気がついたらアキレウスだった男の話   作:とある下級の野菜人

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おや?姐さんの様子が…


ある狩人の最期(アタランテ視点)

私にとって転機があったとすれば、きっと、あのとき旅に出たことだろう。

 

 

私の名声を聞きつけやってきた、数々の求婚者たち。私は、女神アルテミス様を信仰し、純潔であることを誓った身。結婚などしないと、何度言っても引き下がらない連中に辟易としていた私は、遠くに逃げようと思った。私に追い付ける者など、彼奴を置いてそうはいない。

無論、連中は私に追い付くことなど無かった。

 

しかし考えてみれば、宛ての無い旅、というものをするのは初めての経験だった。

 

アルゴー船への参加、カリュドーンの討伐、どちらも大元の目的があったが、今回は単なる逃避だ。何をどうすればいいのか分からない。しかし今さら、あの連中の相手をするのも御免だ。

 

そんな頃だった。若草色の髪と、琥珀色の瞳を持った、あの馬鹿者と出会ったのは。

 

 

 

始まりはただの気紛れだった。

 

女を見る男の目、というのは、大抵が欲望に塗れている。しかし、彼奴からはそういった、邪な類いのモノが感じられなかった。

だからだろうか。彼奴に話しかけられたときも、特に拒もうとは思わなかった。

 

アキレウスと名乗った其奴は私の名を聞くと、何やら得心がいった様な顔をしていた。彼奴の父がペレウスだと知った時は驚いたものだ。まさかあの時私が負かした者の息子だとは。

 

その後はあれやこれやと話をした。私はあまり饒舌な方ではないが、それでも興が乗り、中々話し込んでしまった。きっと、彼奴が驚くほど話上手だったからだな。

姐さんなどと気安く呼びおって…全く…

 

 

 

 

彼奴は、私の知るどの男とも違っていた。

 

 

まず、自分の武勇を誇ることはあれど誇示はしない。戦う者、というのは、大なり小なり自分を強く見せようという者が多い。さも自身が最強であるかのように話を誇張し、無駄に偉ぶるのが普通だ。

しかし、この男は自身の今までの戦いを語ろうとはしなかった。何故かと聞くと「餓鬼の喧嘩を自慢する馬鹿がどこにいる。」と答えた。

自分が自慢をすることがあるとすれば、自身に武を授けてくれた師匠の話と、これから先、尋常なる戦いをした時。無意味な争いを自慢するほど馬鹿馬鹿しいものはない、と。

 

…アルゴー船にはその手の馬鹿が大勢いたな…

 

 

そして…そうだな…根本的に考え方がズレている、と言えば良いのだろうか。

無闇に暴力を振るってはならない、力無き者たちに理不尽を強いてはならない、女は守るべき者であると同時に対等な者、そんなことを、当たり前の事だと信じている。

力こそ正義、というのがこの世の真理だ。あらゆる人間がそう考えているだろうし、私自身そう思っている。

しかし、あの男にとって、力のある無しは問題にはならない。ただ生きているだけで、彼奴にとっては価値があったのだろう。

 

 

一晩語り明かした吾々は、自分でも驚く程にあっさりと、共に旅をする事になった。全くもって可笑しな話だ。男から逃げていた私が、皮肉にもその男と旅をするのだから。

 

 

 

 

自覚したのは随分後だったが、もしかしたら私はこの時から、既に彼奴に惹かれていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

共に旅をして分かったが、彼奴は私と会ってから、ただの一度も虚言を吐いていなかった。

その言葉通りに、自身の武をひけらかす事無く、然れど卑屈になることも無い。理不尽を許さず、あらゆる者と対等に接する。

まるで、世直しの旅でもしているのかと呆れたものだ。彼奴からすれば、ただ当たり前のことをしていただけなのだろうが。

 

そして驚いたのは、彼奴の速さだ。

私も脚にはかなり自信があった。森と共に生きてきた私は獣と同等の速さで駆けられる。事実、それまで私に着いてこれた者はいなかった。

だが、彼奴は私にアッサリと追い付いただけでなく、時には私が追う側に回らざるを得なかった。

悔しい、という思いを抱くのは初めての経験だった。結局、一度も勝つことは出来なかったな。

 

 

 

 

鍛え抜かれた肉体、洗練された武術、誇り高い精神。これだけのものを揃えているアキレウスだったが、唯一の弱点として、彼奴は酷く甘い心根をしていた。

 

