緋弾のアリア 黒の武偵   作:エイト☆5

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第27弾 そう言えば誰も事件は1つなんて言ってなかったな・・・

 あの後、車の中で気絶していた俺は気が付いた時には救護科(アンビュラス)併設の武偵病院のベットに寝かされていた。

 おそらくキンジ達が救急車の手配をしてくれたのだろう。

 担当医である救護科(アンビュラス)の男子生徒の話では、右足首の脱臼と全身の細かい擦傷、ついでに頭部の打撲程の外傷しかないそうだ。ただし右足の使用は禁止で安静にしろとの事で数日は松葉杖必須だそうだ。

 俺が寝ている間にレキがお見舞いに来てくれていたようで、彼女からの置手紙によるとアリアも一緒にこの病院に入院しているらしい。

 今回の事件は大きな被害も無く負傷者も俺とアリアだけだそうだ。

 

「さてっと・・・」

 

 ベットの上で起き上がると、枕もとの壁に立て掛けられた松葉杖を右手で掴み立ち上がる。

 先ほどの担当医も、めんどくさそうな顔でそれなりに動けるようになったら退院しても良いと言っていたので、荷物をまとめて病室を後にする。

 慣れない松葉杖に手間取りつつゆっくりと歩く。

 面倒事の時には何時もみたいに動けないから別で身を守る方法を考え無ければならないだろう。

 攻撃を避けるよりも、右足を前に左足で踏ん張って受けるほうが現実的か・・・

 

「かったるい・・・攻撃受けるの得意じゃねーのに・・・」

 

 言ってても仕方ないので渋々ながらも現実を受け入れる。

 そんな事を考えている間に、病院のロビーまで来ていた。

 

「これからどうしたものか・・・」

 

 今後の予定を考えようとしたとき、ふと視界の端に浮かない顔をしたあかりちゃんを捕らえた。

 俺のお見舞いであのような顔をするとは思えないから、おそらくアリアのお見舞いだろう。

 俺もあのような顔をして心配してもらえるくらいの人間に成りたいものだ。

 

「Hey! そこの美少女! そんな顔してると美人が台無しだぞ!?」

 

 取り合えず何時もより調子を上げて話しかける。

 最近忘れがちに成っていたが、やっぱりこう言う態度を取れる俺が一番楽で何も考えなくて良い。

 

「吉野先輩・・・」

 

 声をかけると反応こそしてくれるが、それでも表情が晴れることは無い。

 やはり俺ではどうしようもないと言う事か。

 

「アリア先輩は大丈夫なんですか・・・?」

「さてな・・・同じ事件の負傷とはいえ、負傷したタイミングも場所も違うからな・・・面会謝絶なのは確認できたがそれ以上になると忍び込むしかないな」

 

 俺の言葉に明らかな落胆の色が見える。

 やっぱり俺じゃこの子を元気付ける事ができないようだ。

 どうしたものかと考えていると・・・

 

「お姉ちゃん!」

「ののか!」

 

 いいタイミングで正面玄関からロビーに入ってきた間宮さんの方に、あかりちゃんの視線が外れた。

 ただ、入ってきた間宮さんの雰囲気にどこか違和感を感じる。

 

(なんだこれは・・・?)

 

 言い表しようの無い違和感の正体を探るために間宮さんを観察してみる。

 間宮さんの視線が何となく合ってない気がするし、よく目を凝らして見てみると間宮さんの眼がどこと無く濁っている様に見える。

 眼に影響が出るような病気を中学生が発症するとは考えにくし、視力の低下なら眼鏡なりコンタクトをするだろう。

 頭部に衝撃があり眼に影響がでるのなら、頭部に衝撃を受けた時点で病院に担ぎ込まれるはずだ。

 なら他に眼に影響が出そうな外的要因といえば・・・

 

(まさかッ・・・!!)

 

 ふとある可能性に思い至った瞬間異変が起こった。

 どういう話からこの状況になったかは分からないが、あかりちゃんが差し出した現金を間宮さんは受け取ることなく空を掴んだ。

 

「ののか?」

 

 あかりちゃんの疑問の声と共に間宮さんの体がふらつく。

 間宮さんから俺の考え肯定するかのように気配が消える。

 

(やばい!!)

