緋弾のアリア 黒の武偵   作:エイト☆5

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第7弾 男同士の決闘(タイマン)はこう在るべきだろ! あっ、ごめん相手一応女だった

「集りすぎだろギャラリーよ・・・」

 

 俺は今、神崎と10メートルほど間隔を開け強襲科棟(アサルト)の第1体育館の真ん中に立っている。

 そしてその周辺には強襲科(アサルト)の愛すべき馬鹿共が集っている。

 お前等ちゃんと戦闘訓練なり射撃訓練なりやれよ! 

 神崎も若干この集り様には引いているようだ。

 あっ、神崎の近くに火野がいる・・・

 

「ルールは致命傷以外は何でも有り、降参か戦闘不能で終了で良いんだよな?」

「ええ、それでいいわ」

 

 防弾ガラスの衝立の上で酒瓶をラッパ飲みする2mほどある長刀を何本も背負った強襲科(アサルト)の女教師を見やる。

 我等が憧れの担任、蘭豹(らんぴょう)先生である。

 19歳という歳なのに香港では無敵と呼ばれた女傑だそうだ。

 何故か武偵校の教師になるも、凶暴すぎてクビに成ったそうだが。

 この人と同じ髪型やめようかな・・・サクッと纏まるからポニーテール好きなんだけど・・・

 

「蘭豹先生、合図お願いしまーす」

「おう! 任せとけや!」

 

 俺は神崎の顔を見直し気を引き締めなおす。

 視界の端で蘭豹がS&W M500を持ち上げるのを捉えると同時に、俺は左手でサバイバルナイフを、神崎は両手で両太腿のガバメントを掴む。

 

「思う存分2人で殺し合えや!」

 

 ドォン!! 

 蘭豹のM500が火を噴いた。

 その瞬間、俺はサバイバルナイフを引き抜き、左手の袖に右手を突っ込みカランビットナイフを取り出す。

 それとほとんど同時に、神崎は二丁拳銃を引き抜き俺の方に向けた。

 

 ここから重要なのはいかに相手に自分の戦闘スタイルを押し付けるかだ。

 神崎は迷う事なく引き金を交互に引き弾丸を放つ。

 狙いは俺の両腕の様だが、俺には関係ない。

 俺は弾丸に向かって真正面に向って走り出す。

 そして、当たる直前に少し体を傾け避ける。

 

「なっ!?」

 

 神崎は驚くも、それでも引き金を引くのをやめない。

 さすがプロだ。驚いても行動を止めない所は評価できる。

 そして驚くのも理解できる。

 普通の人間が銃弾に走って向って来るなんて思わないだろう。

 だが俺は神崎の一挙手一動がゆっくりと見える。

 タキサイキア・サヴァン・シンドローム。

 キンジのヒステリアモードの様に言うなら、『韋駄天』と名づけるこのモードを発動させる。

 

 銃弾がゆっくりと向かってくるのを、俺は体勢を崩して避ける。

 そして2発3発と放たれた銃弾を、先ほどと同じ要領で回避する。

 銃弾は基本的に直線状に移動する。

 ならば、空間的間合いを把握さえ出来れば避ける事は可能。

 時間的間合いは韋駄天による動体視力の底上げがあれば、把握は簡単だ。

 ならば、避ける事は難しくはない。

 ようは飛んでくるボールを手で取るような感覚がナイフで弾く『銃弾はじき(フリップ)』であり、今回のは飛んでくるボールを避ける感覚に近いと言えるだろう。

 

 そのままスローに見える視界の中、最高速度で走りぬけると神崎の二丁拳銃の銃口に両手のナイフを突き入れる。

 そして銃身を破壊して神崎のガバメントを使用不能にする。

 そしてそのまま神崎とすれ違うようにナイフを手放して走り、振り向くと同時に右胸のホルスターからベレッタを引き抜く。

 

「このっ!!」

 

 神崎は両手のガバメントを投げ捨て、背中の小太刀をゆっくりと引き抜く。

 その右手の小太刀を俺はキンジのベレッタでフルオートで打ち抜く。

 神崎の手から離れた小太刀が更に銃弾に当たり、小太刀が吹っ飛んでいく。

 これでこの銃の癖や衝撃にはもう慣れた。

 

 神崎は俺の方に駆けよると左手だけになった小太刀を逆袈裟切りに振るう。

 俺はそれとタイミングを合わせるように右手を抜き手のような形にし動かす。

 狙いは一点、小刀の刀身だ。

 

「えっ!?」

 

 俺の右手は小太刀の刀身の峰の辺りで第2、第3間接を曲げ、指先と掌で刀身を掴んでいた。

 そして左手のベレッタを3点バーストでは発砲し小太刀の根元辺りに当たり、神崎は小太刀を放す。

 俺は衝撃を逃がすように後ろに向って小太刀を投げ捨てると同時に、次は神崎が動いた。

 神崎は衝撃を逃がすよう体を動かし俺の左手のベレッタをその動きを利用して左足で蹴り飛ばした。

 

(クソッ! 攻撃が成功した瞬間気を抜いた!)

