緋弾のアリア 黒の武偵   作:エイト☆5

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第5弾 部屋を追い出されたからと言って夜に女の子の部屋を訪問する男を俺はどうかと思う

 俺達は飯を食っている。

 俺は眼で、目の前にいる傍迷惑な珍獣に『帰れ』と言う視線を向けながら。

 キンジは居心地悪そうな顔をしながら手場先に手を付け、神崎は俺の視線なんか何所吹く風の様に、旨そうにだし巻きを頬張る。

 

 武偵には気を付けるべき物が3つある。『闇』『毒』そして『女』だ。

 こいつを見ているとその最後には引っかからないと思えてしょうがない。

 

「・・・ていうかな、ドレイって何なんだよ。どう言う意味だ」

 

 キンジはこの空気に耐え切れなくなったのか本題を切り出す。

 

強襲科(アサルト)であたしのパーティーに入りなさい。そこで一緒に武偵活動をするの」

「なにいってんだ。俺は強襲科が嫌で、武偵高で1番まともな探偵科(インケスタ)に転科したんだぞ。

 それにこの学校からも、一般の高校に転校しようと思ってる。武偵自体、やめるつもりなんだよ。それを、よりにもよってあんなトチ狂ったところに戻るなんて――ムリだ」

 

 コイツ人の学科ボロクソに言うじゃん。

 俺若干傷付くぞこの野郎。

 

「あたしにはキライな言葉が3つあるわ」

 

 コイツ人の話し聞かねーな・・・

 

「聞けよ人の話しを」

「『ムリ』『疲れた』『面倒くさい』。この3つは、人間の持つ無限の可能性を自ら押し留める良くない言葉。あたしの前では二度と言わないこと。いいわね?」

 

 そう言うと、きゅうりとタコの酢の物を口に運ぶ神崎。

 人の台詞まで制限しようとするのかこのチビ・・・

 

「キンジのポジションは――そうね、あたしと一緒にフロントがいいわ」

 

 フロントとは、まぁ、字面で分かると思うが前衛の事である。負傷率ダントツの危険度MAXのポジションだ。

 ちなみに俺の普段のポジションはここだ。

 

「よくない。そもそもなんで俺なんだ」

「太陽はなんで昇る? 月はなぜ輝く?」 

 

 話が飛ぶなー

 

「キンジは質問ばっかりの子供みたい。仮にも武偵なら、自分で情報を集めて推理しなさいよね」

 

 子供みたいなのはどっちだこのチビ。

 

「遙はセンターで援護して」

「了承した覚えは無いんだが?」

「なによ。断る理由あるの?」

「山ほどある」

 

 少なくとも理由が2つ3つではないのは確かだ。

 

「言って見なさいよ。あたしが納得する理由が在るなら考えてあげるわ」

「まず、俺のお前に対する信頼が無い。いきなり寮に乗り込んできてドレイになれとか言ってくる奴を信用できる奴がいると思うな。

 2つ、お前みたいな銃を乱射する奴とは俺のスタイルと相性が悪い。お前みたいな奴と組んだら味方同士で潰し合いになるだけだ。

 3つ、そもそもお前との性格の違いがでか過ぎて連携が取れると思えない。スタイルも性格も違い衝突するならいくら個々の能力が高くても足の引っ張り合いになるだけだ。

 4つ、まずお前とはたぶん家柄の相性が悪い。お前と組むなんてあの世のジー様達に顔向けできなくなる。

 5つ、衛生科(メディカ)Bランクの人間に戦闘をがっつりさせるような人間と組みたくない。そもそも戦闘向きじゃない人間を戦闘ど真ん中に置くな。

 6つ、とにかく働くのがかったるい! もっと細かく言うともっとあるが大きく言うならこの位だ」

 

 俺は強襲科(アサルト)ではSランクだが、最近力を入れているのは自由履修で受けてる学科は衛生科(メディカ)であり、俺のランクはBランクである

 そして1番こいつの誘いを断りたい理由は、かったるいからだ。

 

「あんた確かに衛生科(メディカ)はBランクだけど強襲科(アサルト)はSランクでしょ!」

 

 of・・・バレテーラ・・・

 

「それと『面倒くさい』は禁止って言ったばっかりでしょ!」

「『面倒くさい』と『かったるい』は意味からして別物だ。それにお前のドレイになった覚えが無いんだからお前に俺の何かを制限される覚えは無い」

 

 とりあえず俺の考えの一部をぶちまける。

 ただコイツは言葉のキャッチボールが成り立たない。

 キンジの場合は投げっぱなしだし。

 俺の場合はもうドッチボール見たいなもんだから――

 

「決闘よ! 前の3つが本当かあたしが直接見てあげるわ!」

 

 ほら話が飛んだ! 