 

 俺は韋駄天を発動させると、松葉杖を放し右袖のベルトを右手で引っ張り出すとそのまま左胸のホルスターのフックショットに繋ぐと、そのままフックショットを引き抜く。

 そのまま正面玄関側の床にフックを撃ち込みその場で大きく跳ぶとワイヤーを巻き取り移動する。

 俺の体は床をスライディングのように猛スピードで滑る様に移動し、ある程度移動するとフックの返しを収納してワイヤーを巻き取り回収し、倒れてくる間宮さんを床に落ちきる前に受け止める。

 

「間宮さん! 間宮さん!!」

 

 倒れた間宮さんに呼びかけるも反応が無い。

 おそらく先ほど現金を受け取ろうとした時には意識が朦朧としており、そのまま立ったまま気を失っていたのだろう。

 あかりちゃんは何が起きているのか分からないといった様子だ。

 

「ののか? ののか! ののか!」

 

 なんとか状況を理解したのだろうあかりちゃんが間宮さんに呼び掛けるがやはり反応は無い。

 周りの生徒達も気付いたのか、すぐに病院のスタッフが呼ばれ間宮さんが担架で運ばれていく。

 俺もフックショットをホルスターに直すと松葉杖を回収し、自分の力だけで何とか立ち上がる。

 

(最悪の状況だな。面倒事が起きすぎて処理しきれない。まるで目に見えない人海戦術で攻め立てられてるみたいだ。しかも・・・)

 

 あかりちゃんの方を見てみると、呆気にとられた用に呆然としている。

 彼女が崇拝の如く慕っているアリアに続き、自分の妹までもがいきなり倒れたとなるとこの状態も分からなくは無い。

 だが、この件は間宮さんに起こったことであり、俺が介入するのは最悪の時だけに控え、あかりちゃん自身が解決した方が彼女達の為だろう。

 となると、まず俺がするべきことはこの呆然としたあかりちゃんを正気に戻すことだろう。

 

(しょうがない。あかりちゃんに嫌われて見るか・・・)

 

 1度溜息をつくと、あかりちゃんの前に立つ。

 そして──

 

 パァァンッ!! 

 

 ロビー全域に乾いた音が響き渡る。

 振り切った左手の平がビリビリと痺れに似た痛みを感じる。

 あかりちゃんは自分が何をされたかも分かっていない様で、徐々に何をされたかを理解しだし右頬に触れる。

 

「よ、しの、先輩・・・?」

「君は一体何やってんだ?」

 

 俺はできる限り冷静にあかりちゃんに問いかける。

 

「あ、あたしは・・・」

「アリアの次に間宮さんもこうなってショックなのは分かる。不安だってあるだろう。けどな、1番不安を感じてるのは理由も分からず行き成り気を失った他の誰でもない間宮ののか本人だろ!!」

 

 少し口調が荒くなってきている気がするが構わず続ける。

 

「明確な何かをしろなんて言わない! 心配や不安を感じるなとも言わない! けど!! お前はののかちゃんの姉なんだろ!! だったらこんなとこで思考をとめて突っ立てんじゃなくて、ののかちゃんが目を覚ました時に不安にさせない為に側に居てやれよ!!」

 

 気付いたら俺は叫んでいた。

 その叫びは周りの生徒の注目を集めていたようで、野次馬根性で聞き耳を立てている奴等がチラホラと見える。

 

「ちっ・・・」

 

 これ以上注目を集めるわけにもいかないと判断し、俺はエレベーターまで戻り、降りて来る生徒達と入れ違いに入りボタンを押す。

 扉が閉じあかりちゃんが見えなくなると、壁に凭れ掛かり前髪を掻き上げる。

 取り合えずあかりちゃんを正気に戻す事には成功したし、俺が取れる行動も残りわずかだろう。

 

「クソッ・・・!!」

 

 左手の拳を凭れ掛かっている壁に叩き付ける。

 俺個人の判断として何一つ間違った行動をした覚えは無い。

 だが、間違ってないからとはいえ、俺の心に何も残さなかった訳じゃない。

 

