まあこれでもライバル枠なんでね…
「……こほん」
それから数分後
白髪のネズミが、絆と呼ばれるその勇者と話している
それを
「ん?なに?」
「まあ、俺については割と話した訳だが」
「うん。波を起こしているのとは別の神様の送り込んできた怪物を倒すため、刀が君を呼んだって感じだよね」
「ったく、尚文でも送れば良いのに……」
僕……タクト・セブン・フォブレイは静かに眺めていた
抵抗する気は起きない。だってそうだろう
勝てない。奴には勝てない。絶対に、何があろうとも無理だ。アレは天災のようなもの、あのネズミは例え
あの眼だ。僕を睨み付けた、あの真紅の眼。血そのものの色で染まりきったあの眼。恐ろしく、鋭く、怒りに満ちていて
だというのに、良く良く見れば何処か泣き腫らしたようにも見える不思議な表情の眼
それを、僕は知っている。タクト・アルサホルン・フォブレイとしても。そして……
一度目は、僕がまだ普通の……いや、大きな背丈の同級生の男に眼を付けられて嫌がらせをされていた普通以下の生活を送っていた中学生だった頃。一晩開けて下流の岸に流れ着くもすっかり冷たくなってしまった仔犬……エリーの体を抱き上げた時、水面に映った自分は確かにそんな眼をしていた
二度目は、タクト・フォブレイになってから。オレの首を吊るその一瞬、あのネズミは確かにその眼を見せ付けた
そして三度目はその直後。魂だけで何とか逃げ切ったと思った刹那、フォーブレイの首都近くで強襲してきた赤き神。あの化け物……ヘリオス・バシレウスはずっとあの眼をしていた。あの時、もしもたった二人、魂だけで帰ってきた僕に気が付いてくれたエリーとトゥリナが全力で即座に駆け付けてくれなければ……
いや、それを見て、あの赤き神が姿を消さなければ。今、僕は僕として……7歳だった頃の姿を模したホムンクルス、タクト・セブン・フォブレイとして此処に居ないだろう。魂やエリーとトゥリナごと跡形もなくあの雷の露と消えていたはずだ。抵抗一つ出来ず。いや、抵抗すらも無意味として
あの赤き雷神は「醜いからタクトの前では晒したくない」と言って使いたがらなかった化け狐の姿を見せたトゥリナを纏う赤い雷のオーラだけで地面に叩き伏せ、魂なんて見えないのに勘だけで僕の魂の前に体を張って盾になろうとしたエリーへと迫り……
それでも何とか攻撃して意識を逸らそうともがくトゥリナと絶対に引かないというエリーを見て攻撃を止め、デコピンでエリーの意識だけを刈ると次はないと言い残して飛び去っていったんだ
……助かった。いや、見逃された。後で聞いたことによると、僕を助けに行こうとしたその瞬間。ポータルスキルを解析し、遂に完成に漕ぎ着けた近距離転移装置を僕が襲われていると気付き使おうとしたまさにその時、集まった皆は攻撃を受けたらしいのだ。死なない程度に。だが、わざと急所を逸らした事が分かる程度には、死の実感を伴う形で。「数秒後にお前らがタクトを助けに飛んできたから、飛んできてから飛んでくる前のお前らに攻撃しただけだ。オレはタクトのところで待っている。死にたければ来い」って解説まで添えて
それで皆恐れをなして。諦めようというムードが出来て。でも来てくれたのがエリーとトゥリナだった
だから、ならば一度だけチャンスをやる、とアレは姿を消してくれて
そして今、僕を睨み付けたあのネズミも、同じ眼をしている
それは、本当は可笑しいのだ。許せない想い、やるせない思い。多くの思いが入り雑じった怒り。元凶への怒り、そして何より……それを止められなかった自分への行き場の無い激昂
目の前で溺れる大切な
その眼を、あのネズミは見せた。何事もない、自分への怒りなど無いはずのあの時に
前に見せた時は気が付かなかった。最初に会ったときは男の眼なんて見る気すら起きなかった。男の眼なんて、虐めてきたあいつらを思い出すだけだったから
でも、良く見れば気が付く。今も……穏やかそうなこの時すらも、取り繕っているだけだ。彼の表情は全て、あの眼の上に被せた皮のよう。どんなに笑っていても、どんなに気を抜いているように見えても、薄皮一枚剥がした下には、ずっとあの眼がある。だから、今ならば分かる
あのネズミが本当は何者なのか
普通は有り得ないんだ。ずっとあの眼をしているはずもない。それが成り立つとすれば、その答えはたった一つ
あのネズミは、常に自分に対して怒りを持っている。それこそ、憤怒のカースに呑まれたように。常に彼の怒りは奥底に迸る
……そして、タクト・フォブレイはそんな存在を、それが成立する存在を、他にたった一人だけ知っている
ヘリオス。赤き神ヘリオス・バシレウス
マルスと名乗るこの転生ネズミの正体は……赤き神、ヘリオス。次はないというのは嘘ではない。実際に、こうして奴は本気を出さずに此処に居る。次があった時、このネズミは赤き神としての本性を顕して僕を消し去るのだろう。エリーが居なければあの時そうなっていたように
ならば、勝てるわけがないだろう!あいつは、追い込んだはずの所からギリギリで逆転したと思った。次に対峙する時があったら、油断はしない。ならば次は殺せると
だが、そうじゃない。赤き神としての力を欠片も使わず、その上で勝って見せただけだったのだ。あのヘリオスとしての力を振るえば、簡単に勝てたろうに。魂だけの時に放ったカーススキル、ハンギングガロウズは首を吊られながら余裕綽々、首を捻るだけで解いてみせたのだし
そういった態度すらも、狩猟具を受けたネズミと同じ。効かないものは最初から無効化出来るのにわざと外面だけ食らってみせて無意味だと見せ付ける。そういった態度も同じで、奴等は同じ存在だと教えてくれる
じゃあ、どうやって勝てっていうんだ。あの赤き神に。トゥリナですら、手も足も出なかった。いや、戦いにすらなっていなかった
エリーの持ってきた銃弾は、設置式で自動発射のものを含めて全て防がれた。いや、不意打ちで撃ったはずの設置式は当たったのにダメージなく体を突き抜けた。防いでみせたのすら単なる防ぐ必要もないのに防げると見せ付けたデモンストレーションに過ぎなかった
勝ち目なんて無い。藤季柘兎にとって、同級生のあの男がそうであったように。タクト・フォブレイにとって、あのネズミは……ヘリオス・バシレウスは
去るのを待つしかない暴風となっていた
まあ読者の皆様ご存知の通り、ネズ公=御門讃=ヘリオス・
まあ端から見れば実はネズ公には自分=ヘリオス≒ゼウス・E・X・マキナである自覚が無いとか思いませんからね……勝手にヘリオスが見てると怯えていきます
ぶっちゃけ今回語られた前世タクト様(藤季柘兎)はどう見えましたか? 作者内での答えはありますが、圧倒的偏りを見せたら変わるかもしれません
-
好きな子を苛めるガキに眼を付けられたロリ
-
好きな子を孤立させるホモに狙われたショタ
-
抗争に負けたヤンキー
-
負けたがりのドMのホモ