ふと、疑問に思う
「神ラフー
この世界には奴が……女神メディア・ピデス・マーキナーが既に居るんだよな?」
「ええ、そうです」
「ならば、何故あんなものが居る?別に女神の僕ではないんだろう?」
原作……本来の歴史では現れる事の無かった巨獣。普通に考えて可笑しい
「そうそう、ラフのお姉ちゃんはしってるのー?」
と、横でフィトリアも首を傾げている
……何で呆れたような目でこっちを見るんだ神ラフー
「分かりませんかフィトリア?」
「フィトリアわかんないよ?」
「貴女ですよ貴女!」
「?」
はあ、と息を吐く神
「簡単に説明しましょう。アレは……確か通称神獣神パラストラ・D・ミルギアは世界を滅ぼしてその世界を守る獣を殺し、その亡骸を自前の死霊術で操って悦に入る変態です」
「……リファナが危ないのか!?」
「危なくありませんよ!?きちんと話を聞いてください!」
……うん、まあ。リファナは世界を守るとかそんなんじゃないしな
「彼の狙いは恐らく四霊。或いは……それとはまた別にこの世界を世界を守る特異な獣、即ち神鳥フィロリアルクイーンです」
「フィトリア、ねらわれてるの?」
「ええ。貴女や四霊をあの巨鯨と同じように従える、それが奴の目的なのでしょう。理解したくもありませんが」
「神ラフー、お前は?」
「アレは完全な獣の姿を取り得てその姿を主とする者にしか興味がないらしいので、私は範囲外かと」
「難儀な変態だな!?
……いや、それとメディアが既に居るのにあのケートスってのが現れた事に関連性あるのかよ?」
「大有りです
女神メディア・ピデス・マーキナーは本来とてつもなく強大な神です。神々でもそうそう手は出せない程に。ですから、彼女が狙っているこの世界に、奴は手を出せなかった。あの女神の不興を買い、真っ向から潰しに来られればひとたまりも無いでしょう。あの変態神はそういうものです。死霊術で操る獣達……神獣と称される彼女等を無視すれば、そう戦闘力は高くありません。それこそ、私達が神にならなかったとしても……いえ、貴方なら理解できると思って言いますが、本体だけならばリファナちゃんを生かした歴史の槍達なら現実的な確率で勝てる可能性はあります」
「だから本来の歴史では手を出してこなかったと」
確か神ラフーの言う歴史……外伝・槍の勇者のやり直しとして俺は読んだ世界ーこの世界に近い形で繰り返された歴史の中の槍の勇者達は確かに強かった。が、それでも眼前のラフタリア(神)に手も足も出なかったはずだ。それで勝てるというのは……弱すぎないか?
「ええ。ですが……その本来の歴史で、あの女神はナオフミ様達によって倒された
最後の力でもってこの世界を産み出し潜伏したようですが……大きく力を弱めた事は間違いありません。ならば、その時アレはこう思ったのでしょう」
「『バッキャロウ生まれたての神どもにボコられた後の女神なんざ怖くねぇ。今まで怯えすぎてたのがバカらしいわ』と?」
……何で黙るんだ二人とも
「い、言い方がですね……
ですがとりあえず、そういうことです。女神の怒りに触れて殺される恐怖故にこの世界から手を引いていた他の神が、私達に負けた女神は恐れる事もないとちょっかいをかけ出した……。その先鋒が、あの神獣なのでしょう」
「……ならば今更怖くねぇとお前らも来いよ神狩りの神共ぉっ!」
……その言葉は空しく響いた
「ってか神獣だか何だかが入ってこれるなら来れるだろコード:ケラウノスの野郎ぉぉぉぉぉっ!」
何処に要るかもしれない俺が記憶で見た限り最強のボケ神に向けて吐き捨てて
「そだねー」
……何だろう、心なしかフィトリアの目すら生暖かい気がする
「とりあえず、ですが……」
『コォォォォォォ!』
再び、鯨が吠える
その音は大気を震わせ……
「っ!サディナさん!」
視界の端で車輪が回る
雷撃が俺の眼前に降り注ぎ、轟音と共にまだ残っていた亜人の死体が残らず灰に還る
「っあっぶね!」
なんて呟く俺の目に軽く頭のネズ耳から垂れてくる赤いもの。まあ、当然ながら血である