 

 基本的に俺達剣を使う人間において、攻撃とは一撃必殺であり、当たれば致命傷、つまり当たれば無力化された事と同義である。

 返し技や身を護る技は、『当たれば無力化』と言う絶対条件が前提として組み上げられており、相手に防御された場合にのみそれは発動させる事ができる。

 つまり攻撃が当たれば通常それ以上先は無いと言う事である。

 だからこそ剣を使う人間は、攻撃が当たった瞬間が1番無防備であり、その瞬間に対する対処法など当然無い。

 それは俺が武偵を始めてからも変わらず、今まで攻撃が当たれば無力化。武器が無く成れば引くと言うのが当たり前だった。

 だから、小太刀が無くなった後の攻撃に俺は一瞬反応が遅れた。

 

 俺はそのまま後ろに引き、余計な思考を降り払う。

 神崎はそのまま徒手格闘に移行する。

 上等だ・・・! 

 俺は手を開くとそのまま神崎に向って走る。

 

「ラッ!」「ハッ!」

 

 神崎と俺の掌底はほぼ同時に互いの胸に決まった。

 神崎の左手の手首を右手で掴むとそのまま、昨日火野に使った空撃ちを打ち込む。

 

「カハッ・・・!?」

 

 神崎の体は後ろに吹っ飛ぼうとするが右手を掴んでいるからそうは行かない。

 そこで神崎は予想外の動きを見せた。

 神崎の上体は後ろに反れた状態で、引っ張れば体制が崩れるだろうっと言う瞬間。神崎は後方宙返りの要領で掴んでいた俺の右手を蹴りあげた。

 更にその足は避けようとする俺のあごを打ちぬき、神崎はそのまま着地する。

 俺も衝撃を逃がすようにバク転で距離をとり、落ちていたガバメントを拾い上げる。

 

「たっく・・・こちとら平和に生きたいだけなのに何でこんなに面倒ごとが起きるんだか、かったるい・・・」

 

 俺はガバメントの銃口から左手でサバイバルナイフを引き抜くと、ガバメントを投げ捨てる。

 本当に世界って優しくないんだよな・・・

 

「それは・・・あんたが武偵なんて・・・やってるからでしょ・・・」

 

 神崎も近くに落ちてた小太刀を拾い上げる。

 

「ハッ! こんな仕事誰が好き好んでやるかよ、できるんならこんなとこ今すぐ辞めてやるってんだ」

「何よ! 辞められない事情でもあるって言うの!?」

「お前に話す義理はねーってのッ!!」

 

 

 全力で踏み込み左手で逆手に持ったサバイバルナイフを逆袈裟に振り下ろす。

 それと同時に神崎も小太刀を振り下ろし鍔迫り合いになる。

 

「なんでそんなにあたしを嫌うのよ・・・!」

「わからんか・・・、そこがわかんねーから嫌いなんだよ!!」

 

 俺はサバイバルナイフの櫛状に成っている部分に小太刀を咬ませると手首ごとサバイバルナイフを捻る。

 すると神崎の小太刀が折れ、神崎の体が後退する。

 

「あんたのその技、腸腰筋を利用して腰を回転させて威力を肉体に螺旋回転させて打ち出してるわね?」

「チッ! 空撃ちを2回見ただけで見抜くか・・・どこでわかった?」

「あんたの打ち込みは威力を出す瞬間僅かに腕を回転させていた。銃と同じ原理で回転は推進力に成りその推進力は威力に成って打ち出されていた」

 

 神崎はそこで一旦切り、息を吸い直す。

 

「けどあんたの腕の回転だけじゃ威力としては大きすぎる。そこで考えられるのは剣術や武術において威力を出す為の部位で有り人体の筋肉が集中する場所の駆動が1番考えられる。つまり腰の筋肉を回転させその威力を打ち出す手に伝えている。それがあたしが考え出した答えよ!」

 

 神崎はキリッと答えを出して俺を指差す。

 神崎の答えは合っていた。それも寸分違わず、だがそこで終っているなら大して問題じゃない。

 俺はサバイバルナイフを投げ捨てる。

 

「正解だよクソッタレッ!」

 

 右足で踏み込み左足で前蹴りを出す。

 神崎はそれをしゃがんで避けると俺の足を掌底で打ち上げた。

 その力に逆らわず左足を動かし神崎の腹に叩きこむ。

 そして右足を床に無理矢理付けると、腰を回転させ左足に伝え打ち出す。

『空撃ち ハンズフリー(hands free)

 

「うあッ!!」

 

 神崎は吹っ飛ぶがまだ起き上がってくる。

 空撃ちは近接格闘から距離を取る為に相手を吹っ飛ばし間合いをとる技。本質ではないが人1人を吹っ飛ばす威力があるのだから神崎もかなりダメージを食らっているはずだ。

 そろそろ決着を付けたいが・・・

 

