ネズ公「リファナを尚文に託して俺よりヤバイ転生者に会いに行く」
投擲具『悪手しか打てんのかこのネズゥ!』
ネズ公「じゃあ妙手って何だよクソナイフ」
投擲具『俺がリファナちゃんだけの正義の味方になる』
ネズ公「今のレベルでリファナを投擲具の勇者化したら転生者に狙われて殺されるぞクソナイフ」
投擲具『くっ、そもそも妙手考えるのはお前の仕事だろうがネズゥ!』
結界を抜け、段々と黒く染まっていく砂漠を歩く
途中幾重にも張られた結界がまだまだあったものの、無視して突き進めてしまう。全部の結界が素通り出来る
……確か盾の勇者ってかその外伝の槍の勇者のやり直しだと散々に苦労しながらだったはずなのだが、苦労の苦の字もない。辺りは無数の悪魔ーこの外見は悪魔としか言いようがないだろう、蝙蝠の羽根と大きな山羊の角の魔人等々悪魔と聞いて人々が思い浮かべる姿のバケモノが砂漠に、空にうようよしている。だが、そんなもの敵ではない。正直な話蹴散らせと言われれば無理だ。たぶん大人しくしてろと言ったクソナイフを使っても尚勝てないだろう。ぼったくりを止めてもらって全部の強化を施せばワンチャンこの無数の悪魔の中の極一部は倒せるだろうか。まあ、クラスアップもしていない、資質向上も最低限、強化はぼったくりのせいで歯抜け、なレベル40未満パチモノ勇者ではこんなものだろう
だが、悪魔は文字通り敵ではないのだ。此方を当の昔に認識しているはずなのに、彼等は全くそれを意に介さない。ただ、そこに待機するのがプログラムであるかのようにじっとその場に留まっている
例えばこうして……猫みたいな外見の悪魔の眼前で手を振ってみても無反応。くるくるとクソナイフではなく持ち込みの剣でもってジャグリングしてみても目線一つ動かない
本当にゲームの敵だなこいつら。流石は人工魔物か
……そう、この世界の悪魔とは普通の魔物ではない。転生者が作り出した女神の尖兵、人工のバケモノである。自由意思なんてものはなく、ただひたすらに奴の命令を遂行するロボット、それが悪魔だ。だからこそ、客人である俺を排除する命令はないだろうから完全無視。意思があれば目で追うくらいはするだろう事をやらかしても全く反応はない。流石に殴れば反撃がくるだろうが。プログラムされたことしかしない、正にゲームの敵AIそのものである
って止めろ震えるなクソナイフ、リンクして全部襲ってきたらどうする
なんてやっている間に砂はもう真っ黒で
赤いぼんやりと光る輪郭をもった廃墟へとその足は辿り着く。確か……プラド城だったか
当時の転生者が付けた名前だろうか、中々に安直である
砂漠に埋もれるかつての王国の廃墟、普通ならワクワクするものだが……わざと滅ぼした拠点と分かってると中々に興奮も覚めるものである
……門に手を触れると鍵が外れ、轟音を立てて僅かに開く。人一人通れるな。流石は転生者の本拠地、自分も転生者だとストレスフリーにも程がある。やり直しでの尚文達の苦労って一体何だったのやら
城の中へ。辺りはかなり風化が進んでおり白骨やら何やらも転がっている。ここら一体を吹き飛ばした時に巻き込まれ出られなかった者達の成れの果てだろうか。供養の意図を込めてクソナイフ、吸ってこい
……嫌か、なら仕方ない。と言いたいんだが、吸ってくれ。ってか支配されてる感出すために嫌々吸え。この辺りは風化が酷い。だというのにしっかりと分かる白骨が転がっているというのも何かありそうだろ?
