神様転生した者だけど毎日が苦痛   作:八雲 紅

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北海道へ社員旅行に行ってました
そのせいでモチベやらなんやらで遅れてしまいました、申し訳ない

と、思ってたら推薦されましたね
これは元々無いに等しい文才を総動員して気合い入れて更新するしかないですね
マーサーさん、推薦ありがとうございます

そしてお気に入り2000突破!
もうびっくりです、皆さんありがとうございます


専用機登場の第17話

いえーい。

決戦当日になったぜ。

 

オルコットさんに宣戦布告されて一週間くらい経った約束の月曜日。

俺と一夏は第3アリーナのピットに居た。

 

 

「ついにきたな」

 

「ああ」

 

「俺たちはこの一週間」

 

「頑張ってきた」

 

IS専用のスーツに身を包んだ俺と一夏はお互いに頷き合う。

 

山田先生による放課後の補習授業は真面目に受けたし一夏は箒の指導の下、訓練を重ねていた。

 

 

「ドッジボールは凄かったな、鋼夜はよくあんな方法考えたよ」

 

「楽しめたなら何よりだ」

 

「特訓で楽しむのもどうかと思うけどな」

 

楽しい方がいいだろ?

そりゃそうか。ハハハ!

と、お互いに笑い合う。

 

ドッジボールとは、俺がこの一週間の間に行った特訓の一つである。

のほほんさんをはじめとするクラスの女子たちに協力を要請し、俺と一夏の二人だけとクラスメイトのチームでドッジボールをするという内容だ。

このドッジボールは通常と違い、数分経つたびにボールが一つずつ追加されていく。

 

外野と内野から迫るボールをオールレンジ攻撃に見立てて、それを避ける事を目的とした特訓だ。

これ特訓なんだけど、いざやってみると普通に面白い。

 

協力してくれたみんなに感謝。

 

 

「鋼夜は凄かったよな、どこまで残ったっけ?」

 

「8球が限界」

 

「いや凄い凄い。俺なんて3球でダメだったもん」

 

ふふ、ドッジボールの避け専で小学校の昼休みを潰した俺の本気を出せばこんなものよ。

しかし8球もボールを増やして、それで避けれたとか自分が怖くなるな。

 

 

 

「それにしても一夏のスーツは面白いな」

 

「俺も鋼夜みたいなやつの方がいいなぁ」

 

 

そして他愛も無い話に花を咲かせる。

 

ちなみに一夏のISスーツはグレーの生地に白い縁取りがされている上下のインナーだ。ぴっちりしてるのと臍が出ているのは仕様だ。

俺のスーツの構造は一夏と同じだが色が白で青いラインが入っている。あと臍が出てない。

 

IS専用のスーツというだけあって、見かけによらずかなり頑丈で機能も充実しているらしい。吸汗性で速乾性だったり拳銃くらいの弾なら受け止めたりとか。

 

普通のインナーとしても人気が高い。確かラビアンローズがISスーツの廉価版インナーを作って売ってた。

 

「いいんじゃない?このスーツって機能いいから普通に下着とかになってるし。あ、お求めの際は是非ラビアンローズの製品をお願いします」

 

「ははっ、考えとくぜ」

 

俺のもはや隠れていないステマに笑って対応する一夏。

対戦前だというのにお互い非常にリラックスしている。

 

 

 

「こないなー、機体」

 

「ああ。結局、練習には間に合わなかったな」

 

俺と一夏がなぜピットでずっと駄弁っているのか。

それは原作通り、一夏の機体が来ないからである。

俺の機体はもうすぐ届くけどね。

その辺は輝さんに確認済みだ。

 

いま、この場所には俺と一夏しか居ない。

先生達は機体の到着を待っている。

 

あの話をするなら今が好都合だ。そろそろ切り出そう。

俺は真剣な表情を作り、一夏の方へ向き直った。

 

 

「一夏。俺はお前に謝らなきゃならない」

 

「え?」

 

突然の事に一夏は間抜けな返事をするが俺の真剣な表情を見て、ただ事ではないと悟ったようだ。

 

「今回の模擬戦。俺はお前を利用した」

 

「どういうことだ?」

 

一旦、間を置いて深呼吸をする。

話す内容を頭でまとめて話を再開する。

 

「一夏、お前は現状の自分の立場が分かるか?」

 

「立場って……自分で言うのも恥ずかしいけど、『世界で初めてISを動かした男性操縦者』だよな?」

 

俺のいきなりの質問に一夏は少し考える素振りを見せた後、そう答えた。

 

