バイオハザード:パーパルディア皇国終焉の日 作:のり弁当(税込300円)
5B.奇妙な飛竜
この日、皇都防衛隊とデュロ防衛隊の竜騎士たちは、国籍を表示していない奇妙な飛竜と遭遇した。
翼を動かすことのない、小型の飛竜だ。どちらかといえばムーの飛行機械の方が近いかもしれない。
複数体侵入してきた国籍不明騎の発見は遅れた。何しろ通常のワイバーンなどと違い、魔力は一切放っていなかったのである。
そのため魔導探知レーダーには表示されなかった。
「…ん?なんだアレは…?」
国籍不明騎を最初に発見したのは皇都防衛隊所属の竜騎士・ベルティオだった。
「こちらベルティオ、南西の方向から何か妙なものが来ているように見える、確認してくれないか?」
仲間に魔信で呼びかける。
そしてたちまち、確認の報告が入る。彼の見間違いではなかったのだ。
『もしやあれは…日本国の騎か!?至急確認を…』
続けようとするが、奇妙な飛竜…それらは複数体いた…はとんでもないスピードで飛行してくる。
『まずい、全員避けろ!』
隊長であるコルソの号令の元、ワイバーンオーバーロードの隊列は奇妙な飛竜を避けるように散開する。
…が、奇妙な飛竜はワイバーンオーバーロードには目もくれず、そのまま飛び去っていく。
皇都エストシラントの方向へ。
『なんだったんだあいつは…』
『ぼうっとしている場合ではないぞ!奴は皇都へ向かっている!』
『こちら第17竜騎士団第4飛行隊!本部に告ぐ、未確認飛行物体が接近中!おそらく皇都へ向かっていると思われる!』
奇妙な飛竜を、ワイバーンオーバーロードが追う。
が、異常に性能がいいらしい奇妙な飛竜になかなか追いつけない。
そうこうしているうちに、奇妙な飛竜はエストシラント上空に到達していた。
そして飛竜たちのうちいくつかの腹が割れ、何かをばら撒いた。
『くそ、なんてこった!何か落とされたぞ!』
『こちら第17竜騎士団第4飛行隊!本部応答せよ!』
『こちら本部、何があった?』
『先程報告した飛行物体が皇都西側に未確認物体を投下!至急民間人を避難させられたし!』
『こちら本部、了解した!』
奇妙な飛竜を追いかけるのに必死な竜騎士たちは気づいていなかったが、投下された物体は爆発する事はなかった。
…その代わり、ひしゃげたケージからは何かが出てきていたが。
『もうちょっとだ、この野郎…!』
一方その頃エストシラント上空。奇妙な飛竜を追跡する竜騎士の1人・テオフィ。
彼はまだ腹が割れていない奇妙な飛竜を追跡していた。もうひと踏ん張りでワイバーンオーバーロードの射程圏内に収める事ができる。
と、次の瞬間。
奇妙な飛竜の腹が割れ、異形の装置が姿を現した。そして異形の装置から、緑色の煙が噴出する。
当然全速力で奇妙な飛竜を追っていたテオフィは避ける暇もなく、相棒のワイバーン共々もろに緑色の煙に突っ込んだ。
『おいテオフィ!テオフィ!?』
『ゲホゲホッ、なんとか無事だ、ああくそ、気色の悪い…』
高い練度を誇る皇都防衛隊所属なだけあって、アクシデントにあっても少しふらついたくらいですぐに体勢を立て直した。
この辺りは皇都防衛隊の面目躍如と言うべきだろう。
『この野郎!』
テオフィの追っていた奇妙な飛竜を追う者がまた1人。
同じ部隊に所属する竜騎士であり、隊一番の腕利きであるパルドゥラである。彼は一旦上昇し、直後に急降下し重力を加速に利用することで、緑色の煙を吐き続ける奇妙な飛竜に追いついたのである。
『よし今だ、やれ!』
相棒に指示を出す。
直後、ワイバーンは火球を吐き…見事奇妙な飛竜に命中した。すると。
明らかに火球だけの威力ではない爆発を起こし、奇妙な飛竜は四散した。
『ぐわ、痛っ!?』
『おいどうした、無事かパルドゥラ!?』
『今のところは、隊長!あいつの破片が飛んできたんだ、俺はともかく相棒が心配だから一度離脱させてくれ!』
『許可する!それと各員、奴に攻撃する際はできるだけ距離を取るんだ!』
彼らの練度は相当なものであった。
当然といえば当然である。何しろ、列強パーパルディア皇国の皇都の守備という大任を預かる身である。
故に、奇妙な飛竜側の損害も大きい。数体が彼ら…魔信を受け、第一発見者である第17竜騎士団第4飛行隊以外の面々も駆けつけていた…により撃墜された。
しかし全滅はしていない。
生き残りの奇妙な飛竜共は投下や散布を終えたのか、そのまま北方へと悠々と去ろうとしていた。少なくとも、竜騎士たちからはそう見えた。
『奴らめ逃がすか、1騎たりとも生かして帰すな!』
コルソ隊長の号令の元、エストシラント上空から飛び去ろうとする奇妙な飛竜を追う。
が、しかし。
エストシラント上空の空域から離脱した数分後。
奇妙な飛竜は、すべて大爆発した。
『…は?』
確かに1騎も残らず奇妙な飛竜は消え去ったが、殺気に満ちていた竜騎士たちは拍子抜けする他なかったのだった。