パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

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雑魚との再会

「……ネズミ

 良かった、他に誰も居なくて」

 「レン、お前だけか」

 所在無さげに座っていた、黒髪の少女が顔を上げる

 

 此処はグラスが今使わせてもらっているという魂人の村の地下。そこに作られたカビ臭く薄暗い牢獄

 其処に大人しく囚われていた黒髪の少女を、一応グラスと和解したということで迎えに来たのである。武器は……無いな

 

 「レン、剣はどうした」

 「此処に飛ばされてから、取り上げられた」

 「そうか

 というか、良く俺は居るってわかったな?」

 「……パーティ、僕と組んだままだったから」

 あ、そっか

 そういえばパーティ機能とかあったな。元が6人までだがフィトリアはパーティ組むことは無いし枠余ってるからな……。お陰でレンとのパーティを解散していなかったから俺が居ると分かったのか

 良く良く考えたら、見てる暇無かっただけで俺からも確認できたなこれ

 ということでパーティメンバーを見てみるが……

 あ、レン以外消えてる。世界が違うからか名前までノイズ化してて注目すると世界が違いますで削除されてくな

 

 「とりあえず、合流できて良かった」

 「……世界が違うって、どういう事なんだ?」

 「その名の通り世界が違うって事だ

 レンは知らないかもしれないけど、波は二つの世界が融合しようとしててな。その関係

 実は俺たちの世界と波の向こうって行き来出来なくは無いんだ。実際、俺は一回今居る波の向こう側から来た三人組とやりあったこともあるしな」

 あの戦い以降、剣の勇者が行方不明なんだよな。死んでたら波が早まるから死んではないのだけは分かるんだが何処に居ることやら

 

 「ッと。それだけじゃなくて」

 付いてきている和服の魂人に問い掛ける

 いつの間にやら細身の剣を手にしてるな。何だ、レンに返してくれるのか律儀な奴だ

 「もう一人はどうした。来てるんだろうタクトとかいうクソ野郎」

 「ええ。彼は別のところに捕らえていたはず、なのですが……」

 あれま。ってかタクトって仮にもレベル350転生者だったはずなんだが、良く捕らえられたな。レベルが肉体依存だから、あの体を殺せば弱体化するって推測は正しかったのか?

 

 「可笑しいですね。横の牢の見張りが居ません」

 「というか、あのタクトってパクる力持ってるんだが、その辺り対処出来たのか」

 「はい。残された武器を奪われぬよう、力への対策はしてあります」

 羨ましいな。尚文等にも寄越せその対策方法を

 「なら何で奪われてんだよ」

 「極最近漸く実用化出来たのです。しかし、最早キョウとキズナ以外の勇者は全て武器を奪われた後。全ては少し遅すぎました」

 ……ホント詰みゲーしてんなこいつら!

 

 「それにしても、何故あの金髪の子供も見張りも居ないのでしょう」

 疑問を口にする女性

 「なあ、ちょっと聞きたいんだが……見張りって女?」

 「はい。まさか、女性差別でもする気ですか?」

 怪訝そうににらみかえしてくるが、それどころでは無い

 あっ(察し)という奴である。タクトの神受スキルでたらしこまれて、嬉々として牢から出したなさては

 

 「レン。捕まってからどれくらいだ?」

 「……そんなに、時間は経ってないはず」

 ということは、近くに……

 

 不意に感じる殺気

 だよなタクト!お前なら、居ると思った!

 俺の腕に絡み付く蛇のようにしなる鞭

 「パラライズウィップ!死ねぇ!」

 ……あ、そこタクトの一つ覚えヴァーンズィンクローじゃ無いのか、構えて損した

 

 電気が走る鞭は効くかよそんなんとガン無視して、右手で鞭を掴んで引き寄せる。死角に隠れていた小憎たらしい顔立ちの金髪の子供を引きずり出し

 「ていっ!」

 腹に一発叩き込んでおく

 「ぐふっ!」

 ちょうど良い機会だ、と転生者の力で干渉。勇者武器までも引き摺り出す!

 腹から内蔵を引き抜くように、って結局何とか取り出せたのは一個だけか

 今タクトが持ってるはずの勇者武器は3つ。俺から離れてったクソナイフは回収出来てないようなので、槌と斧と鞭だ。鞭に抵抗されて槌も盗れなかったが、斧だけは引き剥がせた

 

 このまま持っているって手も無くはないんだが……

 「ぐっ!返せ!それは僕の力だ!」

 「いやお前のじゃねぇよ!?」

 「クソッ!殺してやるぞネズミがぁぁっ!」

 ……弱っ!タクト弱っ!?

 適当に後ろ手に捕らえて置くだけで何も出来なくなってるとかマジで弱っ!?

 「……タクト、今のお前のレベル幾つだ?」

 「貴様に殺されたせいで37だ!今度は殺す!殺してやる!」

 ……あ、クラスアップすらしてない。弱いのも納得の数値だ

 「レベル300越えの最強勇者様

 全部無くなった気分はどうだ?」

 「ネズミぃぃぃっ!」

 叫んでも何も出来ないぞタクト。ってか一回さくっと殺すだけでこんなか弱くなるんだなコイツ……

 

 「ってオイ!」

 横にふわふわしてる光に突っ込む

 何やってんだ斧。タクトから解き放ったってのに

 

 「……個性的な勇者たちですね……」

 あ、グラスが遠い目してる

 「ま、転生者の癖にぱっと見勇者っぽいことやってるからなーこいつ」

 あくまでもぱっと見だが

 

 「で、何時までぼーっとしてんだこの勇者武器は」

 半眼ツッコミ。寝てるのかよこいつ

 「……世界を渡って帰れない、って言ってる気がする」

 とレン。良く分かるなお前

 「じゃいっそレンが持ってるか?」

 なんて、良い提案だと思ったんだがその辺りは斧がガン無視してるので恐らくダメなのだろう。贅沢な奴だ

 

 「……なら、話は早いな」

 「おや、どうする気ですか」

 「とっとと斧を返せ泥棒!」

 「とっとと残りも離せ強盗が

 

 斧。まあ武器としては近い類いだろう。ってことで、今俺に手を貸してくれてる刀と交換だ

 お前、自分の世界に戻れなくて困るっていうなら、此方の武器でありながらお前らの世界出身な俺に手を貸してる刀の代わりに、此方の世界の勇者に手を貸してやれ」

 グラスの話から、生きてそうな勇者を見繕って……

 「何だっけ。ラルクベルクだったか?元鎌の勇者

 生きてるっぽいから鎌が戻ってくるまで特例でそいつの武器でもやってろ」

 と言うや、よしとばかりに光は何処かへと飛び去っていった

 

 良し。これで此方の世界も四聖である絆さえ何とかすれば暫く持つだろ




レベルも集めた武器もネズ公に搾取される哀れな最強転生者の図
頑張れ負けるなタクト様。一応ライバル枠はお前なんだ

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