パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

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早すぎた裏切り

「こっちだ、リファナ、ラフタリア」

 そうして翌日。ポータルで城下町に戻した俺は二人を路地裏に案内していた

 

 「ユータさん、こっちに何が?」

 「行けば分かるよ」

 「人気がなくて」

 「人気の多い場所ではやれない店もあるって話。魔物商とか」

 ……表向きは魔物商だしなあの奴隷商

 ということでラフタリアにはちょっと警戒されつつも奴隷商のところへと連れていく

 

 盾の勇者は人間不信に陥りかけている。同じく裏切られた感じの死んだ目でなければきっと買ってはくれないだろう。だから眼前でわざと裏切る演技をする、口裏を合わせてくれ。当人等は盾の勇者と会わせて貰えるくらいの認識だがこれしか道はない、シルトヴェルトからの正式な援助は断られてしまったから表立ってはもう動けないのだと盾の勇者本編知っているからこそ言える話と嘘とを織り混ぜて約束させている

 

 「おや、彼女等がそうですかな、ハイ」

 「その通りだ」

 言いつつ、パーティ加入通知を飛ばす

 スキップ、オーバーカスタム、良いなクソナイフ

 どうせずっと連れていくと巻き込まれて死ぬんだリファナたちを護るためにも必要だと分かるだろう、だからそんなぼったくり相場の更に三倍をふっかけんなクソナイフ。そうされると後払いの金が無くなる

 ……漸く普通のぼったくり価格に戻りやがったな。いや寧ろ何時もより安いな、これから何かあればリファナの為と言って値切るか

 ……抗議された。光るな玩具かお前は

 

 「……ステータス見てみろ」

 「ユータ、さん?」

 「り、リファナちゃん、レベルが」

 「レベル、1?」

 ……レベルが低ければ安い。安ければ尚文が買える。1にする必要はなかったのだがそういうことで1まで落としておいた

 

 「勇者特権って奴だ。お前らのレベルはリセットさせてもらったぞ、イタチ、タヌキ」

 バニシングスロー

 わざと悪ぶって、悪そうに幻影を操ってそうほざく。わざと名前を呼ばず人権を認めないエアストスロー感じに

 

 「そ、そんな!」

 「そんなこと出来るの?」

 ……ラフタリアは驚くだけか。リファナ、お前じゃなくてラフタリアが聞いてくれよお前に聞かれたら素直に答えるしかないだろ

 「出来る。人のレベルを下げて強くなる事がな」

 まあ、人には自分も含まれるから嘘ではない。真実の片鱗だが。素直に資質向上したと言ったら突然の裏切りにしては優しすぎるだろこんなクソネズミの癖にフロートダガー

 「約束通り二匹連れてきたぞ

 金も約束通りだよな?」

 

 

 大袈裟にタキシードは袋の中身を確かめ

 「ハイ、確かに前々からの約束通りです、ハイ」

 って大袈裟な動きすぎるぞこいつ。前々からってしっかりと昨日より前から裏切ってた感出してくれたのは有り難いが

 

 「勇者、さま」

 「はっ、俺はお前の慕う亜人の神(盾の勇者)なんかじゃないんだよ

 投擲具の勇者様だ。亜人の味方な訳がないだろ、信用する方が甘いんだ

 メルロマルク貴族さまからの依頼でな。お前らを売ればがっぽり金が入るんでな、大人しく売られろ」

 「裏切るの!」

 そうだぞラフタリア

 「はっ、裏切る?それは一度でも味方だった奴への言葉だよタヌキ」

 歪む幼い顔に向けて吐き捨てる

 

 よし、狸の親父の恩を仇で返すこいつ殺そ……ダメだ変なこと考えた落ち着けヴェノムピアース

 

