あれから一週間近くが経った。とりあえず脅しすぎもいけないので大抵はバルーンなどの生物感の薄い敵を相手に戦わせてそれを観察していたのだが……
リファナのレベルは20まで上がった。ラフタリアは18
……おいちょっと待て可笑しいだろ
リファナ探しつつ叩き斬ってただけの俺が20越えにまで戻っているのもそもそもおかしく、第一半年間金稼ぎの為に遺跡調査の護衛やらなんやらのモンスターとあまり遭わない仕事をやりつつ40まで行った俺が有り得なかった訳だが、何でもう20行ってるんだよふざけてるだろこれ。普通の人間あれくらいの敵倒しても12もいかないはずだぞ
モンスターを倒すと経験値が入る。経験値を得るとレベルが上がりステータスが延びる。まるでゲームだが、魔法なり何なりのエネルギーがあるこの世界、経験値という生命の力を増幅するエネルギーが存在するとすれば可笑しくはない。実際レベルをステータスに変換する能力が勇者の武器には一つの強化方法として存在するのだし、レベルや経験値はエネルギーみたいなものとすれば辻褄が合う
それはおいておいてだ、レベルが上がれば上がるほど次にレベルが上がるまでの必要量が増える、これは当然。ならば可笑しいのだ、レベル12行かないくらいの経験値で20越えるとかレベルアップまでの経験値に個人差があるだろうとはいえ完全に狂ってるレベル差だ。経験値そのものに謎の超ブーストでもかかってなければまず無理。そして、そんなブースト能力はクソナイフにはない。確か本編では奴隷の盾なんかの成長補正系あったよな、と捕まってるうちに伸びてたリファナの髪の毛辺りを軽くナイフで切らせて貰って取り込ませたのだが、出たのはンテ・ジムナシリーズだけであった。アストラルシフトとかソウルストライクとか聞いただけでワクワクするスキル満載のシリーズだったが、解放必要素材に心臓があったのでシリーズ丸ごと見なかったことにした
因みにラフタリアの髪の毛も貰ったがこれはこれで出たのはラクーン系のみかつラフタリアは亜種みたいなものらしく解放は出来なかった。俺のは血なんかも入れてみたがハツカシリーズと転生者シリーズだけ、特に良さげな補正はないしネズミだけあってンテ・ジムナシリーズとは異なりワクワクの欠片もないクソの塊な性能のものしか無かった
というか転生者シリーズって何だよ真面目に初期武器以下の性能してたぞアレ。何とびっくりエアストスローなんかの基本的なスキルが全部取れるしチャクラムやら手裏剣やら色んな武器種が一シリーズとしてあるのは良いんだが他のスペックが低すぎる
……あれ?ひょっとして転生者がパクった場合って基本的に武器種に合わせたこのシリーズに変化してるのか伝説武器?だから勇者の紛い物やってる割に強くないとかそんな話か?そういえば盾の勇者本編でパクった伝説武器をある程度使いこなしてた奴タクトくらいしか居なかったような……
閑話休題
経験値が多すぎる。これは……奴か。やはり奴が絡んでいるのだろう。つまりは、このアホみたいなレベルの上がりやそれを裏付ける他とは違う経験値の入りっぷりから見て、転生者は基本的に奴に捕捉されているという訳か。そのうち奴の潜む砂漠に向かう必要があるかもしれない
一つ裏が取れた。本編で出てくる転生者タクトの一味のレベルが確か最低250、あまりにも高すぎるとは思っていたが奴のお陰で転生者であるタクトと居れば経験値にバカみたいなブーストかかるようだしそのままパワーレベリングすれば250も行けるか。たぶんその気になれば俺でもいける。いっそリファナのレベルをタクトどもにも負けない400台目指させて何とかするか?いや無理があるしそもそも100越えるクラスアップ方法知らないから前提から無理だ
そうして、やってきたのはメルロマルクのその中心。そろそろ尚文の奴が戻ってきそうな日になったので、尚文がリファナ達を奴隷として買うように仕込もうという奴だ
金?……結局まともに貯まってねぇな、なんてオチには流石にならず、一応しっかりと用意してある。とはいえ、これは奴隷商に分かってるな?する為に握らせる金だしラビット種なんかを買えるかは怪しいな。レベルを上げさせるという事はリファナ達も俺と同じく無理矢理成長させるという訳で、そりゃもうお腹が空く、それら半年前俺も腹減らししていたから良く分かる。だが喉元過ぎればでその事を忘れていたので食費が予想の遥か上を行き、目標額よりは下回った額しかない
