パチモノ勇者の成り上がり   作:雨在新人

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迷いの砂漠

「……よしよし、良くやった尚文」

 遠くからその様子を眺め、頷く

 

 何だかんだ言って奴隷商はしっかりと尚文にリファナ達を売ってくれた。貴族に売ると大法螺っておいて盾の勇者に売る矛盾については、波で依頼した貴族が実は死んでいてもう契約は無かったことになっていたものの、前金は既に貴族から貰っていた為一応支払っただけ、という話で誤魔化したようだ。前金だけということにも気が付かず、あの勇者はバカだったのです、ハイだそうだ。好きに言っててくれ少しはラフタリアの心も……いや癒えないな別に

 遠くから見れるのかって?アヴェンジブースト舐めんな、と言いたいが普通に幻影魔法である。リファナがちらっと此方を見たときはバレたか?と思ったがそうでも無かったようだ。そもそも幻影突破できるならば俺が勇者のフリした幼馴染のネズ公だとバレてるか。最後まで勇者さまと呼んだことはあったし恐らくはバレてないだろう

 

 後は気にしなくても問題ないはず。尚文は味方には優しいはずだからな。心優しいかは……盾の勇者一読者としては割と微妙と返すしかないが少なくとも味方へはちょっと口が悪いだけだ

 

 ということで、リファナ達はこの世界で亜人が最も安全な場所に託せた、暫くは安全なはずだとして。俺は砂漠を目指す準備をしていた

 目指すのは迷いの砂漠、正式名称ドラクル砂漠。メルロマルクからフォーブレイを目指す際に迂回しなければ通ることになる砂漠だ。まあ基本は迂回されるろくなものの無い死の砂漠。だが……

 

 俺は知っている。盾の勇者本編を知っているからこそ、そう言える

 転生者陣営の本拠地、この世界における女神の最大拠点、それは此処であると

 

 ……で、何抗議して光ってるんだよどぼったくりクソナイフ。良いからあのぼったくり価格の更に15倍という足元見るとすら言えないぼったを止めろ

 『称号解放、裏切り転生クソネズミ』

 裏切ってないって。俺は最初から最期まで、リファナ(俺の女神)の為に動く、そう決めたんだよ

 

 っておい、クソナイフ、今更逃げようとすんな逃がさねぇからなお前と俺とはずっと一蓮托生だクソナイフ覚悟しておけ

 なんて震えて俺の支配から逃げようとしたクソナイフを捕まえ直す。まあそもそも女神由来の武器を奪う力から逃げ切れてはいなかったので捕まえ直すのもパフォーマンス以外の理由は無かったんだが

 

 っておい、腹を刺すなクソナイフ反抗的だなお前

 「エアストスロー!」

 と、床に突き刺して動きを止めさせる

 ……後ですみません床にナイフ落として傷つけてしまってと金払うしかないか

 

 落ち着けよクソナイフ、リファナと書いて俺の女神と読む、良いなクソナイフ。あの女神の事じゃない、リファナの事だ。転生者の事を認知できるあの奴の眼前に立つんだ、心の表面を覗けないとも限らない。全部読まれるなるば無理だが表面ならばこれで何とかなるんだ。だから奴と対峙を終えるまで俺はリファナを俺の女神と呼ぶ。それだけだ。リファナ(俺の女神)のためと言っているから俺は女神派の敬遠な転生者だと思ってくれるように。それには付け焼き刃過ぎる変換じゃあ無理だからな、今からそう呼んでおくんだ

 

 にしても、フォーブレイ近くか……タクト一派、特にタクト本人には会わないと良いんだが……

 なんて不安はかなぐり捨てて。きっと奴の事は俺しか知らない、だから俺がやる。奴と対峙し、滅びに抗うことを

 俺が伝説の武器の所有を何となく察知できるように、タクトの奴もわかるんじゃ無かろうな。それなら俺がクソナイフ隠し……いや堂々と持ってる事もバレるだろうし奪おうと襲ってくる可能性がある。ポータルで逃げる……というのも厳しいだろう。会わないことを祈るしかない。大丈夫だきっと、何でハーレム野郎のタクトが砂漠なんぞに来るだろうか、来ない来ない。女も居ないし女からは不評の極みだろうしな

