パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

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ラフーの神の依頼

「……それが覚悟ですか」

 「そうだよ」

 

 ……視界の端の車輪が回る

 懐かしい感覚。視界の端が車輪の辺りから赤く染まり、そしてスパークを走らせる

 復讐の雷霆。何だよ、今更いきなりか?

 『えっとね、フィトリアのおくすりのせいだから、別のおくすり飲ませたよー』

 ……本気であの薬の影響だったのか

 それでも、本当に必要だったときに使えなかったことには変わりがない。消えたわけでは無かったのだ、激怒のカースシリーズに汚染されていた時強引に絞り出せていたように、使おうと心の底から思えば使えたはず。だから、言い訳はすまい、俺のせいだ

 『ばちばちー

 フィトリアが抑えてるだけだから、つかいすぎたらダメだよー』

 なんだそりゃ

 と、銀髪の少女の方を見ると、微かに電気がその右手辺りに走っている

 「痛いのか、それ」

 「だいじょーぶ!まだまだたえれるよー」

 痛いんじゃないか。ったく、情けない!

 

 半透明なクソナイフを構え、性能を確認

 ステータスの大半が砂嵐だな。しかもタイムリミットまである。更にはかなり短い。もうあと数分だな

 使える機能や強化まで制限されていて、素材を吸って新規武器を解禁する基本性能以外は使えなくなっている。ちっ、こそっと資質向上したかったが無理か

 『フィトリアがやる?』

 ……あ、その手があったのか。完全に忘れていたなそれ

 それは後にして、だ

 本気でお前……まさかとは思うがキールをこのくそったれな場所に眠らせない為だけに飛んできたのか?今の所有者の元から

 ……っておい、大昔の称号である『見た目は大人、頭脳は子供』を今更出してくんな。違うなら違うと……

 『称号解放 その名は、名?探偵ネズミ』

 一連の流れかよ!?俺の世界のサブカルチャー(もじ)るとか幅広いなお前のネタ!?というかその認識合ってたのかよ!?

 

 ……何か疲れた。とりあえず、お前は間違いなくクソナイフだが、キールを葬ってくれて有り難う。こんな世界で眠らされるよりは、きっと安らかに居られるだろうから

 「……来いよ、神ラフー

 確かめてみる気は、あるんだろう?」

 「良いでしょう

 フィトリアがそれだけかっているのです。確かめてみなければ」

 「本気……ではないか」

 「気付かれないギリギリの強さで相手をしてあげましょう」

 「良いだろう

 フィトリア、一瞬だけ痛いぞ」

 逆に今は行ける。復讐の雷霆、覚醒とはいかないまでも、ある程度の段階までは発現可能だ。それはフィトリアのおかげらしいから一言告げて

 

 「……では」

 「行ー」

 っ!危なっ!

 一息ついた神ラフーが右手にピコピコハンマーを持ち、左手で指を鳴らした

 俺にまともに認識できたのは、そこまでだった

 

 「∞ボルテクス・ガン・ショッ……

 いや、無理か」

 1.7秒後、7度の攻撃を終えてさも動いてませんよとばかりに狸耳を揺らす神に向けて、そうクソナイフを突き付けつつ息を吐く

 「こっからボルテクス・ガン・ショットを撃って届くより、8撃目を食らう方が速い

 完敗だ」

 一拍遅れて、漸く自分が無意識に何をしていたのか理解する

 反射的に本能で何とかしてたからな、思考が追い付いてない。ただ、今の俺では無理だって事は良く良く分かった。ってか、何とか追い付いて捌けたと思ってたんだが……捌ききれてないじゃねぇか。7回の攻撃かと思ってたが1回の攻撃に6~7発重なっている。そのうち1~2発は捌けてなかったのだろう、今更衝撃が来たぞおい

 「うぇっぷ」

 見ると神ラフーは既にハンマーを腰に戻していた

 「今のは手加減に手加減をして手抜きまでした段階です。どうでしたか?」

 「……やべぇな」

 「それしか言うことは無いんですか」

 「俺の世界の超S級異能力も人智を越えたとかバトル漫画とか言われてたが、そんなレベルじゃないな

 覚醒段階が使えてたとして、相手になったかどうか……」

 「どれだけ自分の能力を上に見てるんですか……」

 何だろう、視線が生温い

 