狸の親父が殺されたあの時を思い出せ!で何とかかんとか第一段階には任意変身が現状可能なのでアヴェンジブースト任意変身でリファナが寝静まった夜中に一人で稼いだものだが、ラフタリアが何時飛び起きるか分かったものではなく遠くに離れられなかったのでどれだけやろうが稼ぎはたかが知れている。というか第一段階ってほぼ眠れなくなり目が良くなるだけだしな
「……もう少し早く来るべきだったか」
なんて、ぼやきたくもなるか
ポータル取っておけば良かった。ポータルさえ使えれば遠くに離れても即座に戻れるしもう少し稼げたろうに
「ユータさん?でも、まだクラスアップは」
「知ってるよリファナ
これは別件」
「別件?クラスアップ以外にもあるの?」
「あるある。メルロマルク以外にも波は起こるし、その国の砂時計で登録すれば勇者はそっちの砂時計範囲の波に介入できるようになる
……ってのはまあ今回の目的じゃなくて、まあ見てろリファナ」
「あのー、クラスアップしたいんですが」
「あ?亜人のクラスアップなんて禁止だ」
「いや彼女等は俺の奴隷みたいなもので
やりたいのは俺です。まだレベルがちょっと足りませんが、下見しつつ何があれば許可されるのかを聞いておこうかと」
なんて、管理者に話を振る
あくまでも振るだけだ。振るだけ、そもそもクラスアップなんて40でやるものだろうし勇者にクラスアップは無い、勇者のフリしつつクラスアップは矛盾している
「ほー、へー、それが必要なんですねー」
ミラージュダガー
「成程成程」
わざとらしく頷きながら、素振り
「おい何やってる」
「いや、何時かクラスアップしたらどれだけ強くなれるのかと今の実力をちょっと確認して」
いやー、酷い言い訳だな自分の事ながら
だが知らん、やったもの勝ちだとっとと行けクソナイフ。そこの砂吸収してこい
と、透明にしたクソナイフを素振りのフリしてぶん投げる
『龍刻のサンドジャベリンの条件が解放されました』
龍刻のサンドジャベリン C
能力未解放……装備ボーナス スキル『ポータルジャベリン』
熟練度 0
ジャベリンか、目立つ形状してんなポータル用の武器。まあ砂時計にかけて時計の針っぽい姿でも取るのかと思えば投槍の姿はそれっぽいな
「分かりました、紹介状か金かー」
わざとらしく一礼して退散
「何か成果があったの、あの会話」
「会話じゃなくて素材にな」
っと、龍刻のサンドジャベリン……長いので砂槍で良いやへとクソナイフを変えてみる
俺にとっての始まりの地が最初に登録されているならば……とポータル起動
転送
転送先記録
やっぱりか、登録はあの村だ
とりあえずメルロマルク城下町をポータル取得、帰れないとそれはそれで困る明後日には遅くとも尚文がぼっちに限界を感じるはずだ、あの村から城下町までリファナ連れの歩きでは二日で戻れない
「見てろリファナラフタリア、ポータルジャベリン!」
一瞬、範囲が表示される。パーティではないがリファナラフタリア選択
……ってオーバーカスタムでスキルカスタムしないとパーティメンバー以外無理?は?ふざけんなクソナイフ入れておいた金払うからとっととやれ。あー金が勿体無い
「っと、違うな、ポータルジャベリンⅢ!」
因みにポータルスキルは叫ばなくても使える。叫んだ理由?Ⅲって付けたことを覚えるんだぞラフタリア、それを尚文に買われてから信頼を築いて、それから言えばスキルが強化出来るって事から強化方法が盾が表示してる一つでないと尚文が気が付くかもしれないからな、という取らぬラフの皮算用
リファナは覚えなくていいからな。信頼を得て尚文と幸せになれよラフタリア
視界がブレ、気が付いた時には俺は村の役場前に居た。横に居たリファナやラフタリアも目をぱちくりさせて其所に居る
……実演ポータルやる前に安酒買っとくべきだったか。狸の親父の共同墓地に備えるべき酒が……
あったわ、そういや酒で煮ればこの辺りの臭い魔物だって食えると一昨日酒買い込んだな、全部封は空いてるのが微妙だがまだあったはずだ
いやでも封空いた半分ほどの酒を供養に置くのってのはどうなんだ?今から買い直す為に城下町に飛びなお……
ダメか、スキルのクールタイムが1時間もありやがる
なあクソナイフ、スキルカスタムって強化方法にあるだろ?それでどこまでクールタイムを減らせる?
……何だ、全然減らないのか、オーバーカスタム却下。夜中に奴隷商との話を仕込むついでに買ってきて置いてくか
「こ、ここ……」
「元、お前らの村だな」
そして俺の村だがそんなことは言わない。役場前、俺というかクソナイフが折った旗が添えられた墓がある場所
……って抗議すんな折ったのはオートのサイクロンストリームだからお前だろクソナイフ