ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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120:迷える少女達

 

春揮Side

 

和人と別れた俺は電車に乗り大宮駅まで移動した。

道中、白澤先輩が謎の「は?」を5回送信してきたのを見て見ぬふりしたのはまぁ、今はいいだろう。

 

あとは新幹線に乗る、というところで妙にキョロキョロしている二人組が道を塞いでいた。

 

「えっと……どこ?」

「こっち、いやこっち……やっぱこっち?」

「もう……急に出かけようとかいうから、ほら調べ……」

 

何となくほっとけなくて見ているとまだ冷静な方、男っぽい服を着た奴が視線に気づいたのか俺の顔を見て、フリーズ。

 

「……よし、あっち行こう」

「えっなんで?」

「おい待て」

「アーキコエナーイ」

「えっどういうこ、と……」

 

目が合った、その時点で「誰」なのかはわかったが向こうは知らん人みたいな反応をして逃げようとした。

行く先に立ち塞がるとそれでも知らんぷりを貫こうとして連れの子がめっちゃ困惑している。

そして、何が起きてるのかを見るために顔を上げたもう一人もフリーズした。

 

「ラ──っ、ごめん!」

「あ、ちょっ……」

「あーもう広いんだから迷わせないでよ!」

「そこかよ、()()()!」

 

何かを言おうとした少女はまるで何かを隠すように身を縮めたかと思えばそのまま駅内の人混みに消えていく。

慌てて追おうとするともう一人……パッと見男性の少女──ライムが的外れな怒りをぶつけてきた。

というか、ライムってことは、やっぱり……

 

「とりあえず追いかけるぞ!」

「仕切んな馬鹿!」

 

何故かキレてるライムを宥めながら駅構内をくまなく探す。

 

 

 

 

 

「くそ、どこに行った……」

「……大丈夫?」

「すみません、この辺に少し背が低くて、少しボロいパーカーを着た女の子来てませ、ん……か──って」

「ごめんさっきその人に突き飛ばされて……って」

 

走り回ること数分、人混みを避けるように歩くのに疲れて少し休もうとベンチに座ると、横に座っていた人に心配そうに声をかけられた。

目撃情報だけでも欲しいと思いパッと見でわかった見た目を伝えながら隣に視線を移すと、そこには──ハヅキがいた。

 

「……人たらし」

「まず話を聞け」

 

会えた喜びとか、そんなもの全部無視して呆れた顔で罵倒された。

でも本人は少し楽しそうで、そのまま俺に体重を預け寄り添ってくる。

 

「甘えてくれてるとこ悪いけど、探さないと」

「……浮気?」

「違うから、探してるのは……シズクだ」

「え、いるの?この迷宮に?」

「迷宮ってお前……いい、そこは探しながら聞く」

 

わかった、とだけ答えてハヅキは俺の後をついてくる。

手にはキャリーケース、さらにバッグを背負った少女は重そうに立ち上がり少しふらつく。

さすがに何も手を出さないのは怒られるためどっちの荷物も持って駅構内を歩く。

 

「それで、なんでここに?」

「……家出した」

「おー、それは……なんで?」

「ちょっと大喧嘩して」

 

バッグは持つ、キャリーケースでもいい、どっちも持たせない、なんて会話をしながら大荷物な理由を聞いた。

どうやらリハビリを終えたあと、SAO内でのこと、姉のこと、それに伴う自分の扱い、それら色々なことが原因で両親と言い合いになりその勢いのまま飛び出したとの事。

行く宛が無かったから適当に調べた東京行きの新幹線に乗り都内だと思ってた大宮に降りてその先を探すために休んでいたところで俺と遭遇した、と。

端折って説明することじゃないだろとは思うが、ハヅキがそれ以上話そうとしないため下手に聞き出すのは辞めることにした。

 

「それより、眼鏡なんてしてたんだな」

「これは……ううん、これとマフラーはお姉ちゃんに貰ったもの」

 

そう言うと眼鏡とマフラーを触る。

お姉さん……ヒヨリさんから貰ったものを身につけているのは、彼女なりの気持ちなんだろう。

 

「……似合ってる」

「……うん」

 

