間違いなく守備的ではなく攻撃的に動くだろう。

 

「守備に最低一人は必要だから、あと一人攻撃手がいるな」

 

 高い木下でアタシは口に出しながら思考を巡らせる。

 

「――左様。それが、某に御座る」

 

 行き成り背後に感じた気配に肯定される。

 

「ッ!?」

 

 前に飛び退き振り返ると、木の上に逆さ吊りの状態でぶら下がっている風魔と目があった。

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