 

彼奴は人を、何かを殺す、ということを疎んでいた。

 

腕に自信のある者たちは、こぞって彼奴との死闘を臨み、彼奴もまた断らなかった。しかし、彼奴は決して相手を殺さなかった。

 

 

「甘い、と言いたきゃ好きにすればいいさ。俺からすれば、平気で命を奪えるアンタら(・ ・ ・ ・)の方がよっぽど恥知らずに見えるぜ。」

 

 

尋常なる戦いを臨んだというのに情けを掛けるとは自分を侮辱しているのか、と宣った輩に、彼奴はこう言い放っていた。

だが不思議と、彼奴の言葉は私の耳に酷く残った。

 

 

 

なぜ、そうも殺しを忌避するのか。

ある日の野営の最中に、私は問いかけた。

 

 

「戦争で殺すなら、それは納得できる。相手も殺す気で来るんだ。殺らなきゃこっちの仲間が殺られる。」

「狩猟で動物を殺すのも分かる。肉も皮も骨も、生活するにはかかせないからな。」

「だが、そうでもなけりゃ、殺しなんざ冗談じゃねぇ。その殺した相手の家族は?友は?残された者たちは、死んだ者を一生背負っていかなければならなくなる。」

 

「…まぁ、そうだな…何だかんだと言ってはみたが、これは単なる俺の弱さ。もっと言えば、エゴってヤツなんだろうさ。」

 

 

そう語っていたあの男の顔は、焚き火の暖かな光に照らされながら、自嘲的な笑みを浮かべていた。

 

確かに、甘い思想だろう。

結局のところ、この世は弱肉強食。強者が支配し、弱者はただ隸属するしかない。どこに行こうとも、それは変わらない。

しかし私は、彼奴の言う弱さを好ましく思った。

 

私とて、好き好んで悪逆を為そうとは思わない。何よりも、理不尽な目に合う子供たちを、見捨てることなど出来はしない。

 

 

私は生誕を望まれなかった身だ。別に、両親を恨む何てことはない。顔も見たこともない連中。何か思いを抱けというのが、無理な話だ。

 

───しかし、だからこそ、せめて他の子供たちは。

周りに脅かされず、何にも利用されず、ただ親に愛され、健やかに育つ。そんな幸せ(当たり前)を掴んでほしい。

 

…私のような、人でなしになる前に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

共に旅を始めてから随分と経った頃、私は信じられない…いや…信じたくない出来事に直面した。

 

 

「貴方がウチのアタランテちゃんを誑かしてる悪い子ね~!」

 

「ちょっと待て、突然出てきて一体なんの話…危なッ!?」

 

 

うん…いや…今でも信じたくない。私が信仰していた神が、あんな…アレな性格だったなんて誰が思う?

月と狩猟の女神アルテミス様と言えば、もっとこう…いや、それにしたって、せめて威厳を…

 

 

 

私がアルテミス様の誤解を解いたのは、随分と時が過ぎてからだ。

…もう少し早く止めれば良かったのだが、いつの間にか、時が過ぎていたのだ。許せ、アキレウス。

 

いやしかし…結果的に見れば、アルテミス様の誤解は、実質誤解では無かったというか…むしろ私の方が拐かす側というか…うむ…私は、あの馬鹿者にいつの間にやら…惹かれていた。

 

 

自分でも自分が信じられなかったさ。彼奴と私、一体幾つ年が離れていると…そもそも、私はアルテミス様に純潔を誓った身。愛だの恋だのに浮かれている場合は…

 

 

「別に大丈夫よ~?そりゃあ体裁としてちょっとした罰は必要だけど、好きなら好きって言えば良いんじゃない?」

 

 

 

 

「てっきりアタランテちゃんを騙して手籠めにしようとしてる悪い子なのかと思ったけど、アタランテちゃんの方が好きなら話は別よ。たっぷり祝福してあげる!」

 

 

いや、その

 

 

「いい、アタランテちゃん?恋をしたなら、とにかくゴーゴーゴーよ!私の矢をあんなに避ける勇士なんてそうそう居ないんだから、きっとあの子もダーリンみたいにモテモテに違いないわ!」

 

 

あ、はい、それはもう

 

 

「やっぱり!他の女に取られる前に、既成事実なりなんなりつくちゃいなさい?アタランテちゃんが迫れば、大体の男はイチコロよ!」

「そうだ!これを機に、アタランテちゃんにもい~っぱい祝福をあげるわ!初めての恋だもの、叶わなくっちゃ嘘よね!ついでに、弓矢の腕もマシマシにしてあげる!」

 