ちょっと泣きそうなハヅキの背中を撫でて落ち着かせてから捜索を再開する。

 

 

 

 

しばらく彷徨っているとやけに人が溜まってる場所があり、そしてその人だかりの中心に先程逃げてしまった少女がうずくまっていた。

隣にはライムがついて声をかけているが、少女は落ち着く様子を見せない。

 

 

「……ラギ」

「わかってる、とりあえず人混みから引き抜く」

 

人だかりの隙間を抜けて二人の元にいくとすぐに手を引いて半ば無理やり改札外に連れ出す。

その間も何度か抵抗されたため途中からハヅキに手を掴んでもらい少し落ち着いた少女を連れてカフェに入る。

 

「……その、悪い」

「いいよ、気使ったんでしょ」

「男……あ、ライム」

 

カフェに入り注文を終えたところで頭を下げて謝罪する。

手を払うくらいには何かあるというのは理解したが、それでも無理やり連れていこうとしたからこそ、本気で謝るべきだと判断したが、ライムが顔を上げろと言った。

 

「察しの通り、()はライム。でこっちが……シズク」

「……っ、ごめんなさい……っ」

「落ち着いて、大丈夫だよ。……本名はとりあえず、説明してから」

「わかった」

 

目の前の少女はライムの言葉にすら過剰に反応するほど怯えた様子でフードをかぶり震えている。

まるで、SAOの姿が嘘かのように、人が変わったかのように見える。

 

 

「……なにがあった?」

「言うよ、シズク」

「……ん」

 

ライムの許可取りに短く頷くとさらに小さくうずくまってしまう。

ライムも少し躊躇いながら口を開く。

 

 

「……シズクは、ずっと虐待といじめを受けてきたんだ」

 

少し間を置いて放たれたのは、無惨な現実だった。

 

 


 

ずっと、小学生の頃から、身体には傷があった。

親のストレスのはけ口にされ、殴られて、切り傷までつけられた。

幸いなことに命の危険が伴うようなことはされなかったけど、それも法がなければどうなるかはわからない、そういうもの。

 

それだけじゃなくて、日に日に傷が増えていく私は、醜いものとして同級生にも虐められるようになった。

でも、中学生になるまでは、誰も見向きしてくれなくて。

……ううん、きっと、親の相手をしたくなかったんだ。

帰れば、お前のせいでって怒られて、殴られて。

学校では、色んなことをされて。

 

中学では特別支援学級に入ることで同級生と関わることがほぼ無くなったから、少し楽になった。

でも、心の傷は癒えることは無くて

■■と■■のおかげで少しは楽になったけど、人の目がすごく怖くて、こんなボロボロの汚れた私を見られたくなくて、隠すようにした。

 

だから、SAOは凄く都合のいい世界だった

自分を、みんなを騙せるから。

 

弱い自分を見せないように振る舞うこともできた。

でも、現実世界に戻れば何も変わらなくて。

 

 

私は、もう、■■たい。

 

 


 

「シズク」

「やめて、見ないで、来ないで……」

 

拒絶。

そうなるのも仕方ないような、そんな過去。

SAO前の俺は、ここで手を引いていただろう。

 

あの世界で変わったのは、お前らのおかげだから。

 

 

「シズク、顔を上げてくれ」

「無理」

「俺を見てくれ」

「……怖い」

 

そう口にしながらシズクは長袖を捲った。

そこには、傷や痣、目に見える傷がいくつもついていて彼女がいかに過酷な環境で過ごしていたのかを物語っている。

 

「……嫌いでしょ、こんな私」

「そんなわけないだろ、シズクはシズク。()()()の頼れるリーダーだ」

「それも、全部隠すために、騙すためにやってたことだよ……私は、本当の私はこんなに醜いんだよ」

「それでも」

 

今朝、アーガスに向かう道中で出会ったあの時。

シズクはほんの少し期待の目を見せていた。

助けてくれる、と。

 

 

「お前はよく知ってるだろ、俺が……どうしようもなくお人好しな馬鹿だってことは」

 

シズクはハッとしながら顔をあげる。

 