「最低だな俺・・・」

 

 何一つとして間違わず、最善の手段だけを選んだ。

 それでも俺は、理不尽に後輩の女子に手を上げてしまった。

 人間としても武偵としても最低だ。

 俺はそんな自己嫌悪に苛まれた。

 

 

 


 

 

 エレベーターを出た俺は、近くにあった売店で缶のコーラと好きなライトノベルを購入し近くのベンチで思考を切り替えていた。

 やはり気分を切り替えたいときはやっぱり赤いラベルのコーラに限る。

 

「さて、行くか」

 

 近くのゴミ箱に空き缶を捨て、松葉杖を付きつつ歩き出す。

 少しずつ慣れ始め歩く速度が少しずつ早くなっているのがわかる。

 こんな怪我で仕方なくしなければならない行為を慣れたくは無いもんだが。

 

「かったるい・・・」

 

 しばらく歩き、近くの病室の前で立ち止まる。

 病室には面会謝絶の札が掛かっているが、躊躇無く扉を開く。

 

「おいコラ頭ピンク武偵! どうせ居るんだろ?」

 

 軽口を叩きながらも、病室に入る。

 病室はVIP用の個室らしく、少し洒落た机や椅子が設置されており照明も周りと少し違うものを使われているようだ。

 さすが貴族様。俺達一般人とは待遇が違う。

 

「あんた、面会謝絶の文字が読めないの?」

「俺は自由を愛する男なんだよ! 俺の行動は米軍だろうがドイツ軍だろうが止められねーぜ」

 

 いきなり入った俺が悪いとはいえ、そこはかとなく馬鹿にされた様な嫌味っぽい事を言われ地味に傷付く。

 そんな俺の心にダメージを与えたアリアは、患者服に頭に包帯を巻いた痛々しい姿だった。

 そして何時もの髪飾りは何故かしていなかった。

 

「お見舞いだ。くだらねーだろうけど暇つぶし位には成るだろうから読んでろ」

 

 左手に持っていたライトノベルをベットの上に放り投げてやる。

 アリアは少し訝しげな表情でライトノベルを見ると少しため息を吐く。

 

「で、何の用よ?」

 

 アリアは割と元気そうだが、俺と違いベットに腰掛ており、立って話をする気は無いようだ。

 こいつ面会謝絶の必要性無いだろ・・・

 

「お前の戦妹(いもうと)ピンチだぞ。助けろとは言わんが行ってやれ」

「あかりが? あんたが知ってるならあんたが行ってあげれば良いじゃない。あの子、あんたに懐いてるみたいだし」

戦姉(あね)はお前だ。あの子の味方をするのを決めたのは俺じゃなくてお前だ。だったらお前が行け」

 

 何時ものアリアらしくない事を何時もとは違った雰囲気で言うのに対し、俺も何時もとは違う態度で答える。

 そして1度病室を出て廊下に置かれている車椅子の上に松葉杖を乗せると押しながら病室に戻って言ってやる。

 

「それとそういう事を言うならもっと感情を入れるんだな。もっともそんな事言った日にはぶん殴るがな」

 

 車椅子に乗せた松葉杖を車椅子の持ち手に引っ掛けると、ベットの側まで押していく。

 

「ほら乗れよ。頭撃たれたんだろ?」

「あんたこそ足怪我してるんでしょ? あんたが使いなさいよ」

「男が気を使ってんだ。それに頼った上で気を使ってこそいい女だって言うのが俺の持論でな。それに俺は支えがあれば移動できるからこっちの方が良いんだよ」

 

 俺はアリアの手を握り少し強引に車椅子に乗せる。

 

「それじゃ、さっさと行きますよ!」

 

 少し重くなった車椅子の持ち手を握ると、車椅子を押して病室を出た。

 

 

 


 

 

「確かこの辺だって聞いてたんだがな・・・」

「あんた病室の場所くらい聞いときなさいよ!」

「俺はインスピレーションで生きてるんだ。自分がやりたい事をやりたい時にするだけだ」

「だからって自由に生き過ぎでしょ! もう少しくらい堅実に生きなさいよ!」

「必要さを感じたらそうする」

 