「ああ、そうだ。でもその答えは満点じゃない。お前には更に『織斑千冬の弟』『篠ノ之束に近い人物』というのが加わる。そして俺は『二人目の男性操縦者』だ。だが、それだけだ」

 

俺の話を聞いた一夏は疑問符を浮かべて頭を捻らせる。

 

「それがなんで鋼夜が謝る事になるんだ?」

 

「例えば今回の模擬戦が、俺と一夏とオルコットさんの三つ巴になったとする。さあ、どうなる?」

 

「どうなる?って……考えたくないけどセシリアが全勝して鋼夜が俺に勝って俺が全敗……か?」

 

「正解。その場合、オルコットさんは調子に乗って俺たち男は肩身が狭くなり更に俺や一夏への風当たりが酷くなる。俺は『二人目風情が、お前よりイケメンな千冬様の弟様に勝つなんて、空気読めよこの野郎』と言われる。一夏は『ブリュンヒルデの弟なのに』と言われそうになるが後ろに居る人達が強烈過ぎて何も言われない。ちなみに一夏が俺に勝っても多分変わらない」

 

「…………うわぁ」

 

あれ、おかしいなぁ、目の前が霞んできたぞ。

 

「次に俺が全勝した場合。一夏については省略。オルコットさんに勝った場合、あの人は諸々の責任を取らされ、しかも素人に負けたというレッテルを貼られてIS学園を退学、最悪、あの人は代表候補を降ろされる。そしてそれに関連して俺が何か言われる」

 

「鋼夜……もういい、もういいから……」

 

泣いてない、泣いてなんかない。

 

「次に一夏がミラクルを起こして全勝した場合。これが一番丸く収まる。『ブリュンヒルデの弟だから』で全部解決。でもオルコットさんは多分退学。たぶん俺が『ただISに乗れた男と千冬様の弟様とでは格が違うのよ』的な事を言われるだけだから。もし俺が一夏に勝っても最初と同じ事を言われるだけだから」

 

「ごめん鋼夜!俺が悪かった!お前が謝る事なんてないから!俺が喧嘩なんて吹っかけなきゃ良かったんだ!」

 

「ワハハ、もう泣かないぞ。アハッ、アハハハハハハハハハハハハハハ」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「すまない皆、見苦しいところを見せた」

 

「いいんだよ。こっちこそゴメンな、鋼夜が色々考えてるのに気付けなくてさ」

 

「よーしよーし」

 

「まぁ、何があったか深くは聞かないが……」

 

俺の涙腺がトランザムしてバーストした時、ちょうど箒と一緒に応援に駆けつけてきてくれたのほほんさんのぬいぐるみ投げで正気を取り戻した俺は現在、のほほんさんに頭を撫でられている。恥ずかしいが、癒される。

 

「まぁ、全敗したくない俺のわがままでお前を巻き込んじまった。謝る」

 

「いや、鋼夜が謝る事は無いって!むしろ謝るのは俺の方だよ!」

 

頭を下げて謝罪する俺を、慌てて起き上がらせる一夏。

 

「鋼夜はさ、なんにも分からなかった俺を助けてくれたし、ISについても教えてくれたんだ。本当に感謝してるんだぜ?この勝負、絶対勝とうぜ!」

 

「……ああ。男の底力を見せてやろう」

 

 

そして一夏とハイタッチをした。

気合いを入れるにはハイタッチと決まっている。古事記にもそう書かれている(適当)

 

 

 

「……どういうことだ?」

 

「まぁ、やる気になったんならいいんじゃないかなー」

 

現状が飲み込めない箒とのほほんさんは終始疑問符を浮かべていた。

 

 

 

 

「セシリアは既に準備してるのか」

 

箒とのほほんさんによると、既にオルコットさんはアリーナにて俺達を待っているそうだ。

専用機が来てないから行こうにも行けないけどね。

 

「ああ。一夏、お前の専用機は来てないのか?」

 

「来てないなぁ……」

 

「こうやんも専用機来てないの?」

 

「うん」

 

どうしようか?という空気が辺りに漂い始めた頃、パタパタと誰かが走ってこちらに向かって来る音が響いた。

 

「き、来ましたよ!織斑くんと如月くんのISが!」

 

バタン、と扉を開けて現れたのは山田先生。

本当に急いでいたのか、顔が少し赤い。

そして一呼吸置いて山田先生は俺の方を向く。

 

「それと、如月くんには会社の方がお見えになってますよ?」

 

「え?」

 

会社……ラビアンローズから?一体誰だろうか。

 

すると、山田先生の後ろから二人の人物が現れる。

 

 

「やあ、鋼夜くん。久しぶりだね」

 

一人はラビアンローズの社長であり同志の輝さん。

いや、社長でしょあなた。ここに居ていいのか。

 

「おーう、久しぶりー」

 

次に現れたのは赤いシャツに黒い上着でアポロキャップをかぶった金髪の女性。

あ、あなたは……!

