緋弾のアリア 黒の武偵   作:エイト☆5

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第26弾 大量のスポーツカーが相手だが、この資金はいったいどこから出てんだ?

 俺と電話越しのアリアの間に一瞬の静寂が訪れる。

 まぁ、こう言う反応されるだろうと思っていたが・・・

 

『あんたまさかとは思うけど、もしかして・・・』

「そのまさかだと思うぜ・・・」

 

 電話の向こうから呆れや悩みに近い感情を感じる。

 しょうがねーじゃん巻き込まれちまったんだから・・・

 

『とにかく分かったわ。あたし達が追いつくまでそっちは任せたわよ!』

「はいはい。なる早で応援よろしくな~」

 

 適当に救助を頼み電話を切る。

 そして、状況を確認し整理する。

 

 外にはオープンスポーツカーの赤いルノー。

 ルノーは座席は無人で、無人の座席には前回同様、短機関銃(サブマシンガン)のUZIが銃座に固定されている。

 撃って来るタイミングは携帯による音声と、他にも何か別のセンサーやカメラがあると見て良いだろう。

 バスには爆弾が仕掛けられており、減速すると爆発し、爆発の規模と設置場所は不明。

 乗客は20人未満で、ほぼ男女が半数に分かれるほどで、全員武偵校の生徒であり、民間人は運転手だけのようだ。

 強襲科(アサルト)所属の生徒は5、6人いるようで、他の生徒は戦闘系以外の学科の生徒ばかりのようだ。

 現在、バスは40キロから少しづつ加速を続け、ガソリンはまだ半分以上残っているから、ガソリン切れによる減速の心配は暫くは要らない。

 

「さて・・・ここからどうした物か・・・」

 

 俺がここでできる行動は多くない。

 1つは一か八かで攻撃に出る。

 1つはこのまま大人しくして応援を待つ。

 1つはこのバスのどこかにあると言う爆弾を探し解体、もしくは被害のでないよう処理する。

 1つは1人ずつどうにかこのバスから下ろして、被害者を少しでも減らし被害を抑える。

 

 俺が足りない頭をフルに使って考えついたのがこの4つだ。

 ただこの4つでもまだ足りない気がする。

 だから――

 

「みんなどうする? 攻撃する? 応援を待つ? それとも爆弾を探す?」

 

 判断が面倒くさいのでみんなに聞いてみる。

 俺より状況判断が旨い奴がいるとか、そう言う事では無く単純に面倒くさいから。

 

「攻撃だろッ!!」「攻撃一択だ!!」「攻撃以外ねーだろ!!」「攻撃しないでどうすんだ!?」「攻撃以外在りえねー!!」

 

 わおっ!! コイツ等スゲー攻撃的何だけど!? コイツ等馬鹿なの!? 脳みそが筋肉に侵されてるの!? 

 面倒だから聞いてみたが、まさか男子の半数が攻撃を選択するとは・・・

 しかも、周りの男子や女子達もどう行動したら良いのか分からない様で、いきなりの悲鳴に銃撃も重なったのでまだ少し混乱状態のようだ。

 

「じゃ、どうやって攻撃する?」

 

 自信満々に攻勢に出るという奴等に問いかける。

 何の案も無く、唯攻勢に出るという発言は聞くに堪えない。

 コイツ等には案があるのか? 

 

「もうすぐ行ったところにトンネルがある。トンネルに入る瞬間、画質補正切り替えのタイムラグが起きるはずだ。そこを複数で狙い撃ちにする。的もデカイしいける!!」

 

 確かにこう言った遠隔からの操作をする際は、視界をクリアにするためカメラを自動で画質補正をする事はある。

 だが、100%と言う訳ではない。

 人によっては画質をそのままにする事もあるし、そもそも通常のカメラを使う保証もない。

 

「ダメだ、不確定要素が多すぎるから認められねーよ」

「なんでだよ!! ビビってるのかよ吉野!!」

 

 同学年の強襲科(アサルト)の男子に詰め寄られる。

 周りの男子を見ても、口には出さないまでも同じような事を考えているのだろう事を、彼等の目が物語っていた。

 これが今の強襲科(アサルト)の生徒だと思うと泣けて来る。

 

「ビビってる? 本気で言ってるならお前等中等部からやり直せよ!」

 

