昼休みなった瞬間キンジはクラスのみんなに質問攻めにあった。
その傍らで、神崎は俺の方に注目してた様だったので、俺はひとりで逃げた。
許せキンジ・・・
そんなわけで俺はサクサクと購買で買った幾つかのパンと飲み物をもって1つ隣の校舎の屋上に移動した。
屋上に移動するまでに色々と神崎に付いての情報を注意深く聞き耳立てていたら分かった事が幾つかあった。
神崎は俺とキンジの情報を何故か集めているようだ。
そしてそれ以外は深く係わらず、あえて言うなら
戦姉妹とは先輩の生徒が後輩の生徒とコンビを組み、1年間指導する二人一組特訓制度である。
男子の場合『
とまぁ、分かったのはこれと、女子からは人気がほとんど無いと言う事だけだった。
以上の事から察するに彼女の目的は・・・
「パートナー探しか? けど効率悪そうだしな・・・」
取り合えず壁に背を預けてその場に腰掛ける。
そして袋の中から購買パンを引っ張り出す。
「何このパン・・・」
俺が購買で適当に方パンの中の1つ、メロンパン。
名前だけ聞けば普通だが中身は違った。
まず、コッペパンの真ん中にきゅうりが挟まっている。
この時点で地雷だ・・・
更にその上から蜂蜜がかけられている。
家で作るならまだしも、購買でこんなもん売るなよ・・・
まぁそんな事を言いながらも食べるのだが・・・
そんなネタ系のパンに齧り付いているとある人物が屋上に来た。
肩にドラグノフ狙撃銃を掛け、耳にはヘッドフォンを着けたショートカットの少女。
「レキ」
彼女はそう呼ばれている。
誰も彼女の苗字は知らないようで、分かっているのは、入試でSランクに格付けされた天才児だが無口・無感情・無表情という事と、性のことや自らの容姿にも無頓着のため『ロボット・レキ』というあだ名を付けられている事ぐらいだ。
俺の親友化計画の第1号で現在進行形で親友にしようと模索しているところだ。
「レキもここで昼飯か?」
俺の問い掛けにコクンと頷き、俺の隣に座りカロリーメイトを開け口に運び始める。
騒がしいのも良いが偶には静かなのも良いな。
「いつもここで食べてるのか?」
フルフルとと首が左右に動く。
どうやら違うようだ。
「じゃあどうしてここに?」
「風がそう言ったからです」
「風?」
うん、分からん。
取り合えず、買った飲み物を袋から出す。
「これ
レキはこちらをジッと見詰めると直ぐに視線を戻し、コクンと頷いた。
俺はレキの足元にその飲み物を置くと残りのパンを食べ進めた。
放課後。
一般的には帰宅して遊びに行くなりバイトするなりし、学校に残れば部活動に勤しむが生憎ここは武偵高。
一般的な事から懸け離れたこの学校ではそれは通用しない。
自主的に残って戦闘訓練や射的訓練、車の運転技術を磨くといった活動をしている。
俺はそんな気の触れたような学校の中をある人物を探し散策し、現在校舎裏に来ていた。
「吉野先輩!」
「うん?」
呼ばれて振り返って見ると俺には縁の無さそうな美少女がいた。
金髪をポニーテールにし胸ポケットにコウモリ型の髪飾りと首にチョーカーをしており、スタイルがかなり良い。
神崎と比べるともう圧巻だな・・・。
日系ではある様だが純日本人では無さそうだ。
そして、『先輩』と呼ぶからには後輩なのだろうが、165cm近く身長がある。
俺158だぞオイ・・・
すごくアサルトライフル持たせたら似合いそうだ。
確か彼女の名前は・・・
「
「そうです、1年A組の火野ライカです!」
元気良く応える火野は強襲科でも話題に出る人物だ。
1年の中でもかなり強い部類に入ると聞いた事がある。
「で? その1年の火野が俺に何の用だ? オジサンこう見えてもあんまり暇じゃないから、単刀直入の方があり難いんだけど?」
「じゃあ、アタシと『
やり方は『エンブレム』など色々あるが、基本的に受けた側が自由に決めれる。
「良いけど、俺は加減はしても本気でやるぞ?」
「望むところッス!」
「なら良いぜ、何時でも掛かってきな! ルールは致命傷以外アリアリだ、制限時間は30分ってところか?」
「なら遠慮なくッ!」
火野は言い終る前に右足で鋭いローキックを放ち、それを俺は脚を引いて避ける。
そのローキックを避けられた火野は、その勢いを利用して左の後ろ回し蹴りに移行する。
俺のこめかみに向けて放たれた後ろ回し蹴りを状態を反らしてやり過ごす。
「ラッ!!」
火野は背中からトンファーを取り出すとそのまま殴り掛かって来る。
軽いジャブの様に素早い右での突きを、左手で外に受け流す。
そして素早く右手を引くとリズム良く左手の突き出す。
ワンツーか・・・
俺はトンファーのグリップを握る火野の手を右の手の平で受け止める。
「フッ!」
左手でベルトに挟んだサバイバルナイフを逆手で引き抜くと同時に、火野が半回転させた右のトンファーで上から殴り掛かって来くる。
ギャリンッ!!
