何処とも知れない時、何処でもない場
此処は世界の狭間の星空。満天の星一つ一つが別の時間を刻む世界な、此処は神ならざる者が触れ得ぬ領域
その輝く星の一つ……いや、強大な神にとってはまだ小さな今正に融合を果たそうとしている2つ星を、遠巻きに眺める一団が居た。三人と二匹。三人とされる人型よりも数段巨大な二匹が、その空間を占領している
巨大な翼を拡げた七色の七本角を掲げた二足の巨龍。天轟虹竜ヴェルムートと神々から呼ばれる、かつて世界を護ろうとしその世界に召喚された聖武器の……『闇属性魔法』の勇者パラストラによって討ち滅ぼされた伝説の守護の獣。三人の両側を固めるように聳え立つもう一体は蝿の翼、蜘蛛の下半身を携え体を霧で覆う石の巨人。黒霧死王ベルゼビュートーかつて死者のみで構成される世界の守護獣であった存在である。その二柱の神獣に挟まれた三人は、とても小さく見え……て、など居なかった。この場を見る者が居たならばーそれが可能なのは神の域にまで辿り着いた者以外まず居ないはずだがー聳え立つ巨獣よりも、間の矮小な人間大の存在をこそ、その瞳に焼き付けるだろう。それだけの異様なオーラを、彼等は纏っていた
いや、正確にはそのうちの2人についてを、である
その喉を男に撫でられてにゃんついた声で甘えている崩れまくった和装の女性については、目に止めることもないだろう。傾界仙狐タマモ。人の姿と化す手を持つ彼女もとある地球系列世界の守護の獣であり、今は男の手によって悦ぶ単なる獣である。だが、残された二人の男はそうではない。魔術か、科学か、或いは系統だてる事の不可能な未知の力か……何れにしても力の探求の果てに永遠を得、己の世界を飛び出した元人類。即ち……神
ベルゼビュートの腕、数人が腰かけるどころか寝転んでも余裕しかない広く平面なそこに腰かけた男が、2つ星を見て呟く
「なあ、女神メディア、どっち側に居ると思う?」
と、あまりにも気楽に
「知らねぇよバーカ」
返すのはフードを目深に被った、金の翼をマントのように背中から垂らす男とも女とも見分けのつかない人物。そのフードそのものも翼の一部であり、顔は見えない。だが一つ特徴的なものがあるとすれば、フードの奥に無数の光が見えるという事。髪があるはずの其処から、無数のというほどではないが、鋭い眼光が殺気を覗かせている
「全く、つれないなーゴルゴーは」
男……『闇属性魔法』の勇者にして神獣神、パラストラ・D・ミルギアは横の存在に語りかける
「どっちに居るか分かればさ、居ない方の世界でなら割とやりたい放題じゃん?
どっちの世界にもドラゴンな守護獣居るらしいしさ、ちょーっとコレクション増やしたいんだよねー」
「知るか
そもそも、雄らしいぞ両方」
「……じゃ要らねぇわ。でも霊亀とか見所あるしなー。それにあの娘、欲しいんだよねーホント」
「勝手に言ってろよパラストラ」
足の蹄を不満げに鳴らし、詰まらなさそうにフードはなにかを咀嚼する
「……まっず」
そして、ぺっ!と虚空へと吐き出した
「ん?何食ってたの?」
虚空に転がる灰色と黄ばんだ白のナニカ
「人の手。何食べて育ってたんだろうな、クッソ臭くて石にしても食べれたモンじゃない」
「うわ不味そう
焼いてからの方が良いよ絶対」
「は?肉は生だろ常識的に考えて
お前何処出身よ」
「剣と魔法の世界」
「聞いてねぇよ何処の田舎だってんの。折角の肉を焼いて何になるんだよ生の方が血が滴って旨いに決まってる」
「でも食ってたの石じゃん」
「あ?石化は血も何もかも丸ごと永遠に固めるから良いの。焼いたら逃げるだろ血と旨味がさぁ」
やれやれ、味音痴はこれだからとばかりに顔を逸らすフードの何者か
「んでさゴルゴー
どっちだと思う?オレとしては挨拶代わりにケツアルカトル送った側だと良いなーって思うんだけど」
「だから知らねぇよ勝手に言ってろよそれを知りたくて両世界にお前のペット送ってんだろ帰ってくるの待てよ焦りすぎだろ
というかなんでそっちなんだよどっちでも良いだろどうせ今の手負いの女神なんぞ最後まで寝ててもらう訳だしよ」
「そうはいかない。霊亀にあの娘にって欲しいのが片側に固まってる」
「そのあの娘って何だよ」