 適当に話を切り上げ間宮さんの病室を探す。

 歩きながら探すというより、車椅子で廊下を滑るように乗り回していると言った方が正確だろう。

 松葉杖よりも自分の腕力で体を持ち上げ左足で廊下を蹴るだけなので、体の負担が少なくかなり楽で良い。

 

「そういえば遙は何で妹さんが倒れたのか検討は付いてるの?」

「あぁ、多分だがありゃ毒だな・・・」

 

 ずっと気になってたのか、アリアが俺の考えを聞いてくる。

 確証は一切無いが俺の予想を取り合えず話しておく。

 

「事件に巻き込まれたのなら病院で倒れることは無い。同じ事で言うなら事故も除外できる。何らかの病気の可能性もあるが中学生の彼女じゃ可能性としては少ない。倒れた直前で何らかの要因があった可能性に関しては、あの場には俺やあかりちゃんも居たし、何よりも今回のバスジャックの関係者が出入りしている施設内で起きたからその線も無い。だから可能性が高いのは遅効性の毒物くらいだ。そしてパッと見た限りでは視覚に影響が在るみたいだったから多分神経毒か何かだろう」

「けど、妹さんはあかりと違って一般人じゃない。妹さんがそんな物に触れる機会があるとは思えないけど・・・」

「俺もそこが気になったんだが、その間宮さんが、いや間宮姉妹が一般人ではなかったらと仮定するとすべて解決する」

「確かにそうかもしれないけど、確証は無いんでしょ? それじゃこの話は破綻するじゃない」

「ああ、確かにそうだ確証は無い。この話はすべて俺が考え可能性の中で1番ありえそうな物を1つずつ持ってきて繋いだだけのルートの予想でしかない。けどな、俺達はその可能性の片鱗を見ただろ・・・」

「片鱗って・・・」

 

 そう、彼女たちが一般人ではない可能性の片鱗という物証を俺達は見ている。

 俺だけでも彼女の片鱗は4つも見たのだから、アリアならそれ以上に見ているだろう。

 鳶穿。閃光を発する振動技と仮定した謎の技。十弩と言う殺しに特化した急所に2発ずつ撃ち込む射撃技。

 そして、これが俺の1番彼女達が一般人ではないと判断した要素である。

 

 殺気に対する過剰なまでの察知能力

 

 俺は特訓の時に何度かあかりちゃんに殺気を当てる事があったが、加減して普通なら竦み上がる程度に抑えたが、それでも彼女は引付を起こす寸前まで感じ吐いてしまった。

 まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()ような()()()()()()()()()()()()()()()ように。

 これは気配に敏感だとか、勘が鋭いだとかその程度の話ではない。

 そう、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()人間のようだった。

 これらの判断材料があったからこそ、俺があかりちゃんを同類だと判断した理由だ。

 

「あかりちゃんの技の1つ1つがその片鱗だと考えれば辻褄が合うんだ。そうなればどう言う経緯は分からないが毒に触れると言う場面が自然に生まれる」

「確かにそれなら話は通じるわね。けどそれだと・・・」

「ああ、間違いなく明確な敵がいる事になる」

 

 自分たちの毒を何らかのアクシデントにより摂取したのならその場で解毒するだろう。

 なら摂取するにしても注入されたにしてもそれは間違いなく悪意ある物なのは確実だろう。

 

「今日のあかりちゃん様子からすると敵に接触(コンタクト)された可能性があると俺は思ってる」

「確かなのその予想は?」

「さーな、表情から読み取っただけで確かなことなんて言えねー。そのあたりはアリアが直接聞くんだな」

 

 その時──

 

「──ついてこないで!」

 

 あかりちゃんの叫び声が通りかかった病室から聞こえてくる。

 気配からして他にもライカや佐々木さん達も居るようだ。

 

「どうやらここみたいだな・・・」

「そうみたいね」

 

 車椅子をそちらに向けて病室の様子を見る。

 どうやら少し口論をしているようだが・・・

 

「あたしが犠牲になれば・・・いいの!」

 

 その声と共に力強く扉が開く。

 