『ンテ・ジムナの剣が解放されました』
……そうか。ンテ・ジムナ種の骨か
解放されたということは、魂でも尚残っていたのだろうか。兎に角有り難うな、名も知らない亜人の骨よ
なんてやりつつ進むと中庭に出る
……悪魔多すぎて何とも言えないな本当。思いを馳せるとかやってられないくらいにどこを見ても悪魔だ。多すぎだろどれだけ作ってるんだお前らこんなに要らないだろ
中庭には水が引かれ、近くにはかなり削られた石碑。そしてオブジェの残骸
「見せろ、良いな?」
わざと強く言うや、クソナイフに埋め込まれた宝石が輝き、石碑に碑文が光文字として浮かび上がる
固定された疑似リベレイション……っておい、その先の魔法はどうしたクソナイフ文字化けしたものしか書かれてないぞ
『称号解放、この先は
おいこら遊ぶなクソナイフ
……まあ、仕方ないか。正規勇者じゃないから勇者専用魔法は覚えられないのも当たり前と言えば当たり前。まあ、リベレイションのやり方が書いてあるだけでも儲けものだな
あ、文字化けの上に更に文字が出た。何々……疑似リベレイション・ホログラフィクプラズマか。って幻影魔法のリベレイションかよ何と言うか、どうなんだよこれ。今までのと何が違うんだバレにくいだけか?
まあ良いや、リベレイションのやり方は実際問題知ってる訳で、ある程度お試し版で感覚を掴めれば辿り着ける気がする。お試し貰えただけで万々歳と言うしかないか
とはいえリベレイションなんて勇者魔法、此処で使うと無視してる悪魔にどんな刺激があるやら分からないのでガン無視。後で使ってみようか
とやりつつ、宝物庫を一旦無視して進んだ先の十字路は迷わず左。許可取ってから武器は持ち出すべきだろう。泥棒になったらたまらない
……ん?リベレイション覚えるのも変?それもそうか、これ以上刺激はよそう
そして現れたのは吹き抜けの祭壇。其処には馬鹿デカイ玉座があり、巨大な竜が鎮座していた。なかなかにマッチョで二足歩行のタイプだ。デカブツ同士でやりあうならば兎も角、小型の人間相手にするには四足のどっしりしたドラゴンの方が良さげなんだがそこは好みだろうか
汚染されし堕龍、経験値の悪魔ドラクル・クロウ・クルワッハ
なんて名前が視界の端に。長いし意味被ってるぞオイ、汚染時に名前を単に言葉繋げて伸ばすな
……ってそういえばこいつ悪魔とドラゴンのキメラだったか。まあ良いや素通りしよう。竜帝の欠片持ってるはずだが、倒すのは無理だ。此方を見ても動かない辺り完全に悪魔化してるし、無視して進むだけならば無害だ
……って、時間が足りないなツヴァイト・ライトニングオーラ
なんてやって、急いで駆け抜ける。間のものは無視だ無視
そして祭壇から更に地下へ進んだ奥深く。植物園だったろう残骸に作られた実験場にそれは会った。それは、と会ったが合わない?いや、物体であり生命だから合っている
実験場の入り口には煤けた字でシステムエクスペリエンスと書かれている。見てないけどそのはずだ
幾重にも魔方陣が描かれた地面の真ん中に鎮座する大釜のような謎の装置。赤い光を塞き止めるように、それは置かれていた。奴がシステムエクスペリエンス、この世界の地上の経験値を集め、転生者以外のレベルアップを妨害しつつ転生者のレベルを跳ね上げる元凶であり、ついでに転生者の親玉の成れの果て
「ハロー」
「随分とフランクだな」
「幾重にもカクサレタ扉をヌケ、ココマデ来るとは……」
「いや、知ってれば全部素通りだし楽勝だったぞ」
「ワレは経験値をアツメ、来るべき時にソナエル神のシト」
「いや、お前じゃない。お前の中に居るんだろう、この事態を引き起こした際に移したろう転生者の意識が
そちらと話がしたい」
そうだ。悪魔はAIのようなもの。統括するにはそれなりの意思決定者が要るはずなのだ。そこまでもAIに任せて自分は居なくなるなんて、転生者なんて人種が出来るはずもない。隠れてこそこそやってた方が良いはずの転生者にして武器パクラーのタクトを見ろ、俺より堂々と鞭の勇者名乗ってドヤってるぞあいつ。基本自分が自分がで目立ちたがりなんだよ転生者なんて。(昔の)俺みたいに
「アノ方の特別……
良いだろう。話をしようじゃないか、あの方の特別ヨ」
『称号解放、女神のシト』
システム経験値に向けてぶん投げるぞクソナイフてめぇ
いや、確かに俺の女神の使徒になれるならそれはそれで良いか
「……一つ聞きたい、あの方の特別というのは?
