バイオハザード:パーパルディア皇国終焉の日   作:のり弁当(税込300円)

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13.ビデオメッセージ

「逃げやがったか…」

 

行方不明になっていた、元アンブレラ・ジャパン中央研究所主任研究員にして、ニシノミヤコ虐殺事件の被害者遺族でもあった、ロデリック・キャンベルタウン。

彼はアルタラス王国北東の海域を漂流する船の上で、自らの頭を銃で撃ち抜いていた。

おそらくは、とんでもない大事件を起こした上で。

 

足元に落ちていた、菓子折りサイズの黒い空き箱…おそらくロデリックが自殺に使ったマカロフが入っていたものだろう…を蹴り飛ばしつつ、突入部隊隊長の陳はある事を思い出していた。

プレジャーボート外部に設置されていた装置についてだ。

 

記憶は間違っていなかった。BSAA欧州本部へ派遣された際に見た。

テラグリジア・パニックでウイルスの散布に使用されたUAVのランチャーだ。

 

と、船内に置かれていたパソコンを確認していた部下が陳に声をかける。

 

「隊長、このパソコン、映像記録が残されていますよ」

「なんだと?」

「日付は…いくらか前ですね」

 

机に突っ伏したロデリックの遺体や、周囲に飛び散った血液の状態から見るに、死後それなりの時間は経過しているように見える。

それらと問題の映像記録データを日付を考えると、ロデリックがまだ生きていた時期に作成されたものである可能性が高い。

 

つまり、自殺する直前のロデリックが残したメッセージかもしれない。

 

「…再生してくれ」

 


 

さて、まずはこれを見ている君は日本の自衛隊か、もしくはBSAAの隊員であるという前提で進めさせてもらう。

もし万が一君がそういった組織の人間でない、一介の民間人ならば…この船から下りるな。仲間とも顔を合わせるな。

その上で日本とBSAAに通報することだ。それが君の仲間と君自身とを救うだろう。

 

では、改めて。

私はロデリック・キャンベルタウン。以前はアンブレラに勤めていて、T-ウイルスなんかの研究にも関わっていた。

それじゃあ本題を。結論から言うと、私はパーパルディア皇国にT-ウイルスをぶち撒けてやった。UAVなんかを使ってね。

より正確には、あの国の首都と工業都市を標的にした。確かエストシラントとデュロとか言ったか。

 

余っていた実験用マウスをいくらか譲り受けたのにT-ウイルスを感染させたものと、それからエアロゾル化したT-ウイルスをそれぞれUAVに搭載した。

で、標的の都市の上空にたどり着いたところでセンサーが反応、自動的にそれらがばら撒かれるという寸法だ。

ああそうそう、UAVにはばら撒き終えたら自爆するよう爆弾も搭載しておいたから、技術流出の心配はしなくていいと思う。

 

動機は妻と娘の復讐だ。調べればわかると思うが、私の妻子はパーパルディア皇国によりフェン王国のニシノミヤコで殺害された。

確かに実行犯共は自衛隊の優秀で勇敢な人々に消し飛ばされたが、あいにく私はそれで気が済むほど器は広くない。

その上、民族浄化まで宣言されてはね。私の堪忍袋の緒も消し飛ぶというものだ。

 

というわけなので、自宅に保管していたT-ウイルスをぶち撒けてやったわけだ。

そうそう、こいつを職場から持ち出したのはもう10年以上前、アンブレラが崩壊した時の事だ。あの混乱ぶりだ、私がこんなものを持っていた事に気づかなかったことについて、BSAAや警察諸君を責めるのは酷だろうね。

ちなみに、そんなわけだから私が使ったT-ウイルスはとっくの昔に遺伝子情報やら何やらが完全に判明しているはずだ。少なくとも日本ではT-ウイルスワクチン…確か名前はデイライトだったかな?の予防接種が義務付けられてるし、日本人なら感染する奴はまずいないだろう。

一応使ったT-ウイルス株の情報をこのパソコンに入れてある。今後の参考にするといい。

 

ああ、心配ご無用。私も一応専門家の端くれだ、こいつを運搬する最中に漏洩、なんて事は確実にないと断言させてもらう。

まあ心配だったら一応運搬ルートでも調べておくといい、このパソコンの中に私がこいつを運んだ…といっても単にこの船が係留されてる港に行くついでに車に載せただけだがね…港に来るまでのルートの情報が入っている。

 

それと、この船についてだが、一応UAVを飛ばした後に消毒やら何やらの後始末はしておいた。たぶんHAZMATスーツを着てなくてもT-ウイルスに感染する事はない、と思う。

ただまあこんな船使いたがる奴もいないだろうし、沖合に出てからとはいえT-ウイルス関係のあれやこれやをしていたのは事実だから、まあ爆薬でも仕掛けて私の死体共々沈めてしまえばいいのではないかな?

 

さて、他に何か言い残すべきことはあるかな…そうだ、パーパルディア皇国以外の人々にはよろしく伝えておいてくれ。

彼らはT-ウイルスの脅威を知らないだろうし、抗体もあるかどうか。そのあたりきちんとしておいてもらいたい。私が地獄に送ってやりたいのはパーパルディア皇国の連中だけであって、それ以外の人々ではないからね。

まあ、パーパルディアの連中には私から直接よろしく伝えておくことにするよ。地獄でね。

 

では言うべき事も言ったし、そろそろお別れの時間だ。

別段この世に未練もないことだし、アンブレラ時代に仕入れたこの拳銃で頭を撃ち抜こうかと思う。

 

それじゃ、諸君。

 


 

「…好き勝手言ってくれる…そして確定だな」

「ということは、やはり、パーパルディア皇国での『暴動』は…」

「ああ、十中八九こいつが起こしたバイオテロ…T-ウイルスのパンデミックだ」

「…えらい事になっちまいましたなあ」

「ああ、えらい事だ、そして下手すりゃもっとえらい事になるぞ、フィルアデス大陸まるごと全滅だ。本部に連絡するぞ、『パーパルディアの件はT-ウイルスを利用した、大規模なバイオテロでした』とな!」

 


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