 

あ、はい、ありがとうございます

 

 

「罰は…そうだわ、獣人っぽくなる感じがいいわね!これなら奥手なアタランテちゃんも、発情期になったら強引にイケるし、より身体能力も上がる。なによりとっても可愛らしいわ!」

 

 

ア、ハイ、ソレデイイデス

 

 

「それじゃあね、アタランテちゃん!絶対、ぜ~ったい、恋を叶えるのよ~!」

 

 

ハイ、サヨウナラ

 

 

 

 

 

 

 

 

はっ…頭が痛い…何か胃も痛い…これ以上考えるのは止めておこう。さらに酷いことになりそうだ。

 

 

 

ま、まぁ、こうして、私は獣の如き耳と尾を付けられた。アルテミス様の仰っていた通り、身体能力もより上がっていた。

 

…ただ、私が何より、その…嬉しいと感じたのは…彼奴の態度が変わっていなかったことだ。

 

 

 

「どんな姿だろうと、姐さんは姐さんだろ?俺が好きな姐さんは、何にも変わっちゃいないさ。」

 

 

 

…本当に、彼奴と共にいると、驚くことばかりだ。

以前の私であれば、姿が変わろうと何も思わなかった。彼奴の言葉も、きっと一笑に伏していた。

 

それがまるで生娘の様に、一人の男の反応を不安に思い、今はこうして安堵している。

 

そして、好き、という言葉に、こうも心を揺り動かされる…

 

 

考えてみれば、必然だったのかもしれない。

私よりも強く、迅く、英雄にありがちな傲慢さも持ち合わせていない。弱き者を守るために戦う優しさがあり、時おり見せる子供の様な表情は愛らし…ごほん…

 

とにかく、これだけの魅力が揃っているのだ。一人の女として、惹かれるのも当然だろう。

 

 

だが…彼奴が私に向けている感情は、親愛。あくまでも友に向けるそれだと、分かっている。

 

アルテミス様の仰っていた様に、子を成してしまう方が早いだろう。誠実な彼奴の事だ。きっと、共にいてくれる…が…何故だろうな…あまり、良い気分はしない。

それに、今の関係に安心している私もいる。

 

…恋というのは、こうも人を臆病にするのだな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、幾分か時が経った。

 

ある日、彼奴は不吉な予感がするから恩師の下へ行く、と言い出した。これは単なる自分の我が儘だ。私が付き合う道理は無い。今まで世話になった、と。

 

無論断った。

理由が勘、というのは些か呆れたが、余程焦っているであろうことは見てとれた。ならば私も行った方が何らかの助けになる、と。

…それに、私は存外、執着的な女だったようでな。今さら彼奴と離れようとは、どうしても思えなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

そして共に、彼奴の故郷であるという森に着いた───生家は別にあるが、彼奴にとっての故郷はここらしい。

 

 

…そして私はそこで、懐かしい顔と、知らない顔を同時に見ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

「がああぁぁ⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!!」

 

「ぐっ、おぉおぉおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 

まるで暴風、地震、嵐。考えうる災害をまとめてこの場にひっくり返した様な。地獄が作り上げられる光景を見せられているような。それほどの闘いが繰り広げられていた。

 

 

思いがけず、懐かしい顔を見た。

 

かつて私が出会った、アルゴー船に集いし英傑たちの中にあって、一際大きく、強き者。ギリシャ中にその名を轟かせる、巌の如き英雄。ヘラクレスが、そこにいた。

 

私とて、奴の活躍は耳にしていた。無双の獅子を打ち倒し、不死身の毒竜を殺し、他にも様々な冒険をしているという。

ギリシャのあらゆる英雄の中でも、まさしく最強だといえる、万夫不当の大英雄。

 

 

 

 

 

そんな奴が、()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思えば私は、彼奴の怒る姿を、一度も目にしていなかった。

 

 

 

ギリシャの男というのは、総じて気が荒い。

酒が入れば乱闘騒ぎ、目が合えば取っ組み合い、何となくで殴り合う者もいる。

 

彼奴には、そんなギリシャ男児特有の躁急さが皆無なのだ。

 

大抵の者とはすぐに打ち解けるし、相手側が怒りを見せようものなら宥めすかして、いつの間にやら煙に巻いている。

 

 