 「じゃ、じゃあ最初から……」

 すがるような目。俺は、それを……

 「ああ、最初に村に来たときからな」

 「なら、なんで」

 「何でもなにも、ガリガリでは売れないだろう?更には直接買えば足が付く

 俺が奴隷商に売り、奴隷商から依頼主が買う。それが契約なんだよ

 

 良い見世物だったぞタヌキ。警戒してるフリだけしてて。本当に騙されてるってのによ」

 いやー、悪者演技って案外口動くものだなチェンジダガー

 

 ラフタリアの目から光が消える

 ……これで良い。いや良くはないが、目指した良い顔だ。ぼろっぼろで生気がなくて尚文好み。……大丈夫かよやさぐれ尚文の性癖

 

 「嘘つき!」

 っと、危ないなラフタリア、レベル1に下げたし筋力には資質向上してないからナイフ振り回すなおい、すっぽぬけるぞ

 実際にすっぽぬけたナイフを難なく受け止める

 「騙される側が悪い

 見付けられて良かったよ、依頼主は大口の客だからな。死なれていたら大金が得られない所だった」

 

 「嘘、つき……」

 「はっ、大人しく諦めな」

 「勇者、なのに……」

 違うんだなこれが。此処に居るのは単なる簒奪クソネズミだ、投擲具の勇者ではない

 「勇者が亜人の味方なら、そもそも杖の勇者が居るメルロマルクがこうな訳がないだろ?盾の勇者以外に亜人が期待する方が間抜けなんだよ」

 ……折れたな、と糸が切れたように膝から崩れ落ちる少女を前にそう思う

 すまない狸の親父、すまないラフタリア、すまないリファナ、すまない尚文。何時か俺を殺しに来たら、受け入れ……たらダメだな、だが刺されるくらいは覚悟しよう

 

 「……なにも言うことは無いのか、リ……イタチ」

 リファナと呼んだらダメだろうおい俺

 ずっと黙ってるなリファナ、どうした

 「何に、そんなに怒ってるの?」

 「怒ってない」

 いや、リファナを、ラフタリアを、裏切り傷付けるクソネズミにキレてはいるが

 

 「良いことを教えてやる

 お前の大好きな盾の勇者様は既に召喚されている。祈れば、願えば、奇跡が起これば助けに来てくれるかもな

 起こらないから奇跡と言うんだが」

 ……まあ、これから奴隷商が呼んでくるしな、奇跡では欠片もない

 「絶対来てくれるよ、盾の勇者さまは」

 すっと此方を見る目。全く死んでない、何故だリファナ、何でそんなに尚文を信じられる。盾の勇者だからか?

 「はっ、来るわけがない

 メルロマルクはクソッタレな国だ。亜人の神なんぞ出来ることならば死んで欲しい。そんな扱いを受け裏切られた盾の勇者が、もうまともに人間を信じるものかよ

 他人を助けになんぞ、来る筈がないんだよ」

 ……折れろ、折れてくれライトニングピアース

 

 「……勇者、さま……」

 ふっと、リファナが目を伏せる

 ……見てられるか、もうボロが出る

 

 「金も契約通りだな

 俺は帰る、連れていけ」

 踵を返し、奴隷商の元を去る

 

 どっと疲れた

 で、思ったんだがなクソナイフ。何でいつの間にかは知らないが俺はお前に滅多刺しされてるんだ?幻影のお陰で端からは見えないだろうが脇腹辺りに至ってはズタズタだ。毒まで入ってやがる

 

 『称号解放、奴隷商鼠

       最低最悪クソネズミ

       無自覚Mネズミ

       メンヘラ自傷ネズミ』

 多いわおい。ってかマゾヒストの毛は無い

 ……自傷ネズミ?何だこの傷クソナイフが勝手にやったんじゃなくて無意識にリファナを傷付ける俺に向けてスキル撃ってただけかじゃあ仕方ないな。これくらいの傷は当然か

 

 その日、オーバーカスタム費用は5倍になった

 ぼったくりクソナァァァイフ!


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