 男子の顔色が険しくなるが構わず続ける。

 Sランク武偵を舐めているのか、吉野遙と言う人間を舐めているのか分からないが、個人的に一言言わないと気が済まない。

 

「武偵憲章5条 悲観論で備え、楽観論で行動せよ。これは遊びじゃない。実際に人が死ぬかもしれない。自分が命を落とすかもしれない。勝率なんて万全に備えたとしても5割から9割。それなのになんで考え過ぎなくらい考える事ができねーんだよ!! なんで命を守る為に思考する事ができねーんだよ!! ビビってる? 当たり前じゃねーか!! 生き残る為に思考しない、人命軽視の甚だしいお前等武偵が大嫌いだ!!」

 

 気が済むように思った事をぶちまける。

 正直、この点がこうだから駄目だと言うか、良いアイディアならそれに任せるつもりだったのだが・・・

 お粗末なアイディアに、自分の意見を反対されたら貶してくる根性。

 それが引き金になったのは疑う余地はないが、ここ最近のストレスも一緒に出た様で妙な満足感と言うか、達成感が確かにあった。

 

「お前等はもう何もするな。被害が増えるだけだからな」

 

 何か言いたげな男子にそれだけを伝えて、左手で右胸からM19を取り出す。

 ただ、相手は短機関銃(サブマシンガン)のUZIと、スポーツカーのルノー。

 完全に止めるには普通の弾丸じゃ手数で負け、当たり所が悪ければ大参事、何て事もありえる。

 故に、俺は初弾を残し全弾を試作型武偵弾に入れ替え、通常弾をズボンの右ポケットに押し込む。

 そして、武藤に短く耳打ちする。

 

「すぐにキンジとアリアが来る。外のルノーは俺が何とかするから武藤はもしもの時に運転できる様に備えててくれ」

「あ、ああ・・・けど大丈夫なのか? お前1人で・・・」

「俺を誰だと思ってんだ? みんなの憧れSランク武偵の吉野遙ちゃんだぞ! これくらいどうにかするさね」

 

 軽く武藤に手を振ると、近くの座席にベルトのワイヤーを打ち込む。

 見えてきたトンネルにバスが入るまで後5秒ほど。

 軽く息を吐き気分を落ち着かせる。

 

 4

 今までのふざけていた気持や周りの男子に対して吼えたときの気持を切り替える。

 

 3

 意識が戦闘思考になる中で自身が最適だと認識できる動きを頭の中でシュミレーションする。

 

 2

 バスの通路の中央で、バスの後尾に向けてM19を構える。

 

 1

 M19の引き金を引き、最後尾の窓ガラスが甲高い音を上げ割れていき、窓の外に散っていく。

 

 0

 俺の影がトンネルの影に隠れた瞬間、俺は外の光を追いかけるように走り出す。

 最後尾座席を足場に、割れた窓の外へと大きく飛び出した。

 

「ッ!!」

 

 張ってあった腰のワイヤーを右手で掴み力を込める。

 左手の親指でベルトのワイヤー射出ボタンを止めると、バスにワイヤーで繋がれた体は体の向きとは逆の方向に引っ張られる。

 飛び出した時の勢いも無くなりそのまま地面に着地するも、ワイヤーで繋がったままの体は引っ張られ、ワイヤーを掴んだ見てでバランスを取りながら体をバスの方へと向かせ、水上スキーのような体制になる。

 今、俺の体を支え、地面の上を滑る俺の靴は防弾防刃性を上げるため、靴底と靴底の間に柔軟性を持たせる仕込み付きの鉄板を挟んでいる。

 間違っても、気づいたら自分の足がミンチになっていたなんて事態にはならないだろう。

 

「!?」

 

 バスの方を見たとき、俺は驚愕させられた。

 先ほどの男子達が銃を構えて、バスの右側に並走して来てたルノーに向けていた。

 

「バカ!! やめ――」

 

 止めようと声を掛けた瞬間、ルノーに取り付けられたUZIが火を噴いた。

 バス全体に弾丸をばら撒くように乱射したUZIは、男子達を撃退し非好戦的だった生徒を牽制し戦闘意思を完全に断ったようだ。

 俺が男子達のアイディアを否定したのは、非戦闘系の学科の生徒と一般人の運転手もいたから作戦が失敗した時の被害を考えたからだ。

 なにが何でもこの事態を止めようと思ったが、全て無駄になってしまった。

 

