そもそも何でこんな本来シリアスなところで好感度稼いでるんでちょうねマスターは……
「……何でだよ」
可笑しい。こんなことは有り得ない
原作を考えろ、キールはラフタリアやリファナと違って五体満足だ。多少やつれてこそいたものの、原作で出てきた時にも警戒心こそあったものの普通に動けるし喋れる程度には元気だった。一歩間違えれば死んでたのだろうラフタリアや、原作ではそもそも死んでいるリファナとは訳が違う
だからこそ、キールは無事だ、無事に決まってる、そうでなければ可笑しいのだと、俺はある種意図的にキールのことを考えないようにしていた。どうせ、俺が死なずにいればそのうち尚文が買うんだからな、と。探すべきかもと思ったこともあったが、それよりも未来を優先した。それは全て、キールとは原作では生きてこの先出会うことになるから、だ
だが、これは何だ?俺は何をしている?
友達を……いっそラフタリアよりも仲が良かったかもしれない実質同性のコイツを!たった一人で!こんなに苦しませて!何も出来ずに死なせて!
一体全体何を慢心していた、このクソネズミ!
「……どうして、こんな」
ああ、クソナイフ
どうしてお前はこんな時に居ない。俺は神じゃない。お前のスキルがなければ、キールがどんな想いで死んでいったのか、それすらも解ってやれないじゃないか、精霊畜生めが
いや、違うな。ネズ畜生か
「お姉さんも探したんだけど」
「……何でだよ
何で、キール……お前が死ななきゃいけないんだ」
「メルロマルクのせいよ、マルちゃん」
「んなことは知ってんだ!」
メルロマルクに殺された、そんなもの大前提にも程がある。そうじゃない。俺が知るべきなのは……俺がぶち殺すべき仇は誰なのか、それだけだ
……ああ、もしも杖の勇者だったらどうするかな。この世界を守るという観点から見れば、現状フィトリアと並ぶ唯二の正規七星勇者、それを私怨で殺すなどゴミカスのやることだ。世界を守り抜くため、その怒りは捨てるべきなのだろう
知るかボケが。そんな理屈どうでも良い、お前のせいならばぶっ殺すぞ叡智の賢王
「……」
静かにかつて幼馴染だったものを見下ろす
なあキール、お前は復讐なんて望んでるのか分からない。いや、お前は結構優しいからな、ラフタリア達が無事なら普通に生きてってくれた方が良いのかもしれない
でもさ、俺は……ちょっと、そうやってお前の願い通りにはいけそうにないや。だって俺は……瑠奈が太陽で居て欲しいって最期に願ったにも関わらず、雷を纏う復讐者になっちまったようなバカだから
「……でも、何でですか」
「マルちゃん。メルロマルクはもう、亜人の暮らせる世界じゃないのよ」
「そんなものセーアエット領以外では元から!」
『ばちばちー』
と、フィトリアからのコール
なんだよフィトリア
『えっとね、おしろのみんな言ってたよ
ごしゅじんさまが言ってた、殺さなきゃ俺達は絶滅させられちまうって』
……何だよそれ
『しるとうぇると?が攻めてきてみんな殺されちゃうんだって』
「シルトヴェルトとの戦争の為らしいわねー」
「シルトヴェルトと?
それはまあ、亜人の神である盾の勇者をメルロマルクが呼んだから仲は元々険悪なのが悪化してても可笑しくは無いけれども……」
だが、原作ではシルトヴェルト側はやさぐれ尚文に関わるなと言われてそのまま本当に何も関わらなかった程度には盾教徒だ。この世界でもそれは同じはず
尚文が死ぬかメルロマルク滅びろしない限りシルトヴェルト側からメルロマルクに攻めこむとかまず無いはずなのだが
『でもねー、何時しるとうぇると?に殺されても可笑しくないってなってたよ?
女王さま?が戻らなかったら今頃逆に攻め込んでたってくらいにはじゅんびしてた』
何だよそれ。俺の知るメルロマルクより更に好戦的過ぎる。そこまで亜人が嫌いか叡智の賢王。真面目にどうしてなんだ
「マルちゃん、盾の勇者様を知ってるのよねー?