 

「やんのかよ、この『切り裂き魔(スラッシャー)』と」

 

切り裂き魔(スラッシャー)

 それが俺の幾つかある通り名の内の1つだ。

 俺の武装の基本がナイフであり、相手の武装や防弾服も割りと切ってしまうことからこの名が付いた。

 コレに近い意味で、『武器破壊者(ウエポンブレイカー)』という通り名もある。

 

「そうよ! 明日の五時間目強襲科棟(アサルト)にきなさい!」

「いいぜ、売られた喧嘩は買う主義だ。ただし覚悟してもらうぜ、勝つ負ける以前に手傷は確実に入れるんだからな」

「上等よ!」

 

 俺達は互いににらみ合う。

 この行為に意味はないが目が放せなくなった。

 その空気に耐えられなくなったキンジは俺達に割って入る。

 

「とにかく帰ってくれ。俺は静かに過ごしたいんだ。帰れよ」

「まあ、そのうちね」

「そのうちっていつだよ」

「キンジが強襲科(アサルト)であたしのパーティーに入るって言うまで」

「でももう夜だぞ?」

「なにが何でも入ってもらうわ。あたしには時間が無いの。うんと言わないなら――」

「言わねーよ。なら? どうするつもりだ。やってみろ」

 

 キンジが割りと珍しい毅然とした態度で言い放つ。

 それに対して神崎はギロッとキンジを睨む。

 

「いわないなら、泊まってくから」

 

 やっぱりな・・・

 キンジは頬が痙攣したように引きつっている。

 

「ちょっ・・・ちょっと待て! 何言ってんだ! 絶対ダメだ! 帰れうぇっ」

 

 うわ! 何やってキンジ汚ねぇ!! 

 キンジは驚きの余り逆流して来た夕飯を押し戻す。

 

「うるさい! 泊まってくったら泊まってくから! 長期戦になる事態も想定済みよ!」

 

 びしっ! と玄関のトランクを指差しつつ、キンジを睨み、キレ気味に叫ぶ神崎。

 やっぱり宿泊道具だったか・・・

 行動が幼稚なのに年齢が高2だから本当にやりたい放題できるんだろうなコイツ・・・

 

「――出てけ!」

 

 コレは俺のでも、キンジの台詞でもない。

 俺達が言うべき台詞を、先にこのチビが言ったのだ。

 

「な、なんで俺達が出て行かなきゃいけないんだよ! ここはお前の部屋か!」

「分からず屋達にはおしおきよ! 外で頭冷やしてきなさい! しばらく戻ってくるな!」

 

 と両拳を振り上げ、山猫のような威嚇をする神崎に俺達は追い出されたのだった。

 

 

 


 

 

「なんで俺達が追い出されるんだ遙?」

「しらん! 俺は今日はもう帰らないから!」

 

 俺達は寮の下のコンビニの前で立ち話をしていた。

 俺は今後の計画を立てているがキンジはノープランのようだ。

 俺はキンジに1万円を渡す。

 

「俺は誰かの家に止めてもらう。キンジはそれでどっかに泊まるなり何なりしろ、まあその辺はキンジに任せるが・・・」

「いやいや、だからってコレは受け取れないだろ!」

「いやそうじゃなくてだな・・・明日キンジのベレッタ貸してくれ、そのレンタル料だ」

「ベレッタを? それは良いがどうしたんだ何時ものS&Wは?」

「可愛い後輩にプレゼントした」

「なるほどな・・・どうせ明日の5時間目だろ? 昼休みに取りに来いよ」

「おうサンキュ、じゃあ俺はもう行くな」

 

 俺はキンジと分かれてぶらぶらと歩く。

 とりあえず泊まり用の服だよな・・・

 近くのディスカウントショップに入り、白い無地のTシャツと黒いハーフパンツ、あと最低限の衛生用品を購入した。

 後は泊まるとこを確保すればいいだろう。

 

「理子のとこは休める気しないしな・・・武藤は今日いらない事してくれたから却下だし・・・美咲のとこにするか」

 

 早速俺は携帯で美咲に連絡を取る。

 美咲はクレーム処理センターの対応の様に3コール以内で出た。

 さすが美咲、プロだ・・・

 

「もしもし美咲? 今大丈夫か?」

『はい、何か御用ですか遙くん?』

「ああ、なんか寮の部屋が占拠されて帰れそうにないから、1晩泊めて欲しいんだけど無理かな?」

『私の部屋でですか?』

「美咲の部屋って相部屋の奴いなかっただろ? 美咲には悪いけど1番迷惑が掛からないのは美咲の部屋なんだよ・・・それに久し振りに美咲にも会いたいしさ・・・」

『大丈夫ですよ、お待ちしてますね』

「ありがとな美咲」

 

