「分かってるなシステムエクスペリエンス!
今からちょっと波に介入してくる、勇者共に信頼されるために
だから裏切ったとか言わないでくれよ」
元の部屋に飛び込むや言葉を紡ぎ
「ポータルジャベリン!」
目指すはリユート村近く。予め取っておいたポータルでもって、波が来るであろう場所の側へと飛ぶ
00:00
ビキン、と世界が割れる音が木霊した
……女神が引き起こす世界を砕く災厄、波の合図である
ギリギリ間に合った。波の最中は波の範囲内ではポータルが使えないからな。あのエクスペリエンスの居場所も似たようなもので、あそこは管理者の権限で歪めて貰っているが波の核とも言えるボス相手に話は通せていないからこっちには飛べない。まあ、当たり前だろう、世界を護り管理する勇者武器の力で転移しているんだ、別世界からの侵攻が起きている間は上手く飛ばせなくて当然。波の開始と共に勇者が飛ばされるのも、世界というか勇者武器が世界が歪む影響で転移させられなくなる前にどうにかと勇者を送り込んでいるという感じだ。万一波に間に合わなかったら城下から走ってくる必要があったのでその点良かったと言えるだろう
さて、どうするか
なんて考えるまでもないな、とずっと張っていた幻影を解く。いやまあ、裏切った勇者の面下げてどうリファナに会えというのだ
「抗議でち、マスター急ぎすぎでち」
「煩いぞゼファー、急がなきゃ波に間に合わなかったところだから仕方ないだろう」
転移には巻き込めたかこのでち悪魔
「ベールでち
疑問でち。マスターの外見がネズミなのは何でち?」
「これが俺の本当の姿だよ、さっきまでのは俺が殺した投擲具の勇者の姿。いきなり持ち主が替わったら怪しまれるだろう?だから化けてるんだ
それで、お前は化けられないのか?羽が目立つぞ」
「回答でち。出来るでちよ
でもボクは羽に触れる大気から魔力を吸収してるでち。羽を仕舞うと力が発揮できないでちが」
「まともに戦う気は無い。精々盾の勇者に加勢して恩を売るだけだ、戦力としてはどうでも良い」
農村部、それなりに人は住んでいるだろう。波が来るといっての避難?終わってるとでも思うのか、波が何処に起きるのかなんて、それこそ起こしてる本人くらいしか知らないぞ。俺は盾の勇者本編の知識で知っているが、それを伝えても狂人でしかない。だからこそ、全くもって何も終わっていない
だからこそ、この村に恩がある盾の勇者は近くで戦うはずだ。前回の波での俺のように、村を守るために。近くを通りがかったラフタリアやリファナの幼馴染の冒険者ネズミとしてそれに加勢して恩を売ってやろうという魂胆である。残りの三勇者?ほっといても問題ないだろきっと、当時のあいつらはそれなりに強いはずだ。少なくとも自分の武器の強化方法すらまともに出来なかった時期の多い尚文の数倍は。ならば気にすることはない、勝てるはず
「行くぞゼファー、暫く隠れて折を見て勇者に信頼されるために加勢する、良いな?」
「了解でち、あとベールでち」
村に辿り着くと、ちょうど防衛線が尚文一人になったところだった
……相変わらずだなメルロマルク。確か盾の勇者に自分が引き付けてる間に立て直せと言われたから全員前線を彼一人に任せて下がったんだったか
盾の勇者一人に前線張らせる時点でおかし……いや可笑しくないか。でもそれは他の勇者が、主に弓or投擲具の勇者が居る前提。今は弓は波のボスを倒しに突き進んでおり、投擲具は諸事情でクソナイフ禁止中のネズ公である
「うわぁぁぁぁっ!」
「エアストシールド!早く逃げろ!」
そんな中、尚文から離れたバケモノに村の住人らしき男が襲われかかり、間一髪、宙に浮かぶ盾がそれを防ぐ
……この辺りは盾の勇者そのまんまだな。つれている戦力を避難誘導に回し、一人で耐え忍ぶ
……やってられるか、とっとと行こう
「ゼファー、避難誘導を手伝って来てくれ」
「拒否でち。契約内容は離れるな、でち」
「村の範囲内ならば離れてないだろうが、良いから行けゼファー!」
「ベールでち」
「避難誘導だ、ゼファー」
「マスターはボク使いが荒そうでち」
言いながら、メイド服のままの悪魔は俺の横を離れる
……ヤバい、メイド服のままってのが後で酷い言葉になりそうだ。ああクソナイフ、もう持ってる変態ネズミの称号を光らせるなポップアップさせるなお前は波の間中黙ってろ
「きゃああああああああああああああああ!」
「シールドプリズン!」
尚文が逃げ遅れた女性をシールドプリズンで囲んで保護した瞬間
「しゃぁぁああっ!」
ドロップ品の剣を取り出して盾の牢獄に爪を立てようとする屍鬼に斬りかかる!