「・・・・・・!」

 

 病室の中には目に包帯を巻いた痛々しい姿の間宮さんと、あかりちゃんはもちろんライカや佐々木さんだけでなく、麒麟ちゃんと陽菜までいた。

 そして、部屋を出ようとしたあかりちゃんとばっちりと目が合い、少し気まずさを覚える。

 それを吹っ飛ばすようにアリアが空気を読まず口を開く。

 

「自己犠牲が『美談』になるのは、お伽噺の中だけよ」

 

 アリアがもっともな事を言う。

 だがそれは俺も同意の話でもある。

 

「自己犠牲は、現実では『逃げ』の手段よ。そして逃げれば逃げるほど、事態は深刻化する」

 

 アリアが少し鋭い目つきで、説教っぽくあかりちゃんに語りかける。

 やはりどこの世界でも先輩と言うものは、後輩に対してどこか説教臭くなるみたいだ。

 

「・・・アリア先輩・・・」

 

 それを聞いたあかりちゃんはしゅんと項垂れる。

 

「言ったはずだよ。『1の為に全を捨てるな 全の為に1を捨てるな 1の為に全を取り、全の為に1を取れ』って。やっぱり俺なんかの話は聞いてくれないかな?」

 

 俺はできるだけ静かに、なるべく穏やかにあかりちゃんに問いかける。

 あかりちゃんは俺の問いかけに顔を背けてしまうところを見ると、俺の話を完全に忘れていた訳じゃないようだ。

 それが何となく俺は嬉しいと思ってしまうのと同時に、こんな時にそんな事を感じてしまう俺に自己嫌悪を感じてしまう。

 かったるい・・・

 

「・・・・・・」

 

 しょんぼりと顔を伏せて口を閉ざしているあかりちゃんに対し──

 

「──敵に接触(コンタクト)されたのね?」

 

 いきなり確信に切り込むアリアにスゲーと言う感想を抱くも、腹の内にその感想を飲み込んでおく。

 あかりちゃんはアリアの言葉に何も言えず、アリアも『しょうがないなぁ』と言う表情になる。

 そして少し怒ったような顔で、

 

「あたし、勘は鋭い方なの。あんたが隠してるのは、その敵のことだけじゃない」

 

 きろっ、とアリアはそのツリ気味の赤紫(カメリア)の眼があかりちゃんに向けられる。

 

「──自分自身のことも、隠してる」

 

 アリアがどんどんあかりちゃんの逃げ道を塞いで行く。

 容赦ねーなこのピンクロリは・・・

 

「あんたは本当の自分をずっと隠して、力を抑えてきた。だから武偵ランクも低いまま。違う?」

 

 本当に嫌なくらい逃げ道を塞いでいく。

 本気になったアリアはここまで容赦なく人を追い詰めるのかと、背筋が冷たくなるのを感じる。

 こいつとぶつかる事があるのならそれなりの覚悟をする必要があるのだと理解させられた。

 

「──何もかも隠したまま、何もかも解決できるの?」

 

 その言葉がとどめになったのかあかりちゃんは俯いてしまう。

 そんなあかりちゃんの背中にみんなの心配そうな視線が集中する。

 

「・・・ごめん・・・」

 

 ゆっくりとあかりちゃんは口を開く。皆に対して。

 

「ごめんねみんな。今まで、隠してて・・・」

 

 涙を流し──

 

「・・・話します。あたし、先輩たちの前で・・・嘘、つけませんから・・・」

 

 空虚で、どこか壊れたような笑顔を浮かべている。

 俺はその笑顔を見た事は無いはずだ。それなのに俺はこの顔を覚えている。

 誰を見たのか、どこで見たのか記憶に無い。それなのに、俺は覚えている。

 記憶に無いのに覚えていると言う違和感。

 俺にはその違和感が酷く気持ち悪く、今すぐ逃げ出したくなってしまう程に不快に感じてしまう。

 だが、今はそんな違和感を思考の隅に追いやる。

 

「あたしは元々、この学校に入っちゃいけなかった生徒なんです」

 

 あかりちゃんはずっと隠してきた自分の過去と正体を明かしだした。

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