この物語りには朝ノ光も登場致します。

読んでも大丈夫な方のみどうぞ。

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雨の思い出

 

ザー…ザー…

小雨でもなく土砂降りでもない心地良い雨音で目を覚ます。

 

ポチャン…ポチャン…

 

雨戸いから雨が滑り降ちる。

雨の日は憂鬱になる。雨が周りの音を吸収してまるで自分が一人ぼっちかのような錯覚に陥るからだ。

朝ノ瑠璃はそんな雨の降る朝、目が覚めた。

今日は任務も無い。完全な休日。それなのに雨が降って身体は気だるい、瑠璃は雨が嫌いだった。家事をする人にとって雨は天敵だ。家の中はジメジメして洗濯物は乾かず生乾きの臭いがする。これだけでも嫌になるには十分だが瑠璃の雨嫌いは他にあった。

 

(…起きなきゃ…)

 

いつまでも布団の中にはいられない洗濯に朝ご飯の準備、休日とはいえ、やらなくちゃいけない家事は沢山ある。

憂鬱な気持ちを取っ払うように掛け布団を勢いよく剥して体と頭におはようを告げる。

そうして朝の準備をしていると次女の朝ノ茜が起きて来る。

 

茜「…瑠璃ちゃん、おはようなのだ…」

 

まだ夢うつつな顔で瑠璃に朝の挨拶をする茜。まだ眠いのか欠伸をしつつ眼を擦る。

そんな愛おしい妹を優しく見つめて

 

瑠璃「あーちゃん、おはよう。ほら、もうすぐ朝ご飯もできるから顔洗ってらっしゃい。今日はデザートにプリンも食べていいから」

 

茜「本当なのだ!?すぐに洗ってくるのだ!」

 

茜はさっきまで眠そうだったのが嘘だったかのように目をキラキラさせて洗面所に向かう。

一方瑠璃は(我ながら甘いかなぁ)と思いながら洗面所に向かう茜を横目に見て口元が緩んでしまう。そして今は傍にいない三女、朝ノ光のことを思い出して寂しそうに目を伏せる。

 

茜「?…瑠璃ちゃんどうかしたのだ?朝ご飯焦がしちゃったのだ?」

 

瑠璃「っ!な、何でもないよ!ちゃんと美味しい朝ご飯作ったんだから変な事言わないで!」

 

秒で戻ってくるとは思わず(…しまったなぁ)と一人反省する。

 

(妹達に心配を掛ける訳にはいかない。だって私は朝ノ家長女なんだから!)

 

2人で席に座って朝ご飯を食べる。誰かと一緒に食べるご飯は格別だ。それも可愛い妹と一緒となればこれに勝る朝ご飯はないだろう。

 

瑠璃「ご馳走様でした」

 

茜「ご馳走様なのだ!」

 

ちゃんと手を合わせて朝ご飯を〆る。

長期任務から帰って来た茜は暫く休暇を貰っていた。つまりずっと一緒に居られる。一人の時を長く過ごした瑠璃にとって妹の存在は大きかった。

そして茜と一緒に洗濯物を畳んだり、家事をしていたら夕方になった。

 

シトシト…シトシト…

 

雨も小雨になってきたが、まだ止みそうにはない。唐突に茜が

 

茜「ぼく、雨の日って好きなのだ!晴れの日も好きだけど雨の日も好き!瑠璃ちゃんはあんまり好きじゃないのだ…?」

 

瑠璃「嫌いじゃないけど好きでもないかな、あーちゃんはなんで好きなの?」

 

心を見透かされたようで少し動揺する瑠璃。そんな瑠璃を見つめて茜は太陽のような笑顔で語る。

 

茜「瑠璃ちゃんは覚えてないのだ?雨の日の学校帰りのこと、瑠璃ちゃんとひーちゃんの3人で傘を半分こして帰った日のこと」

 

 

瑠璃は言われて思い出す。子供の頃の夕暮れ時のことを

 

────、あれは、そう授業が終わって3人で帰ろうとしたときに、

 

 

光「あ、雨。私傘持ってくるの忘れちゃった…」

 

瑠璃「もー、ひーちゃんは!朝は晴れてても予報だと降るかもしれないって言ってたんだから折り畳み傘とか持ってこなくちゃ!」

 

光「姉さん…、ごめんなさい」

 

茜「ぼくはちゃんと傘持ってるもんねー!」

 

瑠璃「ほら、ひーちゃん一緒に傘に入ろ?半分こ!」

 

光「…!うん!ありがとう姉さん!」

 

瑠璃「ところで、なんで朝は手ブラだったあーちゃんはちゃんとした傘を持ってるの?」

 

茜「ふふん!ぼくはこんなこともあろうかと傘を置きっ放しにしてるのだ!」

 

瑠璃「威張っていうことじゃありません!もし誰かに使われたりしたら嫌でしょ?」

 

茜「うっ…!確かに嫌なのだ…これからは気を付けるのだ」

 

瑠璃「うん!それじゃあ3人で一緒に帰ろう!」

 

もちろん折り畳み傘は小さい、いくら子供とはいえ2人は入れない。瑠璃は妹を濡れさせまいと傘を光に傾ける。そんな瑠璃を光は申し訳なさそうに見つめていると瑠璃は笑顔で返してくれた。

 

光「姉さん、ありがとう」

 

茜「ふ~んふんふん♪う〜なのだー!♪」

 

 

茜はそんな2人の周りを鼻歌交じりにくるくる回りはじめる。

 

パシャパシャ…~♪♩♬…パシャッ♪…パシャシャ♪♩♬

 

瑠璃「もう、あーちゃんは…」

 

言葉とは裏腹に口元は緩んでしまう。

 

瑠璃「あんまりはしゃいでると転んじゃうわよ?」

 

茜「だーいじょーぶなーのだー!♪」

 

──あっ!