 

「姉御!ケイの姉御じゃないですか!」

 

「その呼び方は辞めろって!」

 

この女性は仁室 圭(にむろ けい)さん。ラビアンローズのIS開発チームの整備士である。通称「姉御」

俺が使っていたラビアンローズの訓練用ISを見ては使い方が荒いとよく怒ってた。

 

「ごめんね、遅くなっちゃった」

 

「いえ、構いませんよ。それで、俺の機体はどこに?」

 

「慌てんなって。ほれ、もうすぐ来るよ」

 

姉御に言われ、機械の駆動音がする巨大な扉、ピットの搬入口に注目すれば斜めに噛み合うタイプの扉が音を上げて開く。

 

 

そこには『銀』が居た。

飾り気の無い、素材そのままの色。

一つの鋼の塊がそこに居た。

 

 

「カラーリング代さえ無かったのかラビアンローズは……」

 

「いや違うからね、一次移行(ファーストシフト)したらちゃんと色が付くからね」

 

「冗談ですよ冗談」

 

輝さんのツッコミを受けながら俺はISに近付き、銀の装甲に触れる。

 

これが、俺の専用機。

俺の、相棒。

 

その事実を改めて実感し、思わず笑みがこぼれる。

 

「これが君の専用IS『四天(してん)』だ。お気に召したかな?」

 

「最高ですよ。輝さんも圭さんも、ありがとうございます」

 

輝さんと姉御に頭を下げ、俺は早速自らの専用機に搭乗するべく装甲が開いた状態の四天に乗り込む。

 

かしゃかしゃと装甲がせわしなく動き、装着されていく。

視界がISのハイパーセンサーを通したクリアなものに切り替わる。

 

「ふむ、既に乗っているな。すまないがフォーマットとフィッティングは実戦でやるように」

 

いつの間にか来ていた織斑先生が俺にそう告げる。

 

「分かりました」

 

そう答えると同時に装着が完了し、ピピッという音と共に視界に情報が表示される。

表示された情報は一夏のISとオルコットさんのISについてだった。

ふと、向かい側に意識を向けてみればISを身にまとった一夏の姿が見えた。

 

 

「どうだ?調子は」

 

ふと、姉御から声を掛けられた。

 

「すごぶるくらい良好です」

 

「そいつは良かった。ああ、そういえばパイロット連中から伝言貰ってるよ。「無様な戦いはするな」だとさ」

 

今回の事をみんなは知っているのか。

そうだな、負けたら俺を教育してくれた先輩たちの顔に泥を塗る事になるんだ。

絶対に負けられない。俺のためにも、みんなのためにも。

 

 

「こうやん、頑張ってね~」

 

「おう、任せとけ」

 

決意を新たにし、のほほんさんからのエールを受け取りカタパルトへ向かう。

 

 

「お、それが鋼夜のISか?」

 

カタパルトには既に一夏が居た。

 

「おう。俺の専用機『四天』だ」

 

「俺のは『白式(びゃくしき)』だぜ」

 

「言うほど白くないな」

 

「ぶっちゃけ俺も思ってた」

 

そんな事を一夏と話して居ると入場を促すアナウンスが入った。

 

「じゃ、お先」

 

「おう」

 

一夏に断りを入れ、カタパルトに乗り込む。

指定の場所に脚部を固定させ、後は流れに任せる。

 

「如月鋼夜、『四天』、いっきまーす!」

 

アリーナへの入り口が開き、俺は空へ飛び立った。

 

 

 

 

俺にとって、色んな意味で大事な最初の戦いが始まった。




ISはボールじゃないんです
ISはボールじゃないんです
大事なことなので二回言いました
ボールを期待していた方(が居るかどうか分からないけど)申し訳ない

新キャラの圭さん、勘のいい人なら直ぐに気付きますね

ぶっちゃけもし一夏がセシリアに勝ってたらセシリアは退学してたかもしれない
鋼夜が言ってる事もあながち冗談ではない、と思う

そして一次移行前の最初の状態の白式は全然白くない、むしろ灰色だと思う

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