 俺は電話を切ると近くのスーパーでお菓子や飲み物、明日の朝食や弁当の材料を買って、第3女子寮に向った。

 

 

 


 

 

 少しあるいて第3女子寮の近くに着いた時俺はある事に気付いた。

 第3女子寮前にある女の子がいた。

 長い黒髪のストレートが綺麗で少し前髪が長すぎて目が隠れ、地味目に成っておりメガネを掛けている美人さん。

 本当にどっかのピンクのツインテのチビとは違って、極度のあがり症で大人しく可愛いし、我侭ボディだし・・・

 

「美咲」

「は、遙くん・・・」

 

 彼女は中空知(なかそらち)美咲(みさき)

 俺の親友その4であり、極度のあがり症で、男性と会話する際はテンパってしまい、まともに会話することができなくなる。

 だが、通信機やボイスレコーダーを介するとアナウンサーのように滑舌が良くなる。聴力に長けており、常人には雑音にしか聞こえない音からでもその音を聴くだけで、周囲などの特徴を捉えることができるなどオペレーターとしての能力は優れている。反面、身体能力は武偵と思えないほど低いが、聴力だけならヒステリアモード時のキンジをも凌ぐ。

 なぜか俺だけは他の男性とは違いテンパらずに、少し吃りながらも会話できるらしい。

 たぶん俺の事どこかで同姓と思ってるんだろうな・・・俺ちょっと声高いし・・・

 専門科目は通信科(コネクト)でBランク。

 機会越しならSランクだと思うんだがな・・・

 俺も毎回任務や依頼の時にお世話に成ってるんだが・・・

 

「悪いなこんな時間にこんな事頼んじゃって・・・」

「だ、大丈夫です・・・は、早く入りましょう!」

 

 理子達が騒ぎたい時の面子だったとしたら、美咲はなごみたい時の面子だ。

 俺からすれば方向性は違うが、レキに近い存在と言えばいいのだろうか。

 

 俺達は取り合えず美咲の部屋に向かう。

 美咲が部屋の扉を開けるともう圧巻と呼べる物だった。

 音響機器がビッシリと集められ、ラックに詰まれた無数のスピーカーや高そうなアンプが、黒い机を半円形に囲んでいる。

 黒塗りの防音壁には、色とりどりのヘッドホンが家電量販店のようにブラ下げられている。

 ラジオ局のミキサー室みたいな光景に加え、室内には更に古今東西の通信機器が整然と並んでいる。

 

 コレが全てゲームなら俺の趣味ドンピシャだったんだが・・・

 

 処理用のPCや無線機だけじゃなく、携帯電話も50機種くらいあるし、アクセスランプが至るところでピカピカし電子機器の匂いがする。

 窓際にちょこーんと置かれた観葉植物が、なんだか『美咲だな』って感じがする。

 

「美咲は夕飯食ったのか? なんだったら俺が何か作るけど・・・」

「い、いえ・・・さ、さきほど食べたので・・・」

「そっか、なら風呂でも入るか? 入るなら俺、ベランダに出るけど・・・」

「あっ、お、お願いしても良いですか・・・?」

「了解、終ったら声掛けて」

 

 俺はベランダに出て戸をしめると、手すりに組んだ手を置きため息を付く

 

「今日はいろいろあったな・・・」

 

 誘拐の現場に出くわし誘拐された間宮さんを救出し、遅刻しそうな状況で通学路を爆走し丁度出くわしたキンジの自転車に飛び乗ったらその自転車に爆弾が仕掛けられていて、変なツインテのチビ(神崎)に助けられたと思ったらキンジがヒステリアモードに成って目を付けられ、それとほぼ同時に俺にも目が付けられ逃げたら俺のクラスに転校してき自己紹介と一緒に後頭部を殴られ、後輩の火野に戦姉妹試験勝負を挑まれS&W M19をプレゼントし、帰って見れば変なツインテのチビ(神崎)にドレイに成れとか言われ、なぜか変なツインテのチビ(神崎)に明日の午後から決闘を挑まれ、良く分からない内にキンジと一緒に変なツインテのチビ(神崎)に寮から追い出された、とっ・・・

 

「ちょ待てよ。色々あり過ぎだろー、こんなの続いたら俺過労死するぞ・・・」

 

 まぁそれはいいとして、一番重要どの高いのはチャリジャックか・・・

 細かい情報は明日探偵学部(インケスタ)情報科(インフォルマ)で調べるとして、手口は爆弾のジャック、狙いは武偵、コレに近い手口の犯罪者で思いつくのは『武偵殺し』だが・・・

 

