「……セオ・カイザーフィールド!」
「そんな、此処にまで来るなんて!」
因縁のあるらしき此方の勇者二人が戦闘体勢を取る。武器を構え、目線を一直線に鎌へ
それを尻目に、レンは少しだけ離れ、やはり剣を構える。因みにタクトの奴はやる気無さげだな。立ち上がり、けれども奪った鞭を構えない。少し焦点のズレた眼で此方を見ていて
奴の持つ鎌は……やはり、勇者武器だ。鎌持ち転生者って所だろうか
だが、何だこの違和感。奴の持ってる鎌以外にも、威圧感を感じるような……
「とりあえず、先手必勝ってな!」
まあ分からんが、とりあえず鎌を持たせ続ける訳にはいかない!
開幕俺の方ではなく絆へ向いていたのでそのまま転生者パワーを起動。所有権を……
何だ?
可笑しい。奴が鎌を転生者の力で縛り付けて使っているのは分かる。だが、奴の持つ武器はそれ一つであるはずなのに、他の力の気配がする。何だ、何なんだこいつは……
「っ!はぁっ!」
瞬時、奴の姿がかき消える。そのまま、伸ばした力は虚空へ消え
っ!
「ぐっ!」
間一髪、女神乃剣を引き抜いて横凪に背後から迫る蹴りを受け止める
硬い!異様な硬度。カウンター気味に振った剣で切り裂くのは無理があると思える
だが!女神乃剣は対転生者の力!神の与えたチートを勇者が鍛え直した力が、そう簡単に……負けるか、
「っ!かはっ!」
足を振り抜かれ、為す術もなく地面に叩き付けられる
……可笑しい。やはり、変だ
女神乃剣が光を点滅させている。光が消えた瞬間、抑えきれなくなって吹き飛ばされたのだ。そしてまた光を灯し、消える事を繰り返す。柄にある翼の意匠が、開いては閉じる
だが、何故だ?眼前に居るのは転生者、御門星追のはず。本領を発揮する覚醒が発動しては消える点滅など、本来するはずがない。覚醒しっぱなしでなければ可笑しいのだ
それに、何だあの蹴りは……
まるで
「スターダスト・キック!」
そう。奴が今放ってきたスキルと同じく、靴の……
「ネズミ!」
「っ!はぁっ!」
危ねぇ!これ俺狙いか!
すんでの所で、オーバーヘッドキックから放たれた流れ星のようなボールを避ける
「っ!風山!どうなってる」
抉れた地面は見ないようにして、明らかにスキルの爪痕を蹴り、距離を図る
「どう、って?」
「奴はどう見ても……複数の勇者武器を同時に使っている!」
「なーんででしょう?
ま、バカには理解できないんで、大人しく死んどけや。無駄骨ごくろーさん」
軽薄そうな笑みは変わらず、手にした鎌を、足に履いた靴を振るい、スキルが飛ぶ
「『閃光十字斬』、ついでに『真空波動脚
……何を、見ている!
奴は……瑠奈の、妹の、あいつの……仇だろうが!
「っ!らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
視界の端、車輪が回る。最早見えないほどに、スパークを迸らせて回転する
復讐の雷霆。それでも本来の姿とまではいかずとも。初めて覚醒した時の相手を前にして、制限かかったとフィトリアが言っていたはずの力が溢れ出す
「……はぁぁっ!」
気合一喝。飛んでくるスキルを……
消せねぇ!消えたのは十字の方だけか!
「力の根源以下省略!」
「『ファスト・ブリッツクリーク』!」
空間を飛び越える魔法で、空気を裂く足からの斬撃を、飛び越える!
「っ!」
すんでの所で女神乃剣を構えてガード
弾かれた剣が吹き飛ぶものの、何とか切り裂かれるのを防ぐ
危ねぇ、あの真空の刃、空間を歪めて斬ってくるタイプか。すり抜けるのはちょっと無理がある
「……」
キッ!と睨み付けられる感覚
彼が。軽薄な金の少年が、俺の方を睨み
「……てめぇ。そこの溝鼠が」
「久し振りだな。相変わらず、てめぇは何も変わってないようだ」
手元に刀を呼び戻しつつ、そう嘯く
「逢いたかった、逢いたかったぜぇ、讃
おとーさんを殺した、親不孝者がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
鎌を構え、大上段
その敵の動きに合わせ、刀の所有権を得て、同じく大上段に構える。同時、纏う雷を足へと溜め始め……
「死んで償え、『ソウル・スラッシュ』!」
「『剛断兜割』!」
互いに放つのは、大上段から振り下ろすスキル。かち合う軌道。本来鎌と刀ならば、柄の先にしか刃がない鎌が今の射程では若干不利だが、勇者武器同士にそんな相性は無意味
だが、俺には……てめぇを殺す、この
翔び迸れ、雷轟!