「掻き消さなきゃ鼓膜吹っ飛んでたなこりゃ」
「そうねー」
話に付いていけてなかった鯱の女性が肯定する
「ふぇぇぇぇぇぇっ」
あ、リーシアの奴雷の方にビックリして腰抜かしてやがる。頑張れリーシア
「……あの神獣は、私がなんとかします。幸い、ケートスは移動能力に長けてこそいるもののあの変態神が特に気に入っている5体の神獣の中では戦闘力は高くない個体です。今の手加減に手加減した私でも世界から共に弾き出されるくらいの事は出来ます」
「……あいつ以外にも居るのか。ってか、吠えただけで鼓膜破られかけたんだが」
「ええ、全部で100体を越えるほど」
……鼓膜の件は無視か。まあ、防げたしな
「魑魅魍魎の百鬼夜行かよ」
獣ハーレムってか?嫌だな本当に。ってか、女神メディアだけでもどうすんだなのに来るんじゃねぇよホント
「……兎に角、気を付けるべきは……残り4体のあの神のお気に入りです」
「それは?大体の外見だけで良い」
「……天轟虹竜ヴェルムート、白星空蛇ケツアルカトル、黒霧死王ベルゼビュート、そして……傾界仙狐タマモ」
「なるほど、大体分かった」
ドラゴン、空飛ぶ蛇、恐らく巨大な蝿、狐か。どいつもこいつも獣だな。話を聞くに人間に化けてくるとかは無く、もしも来るとしたら真っ正面から世界を割って降臨するだろうことが救いか。人に紛れて接触して不意を撃つとかしてこなさそうだし
ってか、ベルゼビュートって世界を守る獣って感じが全くしないんだが……死者の世界でも守ってたんだろうか。直接対峙しなければ正直何も分からないし分かりたくもないが
「……兎に角、任せましたよ」
言うや、神である狸娘はピコピコハンマーではなくなった槌を構え……
「ってか、あんなの出てきて女神にもうダメだこの世界される可能性は無いのか!?」
その背に疑問を投げ掛ける
「大丈夫です
所詮自分を恐れて来なかった者達。復活すれば逃げてく雑魚……と見逃されると思います」
……それで良いのか女神メディアよ……
そうして、茶色の髪の女性はハンマーを振りかぶり
そして、金色の巨鯨と共に姿を消した。本人の言葉どおり、世界から弾き出されたのだろう。巨鯨が消え、大きく空いた空間に水が戻ろうとする流れに巻き込まれ俺たちを連れてきてくれた船が海岸を離れていくが、世界は平穏を取り戻し……
「マルちゃん、お姉さん何がなんだか分からな」
0:00
ビキッと音と共に、クソナイフを持っていた時には見えてた砂時計の辺りにアイコンが現れる
……だが、異例。開幕から時間がゼロ、砂も落ちきった砂時計アイコンであり……。そして、砂の色が赤でも青でもなく黄色
「フィトリア!」
「フィトリアにはないよ?」
だが、返ってきたのは何一つ分からないという答え。そうこうする間にも、砂時計は……
逆戻し!?
砂時計ってのは砂が落ちきってからひっくり返せばまた1から数え始められるもの。だが、俺の視界に映るそれはひっくり返るのではなく、ゆっくりと逆再生されているかのように砂が浮き上がり上へと溜まっていくような挙動を見せる。0:20、1:40、3:00……それに合わせて変わっていく表示。タイムオーバーであった時間が元々の数字にでも戻るようになってゆき……
「がぁっ!」
「あうっ!」
逆の端で車輪が回る。勝手に発現した雷が俺を撃ち……
10:00:00
急速に歪んで行く視界。体が引き離されていく感覚
それに、俺はなす術無く呑まれ……
不意に、視界が戻る
って、何処だよ此処。とりあえず空気悪いな……
俺は気が付くと、燃え盛る森の中に立っていて
『キュリシャァァァァァァッ!』
空から降ってくる怒号。空はやけに暗く……
見上げた先の空には、あの巨鯨より更にデカイ……というか長い体躯を空にくねらせ、口から炎を撒き散らして森を焼く白い体躯に赤い巨大な一角のある白蛇の姿があった
「白星空蛇、ケツアルカトル……」
教えられたその名を、呆然と俺は呟き……
「って何でいきなりこんなもんが眼前に居るんだよラフゥゥゥゥゥゥッ!」
その責任転嫁は、誰にも聞き届けられる事はなかった