「クソッ!!」

 

 まず1発目にルノーの左側の前輪に弾丸を撃ち込む。

 すると、ルノーの速度が一気に落ちて、俺の隣に並んだ。

 ルノーがとなりに並んだ瞬間、UZIの銃口にもう1発を撃ち込み追い越していく。

 ルノーは完全に停止し、UZIの弾丸も発射されなかった。

 

「よし! うまくいった!」

 

 俺が撃ち込んだ武偵弾は粘着弾(ホールド)と呼ばれる物だ。

 ある特殊な樹脂が使われており、着弾すると瞬間的に伸縮性と粘着力が高くなり1、2秒ほどで固まる。

 狭いとこに撃ち込めば瞬間的に伸縮性が撃ち込んだところ以外にも伸び粘着し、すぐに硬化するし強度も1発銃口に撃ち込めばスナイパーライフルでも1発くらいは防げる優れものだ。

 問題点があるとすれば使いどころがかなり難しいと言う事くらいだろう。

 この弾丸は固い物に水滴を落とした時のように、撃ち込んだ角度の放射的反射上に広がるから、正面から撃って場所や物に別の物をくっつけ固定する事ができない。

 

「後は爆弾だけ・・・」

 

 左手でベルトのワイヤー巻き取りのスイッチを押そうとしたその時――

 

 ババババババババババッッ!! 

 

「カハッ・・・!」

 

 背中に衝撃が走り一瞬体制を崩しかけるも、何とか留まる。

 右手のワイヤーを放し、後ろに振り返る。

 振り返るとそこには、先ほどのルノーと同じようなオープンスポーツカーが3台ほど走ってきていた。

 それも当然の如く、助手席の辺りにはUZIが固定された銃座が設置されている。

 

「またかよ・・・どんだけ金持ってんだよ・・・」

 

 M19をスポーツカーに向ける。

 残り3発になった粘着弾(ホールド)を最小限の使用で最大効率を出す方法を考える。

 その瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グギッ!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭の中に電流のように、不愉快な衝撃と音が響き渡った。

 そこで完全にバランスを崩し、ワイヤーに繋がったまま転倒してしまう。

 

(クソッ!! なんなんだ一体!?)

 

 転倒しきる前に首だけを動かし状況を確認する。

 スポーツカーのUZIは結構高めに設置されており、先ほど後ろから撃たれた事からわかるように、上半身に弾が当たったところで衝撃があってもバランスは持ち直せる。

 それなのにバランスを崩したと言う事は、バランスを取る根元である足元を攻撃されたという事だ。

 だが、たとえUZIの弾丸が命中率が低いとはいえ、あれだけの高さに設置されているUZIの弾が足に当たるほど弾道がズレるとは考えづらい。

 その時、地面に落ちている車のタイヤが流れて行くのが目に入った。

 

(そう言う事か、いらない事をしてくれらぁ・・・)

 

 おそらく、俺が飛び出したと同時に射撃しようとして反撃された時に、バスのスペアタイヤの金具が壊れて外れて俺の足に引っ掛かったのだろう。

 そのせいか右足首から先が先ほどから全く動く気配がない。

 

「クソッ!!」

 

 後ろ受身の要領で起き上がり、バランスを取り直す。

 だが、この足じゃバランスを取り続けるのも不可能だろう。

 次の行動を考えて行動に移す。

 M19の銃身を咥えて左手を放すと、腰裏のサバイバルナイフを引き抜き俺とバスを繋ぐワイヤーを切る。

 切った後の慣性で、後ろに倒れるのを後転でやり過ごして立ち上がる。

 

(かったるい。けどどうにかするって言ったんだ。死なない程度にやってやる!)