 

そんな彼奴が────ああも怒りを露にしている。

 

 

 

 

 

 

 

その時は、一瞬だった。

 

森に着いた時に見えた、一条の光。彼奴の姿が一瞬にして掻き消えた。

私も全速力で向かったが、既に矢は叩き落とされ、彼奴はその場で立ち尽くしていた。彼奴の後ろには、一人の男が庇われる様に立っている。

彼奴があの矢を止めなければ、恐らく─────

 

 

 

 

 

 

 

「…………………す………」

 

 

 

 

 

突如、体が酷く重くなった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………ろす…………」

 

 

 

 

 

あまりにも濃いそれに、意識すら遠退き…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────殺す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

息をすることすら忘れていたことを思いだし、視界が戻ってくる。そうして気づいたら、今の惨状だった。

 

ヘラクレス(懐かしい顔)は苦悶の表情で、アキレウス(知らない顔)は怒り狂い、我を忘れたかのような形相で、相争っていた。

 

 

私に向けられたものではなく、距離も離れているというのに、肌に突き刺さるような濃密さ。

 

 

信じられなかった。あのヘラクレスが。アルゴナウタイに集った者たちが、敵わないと認めたあの男が、ああも追い詰められている。

 

信じられなかった。あのアキレウスが。殺しを嫌悪し、誰よりも生を尊重しているあの男が、ああも殺気を纏って刃を振るっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし私は心の内で、もうひとつ別のことを考えていた。

 

 

 

 

 

もし、

 

 

 

 

─────もしも、私が同じような状況に陥っていたら、彼奴は…同じように怒りを見せるだろうか─────。

 

 

 

 

 

 

 

そのとき、空には美しい三日月が昇っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あらそ)いが終わったのは10日後のことだった。

 

私は、二人が争っている間、ケイローンの小屋に避難させてもらっていた────まさか彼奴の師が、音に聞こえし人馬(ケンタウロス)の賢者だとは、驚いたものだ────。

 

 

「彼はきっと…私たちの森を傷つけることはしないでしょう。」

 

 

その言葉通り、あれほどの激闘の後だとは思えないほど、小屋の周囲は小綺麗なままだった。周辺の森も、穏やかなものだ。

 

 

だが、あの二人を見つけることは容易かった。

二人の通ったであろう箇所には、何一つとして無かったから。

 

岩も、木々も、草も、最初から何も無かったかのように。

 

道というには荒れた戦いの跡を辿っていくと、一際大きく、地面が陥没した箇所に着いた。中心には人影が見える。

 

 

 

 

 

「久しいな。俊足の狩人。」

 

───そうだな、ヘラの栄光。

 

「その小僧は、お前の知り合いか?」

 

───そうだ。私の、友だ。

 

「そうか…まさかこれほどの猛者がいるとはな。しかもこの若さで…純粋な闘いの末に体が動かなくなる、など、初めての経験だ。」

 

───私も驚いている…これほどまでに、強かったのだな…

 

「あぁ…私は、この者に礼を言うべきなのだろうが…恐らく、また同じようになってしまうだろう。私は、それほどのことをしてしまった…」

 

───…そうか。

 

「さぁ、連れていくといい。私は、今しばらくここにいよう。正直に言うと、話すのがやっとなのだ。こうしているのも、先達としての矜持の様なものだ。」

 

───フッ…そうか。

 

「それと、言伝てを頼みたい、ケイローン師に。謝って許される問題ではないが、すまなかった、と。今の私は、業を清算している身。全てを終わらせ、顔向けが出来るようになれば、必ず謝罪に伺う。そう、伝えてくれないか。」

 

───共に旅をした(よしみ)だ。必ず伝えよう。

 

「ありがたい。それから…いや、やめておこう。いずれ、もしも巡り合う機会があれば、その小僧自身の口から名を聞きたい。私をこれ程までに追い詰めた、最大の強敵よ。」

「…それではな、アタランテ。」

 

───あぁ。達者でな、ヘラクレス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの闘争より数日。彼奴が遂に目を覚ました。

 

最初に気づいた時には驚いていた様だが、すぐに状況を理解したのか、私に礼を言ってきた。別に気にすることでも無いというのに、律儀な奴だ。

 

…ケイローンのことを聞かれたときは…なんと説明すればいいのか困ったな…まぁ、タイミングよく来たお陰で、手間は省けた。が、彼奴は完全に固まっていた。

 

それは…そうだろうな。私とて驚いたのだ。

だが、私はケイローンと接した期間はまだ短い。女になられても、驚きこそすれ、困惑は無かった。

それに、ギリシャでは大して珍しいことでもない。男が女に、女が男にと、意外と男女の境目が曖昧だったりする。なら、うん。そういうこともあるんじゃないか?