俺には、あの方から与えられた特別ななにかがあるのか?」
「……狸は、居ないノカ?」
「狸?ラフタリアか?
連れてきてはいない。お前の元まで来るならば、通れるのはあの方による転生者である俺一人だと思ったからな。連れてきていたら途中で悪魔に襲われただろう?」
「……少しは考えたカ」
「当たり前だろう?」
というか、此処で狸が出てくるとは。俺がわざわざあの村に転生者として送り込まれたのにはラフタリア関係で何か目的があったのか。考えたカという以上始末が目的ではなさそうだし……
有り得ないとは思うが、ラフタリアを俺に惚れさせろとかそういうのか?はっはっはっ、まっさかな、あの方に恋愛とかそんな考え無さそうだし
「何を望んで来た、投擲具を奪いし特別なシトヨ」
「力を貸せ、システムエクスペリエンス、いや、転生者の頂点よ」
「良いだろう、シトよ。何を望ム」
「まず、此処を拠点として使わせてくれ。つまりは、お前だろ?ポータル拒絶してるの、それを解いてポータル使わせてくれ。一応奪った武器でもポータルは使えるからな
後は、経験値集積を止めてくれ」
「ナニ?」
此処からは何も考えるな、一気に行け、俺の女神の為に俺の女神の為に俺の女神の為に俺の女神の為に
Go!
「お前、勇者が強くなれないように経験値集めてるだろ?
あれを俺が勇者観察してる限り解除して欲しい。つまりは、俺やタクトや、その他転生者と同じだけの経験値を俺が勇者の近くに居る時には流してくれ」
「何故ダ?」
「お前は勇者システム、良く知らないだろ?
俺はこの投擲具を奪って調べた。それで気が付いたんだよ
勇者を殺しても意味がない。そもそも、何故波が段々と強くなると思う?」
「あの方の干渉の力が段々と浸透して行くからダ」
「それとは別に、もう一つ意味がある
例えば、今この時、四聖勇者を波で全滅させれたとする。ならばあの方の勝ちか?そんな事はない。新たな四聖が呼ばれて終わりだ
勇者と勇者武器は強く結び付いてからしか殺しても意味がないんだよ。本体は武器の方だ。人間の方は正直な話代わりが効く。だからこそ、武器の奴等が今更乗り換えられないほどに入れ込んで、結び付いて、それから倒すからこそあの方の勝ちになる」
「それが、序盤の波の目的であるト」
「そうだ。だからこそ、成長を早める。武器どもを油断させる。とっとと固めさせるのさ、勇者ってやつを。他を選べないくらいに。その判断は同じく武器を奪った俺がするさ
あの方を早く迎えるために、確実に次なんてやらせない為に、やってみないか?」
耳がピクピク動く。喉が乾き、尻尾が立つ
「すべては、俺の女神の為に
最後の勝利の為に。わざと油断のために塩を贈るのさ」
暫く、装置は黙った
「……良いだろう。お前に手を貸そう。俺の女神の為、心の奥底からの思い、嘘では無いようダ」
「ああ、頼んだぞ、俺の女神の為に」
「俺の女神……あの方をそう呼ぶか
特別なシト、仕方の無いコト……」
……何か悩んでいらっしゃるようだ
「……一つ、条件がある
悪魔を、連れてイケ」
「ああ、良いだろう。一匹連れていく
宝物庫のもの、使わせてもらうぞ
じゃあな、また来るよ、俺の女神の為に」
ポータル取得。それだけやって踵を返し部屋を出る
あ、危なかった……リファナを俺の女神と変換していて助かった。恐らく一瞬だけ俺の心を読んだのだろう、心の奥底からというのはきっとそうだ。常時読めるわけでも無いのだろうがたかを括らなくて、けれども読心が強すぎなくて助かった
因みに勇者云々のあれは、このネズミ一世一代の大嘘である。勇者を、リファナを、尚文を強くし、何時の日か女神に勝つために。敵に塩を送り続けてくれエクスペリエンス、贈りすぎて手遅れだし、そもそも贈るべきという話そのものがネズ公の詐欺だと気が付くその日まで
『称号解放、種族ネズミ講』
誰が種族マルチ商法だ違うだろう
『称号解放、詐欺ネズミ』