なら、ハクコの仲間は居るのかしらー?」
と、サディナさん
「ああ、フォウルの事ですか」
「マルちゃん、ハクコってどんな種族だったかしらー?」
「叡智の賢王にとっての仇敵、叡智の賢王の妹を奪うも奴に基盤ぼろぼろにされて没落した旧シルトヴェルト四大種族です」
「……そんなのが亜人の神のところに都合良く合流したらどう思うかしらー?
お姉さんがメルロマルクだったら、怖くて仕方ないわねー」
フォウルゥゥゥッ!てめぇのせ……いや、俺のせいなのか、そこは
「しかもそのハクコ、王女を誘拐して人質に取ったって聞いたわよー」
そこはてめぇのせいだフォウル!いや、でも原作でも盾の勇者に罪を着せるためにメルティは使われた訳だし、そこを言っても仕方がない。助けなければメルティはそこで死んでいて、王女殺しと言われた訳だしな。殺人犯よりは愛ゆえに逃避行的誘拐犯の方が何倍かマシだ
「……だから、なんですか」
『ちがうよー?』
違うのかよフィトリア!ならフォウルの話は何だったんだ
『ハクコはおまけー』
……おまけ扱いかよフォウル。何だよハクコをおまけに出来るバケモンって
『もうこの国のなかに、しるとうぇると?の影の中でもおそらくさいきょーのバケモノが来てるって、うわさらしいよー』
誰だそんなバケモン
『……ばちばち、ききたい?』
聞かせてくれ、フィトリア
『しろくてー』
白いのか
『盾を何かと裏から助けててー』
シルトヴェルトがそんなことしてたとは気が付かなかった。実は暗躍してたんだな、尚文に拒否られて不貞腐れてると思ってた
『ばけものそのものなつよさでー』
そりゃそうだろうな。強くなければ影なんてつとまらない
『こくおーに正面からけんかうった?』
スゲエなその影
『しるとうぇると?のはつかねずみー』
………………ハツカネズミ?ハツカ種の亜人?
……俺じゃねぇかそいつ!
……そういえば、だ。リファナ達を尚文に売って貰う際に、嘘も方便と勇者のフリをしながらこれはシルトヴェルト側の思惑だと話したはずだ。だとすれば、だ。シルトヴェルトの思惑で盾の勇者に売られた亜人と幼馴染なネズミはシルトヴェルト側の影、と思われても仕方がないのかもしれない
『ごしゅじんさま、ネズミに殺されちゃうの?ってみんなこわがってたよー
ばちばちがそんなのするはずないのにー』
……そう、か
あの時城のフィロリアル小屋のフィロリアル達が近付いてこなかったのは
女王であるフィトリアに畏れを抱いていたのではなく。自分の主人を殺しかねないメルロマルクで盾を支援し荒らし回るシルトヴェルトの影と目される俺を警戒していたから、なのか……
『そだよー』
何で言わなかったんだ、フィトリア!
と、切れても仕方がないものに八つ当たり。意味もなく、寧ろ悪い意味しかないけれども
「俺、なのか」
……俺が居たから、亜人迫害は強まった
俺が調子に乗っていたから!
「俺が、俺が!
キールを殺したのか!」
『ちがうよー?殺したのは、メルロマルク』
「マルちゃん、そんな事を言ったらお姉さんも」
「違う!」
甘い言葉を振り払う
畜生が!
何をやっていた!と、軽く思い出す
前兆はあった。幾らでもあった。何度でもだ
でも、俺はそれを無視した。行けるとした。キールは原作で生きているから
その結末がこれだ。バカが!
