パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

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勘違い

空に浮かぶ白蛇を眺める

 

 果たして、どうすべきか……

 「ってんな場合か!ファスト・スカイ……違う!ファスト・レイスフォーム!」

 魔法を起動。この世界でも問題なく魔法は撃てるようだ。……いや、MP回復しないのか?暫く何もしてなかったはずなのに最初からMPが減ってる。魔法の乱用にはご注意か。回復アイテム持ってきてたかな……

 俺の体は電気に分解され、俺を狙った円は空を切る。チャクラム……じゃ、ないな。投擲具を持ち出してきた転生者を一瞬疑ったが、それよりは鉢合わせしやすい相手だ

 

 「避けられましたか。ということは、あなたがリーダーのようですね」

 「リーダー?なんだそりゃ」

 眼前に降り立った一人の和服の女性を睨み……つけてたら話なんて出来ないので眼をわざとぱちくりさせ、呆けたように聞いてみる

 「……呆ける気ですか」

 「呆ける気だよ、グラス」

 そう。グラス。この世界の勇者の一人、扇の勇者である。この世界がグラス達の世界であるとすれば、会う可能性は当然有った。いや、寧ろ出会いは必然とでも言うべきだろうか。空を悠然と占領する白蛇、今正に現れたのではなければ、勇者が出向かないはずもない!……実はあいつの周囲別にポータル阻害とかないっぽいからな、波ではなく、普通に降臨しているだけ。ならば飛んでこれるはずだ

 

 「というか、何の事だよ」

 「なんと白々しい。貴殿方でしょう、上の……」

 「神獣ケツアルカトル」

 「やはり、貴殿方の世界の守護獣」

 「いや違ぇよ!?」

 そういう勘違いか!いやまあ、向こうの世界の守護獣ってどんな姿してるかなんて分からない訳だし、勘違いも仕方ないといえば仕方ないがああもう面倒な!

 「しらばっくれる気ですか。此方の計画を知り、先手を打とうとした事は分かっています」

 「いや聞けよ!?ってか計画って何だよ」

 「……この世界を守るため、背に腹は変えられません。非道な手ですが、キョウを信じるしか……と、話しすぎました」

 「どうせなら、全部喋って欲しかったが、それは望みすぎか」

 背に背負った女神の剣を抜こうとして……バチッという音と共に柄から手を話す

 同時、視界端に浮かぶ懐かしい文言。伝説武器の規則事項、専用武器以外の所持に触れました、と。最近クソナイフが手元に無いからすっかり忘れてたわその制限。脳ミソ大分溶けてきてるな俺も。あのカタナ持ってる間、折角拾ってきた武器系列何一つ使えないじゃないか。まあ良いや、ならこの主張の激しいカタナ使うしかない

 「しょうがない、抵抗ぐらいはさせてもらうぞ」

 っておい!逃げんな刀!

 伝説武器の規則事項、正規勇者との対峙に触れましたってうるせぇよお前!大人しくしろ!転生者がそんな制限守るとかそっちが可笑しいだろうが!?第一お前ら転生者に仲間もお前自身も奪われて残った勇者ボッコボコにされてたんじゃねぇのかよ!?そんな制限で逃げられるなら逃げろよホント!

 え?俺相手しかその制限付けられない?もういいよお前クソナイフの同族ってことだけは良く分かったもう黙れ

 

 ……本当に完全な沈黙。ヤバい、刀という勇者武器の事が何一つ分からない。緊急事態だった三人の転生者戦で一時だけ手にした時に理解した事しか分からないし使えない。強化ってこいつどうやるんだとか、スキルどんなのがあるんだとか、そもそもその初期武器の状態から……か、変えられねぇ……。マジで黙りやがったあいつ

 「守護獣を支配し、私達の武器を……奪っている、のですよね?」

 少しだけ毒気を抜かれたように、グラスが疑問を呈する。いや、まあ、何か他の転生者に奪われてるパターンとは違う反応だけど

 「ああ、奪ってるよ」

 「……やはり、何とも白々しい」

 それに応えるように、頭上の白蛇が吠えた

 いや、タイミング良いな……

 「貴殿方がキズナを!」

 「絆?しらねぇな!」

 「ですが、何をしたかったのかは理解しました」

 「こっちは理解が追い付かない!」

 「せめて、貴殿方の仲間を二人、捕らえられたのは不幸中の幸い」

 ……仲間?誰だ?リファナか

 「守護獣を元の世界に返しなさい。さもなければ、仕方がありません。貴殿の仲間の首を落とします」

 「いやだから誰だよ!?」

 「ボーイッシュな黒髪の少女と金髪の子供……どちらも白蛇をこの世界に呼び出すために世界を渡った飛んできた貴殿の仲間でしょう」

 淡々と告げるグラス

 ……黒髪のってことは、レンか?で、金髪は……リファナなら少女だろうしリファナではない。で、誰?

 

 「いや、本気で誰だよ……」

 レンらしき少女の話で、多分やっぱり金鯨ケートスが現れた時にあの辺りに居た俺達の仲間の誰かがケツアルカトルをこの世界に呼び込んだと濡れ衣着せられてるんだろうが……

 「タクト、と彼は名乗りました

 仲間でしょう?」

 と、げんなりする俺に、グラスは告げたのだった

 いや、仇敵です。ってか誰かと思えばタクトかよ!まだ仲間かと思って損した。仲間レンだけじゃん

 いや、戦力それだけであの白蛇を何とかしろってのかよマジでさぁ!?せめて完全覚醒復讐の雷霆でも無いとちょっと無理ゲー感あるというかなんというか

 「どうですか、取り下げる気に……」

 視界の端、揺れる炎

 

 「グラス!と、そこの魂人!」

 鎌首をもたげ、襲い掛かる炎で出来た蛇を叩き斬りながら、叫ぶ

 「死にたくなければ構えろ!来るぞ!」

 『キュリシィィィィッ!』

 空の神獣が吐く炎が無数の蛇となり、俺達へと降り注ぐ……

 「これは……」

 「グラス、そこの人お前なら……護れるよな!?」

 同時、俺は全身全霊で大地を蹴り、空へ。車輪を回し、雷霆を迸らせというには少ないが、とにかくスパークと共に蛇の合間を駆け抜けて空へ。一応負担軽減として数匹斬ってはおくが気休めレベル。そのまま空へと躍り出て……

 「無明・七天虹閃」

 そのまま、突然飛び込んできた俺の前にアホ面を晒す蛇の顔面に刀のスキルを、叩き込む!

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