「ふぁ~・・・体中イテェ・・・」
俺は朝日の眩しさで目を覚ます。
俺の右隣では美咲が俺の右腕を抱き締めながらまだ眠っている。
もちろん眠っている間ずっと美咲が俺の腕を抱き締めていたので、当然俺は寝返りを打てないので体が強張り体中に痛みがある。
好かれるのは嬉しいがコレは少ししんどいなー、物理的に・・・
「んっ・・・」
良く見れば美咲の寝巻きが肌蹴て胸が少し見えている。
しかも下着は付けていないし。
好かれるのは嬉しいがコレは少ししんどいなー、精神的に・・・
「おはよう美咲・・・」
俺は美咲の右頬辺りを左手で優しく撫でる。
そして徐々に美咲が俺の右腕を抱き締める力が緩んできた所で、慎重に右手を美咲の胸から引き抜く。
やっと抜け出せた・・・
軽く伸びをすると、部屋にハンガーで掛けて在った制服に着替える。
カランビットナイフを左の前腕に専用のベルトで固定し、フックショットだけとなったダブルショルダーホルスターを背負う。
背中の右下に柄が来るようにマチェットナイフの鞘をホルスターと背中で挟み、ソードブレイカー型のサバイバルナイフを左腰裏のベルトに挟む。
「これでよし・・・」
洗面所に向い顔を洗い歯を磨く。
普段使っている洗面所ではないので普段使う石鹸が無いのに気づいた時は少し焦ったが・・・
キッチンに行き昨日俺が買ったレジ袋から卵を取り出し、沸騰させた熱湯の鍋に3つほど茹でる。
その間に食パンを取り出し、耳を包丁で切り落とす。
そしてフライパンにマヨネーズを垂らし、その上に卵を割り入れ黄身を潰して混ぜながら焼いていく。
オーブントースターで食パンを焼きその上に焼いた卵を乗せ、更に焼いた食パンをその上に置き半分に切る。
そして同じ物を3つ程作り1つを弁当箱に詰める。
茹で上がった卵を水で冷やし、ゆで卵の殻を向き、包丁で輪切りにそして焼いた食パンに輪切りにしたゆで卵を乗せる。
その上に剥いたキャベツを乗せ、更にその上にハムを乗せて、焼いた食パンで挟み半分に切る。
そして先ほどと同じように3つほど作り、その1つを先ほどの弁当箱に詰める。
残りの2つは、2枚の皿に盛り付け1つにラップをして黒い机の上に置いておく。
俺もちゃんと黒い机の前に座り、机の上に皿を置き・・・
「いただきます」
優雅な朝食を楽しむのだった。
俺は美咲の家で朝食を食べ片付けた後、美咲に手紙と朝食を残し寮を出た。
内容は、泊めてくれた感謝と朝食をしっかり食べて遅刻しないようと言う忠告、あと寝顔が可愛かったと言う報告だ。
そんな俺は現在、
その部屋は乱雑に詰まれた部品やら何やらが所狭しと並んでいて、この部屋の主でも楽に移動ができるのか少し疑問なくらいだ。
「平賀さんいるー?」
「はーい! ただいまなのだー!」
その無邪気な声と共に部屋の奥の方から小さな女の子が出て来た。
ショートカットの髪を左右の耳の脇でまとめた髪型の身長140程しか無い彼女。
彼女の名前は
平賀源内の子孫らしく
機械工作の天才でキンジのベレッタも改造を施しており、腕はいい物のいい加減な所があり動作不良を起こす事もしばしば。
本来Sランククラスの実力者なのに武器の違法改造や相場無視の吹っ掛け価格の改造などの問題行為でAランクに留まっているそうだ。
「おおっ! 遙くんなのだ! こんな朝早くにどうしたのだ!?」
「昨日の事件で例の手裏剣を使いきっちゃてな、回収の前に離脱選んで今手元に無いから補充できるかと思って」
「なるほどー! 待ってて欲しいのだ! 今すぐ取って来るのだ!」
「あとベレッタの弾倉も2つほどあったらお願い! 今日はベレッタ使うから」
「了解なのだ!」
平賀さんは部屋の奥の方にパタパタと走って行く。
よくこんな部屋で走れるな・・・
がさごそがさごそと物音が聞こえた後、暫くすると平賀さんが手裏剣と弾倉を抱え戻ってくる。
「おまちどーなのだ!」
「サンキュ平賀さん!」
俺は早速手裏剣を何時もの定位置で在る上着の内ポケットに収納し、弾倉をホルスターに収める。
これで武装としては十分だろうが、まだ十全ではない。
「後1つ頼みたい事があるんだけど言いかな?」
「何なのだ? あややにどーんと任せるのだ!」
