神様転生した者だけど毎日が苦痛   作:八雲 紅

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眼鏡のおねーちゃー

デュノア社問題はポイーで


生徒会接触の第37話

 

楽しかった休日の日曜日をラビアンローズで過ごした翌日。

 

世の学生諸君が憂鬱になる月曜日。

他人の目を気にしつつ、シャルルや一夏と過ごす一日が終わって放課後となった。

 

そして俺はとある場所に向かっていた。

 

 

「ここが生徒会室か」

 

そう。

シャルルの事情を生徒会側に説明するために会長に会いに来たのだ。

そして来たのが生徒会室。

会長には事前にメールで生徒会室に伺う事は知らせておいたので居るだろう。

 

意を決して扉をノックする。

一呼吸置いて中から「どうぞ」という返事がしたので扉を開ける。

 

 

「失礼します。一年一組の如月です」

 

部屋へ入り扉をちゃんと両手で閉めた後に軽く一礼する。

 

 

「話は伺っております。会長はまだ来ていないのでこちらでしばらくお待ち下さい」

 

 

生徒会室には会長は居なかったが役員と見られる人が居た。

長い髪を三つ編みにした眼鏡姿の女子……リボンの色から察するに三年の先輩はにこりと微笑み、書類を机の上に置くと作業を一旦中断した。

俺を応接用のソファに案内すると部屋の隅でお茶の準備を始めた。

 

 

することが無いので俺は首を回して生徒会室を眺める。

 

会長用と見られる大きな机の近くには今お茶を準備している先輩が座っていた机ともう一つ別の机がある。

机の上がお菓子まみれなので恐らくあの席はのほほんさんのものだろう。生徒会役員って前に言ってたし。

 

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

そんな感じで推理をしていると先輩がティーカップを持ってきた。淹れたのは紅茶のようだ。

 

「いただきます」

 

俺は早速出された紅茶を口に含む。

紅茶なんて久しぶりだ。

 

先輩はにこりと微笑みお盆を片付けると、俺の正面に座った。

 

 

「初めまして、如月くん。いつも妹がお世話になっています。本音の姉の布仏 虚(のほとけ うつほ)です」

 

 

先輩の自己紹介で思わず飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。

 

なんだって?のほほんさんのお姉さん!?

あ、ああ。そういえば前にお姉さんがいるって言ってたな、忘れてた。

 

「一年の如月 鋼夜です。よろしくお願いします、布仏先輩」

 

なんとか平静を取り繕って返事をする。

 

「よろしくお願いしますね。如月くんの事は本音や会長がよくお話していますよ?」

 

「そうですか……ちょっと気になりますね。なんて言っているんですか?」

 

「それは秘密です」

 

布仏先輩からの意味深な発言が気になり、問いかけたが先輩はくすりと笑うだけで教えてくれなかった。

 

お姉さんは俺が妹さんと同室なのはどう思っているんだろう。

 

 

 

「はいはーい、お姉さんが来たわよー。よしよし先に来てるわね、えらいえらい」

 

と、そこで生徒会室の扉が開いて会長がやって来た。

 

そして布仏先輩が会長に一礼する。

さすがに会長と役員だからって畏まる必要は無いと思うが……二人はどういう関係?

 

「さてさて、大事な話があるって聞いたけど何かしら?」

 

会長が自分の机に座り、こちらに視線を向ける。

疑問を頭の外に追い出し、スイッチを切り替える。今は真面目にやらないと。

 

「ひょっとして告白かしら?」

 

「それは無いので安心して下さい」

 

 

「肉食!」と書かれた扇子を会長が広げるが速攻で否定する。

しかし、なんでもありだなその扇子。

 

 

ふぅ、と一呼吸置いてから俺は話を切り出す。

 

「シャルル・デュノアの件についてです」

 

俺がそう切り出すと、会長が目を細める。

 

「へぇ、やっぱり気付いてたの?」

 

扇子で口元を隠しながら会長はそう聞き返した。

反応を見る限り、会長も既に気付いていたようだ。

 

「ええ。お話というのは彼女を見逃して欲しいんです」

 

「理由を聞いてもいいかしら?」

 

紅茶を口に含み、喉を潤して会長にラビアンローズの提案を話す。

 

ラビアンローズが彼女を使って元凶のデュノア社をどうにかしたいので学園はその間は彼女に干渉しない、彼女を見逃して欲しい。

 

ということを話した。

 

 

「ふーん」

 

話を一通り聞いた会長の第一声。

 

「いいわよ。生徒会は彼女に干渉しないことを約束するわ」

 

そしてあっさり許可を下ろした。

あまりにあっさりし過ぎていたので俺は拍子抜けしてしまう。

 

「実は学園側には既にデュノア社から連絡が来てるのよ。「そっちに我が社の人間が行くけど手を出さないでくれ。あとシャルル・デュノアは女だから」って感じでね。そうでなければ織斑先生が黙っていないし、そもそも入学すら出来ないわよ」

 

そんな俺の様子を察してくれたのか、会長が説明してくれた。

しかしちょっと待って欲しい。既に学園に話が通っている?