「鳥の娘だよ鳥の娘。あのモフモフ感、顔立ち、たまらないな本当!」
「あぁ~馬車の
ロリコンかよてめぇ、何千歳年下に手ぇ出す気だ」
きっも、と蹄を鳴らして距離を取るフード
「実は神獣名ももう決めてあるんだ」
「いや聞けよキモいって言ってんの」
「陽光神鳥ラー、どうかな?」
「どうかなじゃねぇよ何度も言わせんなキモい。あとキモいから近寄んな」
「ゴルゴーもフード取って魔獣形態になってくれたらなぁー」
「たらなぁじゃねぇよお前」
「いや、だって乗り込めるようになるまで暇じゃん。ヤろうぜ、オレ等ブラーフマナの親睦を深めるって形で」
「ヤらねぇよウチは男だ!」
「またまたー、両性具有なくせにぃー」
「ホントきめぇよ石にすんぞ」
「生えていても問題ない。其処に神秘の双子山と秘密の花園さえあれば」
「キリッとした顔してもやらねぇし何だよその例え。詩人気取っても言ってること最低だろ取り繕ってんじゃねぇ
というか、千年前から言ってるだろ、ダセェから同盟名変えろって」
「えー、良いじゃんブラーフマナ」
そんな風にじゃれあう神々の前に、龍と同じくらいの……いや、それ以上の巨体が現れる
幾多のヒレ持つ金色の鯨、金色真鯨ケートスである
「お、お早い事で」
『ルォォォォォ!』
飼い主の言葉に、鯨は吠える。その声は空気のない次元の狭間では音となる事は無いのだが、問題なく通る
「……そうか、やはりそちらの世界に……」
「なんだ?お前の目論見が外れたのか?はっ!馬鹿馬鹿しかったからな」
「くそっ!女神メディアめ、どうせなら向こうの世界で眠ってて欲しかったものを……」
「お前の為に眠ってる訳じゃねぇもんなパラストラ」
「んで、何でそんなに早く帰ってきたんだよケートス?オレに愛されたかったのか?ならもっと……え?違う?」
「遠くで勝手にヤってろよお前」
フードがぼやく中、不意に男は目を閉じる
「……そう、か。本当に……」
「どうしたよ」
「ゴルゴー、やっぱりお前に声を掛けておいて良かった」
「何だよ急に
煽ててもヤれないぞ?」
「そんなんじゃない。外から見てていたら気がついてしまった危機。アイツが……本当にあの世界に潜伏してるらしい」
「アイツ?」
「あいつだよアイツ!『雷霆』の勇者!コード:ケラウノス!」
「マジ、かよ」
翼のフードが、はらりと剥がれる
覗くのは、男にも女にも見える端正な顔。だが、その右側はあまりにも醜い傷に覆われ、髪がそれを隠している
「あいつに負けて生きてる、手の内知ってるヤツ、お前しか知らないしさ」
「負けてねぇ!ヤツを含めて全員殺した、はずだったんだ。確かにあいつも石にした。オリュンポスの十二勇士だかアルゴーだか何だか知らないが、ぶっ殺した筈だった!
なのに!なのにだ!」
傷だらけの右目を抑え、髪の先が8体の蛇を模し蠢くその神は吠える。翼が拡げられ、翼で隠されていた大きなものが二つぶら下がる胸も、同じく大きくそそりたつものが鎮座する股間もさらけ出し、揺れるのも構わず
「何が『雷霆』だ!全身石になって砕けたはずのアイツが雷に変化しやがった!
だけどな!てめぇがそんな事が出来るってのはわかってんだよ。今度はそんな不意なんて撃たれねぇ
。そっちの世界で仲間が出来たってなら、それごと今度こそ石にしてやるよ!永遠にな!」
と、その神は自身の座るベルゼビュートの頭を……正確には、その頭に埋め込まれた一人の少女を見上げる
「『光波』、お前の横に埋め込んでやるよ、ウチに一万年前こんな傷を負わせたアイツを……ゼウス・E・X・マキナを!」
ということで、ネズ公視点の本編以外の補足では明言しておきましょうか
ネズ公はバカかと言ってますが、フィトリアの認識で正解です。ネズ公は転生者などではありません。女神に正体バレないように自分の記憶ぶっ飛ばして転生者だと強引に思い込んでいる川澄樹の世界の正規勇者にして神狩りの神、『雷霆』の勇者コード:ケラウノス、ゼウス・E・X・マキナの転生体である御門讃です
だから尚文みたいな特例で勇者武器だって使えますし、絶対に投擲具等この世界の武器の正規勇者にはなりません。何故ならば、彼は本来の勇者武器をとある理由(本格的に使いだしたらバレる)で封印しているだけで既に川澄樹の世界の正規勇者なのですから