サバイバルナイフでトンファーを、甲高い金属音を響かせながら反らす。
そこからから左のトンファーをアッパー気味に打ち込んでくる。
俺はその打ち込みを、バク転で回避する。
「ルールはアリアリだぜ? 近接だけじゃなくて遠距離攻撃もして来いよ!」
「申し訳ないッスけどアタシの銃は持ち歩きには不便なんで普段使わないんですよ」
「なるほどな・・・」
雰囲気もそうだが、踏ん張り方や手の特徴的にもおそらくアサルトライフルが獲物だろう。
基本的にでかいから武偵が持ち歩く際はパーツごとにバラシ、専用のケースや場合によっては大きめのカバンに収納し必要な場所に行く前に組み立て使う物だ。
例外としては、依頼を受けた後直ぐに組み立てた状態で車などの交通手段に持ち込む際だ。
だから火野の反応は武偵としてはありえない物では無いだろう。
だが・・・
「舐めてんのか?」
右手にサバイバルナイフを投げる様に持ち替え、左手でS&Wを右胸のホルスターから引き抜き火野に向け静かに問う。
「えっ・・・」
「武偵ってのは凶悪化する犯罪から人々を護る為にできた制度だ、その為には武力がいる、だから俺達武偵は卵だろうと関係なく銃の所持を認められている。言い換えれば人々からの信頼の形が銃だ。コレが依頼だった場合どうする気だ? 敵に「今は銃が無いから自分の戦いに合わせてくれ」とでも言う気か? 自分の武器が携行し難い物なら、変わりになる武器を持ち歩くべきなんじゃないのか? 刀が持ち歩き難いならナイフ、アサルトライフルが無理ならハンドガン、そうやって何時いかなる時にも対応できるようにするのが武偵じゃないのか?」
「・・・・・・」
こんな台詞を吐いているが俺の心中はこんなことは考えていなかった。唯一俺の心の中にあった言葉は・・・
キャラじゃねぇー!! 俺は自由と平和を愛するネタ要員だぞ!? シリアスよりトライフリングが似合う男になに言わせてんだ!!
(まぁ、心構えや考え方は後々修正できるしな・・・今はそこより相性と技術を見る方が良いか・・・)
「ったく・・・」
俺はS&Wを火野に投げ渡す。
火野はもちろん、驚きながらもキャッチするも「なぜ?」と言った顔が浮かべていた。
「撃ってみろ、今回の目的は試験であって意識改革じゃねーからな、取り合えず今見れる技術はできる限り見てやる」
「っ・・・! はい!」
火野は俺に向けてS&Wをダブルアクションで撃つが――
俺は火野の視線とタイミングを合わせ、右足に向って放たれた銃弾を右手のナイフで弾いた。
「なっ・・・!?」
(
続けて撃つも、同じやり方で左肩、左足と撃たれた銃弾を弾く。
そして4発目、俺は少し油断していた。
視線も銃口も俺の上半身、もっと言うなら右肩辺りを向いていた。
だから俺は確実に右肩を狙っていると思った。
故に予想外だった。
(なっ・・・なんだと・・・)
俺に向いた視線は変わらなかった。
だが、俺に向いた銃口が引き金を引く瞬間に――
(前の3発はミスリード、その3発で俺は火野が視線を外して撃つミスディレクションが使えないと思ってしまった、あぁ・・・1年だと思って舐めていたのは俺の方か・・・今改めたぜ火野ライカ・・・!)