「確か武偵殺しは掴まっているはずだが・・・」

 

 考えられる可能性は大きく分けて4つ。

『武偵殺しの模倣犯』これは可能性としてはかなりあるが、これの場合本物の武偵殺しより隠蔽が甘い事が多いので放て置いても掴まるだろう。

『掴まった武偵殺しは誤認逮捕、もしくは冤罪』コレは掴まった人間に会ってないし警察の態度も見ないといけないので保留。

『武偵殺しは集団』コレはほとんどないだろう、集団に成れば個人の油断が出て確実に数人はしょっぴかれる、在ったとして本人含め3人が良いとこだろう。

『武偵殺しとは無関係、キンジもしくは俺への恨み』・・・コレは心当たりしかない。そもそもこんな仕事恨まれるなんて日常茶飯事なんだから考えてもしょうがない。

 

「かったるい・・・」

 

 

 


 

 

「あーさっぱりした」

 

 あれから色々と物思いに耽っていたら、美咲が風呂から上がったので部屋の中に入れてもらった。

 一瞬こっちの事を本気で忘れ、奥の部屋に入って行きそうに成った時は本当に焦った。

 そして交代のように俺は風呂を借りて今出てきたところだ。

 もちろん今日買った服に着替えて、今まで着てた制服は小脇に挟んで運んでいる。

 

「ありがとな美咲、いいお湯だったぜ」

「は、はい・・・そ、それは良かったです・・・」

 

 俺は普段美咲が日常生活に使っているのだろう、共同スペースではなく美咲の為の部屋に入った。

 美咲の部屋は左の壁側にベットがあり、ピンク柄の布団が実に女子っぽい。

 右側の壁には本棚があり、その近くに普段部屋の真ん中に在るのだろう机が追いやられていた。

 机の上には何所からか回収されたのか、ぬいぐるみが乗っている。

 そして部屋の真ん中に布団が敷いておりその上に、薄いピンク色のパジャマを来た美咲が座っている。

 

 俺は美咲からハンガーを受け取ると、制服をハンガーに掛け適当な場所にハンガーを掛ける。

 うむ、眠い・・・

 

「どうする美咲もう寝るか?」

「は、はい・・・で、電気消してもらっても良いですか?」

「良いけどベットに入れよ、流石に宿主を床に寝かせられねーよ」

「い、いえ! お、お客様をゆ、床で寝かせられません!」

「いやいや! 女の子なんだから体に気を使いなさい!」

「で、でも・・・」

 

 コレは引きそうに無いな・・・

 押しに弱いくせになんでこういう時だけ引かないんだろう美咲は。

 

「しょうがないな・・・」

 

 俺は苦肉の策に出た。

 

 

 


 

 

 苦肉の策それは・・・

 

「あぁ、異性と同衾したのなんて妹以来だぜ・・・」

「す、すみません・・・」

 

 そう、両方同じ事で譲らないなら同じ事をしてしまおうと言う策。

 様は俺達は一緒にベットで寝る事にしたんだ。

 美咲はベットの奥の壁側で、俺がベットの外側だ。

 べ、別にちげーし! そう言う関係じゃねーし! ただの親友だし! 別にちげーし! 

 

「別にいいよ、正直女の子を床で寝かせたくないと思った俺の我侭だし、むしろ女の子をベットに無理やり寝かせてベットに侵入してる俺の方が悪いだろ、謝るのは俺の方だ、異性と同衾とかっていう人生最大に近いイベントを俺みたいな奴に使わせてるんだから・・・」

「そ、そんな! は、遙くんは悪くありません! わ、私の事を思って下さってますし・・・」

 

 俺は美咲の方に体を向けると、美咲はこっちを向いており少し涙眼になっていた。

 本当に可愛いなこいつは・・・

 俺は体勢的に上側を向いている左手で美咲の右頬辺りを髪の上から撫でる。

 

「親友だったら当たり前だろ? ほら・・・もう寝な美咲・・・」

「は、はい・・・」

 

 美咲をしばらく撫でていると俺の腕を抱き枕にして寝息をたて始めた。

 全く、何なんだこの可愛い生き物は・・・

 もうなんと言うか、目を放したら泣いてそうで少し怖いくらいだ。

 妹達も可愛かったが美咲のような庇護欲をそそると言う様なタイプではなく、なんと言うか愛玩欲のような物だったと思う。

 美咲がウサギ系女子なら、妹達はワンコ系女子だと良く思う。

 

 まぁどちらも大事な存在には変わらないんだがな・・・

 

 始めて在った頃にはまさか同衾するような関係になるとは思って無かったな・・・

 本当に人生ってのは良く分からん物だな。

 

「おやすみ美咲・・・」

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