力に任せて、打ち合う軌道を避け、振り下ろしながらも敵の右側面に回りこ……
「『フラッシュステップ
だが、雷鳴の速度で回り込んだ瞬間、奴の姿はブレ、一瞬後にはついさっきまで立っていた場所から少し後ろ、90°傾いて空中に立っており、その鎌の軌道は俺を横凪ぎに捉えるもので……
「っ!『瞬迅・風歩』!」
咄嗟の判断
刀スキルでもって、一気に前に踏み込むとこで鎌が通る前に攻撃範囲を駆け抜ける
その背後を、空間を切り裂いてスキルが通り抜け……
「っらぁ!『我、瑠奈の兄が天に請い、地に祈り、理を切除し、世界を解き放とう。龍脈の力よ。猛る激情の雷と共に形を成せ
力の根源たる御門讃が命ずる!ウチ抜け、雷轟!』」
「リベレイション・イグニション・フルバスターⅡ!」
刀を手放し、即座に呪文を詠唱。そのまま腰に下げてある短銃を引き抜ききつつ背後を向き、魔法をぶっ放す!
「吹き飛べぇぇぇっ!」
短銃から放たれるは雷撃の帯。俺自身すら超える太さのエネルギー波。それは過たず奴を貫く……
はずはない!奴の姿は、俺の背後へ出る
だけどな、そんなもの承知の上だ!お前は人で、俺はネズミで。その差が、此処にある!
「甘ちゃんがぁっ!」
「そっちがな!『天封・鳳凰斬』!」
俺の背後へ出現した彼へ向けて、尻尾で絡めとることで再び所有した刀スキルを振るう
残念無念また来世、ネズミさんにとって、背後は来ると分かってれば三本目の手こと尻尾の範囲内!何も怖くはない!
燃え盛る炎の刃が
「だから甘いんだよさぁぁぁぁん!」
その首を断つ。だというのに、それを意にも介せず、奴は鎌を振るう
首を貫かれ、切り離され。その筈の傷は何処にもなく
「『落とし穴』!」
足元が、抜けた
風山絆のスキルだろう。突然消えた地面に為す術ないかのように落ちる体が、ギリギリで鎌の軌道を逸れて
「サンキュー風山!『昇竜閃』!」
空へと切り上げるスキルでもって、穴を抜けつつ更に追撃をかます
可笑しい
刀は確かに奴を斬った。斬っているのに、斬った感覚が変だ。肋骨を切り落としながら、肉を断っている筈なのに、何を斬っているのか分からない感覚
「……っ!」
雷が膨れ上がる
なぜかは分からないが、何か俺の中で、致命的な何かがキレた気がして
「ったく、ひでー奴だなドラ息子ォ!」
羽織ったマントから赤い飛沫を上げ、金髪の男は嗤う
けたけたと、避けることもせず
本当は受けてやっても良いんだぜ?とばかりに
だが、何故だろうか。マントには誰も攻撃などしていなくて
「……何故、そう嗤える」
思わず俺は、そう呟いていた
グラスも居るので実質1vs2。自分を殺した
そういえば、レンは切り込むタイミングが無いようだが、グラスが動いていないのが気になる
「全くさぁ、お前ってば本当に酷い奴だよなぁ、讃
友達をこんなにしてさぁ!」
これみよがしに、大きく傷ついたマントを振る男
「知るか!問答、無用!『無明・七天虹閃』!」
更に一撃、叩き込む!
だが、その一撃は……
「いけません!『スターダスト・ファン』!」
「ひどいよ、おにーさん『衣包み』」
謎の布と扇、二つによって止められていた
「グラス、てめ……」
文句を言いかけて、止まる
眼前に、何時しか一人の少女が居たから
ぱっちりと大きい、満月のような印象も受ける金眼。対照的に、淡く青く色付いた月光を思わせるような柔らかく流れる銀の髪
全体的に全てが細く、纏っているのがともすれば透けそうな薄いレースを編んだような布だけである事も相まって、この世のものではない天女のような、触れてしまえば消えてしまう妖精のような、この世のものとは思えぬ印象を受ける
顔立ちは可愛らしい。どこか、リファナに似ている
そんな、13~4くらいであろう女の子が、花畑に不意に現れていた
奴が、タマモか
いや、その割には狐耳がない
では、誰だ
困惑する俺の前で、少女は毒気無くふわりと笑い、手に持った糸と針を振って
「やっとまた会えたね、おにーさん」
と、告げたのであった