「やっと目が合ったな」

「……助けて、くれるの?」

「逃避行しようとしてた女の子を見捨てるほど薄情に見えるか?」

「無いね、あんたは……でも、どうするのさ」

「見ず知らずの男が両親を説得出来るわけないのはさすがに理解してる、そんで俺が養えるだけの力があるわけでもない、だから──」

 

ハヅキの件で両親に直談判しようとしてたのは黙っておこう。

 

「お前らの()()に頼もう」

「「先生……?」」

 

俺の提案に少女達は顔を見合わせる。

楓から聞いた電話番号に繋げると物凄く気だるそうな声が通話先から聞こえてきた。

 

『誰かと思ったら、あなたラギね?』

「正解、それでいきなりなんだけど、シズクを養えないか?」

『唐突ね……事情を知ってるから色々考えてたから準備出来てるけど』

「……だそうだ」

『細かいことはまた後日ね、ラギとも会いたいし、それじゃ』

 

短いやり取りが終わり、シズクは困惑したまま固まっている。

 

「……え」

 

それだけを発し、俺とライムを交互に見る。

物凄い力技での解決にはなるが、とりあえずこれでシズクの精神的負担はこれ以上増えることは少なくなるだろう。

 

「どう話をつけるかはユミに丸投げしとく」

「ラギの馬鹿、優男、お人好し」

「はいはい、馬鹿ですよ」

 

シズクの頬には大量の涙が溢れ、流れていた。

それがどんな感情で溢れたものなのかは、聞かないでおこう。

 

 

「さ、自己紹介でもするか」

「はいはい、私はライム改め西宮 来夢(にしみや くるみ)、出来ればPNで呼んで」

「ん、ハヅキ。桜花葉月」

「ぐすっ……シズク、雨宮 雫(あまみや しずく)

「春揮、如月春揮だ」

 

それぞれの自己紹介を終え、少し予定が狂ったが人手は欲しいためこの場の三人に頼み事をする。

 

 

「本当は葉月だけの予定だったんだけど、二人に頼みたいことがある」

「なに、また厄介事?」

「うん、いいよ」

 

来夢は呆れたような顔でこちらを見る。

まるで人が毎度厄介事を持ち込んでるような言い方、失礼ってもんだろ。

なんてことはさておき、改めて向き直し事情を話す。

SAOプレイヤーの監禁事件を解決するためにALOに一緒にログインしてくれ、と。

既に楓たちが行っていることを含めて全て説明する。

 

「わかった、行こう」

「私たちも手伝うよ、春揮!」

「仕方ないね、ほんと」

 

二つ返事で三人とも協力してくれることになり、急いでアーガスに向かおうとし店を出たその時。

 

 

「白澤の兄さんに頼まれてお届け物だよ」

「いっつも君は女の子たくさん連れてるんだね」

「……女たらし」

 

そんな、物凄い名誉毀損なことを呟きながら大量のダンボールを詰んだ車から三人が降りてきた。

 

「使いな、英雄。ALOとアミュなんとかフルセット、たまたま四人前だよ」

 

一番背の低い最年長、北沢琴海はニヤリと笑みを浮かべながらそう言った。




ということで、帰還しリハビリを終えたあとぶつかった少女は雫でしたという話

当人は傷だらけの自分を、弱さを見せないためにめちゃくちゃ誤魔化して明るく振舞っていたという


 
 

人物紹介

桜花 葉月
年齢:20
SAOではスキルレコードを駆使して戦っていた蒼眼の少女。
ある一件をきっかけに春揮にめちゃくちゃ甘くなっている。
現在はSAO絡みで両親と大喧嘩して家出してきた
ある年のクリスマスに貰った大切なものを肌身離さず持ち歩いている


雨宮 雫
年齢:17
SAOでは夕立の霧雨リーダーとして明るく振舞っていた少女。
現実では様々なことが重なり人間不信になっており、今でもパニックになってしまうことがある。
夕立の霧雨メンバー(女子チーム)は長い付き合いもあり問題ない

西宮 来夢
年齢:17
水色の髪にショートヘア、雰囲気が男っぽいため間違えられやすいが少女。
SAO帰還後、春揮との約束をちゃんと守るために両親と向き合って「自分」を伝えることに成功している。
普段着は帽子とパーカー
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