 

茜「!っとと!セ、セーフなのだぁ…(チラッ」

 

瑠璃「ほらっ!もう、大人しくしてなさい!転んで忍装束が汚れたらお母さんに怒られるわよ?」

 

茜「うぅ〜…、わかったのだ…」

 

光「茜ちゃんはどうして雨なのに元気なの?」

 

茜「?どうして雨だと元気がなくなるのだ?」

 

光「髪の毛は纏まらないし、ジメジメするし…はっ!(でも雨のお陰で姉さんと相合傘!雨!好き!)」

 

瑠璃「…(見なかったことにしよう)、お姉ちゃんも太陽があったほうがいいなぁ、セロトニンもたくさん採れてみんな幸せになるし」

 

茜「太陽ならでてるのだ!」

 

瑠璃&光「??」

 

茜「ぼくが”茜色”の太陽なのだ!瑠璃ちゃんとひーちゃんが落ち込んでるときもぼくが元気なら問題無いのだ!」

 

茜の満面の笑みは本当に太陽の様だった。

 

光「茜ちゃんが太陽で本当に大丈夫なの~?」

 

茜「む!大丈夫なのだ!」

 

瑠璃「ほら、2人とも!また転んじゃうわよ」

 

茜&光「…はーい」

 

 

──3人共目線が合う。

 

クスッ

 

瑠璃&茜&光「あははははっ」

 

3人一緒になって笑った。雨の湿気なんて吹き飛びそうな程に元気に笑っていた。

 

─────、

 

幸せな時間だった。最愛の妹達に囲まれて過ごした日々。最近の多忙な日々で忘れていた。いや、思い出さないようにしていたのだ、だって…

 

今隣りに光は、ひーちゃんはいないのだから…

 

幸せな思い出のはずなのに胸が苦しくなる…

 

ひーちゃん…会いたいよ、ひーちゃん…

 

光が長期任務に赴いた日もこんな雨の日だった。雨は嫌い、だってひーちゃんを連れてってしまったから…でも

 

隣りに茜がいる手前、涙を必死で堪える瑠璃。その様子を見兼ねて

 

茜「瑠璃ちゃん!大丈夫なのだ!ひーちゃんは必ず帰ってくるのだ!だからそんな哀しい顔をしないで?ぼくも帰って来たのだ!瑠璃ちゃん、笑顔が1番なのだ。おはセロトニ~ンにん♪ぼくが”茜”色の太陽になるからセロトニンをいっぱい摂取するのだ!」

 

飛びっきりの笑顔をこちらに向ける茜。思わず笑顔になる。

 

(妹に励まされるなんて私もまだまだだなぁ…)

 

落ち込んでるのも見透かされて励まされてしまった。

 

(いつまでも哀しんでなんかいられないよね!ひーちゃんの居場所は”私達”で守っていかないと!)

 

瑠璃「あーちゃん、ありがとう!おはセロトニ〜ンにん♪あーちゃんのセロトニンたっくさん採れたよ!」

 

茜「瑠璃ちゃん、やっと本当に笑顔になってくれたのだ!瑠璃ちゃんが元気無くてもぼくがいつでも元気を分けてあげるのだ!」

 

(きっと大丈夫、あーちゃんと一緒なら、どんなときでも笑顔で)

 

茜「ひーちゃんも瑠璃ちゃんが笑ってないと任務を頑張れないのだ、ぼく達は三姉妹!離れていてもずっと一緒なのだ!」

 

瑠璃「っ!!…そうだね、あーちゃんありがとう!お姉ちゃんもう大丈夫!」

 

私達は三姉妹、1人で頑張らずにお互いに補い合えばいいんだよね。そんな当たり前のことも忘れる程の目まぐるしい生活、これからはもう少しあーちゃんを頼ろうかな。ひーちゃんならきっと大丈夫。今は会えなくても絶対に「おかえり!ひーちゃん!」ってお出迎えするんだから!

 

雨の思い出

センチメンタルになりがちな雨。でも少し見方を変えてみてください。きっと哀しい思い出ばかりじゃないはず。

 

瑠璃「あっ、雨上がってきたね」

 

雨は止み、雲の隙間から夕陽が射し込む。

 

茜「茜色なのだ!」

 

はしゃぐ妹を微笑みながら見て(雨の日も悪くない)そう思う瑠璃だった。

 

今日も朝ノ家の庭のどこかで3色の朝顔達が綺麗な花を太陽に向かって咲かせていた。

 

 

 

 

 


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