俺は今まで視線から照準を読みタイミングを合わせナイフで弾いていた。
言い換えるなら
だが、この瞬間銃口をずらされ空間的間合いこそ切れては無いが、銃口は視線から外れた。
つまり、もう時間的間合いは計れない。
(ならば・・・!!)
俺は時間的間合いを――
撃たれてはいけないのならば、弾道が読めているのならば、できることは1つ。
(撃たれる前に避ける!!)
俺は撃たれる直前にその場から左に避ける。
そして、右手のナイフを逆手に持ち代え、大きく踏み込み柄頭を火野の腹に埋め込む。
「グッ・・・!!」
「結構やるな火野・・・俺は考えを改めたぞ・・・加減抜きの本気でやってやる来い!」
「ッ、はい!」
火野はS&Wを棄てると背中からサバイバルナイフを抜く。
俺はサバイバルナイフを逆手のまま前に出し、櫛状になった峰に左掌を沿え構える。
「ハァッ!!」
火野は大きく踏み込み上体を下げると、右手のサバイバルナイフで鋭い突きを放つ。
俺の腹に向かって放たれた突きを左手で押さえながら右手のナイフで軌道を外に逸らし防御する。
そして逸らした状態から左手の掌を火野の胸の中央に当てる。
「ッ!!」
「カハッ・・・!?」
その瞬間火野の体が後ろに
火野は「一体何が起きたんだ?」と言う顔を苦悶の表情と共に浮べていた。
「これはとある流派と俺の家の技を組み合わせた技でな、必殺性や強さにおいては比較にならない程弱体化してはいるが、威力と衝撃は跳ね上がって安定した技になった物だ。特に名前も付けていけど敢えて名付けるとすると――、『空撃ち』と言った所か・・・」
俺はサバイバルナイフを左手に持ち代え腰の鞘に直す。
それと同時に火野は気を失った。
~side 火野ライカ~
アタシが目を覚ましたらそこは保健室だった。
何でこんな所に・・・
アタシは保健室のベットに寝かされており、保健室にはアタシ以外は居なかった
確かアタシは――
「吉野先輩に戦姉妹試験勝負を挑んで・・・」
そうだ思い出した・・・
「吉野先輩に負けた・・・」
アタシは上体を起こしベットに座ろうとすると、左手が何かに触れた。
左手でその触れた物を手に取って見ると、それは小さな封筒に入った手紙とS&Wだった。
アタシは取り合えず手紙の封筒を開け中身を読んで見た。
『火野へ
これを読んでるって事は気が付いているとは思うが
俺が見たかったのは相性や戦闘スタイルと言った方だったんで、それを言って無かった事は悪かった。
ただこれは、火野が如何とかと言う事では無く俺の問題だ。
俺の戦闘スタイルと火野の戦闘スタイルは違いすぎて俺が教えられる物がほとんど無く、それどころか教えれば持ち味を消すような物もある。
だからもし、戦姉妹が欲しいのなら俺の様な人間では無くもっとあった人間を探してくれ。
ただ、もし本当に俺に教えて欲しいと思う事が在るなら、それが俺に教えられる物であるなら俺は何時でも歓迎するから遠慮無く来てくれ。
PS そのS&W M19は俺みたいな未熟者の
吉野 遙』
「っ・・・ううっ・・・」
アタシは気付けば泣いて居ていた。
涙を止めようとすればするほど涙が溢れてくる。
保健室に誰も居らず誰にも見られないのが唯一の救いだろう。
アタシはS&Wを胸に抱いて泣き喚いた。