 

 ……そういえばドラゴン育てないとな、竜帝的に

 なんて、今から向かう場所にも欠片があったなという事で思考は逸れる

 ……そのうち盾の勇者がガエリオンと出会うだろうしそいつで良いか。正直な話勇者側につくドラゴンが居れば良いんだ、俺が持ってる必要はない。そのうちさりげなく彼処で拾うだろう竜帝の欠片を入れてやればそれで終わりか。ドラゴンは金高いしな

 

 そんな事を考えているうちに準備は終わり。といってもポータルで飛んでは歩き、そのうちポータル取って帰るを繰り返すのだ、歩きやすい服と靴、そして水に食料くらいしか準備なんて無いが

 そうして、夜になると出発する

 

 ……ん?クソナイフ?何だポップアップなんて出して。何で夜なのかって?

 馬鹿かクソナイフ、昼はリファナが心配だから尚文見守りつつレベル上げだろう?それに俺の魔法は基本プラズマ、暖は取れても体を冷やせないんだよ。だから砂漠は夜に進む、簡単だろ?

 

 そんなこんなで一週間。昼に見守っているとラフタリア達のレベルは20を越えた。一応俺が最低限教えたからか、未だに多少忌避はあるのだろうが生き物っぽい魔物とも戦えている。尚文という盾がしっかりとパーティに居てくれるからか、俺が個人的な理由でパーティ組まなかったときよりも戦いやすそうだ。盾の勇者だけあってあいつ硬いからな、どんな攻撃も尚文に受けてもらえば今のところ問題ない。俺が近くに居ることであのバカ装置が経験値がっぽりフィールド張っているし、レベルはガンガン上がってる。まあ本編初めての波が来ても問題はないだろう。妙に強くなってなければ

 だが……

 

 ちょっと待てラフー、どうしたんだラフタリア。お前……尚文に育てられてるってのに成長しないじゃないかよラフー!盾の勇者本編では尚文の奴が目がバカになってるからか認識できて無かっただけで18くらいの姿になるはずだろ?何でレベル20越えて外見そのままなんだよ尚文がロリコンになってしまうぞ早く成長しろ

 ああリファナはそのままで良いぞ。実際13~14の姿でいて、レベルと共に成長する気配はないが

 

 アレか?俺が一時的にレベル上げさせたせいか?それで亜人のレベル成長フラグが潰れたとかか?ならすまない尚文、お前はフィーロとかも居るしロリコンの謗りを受けながら生きてってくれ

 

 なんてやっているうちに、波はもう間近にまで迫っていて

 波前夜。尚文が蛮族の鎧を誂えて貰っている頃。俺は漸く砂漠の目指す地点、滅びた国の幻にまでたどり着いていた

 魔法使って一週間かかったぞ遠いわ。でもあっさり踏破出来たな、何事も無さすぎた

 

 あくまでも滅びた国は蜃気楼。誰も辿り着けない魔力の残骸……と噂されているが、それは違う

 この国は遥か昔に魔力暴走で滅んだ、と言われているが嘘だ。一人の転生者が、意図して異次元に国を吹き飛ばした。転生者側の本拠地、女神をサポートする場所とする為に

 

 本編では……といっても盾の勇者外伝でしか出てこなかったが、勇者達がスペックを駆使して何とか突入していた。だが、そんなものはきっと必要ない

 「……なあ、入って良いか?」

 その一言だけで、砂漠の何もないはずの場所にゲートが開く

 やはりか。転生者の親玉が管理しているならば、きっと転生者ならば迎えられると思っていた

 

 良いなクソナイフ。これから向かう場所は下手を撃てば一発死だ。地獄の釜の上の綱渡り、大人しくしててくれよ投擲具。お前が少しでもぼったくりクソナイフしたら落ちてもろともに終わりだからな

 なんて思いながら、俺は用意して貰ったゲートを潜った

 

 いざ行かん、転生者の親玉のお膝元へ。クソネズミ一世一代の大法螺を吹きに


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