「いつものS&W M19 6インチを仕入れて改造しといて欲しいんだ、軽量化とシリンダーの回転速度が上がってると助かるんだけど・・・」
「それくらいお安い御用なのだ! 今回の分も合わせてこれくらいなのだ!」
平賀さんは無邪気な顔で両手で指を4本ずつ立てて見せる。
当然これは8千円や8万なんて優しい額ではない。
「はいはい分かってますよー」
俺はカバンから封筒を取り出しそのまま平賀さんに渡す。
中身は100万と言う高校生が持っているには大きすぎる金額だ。
「今回の分+何時もお世話になってる分、受け取ってくれ平賀さん」
「貰える分はありがたく受け取っておくのだ!」
「サンキュ! 美咲は変な所で頑固だから、話を分かってくれる平賀さんも大好きだぜ!」
「あややも金払いの良い遙くんが大好きなのだ!」
俺は平賀さんの頭を撫でてやると気持良さそうな表情を浮かべている。
商売人と客の関係性でこれはどうかと思うが、それでもこれぐらいが気楽で良い。
どっかの変なツインテのチビと同じ位なのに、それでも性格や雰囲気に差があるんだから育ちって重要だなって思う。
「さてと、俺はそろそろ行くよ。今日は色々とやることが多いんで、他にも行かないといけないからな・・・」
「そうなのだ? またの御越しをなのだ!」
「またよろしく平賀さん!」
俺はそう言い残すと装備科を出たのだった。
次に俺が来たのは校舎の屋上だった。
登校して来る生徒が下の方でチラホラ見えてくる。
「さて・・・いるか陽菜?」
「ここに・・・」
俺が呼びかけると後ろに音もなく忍び寄り応える存在が現れた。
俺は後ろを振り向くとそこには女忍者がいた。
彼女は
黒髪ポニーテールの少女で、口当てで口元を覆い、長いマフラーの様な赤布を首に巻いている。
専門科目は
キンジの
「よう! 昨日の依頼できてるか?」
「一応調べはしたので御座るが、吉野殿の期待に応えられそうな情報は今のところ少ないで御座る」
「ま、教えろよ陽菜、情報なんて物は使いようによって幾らでも化けるんだ、知っていて損はないさ」
「では、『神崎・H・アリア』16歳。誕生日は9月23日。血液型はO型。専門科目は
「なるほど、性格は見てて分かるから良いとしてH家については?」
「調べて分かったのはイギリスの方では『オルメス』と呼ばれており、神崎殿自身はそのH家の人間とは余り旨くいってはいないようで御座る。神崎殿に唯一懐いているのは神崎殿の妹殿だけの様で御座る」
ふむ、『オルメス』か・・・フランス語のようだが・・・
イギリス出身で貴族、ファミリーネームが『オルメス』か・・・
「あと、神崎の母君である神崎かなえ殿が現在服役中で御座る」
「母親が? いった何の罪で?」
「武偵殺し、その他もろもろで懲役864年の求刑で御座る」
「は?」
懲役864年?
864年と言えば1年を365日に仮定して1日3食と考えれば、94万6080回食べれる回数だ。
うん、言ってて分からなくなった。
「何て言うかあからさまな集団から冤罪を着せられましたて言う感じの年数だな、864年なんてオリンピック何回見れるんだか・・・」
普通懲役100年越えをする人間はいない。
大抵の人間は罪を犯している間に変な自信を持つようになり、残虐性が出たり事件を大きくしたりする物だ。
すると、犯した罪にもよるが大半が死刑判決、もしくは終身刑を受けるようになる。
例外があるとすればチマチマとした犯罪を息をするように犯し続けた奴か、遺族の意向や法律に精確過ぎなほどのっとた場合か、複数の人間に罪を被せられた場合だ。
あのチビが躍起になって俺やキンジを引き入れ様としてたのは、母親の冤罪を晴らそうとして居るからってことか・・・
「格闘技や武術についてはどうだ?」
「バーリ・トゥードの使い手に御座る。イギリスではバリツと呼ばれているらしくその技術を利用した
なるほど、アル=カタか・・・
バーリ・トゥードは確かポルトガル語で『何でもあり』と言う意味の総合格闘に近い格闘技の一種だったはずだ。
だが、昨日見たアイツの動きは日本武術に近い物を感じた。
やはりそう言う事なのか・・・?