 「まあ良いです

 一秒耐えられたのはちょっと想定外でした」

 「どんだけ弱い想定だったんだよ俺。10秒くらい持たせる気でいたぞ俺」

 まあ、実際はその2割も持たなかったんだが

 行けると思ったんだけどな、ボルテクス・ガン・ショット。フラッシュピアースを越える今の俺の最速。それはあまりにも、まだ、遅すぎるか

 

 「合格か?」

 「ギリギリなんとか端には?」

 「ほぼ不合格じゃないか

 はぁ……」

 「それで、ですが」

 「女神相手に勝てと?」

 「勝てませんよ、基本

 入ってこられないようにするのが大前提……の、筈なんですけれども」

 「……そもそもループの原因が女神であるならば、入ってこられないってのはそもそも有り得ない、のか」

 「はい。既にこの世界に奴は来ています。というか、この世界が始まった……ループ開始時点で既にこの世界の何処かに潜み、自分が動き出せる時を待っているのです」

 「8つの世界が融合するまで、か」

 「はい。今の段階で既に自由に動けたら完全に詰みでしたが、自分が降り立つには土壌が足りていない今のこの世界の段階では、向こうも自由には動けないのでしょう」

 「……そんなもんなのな」

 「でも神様が居ることには変わりがないから世界の壁は脆くなっちゃってるんだってー」

 と、フィトリアの補足

 「だから神ラフーも来れたし、ヘリオスとかいうのも暗躍できたと」

 「そして、本来は世界に押し返されてしまう程の数の転生者も来れてしまう訳です」

 ……だからか。やけに俺含めて転生者多いと思った

 「あと、神ラフーは止めてください」

 「じゃあ超ラフーゴッド?」

 「もっと悪いですよそれ!?もっと普通にラフタリアさんとか……」

 「俺にとってのラフタリアって……ナオフミ様ナオフミ様してる幼馴染の方だから何か印象違うのをラフタリアと呼びたくない」

 「この世界の私って……」

 「尚文信者?」

 「しっかりしてくださいこの世界の私!

 せ、せめて相手がナオフミ様なのが……」

 「因みにアトラはタクトんところに居たんだが、アレどうにか出来ないだろうか」

 「ア、アトラさぁぁん!?」

 何だろう、無駄話楽しい

 

 「兎に角、貴方にやって貰いたいのは……

 最後の最後、女神の足止めです」

 「何だそりゃ」

 「神の存在は世界の抵抗を弱めます。今私が此処に居られるように、世界が歪んで簡単に入れるようになります。本来はそうぽんぽん入れるようなものでは無いんですよ?多くの手続きや許可を得て……」

 「コード:ケラウノスとかいう神はピンチに急にほいと現れてたけどな」

 「……何で知ってるんですか」

 「昔の映像?」

 「あれは……能力の性質が広がり行く力という関係上干渉力が半端じゃなくて土壌も抵抗も関係なしにほいと異世界に降り立てる意味分かんない神なので……

 速さは力というか、次元を越える速度ならば次元を引き裂けるからそれで相手は死ぬというか……」

 何だそりゃ。とりあえず

 「もしも世界を侵略する側だったら終わってんな」

 「なにかを守ることには致命的に向いてないらしいのですが……。万一世界を侵略してきたら、それこそ時間すら凍らせるらしいので相手の足を止められそうな『氷結』の勇者とかそういった相手を呼んできて上手く何処かで遭遇できるのを祈るとかそんなレベルになりかねません」

 「女神メディアよりタチ悪くない?」

 「悪いですよ!そんな彼が手を貸してくれればあの神を詐称する厄介な相手を逃がさないのも少しは楽になるのですが……」

 「言われてんぞヘリオス」

 「……まあ、本体が来た日には神を詐称するアレがなりふり構わず世界を壊して逃げてしまったというオチになる可能性があるから本体は来れないそうですが」

 「はぁ、使えねぇ」

 「そ、そだねー……」

 微妙な表情の二人に首を傾げ

 

 「まあ、それは良いです

 やって欲しいのは……足止めです。そこまで事態が進めば、私やナオフミ様が入れます。少しだけ時間は掛かりますが……。私達が来れればまだ勝ち目はあります。ですから、媚びを売るなり話をするなり相手の嗜虐心を擽るなり何でも良いんで私達が入れるまで四聖……いえ、そのタイミングでは八聖ですがそのうち誰かを守りきってください」

 ……ああ、こいつラフタリアだな、と思う

 

 嘘つきラフーの悪い癖が出てるぞ、神ラフー

 さて、何が嘘なのやら


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