『……ごめんね、ばちばち』
何を謝る、フィトリア
『フィトリアね、亜人が殺されてるってしってたの
でも、ごしゅじんさまは人間同士の争いに手出しはいけないって言ってたから』
何を謝ることがあるフィトリア
……お前は、亜人が……キール達が人間だと思ったから、手出し出来なかったんだろう?有り難う、メルロマルクのゴミどもと違って、
目尻に、軽く熱
涙だろうか。馬鹿馬鹿しい。お前にそんな資格があるものか
キールを殺したのは俺だ。何であの時、キールは大丈夫だなんて思った
それが、キールを見殺しにすることに繋がると、何故気が付かなかったんだ、このバカネズミ!
「マルちゃん……」
さっきまで立場が逆だったというのに
サディナさんに、優しく抱き締められる。その瞳に映るネズミは、軽く涙を溜めていて
「畜生!畜生っ!」
その手を振り払い、動かない左手ではなく右手の爪でその目を掻き切る
「マルちゃん!?」
『ばちばち?』
「……せめて
せめて、怒れよ!友人だろ……」
自分で目を潰し、滲みぼやける視界のなか、ぽつりと呟く
……復讐の雷霆。その力は怒りの力。怒り狂っているのならば……その目は、赤く染まっているはずだ
ああ、だから……今、俺の目は血で真っ赤に染まってなきゃ、可笑しいんだ。そうでなければ……俺にとって、キールは……
どうでも良い奴だったって、そんな話、あるかよ、畜生が
『ごめんね、ばちばち』
だから、謝るなよ、フィトリアは何も悪くない。お前はただ、勇者としての役目を果たしてただけだ
……怒れよ、応えろよ、復讐の雷霆。俺の異能力なんだろう?せめて、友人の仇くらい取らせろよ!
……所詮、自業自得か。何一つ、発現する気配はない
「……せめて、キールを葬ってやらなきゃな」
こんな俺に、葬られたくなんて無いかもしれないが
と、不意にサディナさんが動かないことに気が付いた
血塗れの瞳すら貫通する光。これは……
「マルちゃん、これ……」
飛び込んでくるのは半透明の光。原作ではリーシアが持っていたのとおそらくは同じであろう不完全な光。目の裏側に点灯するのはやっぱり不完全な投擲具のアイコン。どっかの転生者にでも捕まったのだろう。それでも
かつてのよしみか来てくれた。それでも、言わせてくれ
ったく、遅いんだよクソナイフ
もう、大抵の事が……取り返しのつかない事なのに
せめて、この場所には葬りたくなくて、クソナイフを翳す。滲んだままでは分かりにくいが、キールの体は光となって、剣の中に消えていった
……御免な、キール。俺のせいだ。俺がお前を死なせたようなものだ。そんななのに都合が良すぎる、それは解っている
でも、せめて……転生者や
……俺、最期まで泣かなかったぞ、ネズミ!だから、最期まで諦めんなよな!友達だろ?
……不意に、そんな声が聞こえた気がして……
……静かに目を閉じる
ああ、解ってるよキール。最初から、わかっていた事なんだ
女神メディア・ピデス・マーキナー。俺は、お前を殺す。何があろうと
この世界を守るとかそんなんじゃない。そんな高尚なものじゃない。そんなの勇者に任せれば良い。ただ、俺がお前を許せない、それだけの私怨。これは俺の……『雷霆』の、復讐だ。転生者の呪いがあろうが、何だろうが。そんなものは知ったことか
リファナを、キールを、ラフタリアを……皆を傷付けた波の元凶である、貴様を
欠片一つ遺さずぶっ殺す!それが、俺の……御門讃の怒りだ!
微かにだが掌に迸る雷撃を握り締め、誓う
『カースシリーズ、激怒の■の解放条件が達成されました』
ネズ公的に、怒っている自分は赤い目をしているはずです。ネズ公にとって復讐の雷霆は前提ですので
逆に言えば、自分が赤目をしてないという事は怒っていないという認識になってしまうわけですね。友人が死んだのに赤目ではない、それがネズ公的には許せなかったので自分で自分の目を切って血涙流すことで無理矢理赤くしましたとさ
大分精神イカれてますねこのネズミ
まあ自業自得なんですが