「また厄介そうな事だな・・・重要度は落ちるが昨日の誘拐事件の方はどうだった?」
「昨日のとは吉野殿が昨日の朝に解決された事件に御座るな? 全容は不明で御座るがあの者達はアメリカの組織の下っ端どもで御座る。どうやら人質を取り今まで日本国内で掴まった仲間の釈放を要求するつもりだった様で御座る」
「バカだねー、人質取った所で犯罪者がそうポンポン釈放できる訳ないのに・・・」
て言うかそんなバカな内容にあの子は巻き込まれたのか・・・
「人質の方に何か誘拐される理由のような物は在ったのか?」
「特になっかたようで御座る。強いて挙げるとするなら『大人しそう』な『女子』だったからだそうで御座る」
「うわ・・・」
理由を聞けば聞くほど間宮さんが可愛そうになって行く。
被害者に同情だとかそう言う感情を抱いた事もあったが、ここまで可愛そうだと思った事はない。
せめてこれ以上事件に巻き込まれないように祈ろう。
ただ、アメリカの組織というと言われたらあいつ等を思い出してしまうが・・・
ぐぅ~・・・
気の抜けるような音が聞こえてくる。
かったるい・・・
「ほらよ、報酬だ! 追加報酬としてこれで何か飲み物でも買え」
俺は今朝作った弁当と財布から取り出した1000円を渡す。
「かたじけない、吉野殿の手料理は絶品ゆえ依頼にも気合が入るで御座る!」
「そいつはどうも、弁当箱はキンジに渡しておけよ、また何か依頼した時に作ってやるからよ」
俺は陽菜にそう言い残すと屋上を後にした。
キーンコーンカーンコーン
やっとの長かった4時限目の授業が終わり昼休みになる。
俺としては面白いから良いけど30年前の世界の縦社会と、目の付けられない生き方なんて何の役に立つんだ?
まさか科学の授業がこんな飛躍の仕方をするとは・・・
俺は席に座った状態で後ろを向き、キンジに話し掛ける。
「さてと、キンジくんベレッタプリーズ!」
「分かってるよほら」
「サンキュ」
俺はキンジからベレッタを受け取り右胸のホルスターに収める。
そもそも自動拳銃事態がほぼ使わないから試し撃ちしとかないとな・・・
「確か3点バーストとフルオートできるんだっけ?」
「ああ、けど遙はこの手の銃はあんまり使わないから単発の方がいいと思うぞ」
「それは実際に使って慣らすさ」
ガバメントや
問題が在るとするなら戦闘スタイルの押し付け合いだ。
1番楽なやり方は昨日も考えた銃口からナイフを突っ込んで銃を破壊し、あの小太刀をベレッタで弾き飛ばせば楽なんだが。
「1つ聞いて良いかキンジ?」
「なんだ?」
「キンジ、お前にとって神崎はどう言う存在だ? 嫌いか? 鬱陶しいか? 二度と会いたくない位ムカつく奴か?」
「・・・・・・よく分からないってところが正直なところだ。確かに嫌いだし、ムカつくし、鬱陶しいが、二度と会いたくないとまでは思わない」
「なるほど・・・それだけ聞きゃりゃ十分だ、サンキュキンジ」
俺は髪を結んでいたゴムを解き、ポニーテールの痕を崩す。
「やるのか遙?」
「ああ、相手は昨日みたいな可愛い後輩じゃない、Sランクの武偵だ、何があっても不思議じゃないんだ、油断も気を抜いたりもしないよ」
俺はゴムをポケットに直すと席を立ちキンジに軽く手を振り教室を出た。