『伝説武器の規則事項、専用武器以外の所持に触れました』
って黙ってろクソナイフ、今お前を使うわけにはいかないんだよバレるだろうが!いや勇者武器的には全力で本物の勇者にこいつ泥棒のパチモノ勇者だとアピールしたいのは分かるが
痺れる腕は無視、込み上げる吐き気もガン無視
ただ、一閃
「……お前」
怪訝そうな視線
ああ尚文、そりゃそうだな、何だこのネズミとなるよな
「ったく、勇者って言うのに防戦一方か」
「攻撃手段が無いんだ、当たり前だろう!」
語気が強い
まあ知ってる。だからリファナやラフタリアを買ったってこともな。でも、会ったこともないネズ公がそんなこと知ってたら可笑しいだろう?
「だから、見てらんないんだよ勇者サマが!」
いや、もっと友好的にやれ?却下だクソナイフ、何でリファナが憧れる盾の勇者サマにへりくだらなきゃいけないんだ。七星の本分?知るかそれをほざくならば全能力使わせろクソナイフ
尚文に群がる敵を切り捨てる。最近クソナイフばっかりだったが勘はあまり鈍ってはいないようだ。叩き斬るというよりも速度で斬る感じ。最近投げてばっかりで鈍っていたらどうしようかと
……弱いな、なんて尚文を壁に思う
何というか、やっぱりというか尚文にダメージなんて通せない程度。というか俺にも無理だなこれ、前回の蜂まで混じってるし。やっぱりこの辺りの波は弱すぎる。俺の法螺じゃないがこれは慢心しても仕方ないな
「勇者様というならば手伝え!」
「分かってる、盾の勇者!」
どんどんと押し寄せる魔物は多くなっていく。クソナイフで吸えれば楽になるだろうが、足の踏み場が減っていくのが辛い
「っ!」
「エアストシールド!」
思わず最近の癖で遠くの蜂にエアストスローを撃ちかけ、剣を投げてしまう
そんな俺に向かう魔物との間に、浮かぶ盾が生じて奴を受け止める
「何をやってる!」
「すまない、今日は予備がないのを忘れてた!」
って震えるなお前は出てくるなクソナイフ
とりあえず取ろうとした所で、炎の雨が降り注いだ
ああ、あったなこんなイベント
バケモノの死骸の間から後ろを見ると騎士団が到着しており、その中の魔法が使える連中が集合して炎の矢の魔法を唱えていた
「おい、こっちには味方が居るんだぞ!」
「おい、此方には勇者だって居るんだぞ!」
パチモノと盾だが。うん、向こうが止める理由が欠片もないな
「ふん、盾の勇者に薄汚い亜人が、無駄に頑丈な」
おいそこの騎士団長らしき奴。にしても多少怯えが見えるなお前
瞬間、飛び出す閃光
反応は間に合わず、男は喉元に剣を突き付けられる
「なおふみ様に何てことを!」
「リファナ!?」
そこはラフーじゃないのかラフタリア!何やってるんだラフタリア!
「マルスくん!?」
リファナの突き付けた剣先がブレる。それを騎士団長らしき男が弾こうとして
「そんな話をしてる場合じゃないだろ!」
「それもそうだ!
騎士団、下手なことすると巻き込んで斬るぞ」
騎士団なんて無視だ無視、とりあえず波のバケモノを片付ける
盾の勇者は兎も角、普通に炎の雨を耐えるネズミに怯えたのか、騎士団は大人しくなって
「リファナ、大きく……なってないな
大丈夫だ、あれからクラスアップしてきたんだ、任せろ!」
「ちっ、亜人と犯罪者の勇者風情が」
「その勇者が居なければ大きな被害を出していたのは誰だ?」
良いぞ尚文、もっと言え
「ぐっ」
「リファナ、避難は?」
「もう終わるからなおふみ様の加勢に」
「……そうか。盾の勇者様に助けて貰ったんだな
改めて名乗ろう盾の勇者
俺はマルス、リファナの幼馴染で、冒険者だ」
その後、避難誘導が終わったらしく合流したラフタリアと、ついでに付いてきたあの悪魔も合わせて波から来る化け物を抑えた。波の亀裂が消えたのは、それから2時間近くも経っての事であった
楽勝ではあったが、時間だけはかかったな