 

 


 

 

 ~side 神崎・H・アリア~

 

 遙に吹っ飛ばされたあたしは床に手をついて起き上がる。

 まさかさっきの技が足でも使えるなんて思っても無かった。

 けど、あたしには引けない理由が在る。だからあたしは立ち上がる。

 

「絶対にこの勝負に勝って・・・あんたをドレイに・・・」

「だまれ!!」

 

 あたしが言いかけた台詞を遙が止める。

 遙は怒っている。

 昨日の比じゃないほど、殺意を振り撒くように、相手の心に食い込ませる様な殺気を放ち、遙は怒っていた。

 

「俺はお前のそう言うところが嫌いなんだよ! 人に対等を許さず、人を下に置き人を見下すお前の態度が気にいらねーんだよ!!」

 

 違う! あたしはそんな事を考えていた訳じゃない! 

 あたしはただパートナーが欲しかっただけだ! 

 遙はそんな事知らないと言うかのように言葉を続ける。

 

「言葉の意味を考えずドレイに成れと言うお前の事が心底嫌いなんだよ! ドレイに成れってのは自分の為に死ねと、自分の目的の為に使い潰されろと、自分の意思の為に役に立って消えろとお前は俺達に言ってんだ!」

 

 違う、あたしはそんな積りじゃない・・・

 あたしはそんなつもりで言ってた訳じゃないのに・・・

 

「そんな言葉を平然と言い放つお前が嫌いなんだよ! この言葉を理解して言っているのなら俺はお前の事嫌うのではなく軽蔑するぜ神崎!」

 

 遙は足元に落ちているサバイバルナイフの柄頭を思い切り踏みつける。

 跳ね上がったサバイバルナイフはくるくると回転しながら遙の右手にナイフの柄が納まる。

 

「やるんなら中途半端で止まんなよ! それ相応の覚悟を見せてみろ!」

 

 遙はナイフを手の中で回し刀身の方を掴む。

 そして制服のネクタイを外して捨てながらこちらに向って歩き、ナイフの柄をこちらに向けてさし出す。

 

「取れよ」

「えっ・・・?」

「取れって言ってんだ!!」

 

 あたしは遙の気迫におされて気づいたらナイフを手に取っていた。

 遙は上の制服のボタンを全て引き千切ると、制服とホルスターを投げ捨てた。

 

「――刺せよ」

「えっ・・・?」

「お前に人を使う覚悟があるのなら、いや、人を見下し支配下に入れようとするのなら、今ここで俺を刺して覚悟を見せろ」

 

 遙はあたしに向って歩いてくる。

 いや、あたしの持っているサバイバルナイフに向って歩いてくる。

 あたしのナイフを持つ手は完全に震えており、向ってきた遙の体を傷付けた。

 あたしのせいじゃない! ナイフに向ってきたのは遙であってあたしが傷付けた訳じゃない! 

 遙はあたしの震える手を取ると、ナイフがお腹に刺さるのも気にせずそのままあたしに近づく。

 そして――

 

「こんな事もする覚悟もない奴が人を下に見てドレイにしようなんて考えてんじゃねーよ!」

 

 遙はあたしの胸に手を当て――

 

「何が正しく何が間違っているのか判断できるように成って出直して来い! この馬鹿たれがッ!!」

 

 遙の空撃ちと言う技があたしの胸を打ち抜いた。

 あたしは後ろに吹っ飛び床に落ちた。

 もう、立てない・・・

 あたしの意識は薄れていく中、一言だけやけにハッキリと声が聞こえた。

 

「意識の海で自分に必要な答えを見つけてくるんだな神崎」

 

 そしてあたしは意識を失った。

 

 

 


 

 

 ~side 吉野遙~

 

 つ、疲れた・・・

 ちょっと説教のつもりだったんだが腹に穴を開けるとは思わなかった。

 

「人生何があるか分からないな」

 

 腹から血がダラダラと垂れて来て鬱陶しい。

 取り合えず傷口を押さえておく。

 周りのギャラリーは・・・

 あっ、ドン引きしてる。

 あぁ、血がどんどん垂れてヌルヌルして気持悪い···

 脱いだ制服と投げ捨てられた装備を回収する。

 さすがに前のボタンは引き千切ったし、腹に穴開いたから前を締める気に成らないから制服は羽織っておくだけにする。

 ベレッタは右胸のホルスターに収め、ナイフを鞘に直す。

 

 その間もがんがん血が溢れてくる。

 ああ、ホッチキスが有れば出血の大半が止めれるんだがなー・・・

 ガムテープも有ればなお良かったんだが・・

 そんなアホみたいな思考で意識を保ってはいたがそろそろ限界そうだ。

 たぶんこれは貧血だろうな・・・

 今日帰ったらできるだけ鉄分取れる料理を続けよう。

 俺はそんな事を考えながら意識が途切れたのだった。

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