 

 咥えてるM19を左手で取ると、1番手前のスポーツカーのタイヤと、UZIの銃口に粘着弾(ホールド)を1発づつ撃ち込む。

 撃ち込まれ停車したスポーツカーを追い越し、残りの2台のスポーツカーがこちらに向かって猛スピードで突っ込んでくる。

 右足の状態を考えると回避が間に合わない。

 M19をホルスターに直し、左足だけで取れる行動を考える。

 

「オオォォォォーー!!」

 

 ぶつかる寸前に左足でできうる限り高く飛び、俺の下まで来ていたスポーツカーのボンネットの上をスライディングの要領で滑る。

 滑る間に右手で、左胸からフックショットを引き抜き、スポーツカーの前の地面に向ってフックを撃ち出す。

 フックはスポーツカーの下に入り込み引っ掛かり、ボンネットからフロントガラスを滑り、落ちそうになる寸前でワイヤーを止め運転席の上に落ちる。

 

「ラッ!!」

 

 左手に握ったサバイバルナイフで助手席の銃座を叩き切りUZIを黙らせる。

 フックショットのフックを収め、ワイヤーを巻き取り収納する。

 フックショットをホルスターに直し、左手のナイフを助手席にこていし突き刺して右胸のホルスターからM19を取り出し右ポケットの通常弾を2発込め直す。

 その時機械音が聞こえ、嫌な予感に従い伏せる。

 

 ババババババババババッッ!! 

 

 伏せた瞬間、俺の頭上を無数の弾丸が通り過ぎていく。

 通り過ぎたのを確認し、ハンドルを固定し操作している機械に2発弾丸を撃ち込み機械を外す。

 右手でハンドルを握り、大きく左にハンドルを切る。

 左に並走していたスポーツカーにぶつかり、スポーツカーのUZIが少し傾く。

 すかさずUZIの銃口にM19に込められた最後の1発を撃ち込む。

 最後の粘着弾(ホールド)が硬化したのを確認すると、M19を手放し助手席のサバイバルナイフを左手で引き抜き、適当な場所にサバイバルナイフを突き刺しハンドルを固定する。

 助手席のシートベルトを腕に絡め、左隣のスポーツカーに身を乗り出し右手でサイドブレーキを掛けシートベルトを引っ張り体勢を戻し、助手席に座り直すとブレーキを踏みながらナイフを引き抜き先ほど止めたスポーツカーの少し先に駐車した。

 

「アァ~、疲れた・・・」

 

 座席に凭れ掛かり前髪をかき上げトンネルの天井を眺める。

 卒業分の単位を取っているとは言え、最近は少しサボりすぎだったのか疲労感が半端ではない。

 

「後はキンジ達を待ってれば良いか・・・」

 

 安堵の為か意識を手放しそうになったその時、視界の右端に走り去る何かを捕らえた。

 この状況で走り去る物など想像するのは簡単だ。

 

「ふざけんなよ・・・!!」

 

 遠退き掛けた意識を手繰り寄せ、アクセルを強く踏む。

 前にいるスポーツカーは4台、距離は10mちょっとだろう。

 M19は弾切れで、走行中に運転しながらポケットの銃弾を取り出して込めるのは現実的ではない。

 使うなら先ほど切断した銃座に固定されていたUZIがいいだろう。

 

「やってやらぁ・・・!」

 

 右手でハンドルを固定し左手に持ったナイフを噛んで咥えると、自由になった左手でUZIを掴みハンドルに押さえつけると、右手でUZIの上からハンドルを固定し直す。

 咥えているナイフを左手で握りなおすと、引き金辺りの部品をナイフでノミのように外す。

 

「・・・ッ!!」

 

 左手でUZIのグリップを握り、前の4台を対向車線から追い越す。

 後ろスポーツカーのUZIがこちらに一斉射撃してくる。

 左手でサイドブレーキを引きドリフトの要領で無理矢理スピンさせる。

 ハンドルを握る右手の下にUZIを通し、車のドアの上に置き――

 

「アアアァアァアァァァ!!」

 

 少し下辺りに向けてUZIを乱射する。

 銃弾の大半が外れ、アスファルトに撃ち込まれる。

 だがその内の数発がスポーツカーのタイヤに当たりパンクさせる。

 これでもうまともには走行できないだろう。

 

「いい加減かったるいんだよクソッタレが!!」

 

 鬱陶しいスポーツカー共に吐き捨ててやる。

 が、その時――

 

 ガンッ!! 

 

 乗っているスポーツカーに、撃ったスポーツカーのボンネットがぶつかり、乗っているスポーツカーが制御できずにスピンしだす。

 ヤバいと思いスピンと逆方向にハンドルを切るも、止まる訳もなくトンネルの壁にぶつかる。

 

「グッ・・・!!」

 

 その反動でスポーツカーのドアに強く頭部をぶつけた。

 薄れていく意識の中で、最後に爆音と熱風を感じ完全に意識が途切れた。

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