 

「結論から言うと、学園側は貴方達を邪魔しないわ。むしろ応援したい気分よ。話が通っているとはいえあんな爆弾みたいな存在をいつまでも抱えたくないもの」

 

「まぁ……確かに。事情を知らない一般生徒にバレたら大変ですからね」

 

俺がそう付け加えると会長はため息をついた。

会長も大変なんですね。

 

「話は以上かしら?」

 

「あ、はい。わざわざお時間を作っていただきありがとうございます」

 

立ち上がり、一礼する。

そんな俺の様子を見て何やら頷く会長。

 

「礼儀があるね。えらいえらい、おねーさんはいい後輩を持った」

 

「会長はもう少し礼儀を持つべきだと」

 

「私はいいのよ、会長だから」

 

 

虚さんと会長が何やら漫才をしている。

……そういえば簪さんとのほほんさんは幼馴染みだったな。

ならば姉妹であるこの二人もそういう仲なのかもしれない。

 

 

「鋼夜くんに冷蔵庫のケーキを持ってきてあげなさい」

 

「いえ、お気遣いなく」

 

「まま、遠慮しないで」

 

そろそろお暇しようと席を立てば会長がケーキを勧めてきた。

さて、非常に嫌な予感がするぞ。

 

 

「それでね、鋼夜くん。ケーキやお話のお礼って訳じゃないけど、最近の簪ちゃんの様子をおねーさんに教えて欲しいなーって」

 

そして会長は「情報求む!」と書かれた扇子を広げる。

 

 

「もういい加減仲直りしろよ」

 

 

思わずそうツッコんだ俺は悪くない。

 

「家庭の事情だからあまり言いませんけど、俺の後ろをつけまわすのは辞めてくれません?」

 

「なんのことかしら?おねーさんわからないわ」

 

平静を装っているが会長が焦っているのが伝わる。

ええ、気付いてましたよ。いつも整備室の隅とかアリーナの観客席の隅から会長が覗いてくるの!

 

シスコンここに極まれり、と何回呆れたことか。

 

 

「如月くん、替えの紅茶とショートケーキです」

 

いいタイミングで虚さんが入ってきた。

 

「如月くん、会長はこういう人なの」

 

「ちょっと、私がストーカーみたいな言い方しないでよ!」

 

「ストーカーなんて言ってませんが」

 

と、まぁ色々会長が自爆しているが意地悪は辞めて正直に簪さんの事を話した。

一通り話し終えると会長は満足そうな顔をしていた。

 

 

流石にいつまでも姉妹喧嘩をされていてはこちらも窮屈だ。さっさと仲直りして欲しい。どっちが悪いのかは知らないけど。

 

 

そんな事を思いつつご馳走になったケーキを口に運ぶ。

 

美味しいな、このケーキ。

 

ああ、そうだ。夜には輝さんに連絡しないと。

 

 

 

「あ、そうだ。お礼にいいことを教えてあげるわ」

 

ケーキと紅茶を頂いたお礼を述べ、生徒会室を出ようとしたところで会長に呼び止められた。

 

「学年別トーナメントがタッグ戦になったの。三日後には発表されるんだけど、今のうちにペアを見つけておいたらどうかしら?」

 

会長がウインクと共にそう告げる。

遠回しに簪さんと組めって言ってますよね、それ。

 

「情報ありがとうございます。それでは失礼しました」

 

礼と共に退室。

俺は生徒会室を出て、真っ先に寮の自室へ向かう。

 

 

部屋に帰ったらとりあえずは輝さんへの報告。

そしてーーーー

 

「タッグを誰と組むか、だな」

 

ついに面倒なイベントだ。

巻き込まれは必須だが、どう行動するか。

 

「あぁ、鬱だ」

 

俺はおなじみとなったその言葉をポツリと呟くのだった。

 




キャー虚さーん

37話はこんな感じです
会長は犠牲となったのだ、シスコンという属性の犠牲にな……

前回アカメが斬る!の作品を書かないと言ったな、あれは嘘だ
詳しくは活動報告をご覧下さい
タイトルが完全にネタな奴です

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