 

───まぁ、気を強く持てよ、アキレウス。

 

 

 

 

 

それからの日々は…あぁ、楽しかった。こうまで穏やかに過ごした日が、かつてあっただろうか。

好いた男と共に過ごし、同じ男を好いた者とも、睦まじく過ごす。私にとってあの時間は、何よりも、かけがえのない宝だ。

 

三人での遠駆けは胸が弾んだ。共に行う狩りに心が踊った。いつまでも、こんな時間が続けばいいのにと、心から願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────だが、その願いは叶わなかった。他ならぬ、彼奴自身の手によって。

 

 

 

 

 

何故、こうなってしまったのだろう。何が悪かったのだろう。

 

私はただ、同じ時を共に過ごす。

 

それだけで良かった。良かったのだ。

 

 

もう、あの爽やかな風の様な男は、私たちの好いた男は、この世のどこにもいない。

 

共に駆けることも、狩りをすることも、語らうことも、出来ない。

 

あの賢者も既に逝ってしまった。あの悲嘆が、慟哭が、耳からいつまでも離れない。

 

 

私も出来ることなら投げ出したかった。しかし、獣としての本能が、自死など許さぬと警鐘を鳴らす。

 

まさしく、この姿は罰となった。愛しい男も、親しき友も失い、それでもなお、死ぬことが出来ない。

 

 

せめて、この想いの一欠片でも、彼奴に伝えたかった。

 

あの時伝えていたら…何かが変わっただろうか?

 

今となっては、もう分からない。

 

 

 

 

 

 

なぁ、アキレウス。

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、どうすれば良かったのだ?

 

 

 

 

 

 

 

私は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたし、は…──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘラクレスは十二の難行以外にも、様々な冒険や、死闘を繰り広げた。その中に、ぺリオン山の麓の森の怪物を打ち倒した、というものがある。

 

その森は、かつてヘラクレスが武術を学んだ場であり、恩師ケイローンがかつて住んでいた場所だ。

 

たまたま森近くの町に立ち寄ったヘラクレスは、町の住人に怪物の噂を聞き、これでは師の森と町の人間が危ないと思い、勇んで討ち取りに出向いた。

 

そこでヘラクレスが見たのは、全身が真っ黒いモヤの様なもので覆われた、世にも恐ろしき魔獣であったという。

 

その魔獣はヘラクレスと打ち合える程の凄まじい怪力の持ち主で、鋭い針状のモノを幾つも飛ばし、翼の様なモノで空を高速で飛び回り、ヘラクレスを苦しめた。

 

無論、ヘラクレスはこの怪物を仕留めたが、そこまでで記述は終わっている。

 

ヘラクレスの師、ケイローンが住んでいた森の下に突如として現れた、ヘラクレスを苦しめる程の怪物の話だというのに、詳しい内容が見当たらないのだ。

 

一体、この怪物はなんだったのか。ぺリオンの魔獣と呼ばれるこの怪物の正体は、未だに謎に包まれている────。




四周年ありがとう!(大遅刻)
推しの大量増加と連続星5召喚でテンション上がりすぎておかしくなってた野菜人です。
追加低レアたちには、一つの共通項がある…それは、顔の良い変態…ということだ…!(生贄不可避)


次はトロイア編を書くといったな?あれは嘘だ。

というか、トロイア書こうと思ったら姐さんと先生視点を先にやっとかないと違和感あるやん、と思いましてね。一先ず、姐さん視点を納めに来ますた( ´_ゝ`)

シリアス苦手なりに、意外となんとかなったんじゃないかと思いますが…後半になると雑になる癖をなんとかせねば…

それと、ヘラクレスさんの口調は原作での一瞬の台詞と、作者の妄想で補完してるので、こんなん違ぇよ!ってなったらすみませぬ…


先生視点の方は、カリクロさんの扱いに悩み中です…fateではしっかり言及されてるので、全く居ないものにするのはさすがに無いですが…いるのならTS先生とかなんやねんってなる…ウゴゴゴ…


それでは、水着イベント頑張りましょう!

マーリン引いた(感謝の素振り)

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